初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第7回) 議事要旨

1.日時

平成20年4月21日(月曜日)13時~15時

2.場所

経済産業省ビル10階 1031号会議室

3.議題

  1. 論点整理
  2. その他

4.出席者

委員

逢坂委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、木場委員、佐藤委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

文部科学省

大森国際教育課長、小串初等中等教育局視学官、その他

5.議事要旨

(1)論点整理 議事

【委員】

 初等中等教育を受ける外国人児童生徒教育という観点からは、企業の役割は見えにくい。日本の義務教育については、国の予算が地方自治体の事業に出ているので、学校での教育を企業が支援するというところはなかなか出にくい感じがする。企業の先進的な例として見ているのではなくても、外国人の保護者について、たとえ直接雇用ではなくても、日本語学習の機会を与えようという動きが、少しずつ出てきており、これに関しては、企業はかなり自分たちの責任として考え始めていることは事実だと思う。もう1つ言えることとして、例えば、子どもたちの将来の就職まで踏まえた職業意識の向上みたいなものに対し、企業は協力できるのではないかと思う。現実に、学校と協力して、企業の見学や職場見学みたいな形で日系人の子どもたちを受け入れているような企業は結構ある。また、インターンシップが最近非常に盛んになっており、その中に外国につながる若者が参加するケースがある。

【委員】

 日本の企業がこれからもう少し中長期に日本の企業のあり方を考えた場合、これだけグローバル化している中で競争していくのに、コストの問題だけではなくて、外国人など多種多様な人たちの力を借りないと日本の産業はこれから生きていけない。そういう時代がここまで来ていると思う。そのときに、外国人労働者の子どもたちが日本で仕事を得ていくということになると、その子どもたちが順調に日本になじんで、日本の中で成人し、労働力になっていく道を企業の経営者も中長期には絶対考えないといけない。そうすると、非常に息の長い作業になると思うが、経済界に対してそういう問題意識や、理解を深めていく努力をしていかなければならないし、世論を盛り上げていく以外に方法はないと思う。

【委員】

 学校で子どもたちを抱えて一番困っていることは、やはり保護者の今の雇用の立場、厳しい労働条件の中で仕事をしている保護者が多くいる。そのため、子どもに何かあったときや、子どもの学習保障において、保護者として子どもをしっかり見ることができない。そういう状況を学校としては非常に憂慮している。それから、子どもたちはこのまま日本の高校、日本の大学へ進んで、日本で就職してということを考えているので、この子たちに頑張ったら正社員の道が開けるということをはっきりしてくれることが一番ありがたい。

【委員】

 外国人労働者への給与払いは時給換算なので、働いていない時間は給与は出ない。それを一番嫌うのは本人だ。だから、例えば朝7時から午後8時までの給料と、短縮で午前9時から午後5時の給料を計算して、本人たちは長いほうを選んでしまう。たくさん稼いで早く帰ろうという発想がまずあるのに、お子さんも日本で勉強させて、それで中長期的に日本に定住されたらいかがですかということは、あまりにも立ち入った話ではないかと思う。現実には定住化が進んでいるが、その気持ちと、子どもたちを親として面倒見るという実態が、実は家族の中でかみ合っていない。

【委員】

 自治体の首長が企業に対してなかなか物が言えない。これは地場産業の問題があるだろうし、町に対する地元企業の貢献もあって、あまり議論しても詰まっていかない。それよりも、最近学校の設立、特にブラジル人学校の設置等について、企業がイニシアチブをとって、基金を積んで学校設立に向けて動きが出てきているところの企業貢献の具体例を取り出して、評価して取り上げていったほうがよりプラクティカルで現場の声ともうまくかみ合っていくと思う。

【委員】

 愛知県の多文化共生推進会議では「多文化共生推進プラン」の目玉事業として、外国人児童生徒の日本語学習の支援基金を立ち上げる計画が進んでいて、今年度中にスタートする予定である。愛知県の経済界の協力を得て行うということで、大手の代表的な自動車メーカーなどが参加して行うことになるようだ。具体的には、その基金を使って、地域のボランティア団体、NPOなどの日本語教室への支援、外国人学校における日本語教育の支援などである。大手の会社は直接には外国人労働者を雇用していなくても、実際には系列企業で多数働いているので、自分の取引先企業に対して雇用責任を求めることや、基金に対する支援など、大手の企業ならではの役割は大きいのではないかと思う。

