2.開催場所
文部科学省 K4会議室(丸の内仲通りビル 地下1階)
4.出席者
(委員)
服部座長、安藤委員、小笠原委員、黒田委員、小枝委員、佐藤委員、高木委員、竹氏委員、真金委員、森委員
(臨時委員)
岡上練馬区立光が丘さくら幼稚園長、福西京都市教育委員会教職員人事担当課長、本間京都市教育委員会地域教育専門主事室副室長
(事務局)
前川大臣官房審議官、常盤初等中等教育企画課長、大川専門官、田河幼児教育課長、大谷幼児教育企画官、今井幼保連携推進専門官
5.議事
配付資料について事務局及び練馬区立光が丘さくら幼稚園長から説明が行われ、その後、委員の間で以下のとおり意見交換が行われた。
- 幼稚園教諭になられた方というのは、例えばお子さんが好きで、いろいろやりたいとか、いろいろな温かい思いとか、そういうものと、あと、教諭に必要な要件をあらかじめ知った上でなっているわけですよね。ところが、それが結果として、指導が適切にできないというような事態になぜなったのかというあたりの推測、幾つかの要因があろうかと思うんですが、その辺がもし仮説としてもあるようでしたらお聞かせいただければと思います。
- いろいろな審査を受けて教員になっているわけですけれども、そういった意味で、細かい具体的な指導力という点では、知識としては、ある程度のレベルを達してきてはいるはずなんです。
しかし、それを具体的に子どもに伝えるとき、あるいは子どもに指導する、保育するときに、うまく子どもの心をとらえて、実際に指導する力というのは、現場の中で磨かれていきます。ですから、そういった意味での磨かれ具合というんでしょうか、それは確かにあります。同時に、子どもが多様になってきているのも1つの要因ではあろうかと思います。そういった中で、子どもの気持ちを理解できないということが相乗効果になっているのではないかと思います。
今おっしゃられたように、教員は子どものために、子どもが喜んでくれることなら何でもしたいと思って教員になったと思うんです。その気持ちをいつまでも持ち続けていて、自分がそれに応じられているかという努力をしていけば、そういうことにはならないのかなという気はいたします。
- 指導される前にある理想を描いていたが、実際にやってみたら、あまりにも子どもの多様性が大きいとか、知識面では補えない現実とぶつかることによって、いろいろな事象が発生するということでしょうか。
- 今の新採を見ていると、能力は非常に高いです。うちにも2年目の教員がおりますけれども、非常に技能レベルも高く、子どもの理解も一生懸命しようとして、指導の記録を読んでみますと、とても一人一人を大切に見つめているように記録しています。ですが、本当に子どもは多様で、そういった中で、私は今、非常に熱心で、子どもに優しいその教員がやめないようにするため、「もうこんなのじゃ私できない」って、いつ言い出すかと、どきどきしながらフォローしているところですけれども、そのくらい今子どもは多様になっています。ですから、ご質問くださった意図とは少し違うかもしれませんが、ここ数年に教員になった人は、そういった意味で、自分の指導力と知識とのギャップといったことは原因としてあるかと思います。ただ、もっとずっと経験の長い人の場合には、自分の経験ではこれまではうまく出来ていたことが出来なくなってきているということのギャップというんでしょうか、そこもあるような気がいたします。
- 現場の先生方が、いつでももっといい先生を目指そうとする、そういった仕組が非常に重要と思うのですが、例えば幼稚園の場合、現職に対する研修の仕組はできているのでしょうか。また、もし十分にできあがっていないのであれば、もうちょっとこういうのがあったらいいなとか、何かおありでしょうか。
- 私どもの区では、小・中と一緒の研修会を実施しています。そのほかに、自分で選択できる研修もありますので、研修のシステムはできています。逆に忙し過ぎるくらいあると思います。私は必ず研修してきたときには、次の日の朝、報告させて、価値づけを行っています。それは今、中教審で言っていることです。大事な課題であることを伝えたり、学んできたことをおもしろがって聞いてやったりすることで、ほかの教員へも波及させたりするなど、工夫しております。
