初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第8回) 議事要旨

1.日時

平成20年5月22日(木曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省ビル11階 省議室

3.議題

  1. 検討会報告素案について
  2. その他

4.配付資料

  • 資料1 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第6回)議事要旨(案)
  • 資料2 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第7回)議事要旨(案)
  • 資料3 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会報告素案
  • 資料4 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会報告素案(ポイント)
  • 資料5 「教育振興基本計画について(答申)」(平成20年4月中央教育審議会)

5.出席者

委員

(協力者)
 逢坂委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、佐藤委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

文部科学省

 前川初等中等教育審議官、大森国際教育課長、吉尾国際課長、小串初等中等教育局視学官、山下国際教育課長補佐、その他関係官

6.議事要旨

(1)検討会報告素案について 議事

 事務局より、資料3及び資料4について説明があった後、以下の質疑が行われた。

【委員】
 企業の責任をもっと感じてもらわければいけない。直接的にいろいろな援助をしたり関心を持っている企業も確かに出ているけれども、全体から見ると、ごくごく限られた企業でしかない。問題意識のある企業、協力をしてきている企業が時代の流れとともに出ているけれども、まだ十分ではないという意識を、社会に対してアピールすべきだ。「外国人児童生徒の就職等の進路相談への協力など、様々な形での教育支援に取り組むべきであると考える」というよりも、「一層取り組んでほしい」とアクセントをつけたほうが、ここのメッセージは引き締まるのではないか。

【委員】
 外国人労働者を活用する企業や地域の企業をまとめる経済団体が、より主体的にこういった取り組みをすべきだという書き方で違和感はない。都道府県や市町村ベースの商工会議所、経営者協会であればそれなりのことができると、私も活動して感じている。地域に根ざした経済団体がより主体的にという言葉は、入ったほうがよい。

【委員】
 一部の企業において取り組みは行われているが「必ずしも十分でない」として、次の文で、「外国人労働力を活用する企業や経済団体においては」とあるところを「外国人労働力を活用する地域の企業や経済団体においては」とすると趣旨が明確になると思う。あと、企業が外国人の雇用の安定化に努めることが期待されるとか、外国人雇用の問題にも言及していただければと思う。「すべきである」とまでは言えないと思うが、そういったことが期待されるぐらいだったらどうか。

【委員】
 外国人児童生徒の受入の意義のところで、「外国人児童生徒に我が国の社会の一員として生活していくために」とあるが、「我が国の生活者の一員で」とか表現を変えてみるのはどうか。また、外国人の子どもに対する就学支援について、「その背景として、就学に関する情報の不足、保護者や本人の意識の問題」とあるが、「本人」に小学生、中学生が含まれており、小学生の低学年の子どもの意識の問題と書き込むのは難しいので、表現を改めたほうがよいと思う。それから、不就学児童生徒の調査の結果で、「上記の不就学が確認された者112人の保護者に不就学の理由を聞いてみたところ」何パーセントと出ており、このまま読むと112名の保護者全員が回答したと受け取ってしまう。複数回答と書いてあるが実際の回答者は少ないと思うので、全員から回答はもらえなかったけれどもこれぐらいの意識があるなど、より実態に近い表現にされてはいかがかと思う。

【委員】
 生活者というと、社会の構成員とまでならずに、受益者、消費側に立った感じだが、生活者と限定しないで、社会を構成する構成員という立場のほうが、より説得力が高いと思う。

【事務局】
 構成員は、これから社会をつくり上げていく担い手の側に入るというニュアンスがある。

【委員】
 企業の最近の動きというか、期待を申し上げると、定住化していくのであれば、若い、第2世代と言われる人たちをうまく企業の側に使っていきたい。そのためには高校卒業、あるいは工業高校、高専、できれば大学まで何とか頑張って出してあげてほしいと、我々も協力したいという感じのトーンは、地域の企業、特に比較的知名度は低いけど、技術を持っているような企業は非常に強い。そうなると、社会で受け入れる発想がないと、そこまでいくのはやはり難しい。

【委員】
 外国人の子どもの学校での受入状況について、学校基本調査の結果だけで「前年度より若干増加しているが、近年はむしろ減少傾向にある」としているが、外国人学校の生徒数が漏れているので、それを入れる必要があると思う。就学していない外国人の子どもの問題については、背景として就学に関する情報の不足、保護者や本人の意識の問題と書いてあるが、学校側の受け入れの問題の不十分さについて触れられていないので、その辺のことも書く必要を感じた。

