子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議まとめ(第1次)等へ寄せられた意見について

 
 

 平成19年4月13日(金曜日)~5月9日(水曜日)に文部科学省のホームページ上で実施した、「いじめを早期に発見し、適切に対応できる体制づくり-ぬくもりのある学校・地域社会をめざして-」(5つのメッセージ)、学校におけるいじめ対策Q&Aの活用等に対する意見・感想を募集したところ、以下のような御意見・御感想が寄せられましたので、お知らせいたします。

 有識者会議まとめに対する御意見・御感想

【提言全般について】
提言はごもっともであり、強制的にでも実行されるよう、法改正してでもやるという姿勢を政府に示してほしい。
もっと真面目な議論の積み上げと論理的必然性が必要である。
誰でもわかっている原理原則をメッセージにしても、現場では役に立たない。
提言は間違っていないが、方法論に特化している。子どもにもわかりやすいシンプルな表現をキャッチコピーとして共有することが大切。
発達段階から見た対象による特性に踏み込めるともっとよかった。
今後何をしていくかではなく、明日何をするかを考えてほしい。
青少年による自殺が相次いで発生している事態において、文部科学省は早急に具体的方策を講じていくべきであり、会議に対する意見募集をしている時間的余裕はあるのか。

【1 教師はいじめを許さず、子どもをしっかり守ろう!】
早期発見・早期対応を強調する点には賛同。加害者側の行動改善ではなく、被害者側の行動改善が必要とされる場合も多い。
教師は毎週道徳の時間を作り、「人としてどうあるべきか」を教える時間を作るべき。学力と道徳の時間がバランスよく取り入れられた教育が必要である。
道徳の授業方法等について指導要領を改訂する必要がある。現実の生死が人を傷つけることにもなりかねないことを教え込む必要がある。
子どもの健全な育成にとって一番重要なことは心を学ぶということであり、道徳教育の質の向上と充実したカリキュラムの編成によって達成される。道徳科目選任教諭の育成または道徳教育に携わる教諭に対する専門的な研修制度により質の高い道徳教諭を目指す必要がある。
教師は、絶対に見捨てないというメッセージを送ることが大切。しかし、緊急連絡先を伝えると書かれているが、教師個人の連絡先は、個人情報にあたり、危険ではないか。
関係機関担当者も含め、緊急連絡網の整備を早急に行う必要がある。
他者を尊重しつつ自己の考え方を持ち、柔和に対処していけるよう教えてやらなければならない。そのためには、日常的に生徒同士のトラブルを教師間で報告し合い、教頭校長を交えた定期的なミーティングにより事例紹介や対策指導などを行うことにより、教員の倫理教育機能向上に努めなければならない。
現代の教員に求められる資質は、時代とともに高まるばかりである。いじめに対する対処力もその1つであり、1人の教員が子どもの実態を把握できるように標準人数を1クラス30人以下にするよう法改正を提言することがもっとも重要だと考える。
教師が1人1人に関心を持って目を向ける余裕がなくなっている。教師が職員室以外のところにいる時間が少なすぎる。
トラブルが起きたときに、子どもたちの意見だけを鵜呑みにしたり、教師の偏見で勝手に状況判断したりすることのない、公平な見方のできる人に教師になってほしい。
当事者を犯罪者扱いしたり、極度に恥ずかしい思いをさせることがあってはならない。犯罪行為を隠蔽してはならないが、状況に応じた機動的・人道的支援が必要である。
教師がいじめを率先していたり、教師自身がいじめを行っている場合が多く、教師によるいじめをなくすために、教師に教養をつける機会を与えるようなゆとりを持たせてほしい。
学校が保護者や地域等に情報公開するための方針が示されていない。
いじめの実態把握のためには、担任だけではなく、学校全体が一致して対応する必要がある。
生徒会組織づくりのモデルケースを各県において10校程度選定をし、そこで得た成果を横展開していくのはどうか。児童生徒が主体となって活動できる自由かつ活発な場を作り上げていくことが重要である。
子どもたち自身の手でいじめをなくすための実践活動に取り組むことが大切。自分たちの問題を自分たちで解決する力や、よりよい学級・学校づくりのための時間や場の限りない保障を文部科学省が提言することが必要。
学校や教師がとった対応事例のノウハウについては、ウェブサイトに掲載し、全国一律に活用できるようにするべきである。
いじめが生まれないような児童生徒のコミュニケーションを高め、感情をコントロールする効果のあるプログラムや実践例を教えてほしい。予防に役立つ具体的なプログラムを充実させてほしい。
いじめ問題については、被害者や周囲のフォローも重要だが、加害者を救わない限り、またいじめを繰り返すのではないか。加害者に悪いことを認めさせるだけではなく、彼らがいじめや犯罪を犯してしまった原因を突き止め、取り除くような対応を考えてほしい。
当事者意識を持ち、見て見ぬふりをしない態度、いじめをすぐに通報できるということを教師が教えてやらなければならない。いじめの重要事案については対応フローを策定し、全国で普及するべきではないか。ただし、生徒自身が自ら答えを見つけるべきで、教師が答えを押し付けるような態度であってはならない。
教職員の職務分担について、決裁権限を各段階に分担し、教頭校長の分担を減らし、不要不急な職務はなくすべき。
教師の対応能力を高めるための研修を実施するとあるが、そのようなことをするまでもなく、正常なコミュニケーションがとれれば、教師がいじめを発見することは困難なことではないのではないか。
いじめは最近顕在化しただけで、陰湿化・凶悪化しているわけでもなく、昔はもっと醜い部分もあった。特段教員の能力が低下したのではない。