- 指導が不適切な教員というのは、小・中・高についての議論の中で、そういう教員の大きな特質として、職場における人間関係ということがよく言われているわけですが、幼稚園では、複数の教員が協力し合って園児に当たっています。もしそういう先生がいたとしても、周りにいる力量の高い先生が支援するといったような、そういうサポート体制があるというお話、大変心強く聞かせていただいたわけですが、こういった考え方は、指導が不適切な教員に対するフォローの仕方といいますか、研修のあり方についても参考になるのではないかと思っております。
今まで数回にわたって、各教育委員会での具体的な実施状況について、ここでヒアリングを行ったわけですが、本日は、人事管理という側面よりは研修という内容に焦点を当ててヒアリングを行いたいと思います。
本日は京都市教育委員会に来ていただいておりますので、ご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
−京都市の取組について、資料3、資料4に沿って説明−
- 今説明いただいた中で、合同訪問というのは大変いい取組であると思いました。特定の人間だけが、「あなたはこうですよ」ということを言っても、なかなか本人が自覚をしないことが多いのではないかと思います。そういう意味では、いろいろな人たちの見る目で本人に気づかせていくというのがいいと感じました。
それから、指導力判定委員会で「課題あり」ということで個別研修を行いますよね。そのときに、ある程度改善したということで、またフィードバックして、同じようなことをやるわけですけれども、再度判定にかかった場合に、再個別研修になるというのは何回まで許されるのか。あるいは、その判断基準ですね。人間関係が非常に下手な人が少しはよくなったというんですけれども、その辺は判断が主観的になってしまうと思います。その辺をどう客観的に評価してやっていくのか、もう少し説明いただきたい。
- 再個別研修を今まで実施しましたのは、27名の中で3名おります。基本的な3カ月を終えまして、まだ改善できていない点が個別にありますので、授業研修を中心に、約3カ月、もう1サイクルをしていくというような取組をしております。
何回までというお話でしたけれども、この3名の方につきましては、再研修を含めまして2回ですので、6カ月通してやりましたが、その後、自ら、退職をするという申し出がありましたので、その時点で研修が終わったということになります。2回で打ち切るとか3回で打ち切るということではなしに、個々人の状況を踏まえて、必要であれば継続していくということも考えますし、その辺は柔軟に対応していきたいと考えております。
- ということは、一向に変化が見られないけれども、ご本人が自覚もあまりなくて、それを繰り返すような場合には、最終的には退職を促していくような形になるのでしょうか。
- 退職勧奨も含めてやってまいりますし、もしそれで、どうしても応じられないということになりましたら、今度は分限免職の検討に入るということになろうかと思いますが、いまだそのケースには至っていないという状況であります。
- 予防的な研修ということで、ある程度の人数の方が判定委員会にかからない状態で、指導を続けられているということだろうと思いますが、私は、予防的な研修の必要性というのを非常に強く感じているところでして、先日も、少し課題のあると思われる先生のところへ訪問してきたのですが、昨年度別な者が訪問したときに比べて、1年少したった状況は非常に改善されていました。校長に詳しく話を伺ってみたところ、校長先生自らが、昨年度の後半あたりから授業の中に入られて、具体的・個別的に指導を行ったということで、随分と昨年度から改善をされていたということを目の当たりにして帰ってまいりました。
そういう他県の状況等もお伺いしていた中で、認定に至るまでに、いかに研修を組織立てていくかということの重要性を痛感しているわけですが、参考までに、先ほどの合同訪問とか予防的な研修の対象になった方がこれまでに何人いたか、あるいは、今年度何人いたか教えていただきたい。
- 予防研修ということで、今年から教科等指導研修をやっておりますが、その研修の対象になった方は55名です。それ以外にいろいろな課題を持っている先生方がおられますので、その都度、適宜、学校訪問するということですので、年間かなりの数になろうかと。それは、指導力が低いというような状況だけでなしに、いろいろな要因があります。