【委員】
 外国人入管の問題、その後の登録の問題について十分な情報がないので、やはり外国人を把握しておく必要があるという主張をこのところにもってきたらどうか。

【事務局】
 不就学の調査は、現状を把握する意味では手がかりになると思うので、極力そこは少し触れつつ、この調査をやった中で、居所不明で就学状況が把握できなかった人たちもいたことを指摘しながら、おっしゃられたようなことにつなげていくような文案を考えてみたい。

【委員】
 学校における外国人児童生徒の教育を行うことの意義について、多文化共生という文言を挿入いただきたい。それから、都道府県の役割だが、既に作成している県もあるが地域の実態に応じた県の方針、指針などを作成する必要があるということも文言としてあったほうがよい。

【委員】
 多文化共生といった場合、ほかの国の文化が日本の国の中にモザイク模様で共生しているとお考えか。多文化共生という意味は定義された言葉か。

【委員】
 ともにいろいろな文化、違った人同士がともに尊重し合いながら生きていくということだと思う。

【委員】
 総務省の多文化共生研究会では、文化と文化が並列で、それぞれがばらばらにあるという趣旨ではなく、国籍や民族などの異なる人たちがともに社会をつくっていくという定義になっている。外国人の定住化が進んでいく中で、外国人を受け入れてともに生きる社会をつくっていくとか、共生社会を目指していくとか、そういった目的を意義のところに入れていただきたい。「我が国の社会の安定や発展」とか、「我が国において幸福な生活を実現する」と書いてあるが漠然としているので、多文化共生社会か共生社会、あるいはともに生きる社会とか、そういった目標、社会のあり方に言及していただきたい。

【委員】
 ほかの人が持っているものに対して寛容な社会というのはいいと思う。ただ、定義が共通になっていない言葉を一般的に使っていいのかどうかについて多少疑問がある。

【委員】
 多文化共生は曲解されて、外国人であるかないかで語られすぎているが、一人一人の違いをどう受け入れるかというところが重要だ。今回の報告の中では、外国人と日本人という位置づけであるようなので、あえて使わずに国際理解ということでとどめておいて、その範囲で最大限何ができるかを考えるほうが誤解を与えなくていいと思う。

【委員】
 「広い視野をもって異なる文化を持つ人々と共に生きていこうとする態度をはじめとした国際社会を生きる人間として望ましい態度や能力が育まれる」と報告書素案に書いてある。

【委員】
 学校における多文化共生というのは、かみ砕いて言うとイの表現だし、アが社会における多文化共生ととらえることもできる。もっとほかのもあると思う。平等な文化を支えていく、平等に支えるというとらえ方もあると思う。我々はアのものをもって表現していると考えては如何か。

【委員】
 外国人の子どもの教育を受ける権利ということで、本文の中に国際人権規約とか子どもの権利条約への言及があるが、冒頭の意義のところに国際的な観点からも外国人の子どもの教育を受ける権利を保障していくことが大事であるということを入れてはどうか。それから、就学していない子どもの背景について、学校の受け入れ体制の課題、受け入れ体制の不備の問題と、外国人保護者の労働環境の不安定さということも書き足していただければと思う。

【事務局】
 前もそういうご意見をいただいたので、例えば「はじめに」において、「我が国では、従来より、国際人権約における既定等を踏まえ」と触れているのが1カ所あるし、なおかつ、「現状」の冒頭にもほぼ同じような下りで、二重に触れている。

【委員】
 「就学に関する情報の不足」とあるが、手続の方法は84.4パーセントが「知っている」という。就学に関する情報とは一体何を指すのか。8割が方法を知っているなら、情報不足ということはないはずだ。日本語指導が必要な外国人児童生徒の受け入れ状況等に関する調査について、18年度は、日常会話だけでなくて学習言語において日本語指導が必要なという定義が示された年だが、本来ならもっと人数が増えるはずなのにこれだけしか増えていない。その定義を真摯に受けとめている学校もあれば、去年この数字だから今年もこの数字でという学校もあると思う。ここに大きな問題があるので、学校に揺さぶりをかけるところがどこかでほしい。