【委員】

 社員が、自分の奥さんや子どもたちが日本になじめずにノイローゼ的になっていたら、決していい仕事はできない。そういった部分で企業はどうしたらいいか。そういう発想に立って取り組んでいただくことが一番だと思う。会社のほうから子どもの就学に関する情報が勝手に届くような仕組み、日本の公立学校に行くにはこうしたらいいとか、日本語を学習する方法を紹介するパンフレットを、企業のほうもご用意いただいたほうが、もしかしたら、行政からお誘いするよりダイレクトに行くのではないか。企業のほうも自分のところが雇用した外国の方がお子さんを学校に行かせているかどうかのチェックまでは責任を持ってしていただいて、そのチェック体制とともに、地元の教育委員会と企業が子どもを学校に行かせている確認がとれるような連携体制ができるといいと思う。

【委員】

 経済産業局では、日系人の雇用と企業の対応を調査されていて、彼らの認識は子弟の教育まで及んでいる。できれば縦割りにならず、文科省と経産省が協力して、地域の、特に商工会議所等と連携した啓蒙活動をしていただけると比較的認知度が高まるのではないか。報告書の意図が伝わっていく感じがする。県ベースでは経営者協会、町ベースでは商工会議所、ここをターゲットにした活動を、私ども協力するので、やっていただければと思う。

【委員】

 外国人労働者をきちんと雇用して、例えば子どもが学校に行けるように配慮する等の取り組みをしている企業をプラスに評価して、そういうことができていない企業は、批判的な評価を受ける、そういう社会をつくっていくことが大事だと思う。愛知県、三重県、岐阜県、名古屋市の3県1市では、今年1月に外国人労働者の雇用に関する憲章をつくって、前向きな取り組みをしている企業を行政として評価する仕組みをつくっている。

【委員】

 企業の中でも、国籍や言語が異なる人たちが働きやすい環境をつくる工夫をされていると思う。そういったものを学校サイドにも発信していただいて、相互に影響し合えるようなチャンスがあればと思う。企業の先進的な取り組みが教育の現場に影響を及ぼしていることを考えると、国際理解教育等での貢献もぜひお願いしたい。

【委員】

 三重県四日市に在籍する子どもの保護者は鈴鹿の会社へ行っている。両方とも集住都市だが、四日市は地元に企業がない。市をまたいで鈴鹿の企業に言うことになるので橋渡しの仕組みをつくっていただきたい。

【委員】

 隣接している市町村間の連携がとれていない感じがする。イニシアチブをとって、周りの市町村にも一緒にやろうと働きかけをするための母体として交流協会をつくってほしい。そうなれば市内の企業でなくても、交流協会への協力はできるのではないか。もう1つ考えなければいけないのは、県の役割についてだ。県には国際交流協会があって、県の動きは、政令市がないので一応均等だが、政令市がある県などは、政令市の部分だけが抜けてしまう可能性がある。企業側から見ると、行政の壁は非常にまどろっこしく感じる。

【委員】

 児童生徒が日本語指導を望めば、最大3年ぐらいの間で無償で生活日本語と学習日本語のサポートを受けることができるという1つの枠をつくって、そのために企業や各自治体がどうするのかを考えていくべきだと思う。各自治体でもいろいろ温度差があるので、そこを国がサポートすると良い。

【委員】

 1つの学校に外国人児童生徒が5人未満しかいないところが全体の8割を占める。初めて日本語がわからない子どもたちが来たときに、まず何をすればいいかわかるようなものを国のスタンダードとして、ホームページで示すことが大事ではないかと思う。文科省としても、学校に外国籍の子どもたちが来たときにどうしたらいいかがまとめられている「ようこそ日本の学校へ」という冊子を随分早い時期に出しているが、それをご存じの方々は非常に少ない。そういう今まで出てきているものに手を加えれば、情報の1つとして提供できると思う。

【事務局】

 これまでも教材や指導書をつくってきたので、そういうのも全部含めて、学校の中でどういうやり方、形でどの程度活用していくか、ある種のガイドラインをそろそろ考えていく必要がある。それを今回の調査検討会の提言に盛り込んでいければと思う。

【委員】

 その後、各地域の教育委員会等がとてもいいものをつくっている。文科省の今まで先駆けで出したものと、その後つくられてきたものをうまく組み合わせてもっといいものをつくったらどうか。

【委員】

 全国の学校、教育委員会、国も含めていろいろな教材がたくさんある。そういったものを、いつでもだれでもアクセスできるようなデータベースにして、アクセスできて、ダウンロードもできる。共通に使えるシステムを作ったらどうか。

【委員】

 誰にとって、いつ使うガイドラインなのかというところまで考えあわせてつくらないといけない。

【委員】

 学校によって事情は違う。外国人児童生徒が5人未満の8割の学校と、外国人児童生徒が大勢いる学校について、それぞれの学校のこれまでのノウハウを生かして、外国人児童生徒への対応方法を整理をすると、実際役に立つと思う。

【委員】

 就学支援ということでは、何ゆえに不就学になり、どのようにしたら不就学にならなかったのかということをきっちり明示してホームページなりに提示されることが、各地域で非常に参考になる。

【委員】

 国がつくるべきもの、あるいは都道府県でつくるべきもの、市町村でつくったほうがいいもの、学校現場でつくったほうがいいものという仕分けをすることが必要だと思う。その上で、いろいろなマニュアル、教材など全国の主な情報を、文部科学省のCLARINETというサイトに集約する、あるいは県レベルで県教委が県内の取り組みを集約する等、国あるいは広域自治体としての県の役割があるのではないかと思う。

【事務局】

 役割分担と責任といったときに、教育行政に関する役割分担と責任というのは、既存のものとしては学校教育の法体系の制度上のものがあって、それに当てはめていってどうかというところもある。課題の中で全部はっきりと厳密に分けられないという可能性もある。そうした場合、主体は、それができそうな人たちを幾つか明示するというのも1つ方法としてはある。そういうのを踏まえたペーパーを次回、案を見ていただいて、議論をしながら整理していく方法も1つある。

【委員】

 プレスクールは、プリスクールというと、就学前教育に限定されて海外でも使われるので、その名称はやめようということとが1点。また、就学前の子どもたちに対するオリエンテーションと途中編入者へのオリエンテーションは、内容的には違ってくるので、そこの整理が必要だと思う。そういったものの中に、日本の制度を教えるということと同時に、就学前健診や編入前健診の義務づけも含めて考えていただければと思う。なぜかというと、海外の学校では健診がないので、知らないで学校に入ってこられたときに感染症など、いろいろな問題が起こってくる可能性もある。そういったことも含めたプランづくりが必要だと思う。

【委員】

 学校で網羅できないのが、義務教育年齢を過ぎた生徒で、例えば15歳以上で18歳ぐらいの生徒が来ても、結局、日本語教育を受けられない。その辺のどうしても網羅できない部分をどうやってカバーするのかも我々で考えていかなければならない。

【委員】

 幼稚園、保育所とも行っていない、就学前の子たちが随分たくさんいて、そういった子たちが小学校に入る時期になると、不就学になるとか、不登校になってしまう現実がある。教育委員会でも保健福祉部と連携はしていくが、なかなかそういう面がカバーできていない状況もある。

【委員】

 ヨーロッパでは幼稚園が無償のところが多いが、日本は自己負担が半分くらいある。外国人でなくても、日本人の若いお父さん、お母さんは、推計で、4人に1人ぐらいは可処分所得内ではお子さんを幼稚園にやれないという人がいる。幼稚園の私費負担を減らす方向に持っていかないと、外国人労働者の方々は子どもを幼稚園へなかなか行かせられないのではないか。

【委員】

 既に、全国の自治体で就学前の教育についていろいろな取り組みをされている。それを集約する中でグッドプラクティスを取り上げていくのが有効かと思う。

【事務局】

 就学前3年間は無償でやるべしということを実施しようとするも、今我々がやっている事業を全部やめてしまって、それを財源に充ててもできるのかどうかよくわからない。何をやるのかある程度の優先順位はつけていただかないと、実現可能性な取組ではなくなってしまう。

【委員】

 人材確保の件だが、日本語学級の担当教員は、公務分掌で割り当てられてしまうので、小学校の場合、専門知識が十分でない先生が日本語学級を担当することが決して珍しくない。日本語指導の長い人が経験を生かせるような配置をお願いしたいという文面があればよい。

【委員】

 人材確保については、日本語支援員の専門性をどう保証していくのか、あるいは研修をどうしていくのかというところを絡めて議論する必要性がある。ただ、人事異動があるから、頑張っている学校が、先生がいなくなると全くだめになってしまうということはすぐあるので、その辺のところ、文科省として、行政的な側面からお願いするようなことはぜひ必要だと思う。

—了—

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