全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議(第17回) 議事要旨

1.日時

平成22年10月21日(木曜日)12時30分~14時30分

2.場所

文部科学省3階1特別会議室

3.出席者

委員

梶田座長、久保田委員、上月委員、坂本委員、柴山委員、志水委員、清水(美)委員、田中委員、野嶋委員、福田委員、耳塚委員、山崎委員

文部科学省

山中局長、德久審議官、下間参事官、小松室長、三宅専門官、田中主任視学官、吉川視学官、作花教育課程研究センター長、梅澤研究開発部長、森下学力調査課長 他

オブザーバー

石井  秀宗    名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授
岸     俊行    福井大学教育地域科学部准教授
野中  陽一    横浜国立大学教育人間科学部准教授
村山  功       静岡大学教育学部教授

4.議事要旨

(1)下間初等中等教育局参事官より異動の挨拶ならびに港区立高松中学校の久保田靖明校長先生の着任の挨拶があった。その後、それぞれ以下のような質疑応答が行われた。

(ア)野中先生より「教科指導におけるICT活用と学力・学習状況の関係に関する調査研究」の分析結果の報告があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

○ ICTについては、活用の点でまだ十分でない部分があるということと、もう1つは、活用されているところでも、A問題、B問題ともに、確かに平均正答率がちょっと上がっているのだが、もっと大幅に上がってほしいという期待がある。教育機器の普及が図られて、そのたびになかなか思ったほど効果も出ず、むしろそのお金があれば人のほうに向 けたほうがいいのではという議論も出てきたりしていて、なかなか難しい状況の中で、非常に実証的な研究の報告をいただいた。
○ 2つのデータを組み合わせることによって、相関が出ている部分と、環境は整っているけれども出てない部分というのがあったところが興味深い。環境としては整っていても使われていないようなところで平均正答率が低い傾向が見られるというところについては、その要因が教師にあるという理解になるのか。
◎ 実物投影機での提示というのは教室にあるものをそのまま使用すれば提示されるわけだが、ネットワークに繋ぐという作業が加わると教師がそれに慣れていないということもあった。もう1点は、学校の情報化を進めるキーパーソンになるような人の存在、校内研修、教育委員会のサポートがなかなか進まない地域あるという状況が見られた。

(イ)村山先生より「読書活動と学力・学習状況の関係に関する調査研究」の分析結果の報告があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

○ 読書そのものは、これ自体で意味がある。読書ということ自体が固有の意味を持っているわけだが、学力向上の手段として読書活動をとらえる向きが非常に強い。これもとても大事なことだが、これについて実証的な結果はないので、多面的に分析として意味がある。
○ 確かに読書というのは、子どもたちの心を育てるとか、想像力を育てるということで、本当にこれは大切なことだということは、誰もわかっていることなんだが、それが学力に結びつくということは、なかなか表に出しにくい。やはり、もっとアピールしていかないといけないと思っている。授業の中で読書を活用する、読書をしないといけないような授業をするというところが一番ポイントで、教育委員会では先生方の授業力向上を重点的に考えている。

(ウ)山崎先生より「地方自治体の学力調査と接合したパネルデータを用いた学力の規程要因分析」の結果の報告があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

○ 広島県、沖縄県独自調査の結果との全国学力・学習状況調査の結果の関連について調査を実施。特に沖縄県のものは個人ベースで分析していますので非常にきめ細かな結果が出ています。報告からは、それぞれの地域で全国学力・学習状況調査の結果を生かしていくときに地域の特徴ということをよく考えていかないといけないこと、また、全国学力・学習状況調査と、都道府県などが実施する独自調査について関連をどう図っていくかということについて様々な示唆が得られると考える。

(エ)石井先生より「全国学力・学習状況調査と自治体テストを相補的に用いて学力の経年比較を行う、具体的な手法調査研究」の結果の報告があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

○ 全国学力・学習状況調査は、これを制度設計した段階では、経年比較を目的にしていなかった。ただ、同じ地域である時期にやった全国学力・学習状況調査の結果と、それから別の時期にやったその地域独自のテスト、その両方のいわば得点分布のあり方に着目してその対応関係をはっきりさせて、別の地域ではそれを両方一緒にやってその対応関係から経年変化を見ていくという大事な提案にもなると思います。
○ 日本では指導と調査というのがきちっと分離されていない。しかし、今、提案されたような方法を使うと、例えば教育政策の検証・改善に役立つ指標としての経年変化を見ることが可能になるということで、非常に興味深く、有意義な研究だと考える。

(オ)野嶋先生と岸先生より「学校質問紙調査による学校の類型化」の結果の報告があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

○ 学校を見るときに、それぞれの特徴をある程度幾つかのタイプに分けて見ていくことによって、これまで見えてこなかった部分が出てくるのかなと考える。学校の種類は大体わかるが、それを聞きながら関係者として、例えば国立というのがあって、そのカテゴリーが例えば小学校や中学校で、その数は少ないんですが、4つにきれいに分割され ているのを見たら、国立学校の持つ特徴もそう一筋縄ではいかないというふうに思えるところもある。そこら辺が実態とこういう分析をした上で出てくるものとがうまくフィットしているのかどうかというのは、ちょっと考えるところがある。
○ 学区の子どもたちの家庭の経済力と学力はある種の相関をきれいにするが、学校によっては、いろいろと条件に恵まれていないにもかかわらず、非常に効果を上げている学校がある。それは何がそうさせているのかということについて、これはエフェクティブスクールということで、分析してそれをフィードバックしなきゃいけないという課題意識がある。

(カ)お茶の水大に委託研究について、その研究分担をした大阪大学の志水先生より「平成20年度追加分析」の結果の報告があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

○ 友人や親族や地域とのネットワーク、ここで言われている社会関係資本というものがなければ、教育成果が上がらないという、この結果がきれいな形で出ていると考える。
○ このデータは、学力の部分は全国学力・学習状況調査で、それから、保護者からデータを得ている部分は、別途調査を行っている。そうすると、このデータが持っている情報というのは、ほとんどの社会学的な分析にも耐えるようなデータになっている。行政による目的を持った調査データであり、また使用の範囲についても非常に限定された性格が今のところは付与されています。しかし、これは学力データについてもう少し広い人々の財産にすべき性質のものではないかと考える。その他の研究者もこのデータを使った分析ができるよう検討してほしい。

(キ)事務局より「平成23年度質問紙調査の項目の見直しについて」の説明があった。(○:委員 ◎:協力者 ●事務局)

●検討の方法及びスケジュールについてですが、具体的な質問紙の検討については、今後、分析ワーキンググループにおいて検討をいただいて、その内容については後日、専門家検討会議に報告というような形でお願いしたいと思っています。

(ク)事務局より「平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方について」「全国的な学力調査の実施」「教科追加の検討に関するワーキンググループについて」「平成22年度全国学力・学習状況調査の結果について」「平成22年度全国学力・学習状況調査 新たに分かったことの例」「平成22年度 全国学力・学習状況調査 調査結果のポイント」「授業アイディア例」「確かな学力の育成に係る実践的調査研究」「平成22年度全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究について」「学力調査活用アクションプラン 推進事業 成果報告書」ついての報告の後、山中初等中等教育局長よりあいさつがあった。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)