【委員】
 外国人雇用状況報告は少し誤解があるのではないかと思うが、悉皆調査ではない。18年は22万2,000人プラス16万7,000で、11年、9年前と比べると増えているが、調査の制度全体が違っているのではないか。要するに、対象となる企業が相当増えて、聞き取りを一生懸命した結果、このように把握ができているだけであって、ベースが違う調査を比べているのではないかという懸念がある。もともとこの調査は、ほんとうの実態がわからない状態だと言われていたのが、ここのところ、少なくとも18年にはかなり把握できるようになった。制度上もこういう対策法のもとでしっかりとした調査をやることになったので、単純にこの9年間でこれだけ増えたと書くのは、誤解を生むかもしれない。

【委員】
 18年度の数字だけを書いておけばいいのではないか。

【委員】
 13ページ(4)の拠点校方式による受入等というところだが、根拠になるものが3ページのところに抜けている気がする。1つの学校に5人未満の学校が全体の8割を占めるという問題にどう対処するか、というのでこの項目が具体的な形で設けられていると思うので、3ページにその項目を入れていただきたい。それから、拠点校とセンター校という考え方の定義があいまいだ。以前、その違いを文科省にお尋ねしたことがあったが、週に何回か在籍校から通級で通う子どもたちを受け入れて指導するのがセンター校方式で、在籍を拠点校に移して毎日の生活を拠点校で過ごすのが拠点校方式だと文科省の方が言われていた。ここの拠点校という使い方は、中心になる学校、センター校が幾つもあるようなイメージでとらえられているので、拠点校の使い方を明確にする必要があると思う。拠点校方式での取り組みが、全国的に普及していくのに非常にいいモデルになるような印象が強く入ってしまうが、それよりも、5人未満のところは、しっかりとしたノウハウを持った教員や、通訳ができるような支援員が回って指導する「巡回指導」が教育的な効果があると思うので、その辺のところを明確に書いていただけるといいと思う。

【事務局】
 8割ぐらい4人以下というのは、この13ページの(4)のところでその旨を記載している。拠点校方式は一つのとり得る方法ということで提案している。拠点校とセンター校については、拠点校イコール(センター校)というつもりで使っている。過去の経緯等で区分けした定義でイメージされているならば表現を工夫するか、あるいは、拠点となる学校に生徒を集める方法や拠点となる学校を中心として巡回指導をするというイメージで使っているので、そういう使い方もあるかと思う。

【委員】
 進学・転校等の場合の学校間の連携について、日本公立学校内の連携と読めてしまうが、外国人の多い就学前教育段階と公立学校段階への移行過程、それから外国人学校と日本の学校の転校、転入等の関係を少しスムーズにする方法を考えるべきではないかという話があった。就学前健診という話もあったので、そういったところを書き込んでいただければと思う。特に他校へ転校する場合、指導要録の写しを作成し、転入先の学校の校長に送付することとあるが、実態は必ずしもこのように機能してないので、慎重に行うこととしていただきたい。それから、日本人で外国人学校に在籍している子どもの扱いが教育委員会によって異なるようなので、そういったところも国としてどう考えるかを一度整理する必要があろうかと思う。

【委員】
 日本人の子どもに関しては、学校基本調査で詳しい数字が出ているが、外国人については、大ざっぱな数字のみで実態がわからない。この数字に関しては、少なくとも日本の学校に通っている子どもについては、同じような分析の方法で記載されるべきだと思う。

【委員】
 教員の資質の向上にかかわることだが、「日本語指導や国際理解教育に関する専門的な研修を実施するとともに」ということだが、研修が初歩的なものばかりで、力を持った人に応じた研修が実施されていないのが実情だ。そういった人たちはどこで研修をしているかというと、各大学で行われている研究会や、学会に出ている。したがって、ここの文面を「研修を一層充実させる」としていただきたい。それから、JSLカリキュラムについて、「教科指導を通じながら外国人児童生徒の学習言語能力を目指す『JSLカリキュラム』小学校編」とあるが、教科指導だけではなくて、教科指導への橋渡しとして、前段階としてトピック型のJSLがある。トピック型は、教科の枠の中にはしっかりおさまらないものだから、「教科指導等を通じながら」と少し濁していただければ誤解は生まないと思う。

【委員】
 JSLカリキュラムは難しすぎて使い勝手が悪かった。これをブラシュアップして、ほんとうに使えるJSLにするには、かなりの努力と、国がしっかりやるという意識が絶対必要で、JSLの一般スタンダードはほんとうに必要だとここでみんなで言い交わしたのでやるということを書ききっていただきたい。JSLについては、「人材の養成に努める必要がある」ではなくて、「養成する」とできないか。