- 最初のほうに申しました、若年退職者数が挙がっておりますけれども、その方たちは何らかの形で認定されない状況で学校へ行き指導したという足跡のある方ですし、何か気になる情報が入ってきた場合、校長先生からであったり、地域からであったり、いろいろありますけれども、すぐに、先ほど申しました本室の担当主事がすぐに学校に行って、授業を見たり、子どもの様子を見たりしますので、数としては、本当に挙げられないぐらい、常時入っているという状況があります。
- 予防的な研修の成果は非常に大きいということでしょうか。
- 小学校で言いますと、学級崩壊というのは、何年も以前から本市ではないと思っております。学級崩壊傾向の兆しが見えた時点で、何らかの形で教育委員会も一緒になって、複数指導体制であるとか、少人数体制であるとかというような形をとって支えていきますので、それでもなお厳しい状況であれば、先ほど申しましたように、合同訪問というようなことになりますけれども、早期に支える状況、組織として支える状況をつくっていけば、十分回復できる状況であると思っております。
- 指導方法の早期発見・早期対応に関して、その情報の源、例えば親からの情報なのか、学校内、校長先生や教頭先生等の情報なのか、それとも先ほど担当を持っていらっしゃるということをお伺いしましたが、その教育委員会側が自発的に回りながら情報を得ているのか。その辺をまずお伺いしたい。
また、個別研修の中で、何か問題はないのか。学校に置いておいて問題がないのかという、その2点をお伺いしたい。
- 本室は、年間4回、定期学校訪問という形で学校を回っております。そのときに、学校長を通じて、その学校の教育活動、指導力不足の状況にあるような教員、非常に頑張って教育実践を進めている教員、それら学校の情報については、すべてその支部担当主事が一番よく知っているという状況です。また、そのほかの人事主事や、総合教育センターの主事も、必要に応じて学校を訪問しております。それが1つ。
もう1つは、学校の行事です。研究発表であるとか、休日参観、運動会、学芸会、それから普段の参観、そういったときにもほぼ出かけていきます。そのときに校長が少し気にしているところにつきましては、必ず授業を現認して帰ってまいりますので、その情報が全部蓄積されているわけです。まれに保護者から、または地域から、匿名という形も含めて、実はこうこうで困っている、またはこんな出来事があったというような苦情という形でいただくことがありますが、そのときもすぐに学校と連絡をとり、事実確認と、それが事実であれば、どのように対応していくかということについても話をしていきますので、学校に非常に近い場所におりますし、管理職にとっては相談相手というような状況で情報を共有しております。
- 例えば、日曜参観とか休日参観になりますと、日にちが重なって、どうしても全ての学校を回り切れないという場合は、学校指導課があり、そちらのほうが担当して、この学校へだれが行くということを割り振る場合があります。必ずだれかが学校へ行くということをやっておりますし、また複数の者が同じ学校に行ったときには、例えば低学年と中学年、高学年に分かれて見るというようなことで、全体の学校の状況がわかるような割り振りも、可能であれば行っているというのが今の状況です。
最低4回と言いましたが、人事主事も最低2回は各学校を訪問しているという状況で、それぞれ情報交換をしております。
また、聞き取りの観点も、若干違う部分もありますので、その辺の突き合わせも含めてというような角度からできるのであろうと思っております。
それから、個別研修のほうで、学校にいる場合を中心に置いておりますが、担任をしている方と担任をしていない方がおり、極端な場合、指導力不足で担任を持たせられません。この研修を機に担任を外すというケースも中にはあります。それによって、また研修の中身を変えており、例えば担任をしている方については、1週間に1度こちらに来ていただくのを中心にして、あとは、これにプラスして、いろいろな担当が学校を見せていただく。それと、学校には、基本的には、必ず1日1時間は、校長、教頭、教務主任あたりが必ず授業を見ていただく。それで授業の記録をとっていただくということで、日々の観察をしていただくようにお願いをしております。それでもし不備がありましたら、また連絡をいただくということで、必ず管理職が1日1時間は見る。短時間でなくて1時間通して基本的には見てくださいということでフォローしております。
それから、担任外につきましても、担任を外して、例えば個別指導でありますとか、TTのほうで入るケースもありますし、そのときにも入れるときには、できるだけ授業の様子を見ていただくということでお願いをしています。
