資料3 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議 (第1回) 議事概要

1.日時

 平成20年3月18日(火曜日) 16時30分~18時30分

2.場所

 砂防会館 3階「霧島」

3.出席者

委員

 高橋委員、新井委員、大垣委員、河野委員、菊地委員、阪中委員、笹原委員、寶川委員、中司委員

文部科学省

 木岡児童生徒課長、佐藤生徒指導室長、倉見課長補佐

4.議事

  1. 木岡児童生徒課長より挨拶があった。
  2. 協力者の委員と文部科学省担当官の紹介が事務局より行われた。
  3. 主査の選出が行われ、防衛医科大学校教授の高橋委員が互選された。
  4. 議事の取り扱いについて審議され、
    1. 本協力者会議は報道関係者に対して原則公開とするとともに、議事概要についても、発言者の氏名を除いて原則公開する。
    2. 報道関係者によるカメラ取りは会議冒頭のみとし、配付資料については、外部から事務局に対し、希望があれば配付することを原則とする。
    3. ただし、特に必要がある場合は、協力者の委員の同意を得て、会議と配付資料を非公開とすることができる。委員から提案があった場合、出席者の2/3以上の賛成により非公開を決定する。
    ということになった。
  5. 配付資料の確認と説明が事務局から行われた。
  6. このあと、各委員から自己紹介も兼ねて、児童生徒の自殺問題に関して意見発表があり、そのあと、フリーディスカッションが行われた。主な意見は次のとおり。
    • 学校の中で自殺が起こるということは、学校の危機の最たるものである。それを未然に防ぐように何とか手立てを打っていきたい。
    • 教師は、親に次いで、子どもたちと向き合うことのできる身近なところにいるので、教師がどのように子どもにかかわっていくことが自殺予防につながるかということも検討していきたい。
    • 子どもたちと向き合う中で、燃え尽きて自己否定感情が高まったときに、教師自身が自殺してしまうということがある。教師の自殺が子どもたちに与える影響がとても大きいので、子どもの自殺予防の周辺部分になるが、教師自身の自殺予防ということも考えていきたい。
    • 子どもの質が変わってきていて、特に子どもの人間的な関係のつながりの希薄さが非常に心配である。
    • 養護教諭、スクールカウンセラー、教員がどのように連携をとっていけばいいのかということについて、自殺の問題だけではなく、それ以外の問題ともうまく関連させながら進めていかないといけないということが1つの大きな課題である。
    • 学校が遺族への対応や保護者への説明をきちんと行い、メディアへの対応においては、どこまで情報を出せるかということを検討し、情報提供できることは情報提供していくことが重要。そして、子どもたちに事実をどう伝えるのか、そこでの動揺も含め、連鎖が起こらないように慎重に対応しながらも、子どもたちに事実を伝えた後のアフターケアをきちんと行うことが大事である。
    • 自殺予防も含む危機予防プログラムを学校全体でどのようにやっていくかということが課題である。
    • 過去につらい思いをした人々にかかわるに当たって、教員の校内研修をもっと充実させていく必要がある。
    • だれもが使い易い教員向け自殺予防プログラムをつくれたらいいと思う。また、それが、教師自身のメンタルヘルスにもつながるのではないか。
    • 最近、子どもたちが傷つく要因の1つとして、ブログやホームページといったインターネット上での、特定の子どもに対するいじめがある。それにどのように対応するか、子どもたち自身も悩んでいるし、学校でもこれをなかなか把握できずにいる。今後、こういうものに対する対応や、こういうものによって傷ついた子どもが自傷行為に走ったり、自殺をするといったことを防ぐような対策を考えていかなければならない。
    • 学校を取り巻く自殺の問題に対応していくと、子どもの自殺の場合も、家族や保護者が亡くなった場合も、死因については公表しないでほしいということが多いので、そのような場合にどのように対応していくかはとても難しい。また、教員が、なぜ自殺を防げなかったんだろうと責任を感じてしまうケースもあり、教員に対してもケアが必要であると考える。
    • 予防的な生徒指導に取り組んでいくときに、子どもたちの人間関係上におけるストレスサインをキャッチするシステムをどうつくっていくのか、また、スクールカウンセラー等も入ってアセスメントのシステムをどうつくっていくのかを検討し、チームで対応・支援していくことができる体制づくりをすることが大事である。
    • 自殺を予防するという観点からの教育、生徒指導、さらには教育相談というものについて、現場の先生方にはまだまだ腑に落ちてないところがあるのではないか。そういった概念やその必要性、重要性を先生方に感じてもらえるよう、自殺予防のマニュアルづくりをしていく必要がある。
    • いじめが関係した自殺については、メディアが一斉に大きく取り上げるが、マスメディアには、こういった問題を一時的に取り上げるのではなく、本当に大事だと思うならば、継続的に取り上げるようにしてほしい。