【事務局】
 JSLカリキュラムを開発して、実践支援事業で講習を通じて普及している。その普及の度合いを調査するなどして、その上で、内容の改善、充実につなげていくということも考えてみたいと思う。

【委員】
 「外国人生徒であっても高等学校への進学にあたっては当該学校において求められる学力及び言語力を備えることが必要であるが」、その言語力が日本言語力なのかということをきちんと伝えなければならないと思う。それから、「一方、外国人生徒の持つ言語や文化等の多様性を積極的に評価し」といっているが、外国人生徒が母国で培ってきた学力、母語の言語力、文化等の多様性を認めていくような、それを積極的に評価する入試方式を改善していかなければならないと思うので、言語力をきちっとうたってもらいたい。高校入試は、日本語の能力試験のような状態になっているので、生徒が持っている本来の力を評価できる方式を導入していく工夫を考えていく必要があると思う。

【事務局】
 ここでは、本来はそれぞれの高等学校に入学するにふさわしい学力及び言語力、日本語力を備えていくことが、外国人生徒であっても必要ではあるけれども、外国人生徒のこれまでの日本語の習得状況、来日してからの社会環境、その他もろもろを勘案して、日本人の生徒と全く同じように取り扱うのは果たしてどうかというニュアンスで書いている。母語の言語力まで求められると、高校の入学者選抜に当たって実施のしようがないかもしれないので、そういうところまで書き切れるかという問題がある。したがって、ある程度の経験的な措置や特別な枠を設けるということでまずはやってみようということだ。

【委員】
 「一層の配慮と工夫を求める」というのは、何かわかったようなわからないような文章で、これはほんとうに難しい。気持ちはわかるが、何とかならないか。

【委員】
 高校進学に関して言えば、外国人の枠が設けられているところが少ない。日本人は1.2倍の倍率なのに2倍ぐらいになってしまう。非常に意欲ある子たちがそこで落ちて挫折してしまう。それを配慮とか工夫という言葉でまとめられるのか。

【委員】
 35の都道府県において配慮措置を講じているところであると書いているが、こういうのはもっと広がってほしいとか、見習うべしとか、そういうメッセージがあったほうがいい。

【委員】
 「都道府県や市町村においても、こうしたボランティア支援員の配置を引き続き進めていくことが必要である」と書いてあるが、支援員は、非常に専門的な力を要する役割を果たす。ボランティアはカットしていただきたい。時間給で安い待遇で、しかも親のいろんな問題にも夜おそく電話に応じたりだとか、家庭訪問をしたりだとかで対応してくださっているのが支援員の実態で、それをボランティアという言葉ではくくれないと思うし、むしろ正当な手当で継続的にできるような、しかも、本領が発揮できるような方を雇っていただきたいし、この支援員の位置づけが非常に大切だと思う。ただ2つの言語が日常会話程度に話せる人だとか、その程度の見識では問題解決がなかなか難しいところがあるので、支援員の資質の問題や待遇の問題にも触れていただければと思う。

【委員】
 一番問題なのは2つあって、1つは、日本語もしくは外国人を教える先生の不足ということが指摘されて、教員の加配措置については必要な定数の改善と書かれているが、こう書くことがほんとうに人を増やすのか、国の予算をつけるという意味なのかをまずお聞きしたい。それから2つ目は、例えば日本語を教えているのに、専門は美術の先生であったり、音楽、算数の先生だということがわかってきたので、専門教員をつけるべきではないか。専門者を養成するという意味で、国においては、支援員の資質の向上云々、日本語指導能力に関する資格・認定制度のあり方を調査研究する。調査研究したら資格認定制度及び専門教育の免許状のあり方について調査研究すると、一歩踏み込むことはどうだろうかと、この2つをお聞きしたい。

