平成20年6月23日(月曜日)14時~16時45分
オカモトヤビル 4階会議室
香川主査、井上委員、大賀委員、太田委員、齋木委員、土屋委員、永田委員、橋本委員、松浦委員、村上委員、守屋委員、安元委員、宇野委員、大旗委員、渡辺(能)委員
伯井教科書課長、永山特別支援教育課長、水野特別支援教育課専門官、池尻特別支援教育調査官、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐
【委員】
小中学校は、基本的な文字や知識を習得するため、文字などをはっきり見て概念の枠組みやイメージを培う段階である。高等学校は、小中学校で培った基本的な見る力や概念、イメージなどを踏まえ、いろいろな方法を使いながら自分で工夫して見ていく段階である。
【委員】
卒業後、社会に出ると自分で工夫していくこととなり、そのために必要な教育を学校段階でも考えることが必要である。
【委員】
拡大教科書作成の過程で、文章と図が同じページに収まるように編集を行っているが、そのためには、内容を理解することが必要になる。高校レベルになると内容が高度になるため、それを理解して編集作業を行うことが困難な場合もある。また、技術的な面では、小・中学校レベルであれば、記号、文字の種類などパソコンにある既存のフォントで対応できるが、高校レベルになると、古文、漢文、数式、化学記号など既存のフォントでは対応しきれないものが出てくる。
【委員】
本県の公立高校には、弱視生徒が3名在学している。
拡大教科書は3名とも使用していないが、1名は部分拡大した教科書を使用している。プリントは、3名とも1.2倍に拡大したり、B4判をA3判に拡大したりしている。
また、授業中に弱視レンズを使用しているのは3名のうち1名であり、読書時や黒板や算数のグラフなどを見る時に使用している。自宅では拡大読書器を使用している。
座席については、前列に配置するなど3名とも配慮している。
教科書のデジタルデータについては、3名ともデジタルデータの存在を知らず、見たこともなかった。
また、拡大教科書があれば使用するかという問いに対しては、2名は必要と回答し、すべての教科、特に国語の漢字や数学の2乗、3乗を読む際に必要とのことであった。また、1名は必要ないと回答した。その理由としては、通常、ルーペを使用していて、ルーペで小さい文字を読んだ方が早く読めるため、必要なものだけを拡大するほうがよいとのことであった。
ノートパソコンは3名とも授業中に使用していないが、2名は使用したいとの希望があった。定期試験は3名とも全教科について問題用紙を拡大して実施している。試験時間は1名が時間を延長して別室受験をしている。
教材以外では、黒板の字を大きくしたり、家庭科の時間の裁縫など実技の際の支援、パソコン画面の拡大などの配慮をしている。
高校用の拡大教科書については、文字はすべて大きくして、写真はカラーにしてほしいとのことであった。
このほか、自分で文字の大きさを調節できる機器、さらに、そのような機器を置く机や教材・教具を置くものもあればよいとのことであった。
高校生は、自分で拡大したり、教材づくりをするノウハウが備わっており、文字の大きさを自由に拡大できるものを希望するなど、このような点が小中学校と異なると思われる。
【委員】
データの提供はできるだけ使用者の希望に添える形になればよいと考える。ただし、作業上の問題やデータの提供の困難さなど様々な問題があるので、それらを解決できればよい。そのためには、教科書を作成する段階から、データを提供する時点のことを考慮する必要がある。
【委員】
高校や大学は、学生が自分の将来に向けて自らの力で学ぼうとする場であり、そこでの教育は一方的に与えるだけでなく、選択させることが理想である。
【委員】
本人が工夫できるように教育することが大事だと考える。そのためには、高校段階ではデジタルデータを提供し、画面で見ることができるようにするのが理想的であると考える。
【委員】
拡大教科書を使用することと、ルーペ・拡大読書器などを使用して自助努力をすることは、二者択一ではなく、子どもたちが自分の希望する方法を選択できるよう環境を整備することが大切である。
また、高校では、例えば、物理の記号や漢文、数学、化学などの添え字などが読めないと学習に支障が出てくるので、この点についての配慮も必要ではないか。
さらに、以前、中学生を対象に拡大教科書について調査をした際、3割~4割程度、黒白反転したものにもニーズがあった。これまで議論してきたように、中学校と高校では違いがある一方で、このように中高一貫したニーズがあるという考え方も必要である。
デジタルデータについては、将来的には電子教科書が大いに望まれるところであるが、例えば、PDFをそのまま提供されても、PDFは拡大すると文字は大きくなるが、ページ内のどこを見ているのか把握することが困難であり、このような点に配慮されたソフトウェアがないと難しい。
【委員】
弱視生徒への支援の第一歩として、拡大コピーをすると少しゆがんだりするので、生徒の希望に応じ、教科書会社から拡大したプリント提供をしていただくことはどうか。
【委員】
教科書を単純拡大することは比較的容易であるが、教科書の注や写真の説明などは、単純拡大だけでは十分に対応できないと思われる。小・中学校の拡大教科書と同様にレイアウトし直す必要が出てきた場合、高校は教科・科目の種類が多いので、対応も困難になるのではないか。
また、高校は普通教科の教師用指導書に一定のデジタルデータが提供されているため、既存のデジタルデータを提供して拡大教科書作成に活用することが考えられる。
【委員】
PDFだけでは使いづらいとの意見があったが、PDFは全体を見ることも部分的に拡大することも可能であり、PDFをどのように活用するかということも視野に入れた検討が必要と思われる。
【委員】
PDFを拡大して読む場合、横スクロールや縦スクロールをしなければならないため、もっと使いやすい形に加工したものをデジタル教科書として提供することは、可能性があると思われる。また、教科書指導書に添付されているデジタルデータが、ボランティアの間ではあまり普及しなかったのは、テキストの内容が本文だけであり、その他の注釈、新出単語、図版など手を加える部分が多かったため、活用が少なかったと思われる。
【委員】
PDFもXMLも共にテキストである。PDFではフォントを一括置換したり、音声読み上げ用の教科書を作ることは可能である。また、PDFは大体のパソコンで見ることが可能であるが、一方で、特殊な拡大教科書用のXMLを作成した場合には、読めるソフトがないと誰も受け取れなくなる危険性がある。
(以上)
初等中等教育局特別支援教育課