    • 子どもは、困ったときには先生や親よりも同世代の子どもに相談するため、相談された子どもがきちんと対応できるよう、欧米では、子どもを直接対象とした自殺予防教育を行っている。日本では、寝ている子を起こすのではないかというような気持ちが非常に強いので、平成18年度にまとめた第一次報告においては、せめて学校現場で子どもと向き合っている先生に向けた自殺予防の教育を始めたらどうだろうか、それすらできないならば、ポストベンション、つまり、自殺が起きてしまった後の対応を何とかしたらどうか、という観点で報告をまとめた。
    • 日本では、自殺予防に焦点化したものがほとんどなかったので、そこに焦点化して、その可能性を探っていこうという方向性で第一次報告をまとめていった経緯がある。
    • 今回、現場の先生にとってわかりやすい形になるよう、現場の先生が中心になって先生向けのマニュアルを作成したらいいのではないか。ただマニュアルを作成するだけでなく、それをもとに研修会の開催や実際の対応の検討など、そこまで踏み込みたい。
    • 家庭が機能しなくなっている分、先生方に期待される役割がとても多くなっている。学校現場での先生方の負担があまりにも大きいため、バーンアウトの危険さえある。そういうこともマニュアルには含めるべきであり、具体的にどう対応するのかということも盛り込めるといい。
    • 家族が自殺を公表しないでほしいという場合に、どのような取り扱いをしたらいいかということも、マニュアルの中に入れるべきだ。
    • 自殺というのは一番最後に起きる悲劇である。それまでにいろいろな問題があるので、自殺予防だけでなく、自殺に至る道のりに出てくる問題を解決することが必要。
    • 自殺予防教育というのは、健康な子どもも全て含めた自殺予防教育も考えられるが、ハイリスクの人に焦点を当てた自殺予防教育も行う必要がある。そういう点もマニュアルの中に盛り込めるといい。
    • 学校の先生の中には、精神的に危険な状態にある子どもを、すべて自分一人で引き受けてしまい、精神科医をはじめとした医療と連携することを子どもたちへの裏切りだと感じ、連携を避ける人がいる。必要に応じて医療と連携することが必要であるということもマニュアルの中にきちんと入れるべき項目の1つだと考えている。
    • 今回は教師向けであり、教師自身が辛くなった場合には、信頼できる人に相談したり、いろいろな専門機関があるといったことについて、教師自身が勉強できるマニュアルにしたい。そういうことを知らない教員もたくさんいるのが現状である。
    • 自殺予防の正しい知識と理解を得るような、特化したマニュアルをつくることはとても意味があることだと思っている。
    • 学校では、子どもたち同士がいろいろな話をしているのを耳にすることがある。教師は、子どもたちに何かが起こっているときには、それに関わっていくことが大切であり、見捨てておかないことが大事だ。「教師の目撃責任」というような言い方をする人もいて、厳しいと思う反面、学校で過ごす時間は家庭での時間の次に多いので、そこで子ども同士で話していることをキャッチし、適切な対応につなげることは大切であり、そのために、教員としての手がかりが得られるような手引きをつくっていきたい。
    • 報告書として完璧なものをつくるよりも、研修で活用できたり、学校現場で対応するためのエッセンスがわかったりするようなものにする必要がある。
    • 自殺防止の教員向けマニュアルという切り口であるが、現場の教員のニーズは、自傷行為、自殺未遂者にどのように対応したらいいのかという点にあるのではないか。
    • 校長としても教員としても、具体的にどこと連携すれば助けてもらえるのか、万が一子どもの自殺が起こってしまったとき、あるいは予防するために、どのような関係機関と連携していけばうまくいくのか、ということを盛り込むべきではないか。
    • 中身をどう充実させるかの問題はあるが、配付の仕方や活用の仕方も重要。学校に配付することは必要。
    • 自殺予防はそれほど単純なものではないので、最低限の知識を盛り込んでもかなりの分量になってしまう。一方で、わかりやすいマニュアルにする必要もある。今回まとめるに当たって、A4の2枚程度の、それだけ見れば大枠がわかるというものと、現場で活用できる比較的薄いマニュアルと両方を作成することも検討してはどうか。
    • マニュアルをつくる前提として、まず、教員の自殺に対する意識についてどう考えているか、という点が重要。
    • リストカットの問題や、そういったことをインターネットで公開し、何人にも送って、実際はそこまで大きな問題ではないのに、大騒ぎになるということが、最近目立っている。そういった問題にどのようにかかわっていくかということも課題である。
    • 自殺という非常に複雑な問題を、いかにわかりやすく書くかということが今回の課題である。
    • マニュアルづくりに入る前に、リストカットの対応に関して非常によく知っている先生、あるいはハイリスクの人に向けた自殺予防や一般の生徒に向けた自殺予防教育について話せる人のレクチャーを入れた方がよいのではないか。
  7. 事務局から、委員から出された意見も踏まえて、次回は、実際に教員に対する研修等で講師をしている菊地委員と阪中委員に発表してもらうこと、また、今後、リストカットやハイリスク、一般の生徒への対応などについても、専門家を招いて発表をしてもらうことを検討する旨の提案があり、同意を得た。
  8. 次回は、4月25日(金曜日)14時~16時に開催する連絡が事務局からあった。

以上

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課