【事務局】
 必要な定数を改善するという声を検討会から出していただくことが、私どもが定数改善を進めていくときの助けになる。我々としても定数改善はしたいと思うが、これは相手のあることでもあるし、そもそも要求する時点からさまざまな制約があるから、要求を出すことができるかどうかもわからない。しかし、少なくとも、この外国人児童生徒の教育を預かる立場からすれば、この要求を出していきたい。その追い風になっていただきたいという意味で、書いたから必ず定数改善ができるという約束ができるわけではない。ただ、こう書いていただかないと物事は始まらない。それから、専任の教員を配置するとか免許状を創設するという話だが、専任の教員の話は定数がなければできない話なので、定数を改善できるかという、その先にある課題だが、検討会の先生方の中でこういう方向を示すべきだということであれば、書いていただいて構わないが、かなり難しい検討が必要になってくると思う。免許状は、基本的に教科として位置づけられたものに対応することになっているので、あり得るとすれば、司書教諭のような別の資格を当て職のような形で設けることかもしれない。免許状の制度の中で専門性を確保することは、免許状制度の根本から見直さなければならないという意味で、相当ハードルが高い。

【委員】
 先月、参議院の少子高齢化・共生社会調査会の中でも、早稲田大学の日本語教育専門の川上先生から、JSL教員の確立と養成という提言が出されていて、その中で、教育関連法規の改訂とJSL教職科目の設置、JSLの教員養成教育への位置づけとJSL教員を新規採用するシステムの構築という提言も出されているので、研究ということだけはなくて、一歩でも二歩でも踏み込んでいただければと思う。それから、初期指導教室の開催について、入学前の初期指導と編入・転入時の初期指導があり、現状では別個の取り組みとして行われているので、書き分けをしていただいた方が良いと思う。

【事務局】
 初期指導教室については表現の工夫をするか、モデル的な調査研究で行っている入学前初期指導の普及を主眼に置いていたので、そちらのほうに焦点化するなど、表現上の工夫をして誤解のないようにまとめてみたいと思う。それから、教員養成のところだが、今回の検討会においては、この5年間に取り組むべき施策ということで、現職教員の先生方の質向上と、資格認定制度についても検討してみたい。ただ、そうした場合、資格認定制度といったときには、教員、それ以外の支援員の方々についてもどのように適応していくのか、例えば、日本語教育能力検定試験のようなものを考えるなど、幾つか選択肢はあると思う。免許制は難しい話でもあるので、それをどこまで盛り込むかというところはあるが、資格認定という意味合いでは、何かを考えていくと思う。

【委員】
 教員免許までいくというのがしっかりできていない限り、学生の進学意欲は全然生きてこない。それがあれば、教育委員会が採用するときにも、そういうものをやった専門の人がほしいということもあるわけなので、しっかりしたシステムを研究してほしいと書いていただきたい。

【委員】
 私は多文化共生や国際理解教育を教員養成カリキュラムにどう位置づけるかに取り組んでいるが、教科ではないのでできないという部分と、学生がとれる単位の上限が決められていて必修には入れにくいということがある。そのため、授業はたくさん開講しているが、学生は単位なしでとっている状態だ。これが体系化して制度で許されるならば、資格のある人が生まれる。司書教諭の方向性が可能だったら、すぐにでも動ける大学は幾つかあるのではないかと思う。それから、外国人の進路指導の充実というところだが、義務教育年齢を超える外国人で、中学校卒業資格を持たない人たちがたくさんいる。この方々が日本の高校の入学資格を取得しやすくするために、就学義務猶予免除者等の中学校卒業認定試験の周知徹底と、年に複数回の実施が可能になれば大分様子が変わってくると思うので、改めて提案させていただきたい。

【委員】
 JSLカリキュラムを教員養成系大学の教育活動の中に指導教材として取り入れることについて、学芸大ではどういうやり方をされているのか。レベル的になかなか難しいのか。例えば併設校でそれを取り入れつつ、養成課程の学生やスタッフにJSLカリキュラムの取得をもねらった実践活動を行うのは、実験的にできないものか。

【委員】
 学芸大では、3つほど対応している。平成22年度から小学校の教員養成過程はピーク制をとって、教科に強い小学校教員を養成するため、日本語教育を専修する学生の養成を始めるのが1つ対応としてある。その中でも、JSLのカリキュラムを組むことを検討している。二つ目は、今年度発足した教職大学院の教育実践創成専攻に中学校の国語の免許を持つ学部卒の学生を2人ほどとっている。JSLをやっている国際中等教育学校で実習をさせて、課題研究と実習を組ませて一緒に行っている。三つ目に、国際教育というゼロ年生のコースでは、英語と国語の免許がとれる制度になっており、いわゆるJSL的なカリキュラム、授業科目を半期ぐらいは組んでいる。文科省がつくったJSLカリキュラムをJSLという場合、JSLを狭くとらえることになるが、もっと広くとらえることもできるので、カリキュラム化すれば、間違いなく可能だろうと思う。