それと、担任外ですと、時間がありますので、これも個別の課題になりますが、カリキュラム開発支援センターというのが教育センターの中にあるのですが、そちらに指導案ですとか、教育の関係の資料、それからビデオ等もありますので、そちらに来ていただいて、自主研修をしていただく。その方については、個別にまたレポートを課すということで、例えば本を与えて、それをまとめてレポートを書いていただくとか、このビデオを見ていただいて、それについての自分の学んだ点を書いていただくというようなことで、遊びのないような形。それと学校を外してしまいますと、復帰されるときに、また学校の雰囲気がわからないということがありますので、校内でも、子どもの指導に当たらない場合は、校務分掌で何かしていただく。校内行事のことですとか、例えば運動会でも役割を与えてということで、学校の仕事に支障が出ないということのバランスをとりながら、個々に課題を与えるという取り組みをしております。
- 予防的なところがすごい成果を上げていると思います。通常だと、都道府県と市町村教委があっていくと、実態把握までに時間がかかったり、それから肌で感じるような情報というのはなかなか得にくいというところがありますので、そのあたりは非常に参考になると思いました。
2点ほど質問なんですが、まず指導力判定委員会の構成なんですが、第三者機関というようなお話がありましたけれども、どのような方で構成されているのか。それから、予防的な研修の時期から、判定を受けて、個別研修を受けて、復帰すると、そういうような場合、一概には言えないと思いますが、どのぐらいの期間を要して完全に復帰するのでしょうか。要するに、予防的な研修も受けずに済んで、完全に復帰して、信頼ある教員としてスタートできるというのは、どのぐらいの期間を要しているのか、そのあたり、平均的なもので結構ですので、教えていただければと思います。
- 判定委員会は8名で構成をしております。委員長については、所管が教職員人事課が担当しておりますので、その所管部長ということで総務部長が委員長をしております。あとの7名の方ですが、学識経験者ということで、大学教授の方、法律専門家ということで弁護士、PTAの代表ということで、京都市のPTAの連合会の会長、人権擁護委員、臨床心理士、それと小・中が今中心になっておりますので、小・中の校長会の代表ということです。
- 期間も、人によってまちまちでして、早く把握できる場合、そうでない場合ということがありますので、合同訪問について、3〜4回はした上でないと判定委員会にはかけておりません。そのときには、必ず教職員人事課の人事主事は複数回は授業を見ております。その前に、当然、指導部の関係でも学校訪問をしておりますので、その回数を入れますと、3カ月ぐらいは見ることになると思います。
- 一番わかりやすいのは、復帰時の場合かと思います。とてもつらい状況になって、クラスもですけれども、担任がもう長期休養に入ってしまうと。それで年度末まで休んで4月に出てくるという状況のときに、先ほど申しましたように、年度の最初に講義形式をして、あと1年間、年間3回、授業をしていきますが、その中で校内の支援もあって、回復をしていきます。順調に行きましたら、やはり1年間で、あとはもう、担当主事が訪問のときに見せていただくというような形で一応手を離せるという状況になる方があります。それでしたら1年間ですね。
私が見ていまして、半分半分かなという状況です。回復状況で、もう手を離していける方と、つらいという状況で、自らやめていかれる方。または、さらに訪問指導なり、合同訪問に入って、今のような状況で、もっと長引く。なかなかつらい状況になるという場合と両方あって、やはりそのケース、ケースによって、かかる時間というのは違ってきますが、決して焦って、どうにかはっきりさせてしまおうという状況ではなくて、丁寧に本人が納得できる状況で進めていくという方法をとっておりますので、一概に何回とか、ここまでということはありません。
- 仮に判定委員会の個別研修が終わって、一定改善がされたという方についても、年間3回ぐらい、今、京都市は2学期制ですが、旧3学期制の3回ぐらいは必ず1年間通して授業を見せていただき、それで大丈夫であれば通常の指導ということになりますので、合同訪問はしばらく続きます。