【2 学校は、地域の人材を活用して「ナナメの関係」をつくろう!】
「ナナメの関係」とあるが、なぜカタカナなのか。親しみやすくするためか。
学校の教師だけでは難しい、外部の目で子どもたちを観察し、気付くことが子どもを守る意味では大切。
いじめ問題だけを特別に考えるのではなく、教育自体をきちんと考えてほしい。子どものモラルの発達のモデルを保護者、教師にだけ求めず、社会全体に求めてほしい。
いじめの問題には、チームを組んでたくさんの目で最良のタイミングや方法を探っていかなければならない。
文部科学省は、放課後の居場所づくりについて具体的なガイドラインを作成し、しっかり通達してほしい。
いじめ・非行・自殺の問題は道徳教育の拡充と体験活動による実践により解消するものであり、文科省は早急に取り組むべき。
大学生など、年齢の近い若者を子どもたちの相談相手として積極的に活用することが大切であると書かれているが、責任の観点から、大学生は相談相手としてふさわしくないのではないか。
地域と連携するために、地域の子ども会への入会を必須にするべき。

【3 教育委員会等は、多様な専門機関・専門家と協力しよう!】
教育委員会は、問題が発覚し、問題解決できた先生に対しては、問題解決策を他の先生方に公表し、表彰するべき。
採用制度を見直し、必ず一度は社会経験をし、コミュニケーション能力が高い人を採用する。
教育委員会は、子どもや親から、担任の変更や他クラスへの移行を受け付けるなど、救済策を講じるべき。

【4 保護者は、携帯電話等の活用の仕方を再考しよう!】
携帯電話の活用方法について通信業界と連携しつつ、ルールづくりを整備するべき。
子どもに携帯電話を持たせるにあたり、どう使わせるべきかの情報が不足しており、親が参考にできるガイドラインを出すべき。フィルタリングを広く普及して頂きたい。
文部科学省はマスコミに対して何もできないのか。

【5 すべての大人は、自らの責任を見つめ直し、子どもに「生きる」ことの意味を教えよう!】
親自身も子どもに対して学ぶ楽しさを見せていくべきではないか。
子どもに誇れるような生き方を心がけているか?についてはとても考えさせられた。
いじめの問題は子ども社会の問題だけではなく、大人社会の問題でもある。壊れた大人を直さずして子どもの教育など語れない。
大人の態度や行動を更正することが子どもたちの心の中を簡単に変える。今の子どもたちを助ける方法は、周りのわかっていない大人たちの更正である。
いじめの現状を一番わかっているのは子どもであり、大人だけで話し合うのではなく、大人と子どもの意見交換が必要である。

【いじめ対策Q&Aについて】
Q&Aについては、わかりやすく教師向けに書かれているので、いかに現場に浸透できるかが課題。
Q&Aについては、解決のイメージがない。加害者・被害者を分離するだけではなく、学校コミュニティーを再統合していくイメージぬきでは、解決にならないことを理解してほしい。

【その他】
いじめによる自殺問題は、非常事態というべきものであって、政府はそれを重く受け止めるべき。安全かつ公正な学校建設を早急に推進していくよう強く提言する。
いじめ対策に思うことは、ルールを守る等の人間としての基本を身に付けることだと思う。
いじめの定義をもっと慎重に設定しないと、学校社会の混乱を招く。
いじめが起きない環境を作ることが大切で、情報化時代なので、ICTツールにより、心の視覚化を行い、いじめを未然に防ぐことが大切。
本当の子どもたちのしんどさを理解し、教育を立て直すためにも、有識者会議の中に、現場で奮闘している小中学校の教員、留守家庭児童会の指導員、児童相談所の職員らを入れるべき。
子どもの心身を育てるのにマーチングは有効であり、マーチングなど音楽系クラブが選択できるような環境作りをしてほしい。
スポーツにより挨拶、礼儀、忍耐力、思いやり、チームプレー等、人として必要な多くのものが学べ、体験できる。子どもを守り育てるために有効なのは「スポーツ」だと思う。

 教育全般に対する御意見
いじめの対策や予防はもちろん大切だが、友人との人間関係をもっと築かせてあげられるような学校教育や地域を作っていくべき。
貧しくても教育を受けられる制度が必要であり、力のある子どもが対等な機会を与えられるのが本当の成果主義社会である。子どもの好奇心を満たし、よいところを伸ばしてやるためにも、学校は子どもの学力に合わせた教育をしてほしい。
教育課程の中の特別活動を充実すること、子どもたちの集団力を育成する活動の重要さを見直すことが、未来につながる取組である。
国づくりの基本は人づくりにあるが、100年先のことを展望した国策が全く見えてこない。人を育てる国策にすべき。いじめや不登校の問題もそこに内包されている。

たくさんの御意見・御感想ありがとうございました。これらの御意見以外にも、ご自身の経験談などもたくさんお寄せいただきました。文部科学省においては、皆様からの御意見を踏まえた上で、今後ともいじめ対策の充実に努めてまいりますので、ご理解の程、よろしくお願い致します。

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)