【委員】
 研修が重要だということでいいと思うが、向こう5年間を見据えてということなので、5年たった時点である程度その体制が変わっていくような含みがあるといいと思う。

【委員】
 就学前のケアだが、幼稚園、保育所とも行っていない子がいるので、そういう親へのケアとして学校案内等をやっていくことを、可能であれば記述していただきたい。

【委員】
 子どもたちの学力や言語力について、進学が増えたとか学校をやめる子が少なくなったというのも評価の方法かもしれないが、学力テストが全国的・定期的に行われるのであれば、調査機関や大学等に研究委嘱して集住地域等サンプルをとって実態を分析することが必要ではないか。

【事務局】
 外国人のみを取り出してできるのか自体よくわからないが、それにかかる膨大なコスト等の問題もあるかもしれない。

【委員】
 構成についてだが、1、2で、2の大見出しが「本検討会における検討課題等」とあり、中見出しは、1番が「検討課題」で2番が「国・地方公共団体の役割と責任」とある。「等」とするにしては1と2のまとまりが悪いので、1番を「外国人児童生徒に関する課題」とし、大見出しを「外国人児童生徒教育における課題と国・地方公共団体等の役割」としたらどうか。それから、「外国人の子どもの教育を受ける権利を保障している」とあり、教育を受ける権利に言及しているのはとてもいいと思うが、保障していると言い切っていいのか。「受ける権利の保障に努めている」という表現ではどうか。

【事務局】
 権利を行使する、確実にそれは保障している。権利といった場合に、権利を持っている人が、その権利を行使するかどうかという問題もあると思う。

【委員】
 知らないがために権利が行使できないケースがあるので、それを知らしめる努力をする。権利があることを知った上で自分は行使しないといったら、それは権利を保障されていることになる。就学支援等で知らしめる努力をしようという意味がここにあると思う。

【委員】
 そういう意味では、権利を保障することを前面に出すために、本検討会においては、外国人の子どもの教育を受ける権利を実質的に機能させるために子どもの教育の改善と充実を図ることを検討したとか、文章を分けて、いかに権利を機能的に充実させるかを主眼点にやったということを明記するのはどうか。

【委員】
 学校の現場としては、報告書が出た後、報告書で示されたことの具体例を情報提供していただけるとありがたい。

【委員】
 3ページの1のところ、「若干増加しているが、近年はむしろ減少傾向にある」というのは、わかりにくい表現だと思う。それから、教員の免許状に関しては、この5年の中で実現していくにはハードルが高すぎて、この5年間何もないという話にもなりかねないので、司書制度や研修等多様なものについて可能性を調査検討して、この5年間で何か達成できるような到達目標を我々がイメージした上で、この文言を入れていただいたほうがありがたい。あとは非常にわかりやすくまとまっていて、ある程度私たちの主張が通るような形で書かれていると思う。

【委員】
 市町村の役割と、NPOやボランティア団体等の役割の関連だが、NPOが活動できるような支え、ボランティア団体が幾つも生まれるような養成講座、団体を継続維持するための助成金や委託制度等、市町村の役割にNPO団体への支援や連携をつけ加えていただきたい。

【委員】
 省庁間の連携をよくしていくことに触れておく必要があるのではないか。

【事務局】
 文化庁事業との連携ということで言えば、地域日本語教育の中の枠組みを使わないとできないようなケースは、そちらのほうを中心に取り組んでもらいたいということで書いているが、それ以外にも、日本語に関する調査研究や、資格認定制度、日本語教育能力検定等、とりわけ文化庁サイドとの連携というニュアンスを書くことを考えていきたい。

【委員】
 外国人学校のデータを載せていただくのはどうか。

【委員】
 学校の在籍者というよりは、日本語が勉強できない外国人を対象にした教育も必要だ。不就学は、日本語がわからないことが1つのキーワードなので、外国人学校にいるために日本語を勉強する機会がない子どもたちに地域の日本語教育を用意するというニュアンスが盛り込めればいいか。日本語の勉強のチャンスに恵まれない人を、地域の日本語教育で支援するということになる。

‐了‐

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課