- まず1つは、指導が不適切だという、この判断の仕方が、ある意味ではユニークだと思います。普通は、そのような教員の状態を見て、例えば、教科等の専門性に欠けているとか、指導方法がよくないとか、あるいは児童・生徒の心情を理解することがうまくいかないとか、そういった教員自身の状況を見て、指導が不適切だというように判断することが多いように思います。先ほどの説明の中にありましたが、その裏返しとして、子どもの状態から判断する。このチェックリストもそのようになっていますが、そういう教員が指導した結果、子どもがどういう状況になっているかということから判定をするということです。このような基準を設けたことの経緯とか、あるいは、それによるメリットみたいなことがあれば、お聞かせいただきたい。2つ目は、この指導力改善研修が、教科等の指導力をどう改善するかというところに重点があるように伺えるのですが、指導が不適切な教員の要因として挙げられるのは、いわゆるソーシャル・スキル、人間関係の構築能力が非常に欠けているとか、あるいはコミュニケーション能力不足といったものがあります。改善研修の中にそういう部分が、先ほどからの説明の中で、あまりないように伺えるんですが、そういうものがあるのかどうか教えてください。
- いわゆるチェック基準というような形でリストとして挙がっていますけれども、児童等の行動面から、これはいつも合同訪問で行く視点と一緒なんですけれども、地域教育専門主事室は、いわゆる学級経営でありますとか、その学校の子どもたちの様子ですね。それから、掲示物すべて含めてですけれども、同じ授業を見ていましても、地域教育専門主事室のほうは、児童等の行動面、または、担任と児童とのかかわり方というようなところから見ていきますし、あとの個別指導のときには、その方向から助言をいたします。総合教育センターの主事は、今言いましたように教科指導ですね。授業そのもの、ねらいと最後のまとめが完全にぶれてしまうような状況がありますので、その辺のところをしっかりと分析して、具体的に指摘をして、この発問がどうだったから子どもたちがこうでというような、そういう状況で見ていきますし、合同訪問のときの見ていく姿勢、視点も含めて、いろいろな方向から、その学級そのもの、それから担任そのものを分析していくというような状況をとっております。
担任自身は気がついていないのですが、目の前で、今さっきやった授業の中での子どもの発言または自分の発言なりを、そのまま、すぐ終わった後の指導の中で具体的にしていきますので、最初は、例えば、授業が終わった後に、自分としてはうまくいったと。例えば70点なり80点なりという点数をつけている人も、我々が、あのときはこうであって、こうだから子どもたちが、例えば、発問を1回言った後、それについて子どもたちが考える時間なしに次の発問、また次々と、待つ時間なしに言っていかれたと。そのことについて、子どもたちは答えようがなかったし、また、それが一貫していたらいいのですが、発問をするたびに微妙にずれていっているんですね。本人は同じことを言っているつもりなんですけれども、そのことを具体的に指摘していくことによって、ぐっと黙ってしまわれて、思い当たるというか、そのことがわかるというような状況になっていきますので、そういう形での指導の観点も含めてです。
- 要するに、合同訪問されたときに、教室の全体の状況を見て、先生が教えておられることについて、子どもがどう反応するか。どういう状況かということを要素として判断するということですね。
- 今言ったように、子どもたち、大抵は発表力がいつまでたってもつきませんからとか、男の子は活発に言うんですけれども女の子はとか、いろいろな言い訳をするのですが、「でも、先生のこの発問で、どう答えるんですか」ということが現実にあるわけなんです。「答えようとして手を挙げているときに、先生はもう次の発問をされてしまいましたね」というような、それから机間巡視もそうなんですけれども、気になる子のところにずっととまっている、後ろの子が全然できないでいるのに、全く気がつかないで通り過ぎていかれるというようなことも具体的にありますので、そういったことを指導していきます。
それと、もう1つの教科等の指導力ですけれども、授業の中で、子どもたちを生かしているという、そういう授業ができているかどうか。個別指導のプログラムの中身でも、最初に学級経営ですとか、学習指導、生徒指導について、それぞれの主事がお話をさせていただくのですが、そのときに、生徒とのコミュニケーション、児童とのコミュニケーションですね。その部分についても、学級経営案なり学級通信なり、そういうものを持ってきてもらって、具体的に話をするのですが、やはり対応といいますか、児童への対応、保護者への対応、それから教職員仲間ですね。支援の手を差し伸べているのに、そのことについて気がつかない状況があったりというものが、具体的にずっと経緯を追って話をしていく中で見えてきますので、そういうことも含めて、その中で指導している。それ抜きには、例えば教科だけという状況では、なかなかうまくいかないと思います。
