![]() |
別添3 すべての学校にPDCAサイクルを確立するために静岡市検証改善委員会 はじめに 静岡市教育委員会では、2005年政令市移行に伴い「新しい時代をひらく教育基本構想」を策定し、「一人ひとりの自己実現による幸福を目指す」ことと、「社会を支える人材を育成する」ことを基本目標に掲げ教育を推進してきた。その中の政策課題の一つである「確かな学力」の育成については、指導・授業のあり方の研究、教育課程の改善の推進、総合的な学習の時間の充実、読書活動の充実などを図ってきた。 1 検証改善委員会の体制について 静岡市検証改善委員会は、静岡市教育委員会事務局学校教育課主席指導主事である望月和彦を代表者として、静岡市教育委員会の指導主事を中心とした行政関係者4名、市内の公立小学校長3名(算数1名、国語1名、支援校代表1名)、公立中学校長2名(数学1名、国語1名)、静岡市小中学校PTA連絡協議会代表1名、静岡大学教授、常葉学園大学准教授の学識経験者2名の計13名から構成される委員会である。 2 学校改善支援プランの概要 検証改善委員会では、全国学力・学習状況調査の静岡市の結果について全国と比較した結果、全体的に良好であった。しかし、小学校については、国語の「書くこと」「読むこと」及び算数の「数量関係」、中学校については数学の特定の設問に特に課題が見られた。また、学習状況調査の結果からは、地域活動への参加、運動をしている時間等に課題があるという結果が見られた。
3 全国学力・学習状況調査の結果分析について 前項の概要でも言及したが、本市の全国学力・学習状況調査の結果について、検証改善委員会で分析を行ったところ、以下の点が明らかになった。 (小学校・国語)Bについては、すべての領域において全国と比較して平均正答率が上回っている。Aにおいては、「書くこと」「読むこと」の領域に課題がみられる。 (小学校・算数)A、Bともに「数と計算」「量と測定」「図形」の領域においては、全国と比較して平均正答率が高いものの、「数量関係」の領域については課題が見られる。 (中学校・国語)A、Bともにすべての領域で全国と比較して平均正答率が上回っている。特にBについては良好な結果である。また、無解答率が低かったのも特徴である。 (中学校・数学) A、Bともにすべての領域において、全国と比較して平均正答率が高いものの、自分の考えを数学的に説明することについては課題が見られる。 (国語とクロス分析)小・中ともに国語の授業で自分の考えを書いたり話したりする活動を「している」と答えた児童生徒は、全国平均に比べて多い。また、「していない」と答えた児童生徒に比べて、Bの平均正答率が大きく上回っている。 (算数とクロス分析)「学校のきまりや友達との約束を守っている」児童は、「守っていない」児童と比べてA、Bともに正答率が高い。 (数学とクロス分析)「人に理由や手順を説明するときは、筋道を立ててわかりやすく説明するように気を付けている」生徒は、知識・活用とも正答率が高い。 児童生徒質問紙調査の結果からは、以下のような特徴と課題が見られた。 4 学校改善支援プランについて各学校が自ら分析し改善を図ることを支援するために、検証改善委員会が開発した分析手法をまとめ、これらを実践した事例をモデルとして提示した。このプランを活用し浸透していくことが各学校のPDCAサイクル確立の推進に資するものである。
|
学校名 | 特徴 |
---|---|
東豊田中学校 | 中規模郊外 |
大里中学校 | 大規模郊外 |
中島中学校 | 中規模郊外 |
西豊田小学校 | 大規模郊外 |
清水三保第一小学校 | 中規模郊外 |
清水西河内小学校 | 小規模山間 |
清水有度第一小学校 | 中規模郊外 |
麻機小学校 | 中規模郊外 |
藁科中学校 | 小規模山間 |
長田南中学校 | 大規模郊外 |
水見色小学校 | 小規模山間 |
美和中学校 | 中規模郊外 |
蒲原東小学校 | 中規模郊外 |
学校名 | 中心事例 |
---|---|
東豊田中学校 | 放課後生活設計 |
大里中学校 | 少人数指導、放課後学習 |
中島中学校 | 少人数指導、放課後学習 |
西豊田小学校 | 少人数指導、放課後学習 |
清水三保第一小学校 | 放課後学習システム |
清水西河内小学校 | 放課後学習、家庭学習 |
清水有度第一小学校 | 音読指導、少人数指導 |
麻機小学校 | 放課後学習 |
藁科中学校 | 少人数指導 |
長田南中学校 | 放課後学習、在宅学習等 |
水見色小学校 | 読書力向上、体力向上、放課後学習 |
美和中学校 | 放課後学習、学力向上合宿 |
蒲原東小学校 | 通学合宿 |
検証改善支援校における事例については、検証改善委員会の成果とともに2月に静岡市改善事例報告会において発表し普及を図った。専任指導員の支援ばかりでなく、各校の組織・分析手法に注目が集まった。なお、その内容は、学校改善支援プラン・事例集として全教職員に配付した。
今回の学校改善支援促進事業において得られた成果については、学校改善支援プランと同様に、学校のPDCAサイクルを確立し、児童生徒の学力向上のための施策に活かしていくとともに、文部科学省が平成20年度から実施する「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」及び「学力向上実践研究推進事業」においてもその取組を進めていく予定である。
静岡市検証改善委員会では、本年度の事業終了にあたり、「学校改善支援プラン・事例集」の最後に次のようなメッセージを掲載した。私たちの実感である。
全国学力・学習状況調査を活用した検証サイクルの確立・学校改善の推進。なにを進め目指すのでしょう。わたしたち検証改善委員会も暗中模索で出発し、たくさんの話し合いをしました。しかし、答えは出逢った子どもたちが、教えてくれました。
学力向上合宿に参加した中学生は、真顔で語ってくれました。「先生、これまでにこんなに勉強したことはない…。頭がうんだ。でもね、気持ちのいい疲れかな。」体力遊びを続けていた児童の合い言葉が生まれました。「どんまい!」指導員の口癖でした。在宅学習を受けていた生徒が変わりました。「わかるとおもしろいね、ちょっと、学校に行ってみようかな。」
わたしたちは、確信しました。学力向上、学校改善は、子どもが変わっていく事実をつくり出すためにあるのです。できるようになりたい。わかるようになりたい。ひとりの子の悩みにこたえるために、子どもたちの笑顔をつくりだしていくために、あるのです。
静岡市には、子どもを、学校を支えるすばらしい土壌があります。大学は、専門的な知見や技能を惜しまず提供してくださいました。児童生徒自身も考えています。多くの市民も関心を寄せてくださいました。まさに総がかりで応援しています。
ある校長は、こんな言葉を残してくれました。「全国学力・学習状況調査は、初め、正直、点数が問題で、それを上げるためかなとも思った。だけど、いろいろな方に根拠をもって説明すると、改善するために本当に応援してくださる。これをきっかけに裾野が広がっていく。これはすばらしいことです。」
一人ひとりの子どもたちの笑顔のために、これからも静岡市の学校改善の裾野を広げていきたいと思います。
Copyright (C) Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology