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小学校学習指導要領解説 総則編

第3章 教育課程の編成及び実施
第6節 教育課程実施上の配慮事項

7 海外から帰国した児童などの指導(第1章第5の2(7))

  • (7) 海外から帰国した児童などについては,学校生活への適応を図るとともに,外国における生活経験を生かすなど適切な指導を行うこと。

 国際化の進展に伴い,学校現場では帰国児童や外国人児童の受け入れが多くなっている。これらの児童の多くは,外国における生活経験等を通して,我が国の社会とは異なる言語や生活習慣,行動様式を身に付けているが,一人一人の実態は,その在留国,在留期間,年齢,外国での就学形態や教育内容・方法,さらには家庭の教育方針などによって様々である。このため,これらの児童の受け入れに当たっては,一人一人の実態を的確に把握し,当該児童が自信や誇りをもって学校生活において自己実現を図ることができるように配慮することが大切である。
 海外から帰国した児童や外国人の児童の中には,日本語の能力が不十分であったり,我が国とは異なる学習経験を積んでいる場合がある。このため,日本語の習得については,日常的な取組を基本としつつ,特に文字の読み書きについては,段階的,効率的な指導を工夫することが必要である。また,教科の指導においては,児童一人一人に応じたきめ細かな指導が大切である。このような指導は,通常の授業や日常の学校生活において十分配慮することが基本ではあるが,これらの児童の実態によっては,放課後を活用した特別な指導などの配慮をすることも大切である。なお,この場合,あまりにも性急に未履修分野の指導を進めようとするのではなく,当該児童の実態に合わせて,最も適した方法を選択し,学習の成果が上がるように努めるようにすることが大切である。特に,言葉の問題とともに生活習慣の違いなどによる不適応の問題も生じる場合もあるので,教師自身が当該児童の在留国に関心をもち,理解しようとする姿勢を保ち,温かい対応を図るとともに,当該児童を取り巻く人間関係を好ましいものにするよう学級経営等において配慮する必要がある。また,外国人児童については,課外において当該国の言語や文化の学習の機会を設けることなどにも配慮することが大切である。
 また,海外から帰国した児童や外国人の児童は,日本の児童が経験していない外国での貴重な生活経験をもっている。外国での生活や外国の文化に触れた体験を,本人の各教科等の学習に生かすようにするとともに,他の児童の学習にも生かすようにすることが大切である。さらに,外国で身に付けたものの見方や考え方,感情や情緒,外国語の能力などの特性を生かすよう配慮することも大切である。このような機会としては,例えば社会科や音楽科などの教科や道徳,特別活動における学校行事やクラブ活動,総合的な学習の時間での学習活動などが考えられるが,児童や学校の実態等に応じて適宜工夫することが必要である。なかでも、総合的な学習の時間において,外国語に触れたり,外国の生活や文化などに慣れ親しんだりする国際理解などに関する体験的な学習活動を進める際には,それらの生活経験等を積極的に生かすことができる。
 このような,海外から帰国した児童などについては,本人に対するきめ細かな指導とともに,他の児童についても帰国した児童などの長所や特性を認め,広い視野をもって異文化を理解し共に生きていこうとする姿勢を育てるよう配慮することが大切である。そして,このような相互啓発を通じて,互いに尊重し合う態度を育て,国際理解を深めるとともに,国際社会に生きる人間として望ましい能力や態度を育成することが期待される。