- 教科等の指導力をなくす要因の中にもそういうものが含まれるということですが、先ほどの話にありましたが、例えば、そういう先生がいても、仲間の中で、その先生を何とかしようというような雰囲気の中で幼稚園ではやっておられます。小・中・高でも同じようなことが言えるのではないか。ともすると、指導が不適切な先生というのは、そういう職場の中で孤立するとか、先生同士の人間関係がうまく構築できない、あるいはコミュニケーションがうまくとれないという、そういう事例が結構多いような気がします。そうすると、指導改善研修の中にも、例えば、教科等の改善はもちろん必要ですけれども、コミュニケーションスキルとか、そういったことをどうスキルアップするかというような、そういう研修内容というものは考えておられるかどうかをちょっと聞きたかったのですが、いかがでしょうか。
- 例えば、臨床心理士の方に判定委員会にも入っていただいておりますし、その様子を報告させていただいて、その方でコマを担当していただく。カウンセリングマインド的な指導をしていただいて、自己の課題の振り返りというようなことをさせていただくケース。それから、総合教育センターの研修を適宜受けるようにということを申しておりますので、その中で、例えばコーチングの研修でありますとか、そういう個別の課題別研修を受ける。それと、個別研修を終了されて、経過観察期間の方に、今年度初めてなんですが、企業派遣研修ということでホテルのフロント業務にかかわっていただいて、対人関係ですとか、そういう経験を積んでもらおう。その方に意識改革をしていただこうということで、10月から2カ月行っていただくという取組もさせていただいています。そういう職場経験をまた子どもにも返していけるであろうということで、校長とも相談して取組を始めております。
- 指導力不足であるかどうかについて、校長が躊躇する一方、訪問された方々がこの方は指導力に課題があるんじゃないかとかというように、食い違いがあるようなケースというのはあるんでしょうか。
- こちらが日常的に見ていて、気になることは気になるが、こちらが合同訪問するという程度までは行っていない。校内の指導で十分いけるだろうという判断をしている場合でも、校長のほうが、ぜひ見に来てほしい、指導してほしいと言われるケースもあります。そういうケースは、とりあえずは合同で行って、複数の目で見させていただく。結果としては、今言いましたように、校内の指導で十分改善できると思うので、こういうところを具体的に指導してくださいと、校長にアドバイスをして、あとは行かないというようなケースもあります。
また、いろいろ苦情が入ってきたり、子どもの状況が悪いというような情報が担当主事から入ってきているのに、校長先生が「大丈夫」という状況もありますけれども、でもやはり、複数で見ておりますので、早く手を打っていかないと、どちらのためにも手おくれになります、つらい状況になりますので、そのときには、校長に話をして、あまり嫌がられるという状況はないです。こちらが合同で行くことについて、無理にこちらが行くとか、来られるとかというような意識はなくて、校長の相談相手という状況で担当主事がおりますので、大抵の場合、学校訪問であるとか、また何か気になることがあったときに、「学校に来てほしい」と言われてお話をした中で、じゃあ、校内でこれだけ指導されているのに、まだつらい部分があるんだったら、合同訪問で本人の自覚を促すということも含めてやりましょうかというような、大抵の場合は、どちらもが必要であると思ってというような状況がほとんどです。完全に一致はしていない場合もあります。
- 判定委員会にかけることについて、合同訪問を受けても、校長はその段階では、申請を出さないパターンもあるということですか。
- 合同訪問で改善されていく場合には判定委員会にかけるということはしないです。合同訪問とか何もしていないときに、校長先生から突然、判定委員会にというケースもないことはないんです。
