全国国公立幼稚園長会
はじめに
近年の子どもを取り巻く環境は必ずしも望ましいものとは言えず、安全・安心な教育環境は、多くの国民の願いでもある。また、少子化の進行や両親の就労状況の変化は、幼児期の教育の在り方に大きな影響を与えている。
本会は、幼稚園教育の充実・発展に尽くしてきた立場から、幼児教育の無償化が真に子どもの最善の利益につながることを願うものであり、国の財政的裏づけとともに、この国の人材育成に関する考え方の基となるものであってほしいと切に願い、以下に意見を述べる。
記
〇幼稚園教育の重要性に対する国民の意識の高まりが期待できる
・ 教育基本法に幼児期の教育の重要性が示され、学校教育法改正によって幼稚園が学校の最初に規定された
・ 依然として社会的評価が高いとはいえない
・ 「無償化されること」は、幼稚園教育の重要性の認識の広がり・深まりにつながる
〇義務教育ではなく、無償化であることの意味・妥当性
・ 全ての子どもが幼児教育を受けられるように、3~5歳児の無償化を
・ 義務教育では、発達の個人差の大きさが課題
・ 地域環境の違い・集団生活の必要度により、保護者による入園時期の選択が可能
〇国家の危機である超少子化への有効な対策として(求められている幼児教育の無償化)
・ 保護者は、経済的負担の軽減ができるため、無償化に大きな期待を寄せてい保護者の声は「一日も早く無償化を…」実現してほしい
・ 次代を担う人づくりの根本的な対策として
子どもが子どもらしく生きる環境【教育的環境】の必要性
子どもが子どもらしく生きることの大切さを親に伝え、具現化する必要性
〇無償化による幼児教育への期待の大きさを受けて、幼稚園は
・ 幼稚園教育要領の趣旨に沿った教育活動の充実
・ すべての幼児教育施設が、教育の質を高めるための組織や研修の重要性
子育ての外注化を防ぎ、子どもの心身の発達にとって最もふさわしい教育環境をつくるための子育て支援(親教育)の充実
・ 教育活動の質と教員の力量の高さという教育財産をもつ国公幼は、幼児教育に関する情報発信を積極的にする役割認識
〇無償化が質の向上につながるように
・ 多様化する幼児教育施設の中で、幼稚園・保育所いずれの施設でも確実に教育活動が展開されるような仕組みづくり
・ 教科学習的な方法ではなく、幼児期にふさわしい教育活動のあり方についての周知
幼児期の「学び」のスタイルの確保
・ 親の子育てに対する意識や責任感が低下することのないような取組の必要性
〇就労支援に偏る子育て支援の現状 ――― 子どもが子どもらしく生きるために
・ 望ましい教育環境の論議より、母親の就労支援が先行する現状
・ 経済性・効率性優先の施策
・ 超少子化による子どもの育ちの危機を回避する必要性
切磋琢磨の機会の減少、親の過保護・過干渉・放任・虐待等の危惧
〇子育てと仕事の両立を可能にする社会・環境づくり
・ いずれかの選択ではなく、両立できる社会に
・ 父親が子育てにかかわれる就労環境づくり、ワークライフバランスを大切にする国民の意識の醸成などについて、関連する省庁が連携して有機的に機能する施策に
・ 収入やライフスタイルに応じて自らが選択できる人材の育成
・ 子育てへの共感的理解や子育てを支える社会の機運の醸成
〇教師の資質向上を図る研修制度の重視
・ 子どもの友達関係に悩む保護者、放任しがちな保護者にも対応できる研修制度の確立
〇財政の課題
・ 地域・公私格差の出ないような制度設計、予算の確保を一般財源では、自治体の財政事情によって 無償化のねらいが達成されない恐れや地域格差が出る恐れ
・ 今後の財政を見据え、国と地方の役割について慎重な検討が必要
・ 多様化する教育ニーズ、保護者への対応のための人的配置
初等中等教育局幼児教育課