- 都道府県の場合は、市町村の間で二重行政になっていて、基本的には教員の指導・育成というのは校長第一、教委の責任で行われていて、そこで支え切れないから任命権者へ来るところがあるんですが、それがイコールなために、現場の情報が非常に身近である。私ども、逆に言うと、そこまで把握しきれないところがあります。そういう点でいくと、非常にその制度というのはうらやましい。
- 視察に来られる方にお話をしたときに、やはり一番その部分がネックという状況がありまして、大抵の場合は、認定された方が研修センターに来られて、全くその状況がわからないで、初対面で「初めまして」から始まるという状況なんですが、本市の場合は、今言いましたように、もうずっと経過がわかってきている人しか上がってきませんので、突然上がってきた人についても、今までの聞き取りから、すべて大概の情報はわかっていますので、その人に応じたプログラムを立てるということが大変しやすいというふうに思っています。
- 指導困難な状態が行き詰まってくると長期休養をとるケースがあるという話ですけれども、それは、本人の意思で休養期間をつくるということですか。それとも、いったんちょっと現場から引いたほうがいいという、どなたかの判断があって、半ば休養を命ぜられるような形でとるということでしょうか。
- 基本的には本人がつらいということで、診断書を出されるというケースです。
- 校長が教育委員会に申請してくるということで、うらやましい環境だと思います。
先ほど、校長は相談役というようなお話がありましたが、本県の場合ですと、相談役と同時に、かなり厳しいことを指摘する中で自覚を促すということもやっているのですが、それはやはり同じような状況なんでしょうか。
- 現場での指導。それなしにこちらに振ってこられても困りますので、まずは校内での指導が一番ですし、校長によって厳しい指導をしなければならないということもあります。
- 本県の校長の役割ですけれども、現場で、厳しいことも言って、あるいは相談も受ける中で、かなりの負担がかかっている。場合によっては、ほかの教育活動に支障が出るのではないかと思うのですけれども、それで実際には上がってこない例もあるんじゃないかと思うんですが、その辺は、実際にはそういうことはないんでしょうか。
- ないとは言えないとは思うのですが、今言いましたように、校長先生と管理職とともに指導していくというスタンスをとっていますので、1人で指導するよりは、委員会と相談して、同一歩調でやっていくほうが校長も楽ではないかと思っております。
- 例えば、京都教師塾とか、その前に教員養成支援室という大きなプロジェクトとして、全体を統括する機関ができているというのが、すばらしいですが、形だけではなく、実際にそれが機能しているということが、見事であると思います。
ただ、これだけやるということは、財源的な裏付けとかは、どうしているんだろうと。そういうようなことも考えますと、いろいろ工面されているのではないでしょうか。これだけやるのは見えないところでの工夫もされているんだろうなと思いました。
中身で言いますと、生徒が答えたときに、客観的に本人に自覚を促すということは、企業の研修で最も欠けていて、非常に優れた企業研修などでも、それができているところはごくわずかです。こういう形で行っていれば、結果はおのずから出るんだろうなという気がいたしました。財政的なことは置いておきまして、こういう動きがあるということに、とても感動いたしました。
- 教員研修の内容とか方法、あるいは、それができる機能ですね。教育委員会全体の機能というものが確立しているということが大きな事ではないでしょうか。
本日は、公立幼稚園における指導改善研修、あるいはそれに準ずる研修その他の必要な措置を今後検討するに当たってのポイントということで、事務局あるいは実際に幼稚園の園長に来ていただいて、お話ししていただきました。
後半は京都市教育委員会の取組ですね。1つは、これは3つほど要点があると思いますが、指導改善研修、認定前の研修のあり方、学校を中心とした指導体制、教育委員会がそれにどう関与するかといったようなことも含めて、認定前の研修のあり方、それから認定後の研修の内容・方法等。さらには、3つ目としては、復職に向けての研修の内容・方法といったようなことについてお話を伺いました。
それでは、これで時間となりましたので、本日の審議はこれまでにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
─了─