事例 |
チャイルドラインで子どもの声を聴く |
|
|
中教審の心の教育の中で、いじめ・不登校対策の諮問がありました。私は現場の声をヒアリングしようと、世田谷で悩んでいる子とつき合っている仲間に集ってもらいました。1995年12月に彼らの声は「受けとめるのが精一杯。どうしたらなど考えられない」という状況。私は「じゃ、みんなでネットワークを組んで考えようよ」ということで出来たのが“せたがや子どもいのちのネットワーク”という集まり。隔週に30名余りのメンバーが集まり、二時間のつもりが4時間かけて大論戦を展開し、シンポジウムを4ヶ月おきに3回行い、1年かかって出た結論が冒頭に述べた“いま、大人の生き方が問われている、子どもから”というもんでした。しかし今現在苦しんでいる、子どもをどうするんだ。大人の責任において、動こうよと言っているときに、英国にチャイルドラインという電話があるという情報が入り、BBCが虐待のキャンペーンをはったら電話が殺到、これを機に千名のボランティアが全英で子どもの声を受けとめていると聞いて、メンバー5人でロンドンに飛び、取材しました。1997年5月、まず、その着想に感動しました。この電話がどうしたら子どもに認知されるか信頼してもらうかを一番に考えたということです。これに習って日本でも子どもとの5つの約束をカードに書いてくばっています。
一、 |
ヒミツはぜったい誰にももらさない |
一、 |
名前は言わなくたっていい |
一、 |
イヤだと思ったら切ってもいい |
一、 |
どんなことでもいっしょに考える |
一、 |
いつでもかけてきていい、時間内にね |
安心してかけておいで、と。
たしかに電話をつくってもかけてもらえなかったら機能しないわけです。これは行政ですと問題解決が前提にあるため、指示が先走って子どもはかけにくい。民間なら解決というところまでいかなくていい、これは民間でやろうということで、せたがやチャイルドラインとして世田谷区で2週間24時間で試行してみると千件以上の電話が殺到、ニーズを確信しました。NHKでも教育テレビ40周年ということで“子どもの声を聴こう”という14時間の長時間番組をつくり、NHKチャイルドラインは50台の電話で全国からの声を受けとめてくれました。
国会の中には1998年にチャイルドライン推進議員連盟(2003年よりチャイルドライン支援議員連盟)が生まれ超党派の議員百十数名が加入してくれました。
1999年1月、NHKチャイルドラインの4日後、チャイルドライン支援センターを立ち上げ、全国に向けて情報発信を開始しました。
さて、この電話は、子どもと大人が1対1で話すということ、どうしたら子どもが話す気になるかという大命題への挑戦です。電話に出る人を、初め「相談員」と位置づけていましたが、われわれは解決というところまではいかないので「受け手」と命名し、研修も徹底しなければ、と、いのちの電話の研修方法を参考に4ヶ月の研修、そして電話に出ながら継続研修を行い1年のインターン研修をおえて一人前の受け手さんになっていただく。講座はもちろんのこと、ワークショップやロールプレイを交えての研修です。無言電話も結構あります。
「話したくなったら話してね」
間をつくらぬようにマンガの話をしたり世間話をして、子どもがしゃべれるようになるまで待つのです。「おばさんの話、聞こえる? 聞こえていたら受話器のところをトントンと叩いてみて」と。トントンと反応はある。子どもからの無言は10分や20分は覚悟の上。顔は見えねど、声のトーンや息づかいを通して子どもの状況を把握しようとします。この世に自分の存在をしっかり認めてくれる人がいるんだという手がかりと安心をあげられたらまずはメデタシ、子どもの語る言葉を手がかりに現在の子どもの状況を整理してあげ、子どもが自分で考え解決するのをサポートしていく。たいそう難解な仕事です。受け手さんもクタクタになることもある。そんな受け手さんの心を癒す係が支え手さんです。スーパーバイズできる支え手さんの役割も大きいのです。受け手さんはひたすら聴き役に徹し、終わったあとの振り返りが重要になります。そんなくり返しがわずかづつでもスキルアップにつながるのです。「さて、今日はどんな子に出会えるかな」こんなキモチになれれば一人前、いや一人前半と言えるでしょう。支援センター発足以来、7年目の現在、34の都道府県、63団体に拡がりましたが、英国のように365日24時間フリーダイヤルになるには、財政的にもマンパワーの面でも、道遠しの観は否めません。11月6日から12月5日まで1ヶ月間ブロック毎に、フリーダイヤルの試行中です。行政のご支援をお願いします。この機会にNPO活動をいっそう促進するよう行政の支援が絶対に必要です。 |
事例 |
ルールづくりを子ども自身につくらせたら |
|
|
子どもたちは「マジ」に話す機会が少なくなりました。「マジ」イコール「ダサイ」につながるのでしょう。子どもたちに「マジ」に話す機会をあげるには、と考えているときにスポーツが浮かびました。先生方に提案します。「君たちスポーツをやっててどう思う。スポーツはルールがあるから面白くなるし、盛り上がるんだよね。このクラスを盛り上げるために、このクラスのルールを君たちでつくってみないか」ポカンとした子どもたちも面白そうと「やる、やる」と軽いノリでつくり始めるでしょう。ところができたルールで行動してみたら不自由だらけ。「ダメだ、こりゃ」とこの辺りからちょっと「マジ」になり、ああしたらこうなる、こうしたらああなる。他者への配慮、全体のことを考えざるを得なくなり、そうなると必死で「マジ」論争を繰りかえす。道徳とか規範とか大人のつくったものには感覚的に反発するが、自分たちがつくったものには責任が生まれる。トラブルの解決もせざるを得ないので責任意識も芽生える。クラスという共同体意識を伝えるにはもってこいだと思います。先生の対応がむずかしいかもしれない。それは、次のプレーパークのリーダーの対応が参考になるでしょう。総合的学習の時間を使って挑戦されてはいかがでしょう。 |
事例 |
外遊びができない子どものためのプレーパークづくりを! |
|
|
世田谷区では、現在4ヵ所既存の公園の一画をプレーパークとして確保し、プレーリーダーをおいて管理しています。廃材スペースがあり、これを使って木の上に小屋をつくったり、木と木をロープでつないで遊具をつくったり、斜面を掘って川をつくったり、火を使ってパンを焼いたり、禁止事項だらけの公園と違って遊び心をくすぐるスペースです。もともとは周辺の住民が委員会をつくり協議を重ね行政にも進言する中で勝ち取ったスペースです。毎月15日の開園を目指し、それぞれのプレーパークで独自にルールをつくって運営しています。
ここでの大人であるプレーリーダーの役割は大きいのです。遊び方はいっさい子どもの創意にまかせる。口を出さない。子どもが行き詰まったり混乱したときにはヒントを提供する程度で、危険をともなったときのみ介入する、普段は静かな青年たちですが、リーダー会になると大声で論議しています。今のところリーダーにはアルバイト程度の補助金しか出せないので、子どもの父母たちでつくる運営委員会で、この穴をうめています。
子どもたちは遊びの中で仲間をつくり、つきあい方をおぼえる。新しい遊び方の開発、つくり出すプロセスも重要です。輪に入れないでいる子への配慮も自然に行われるし、他者と共存する快さを楽しんでいます。行政が場の提供と補助金を出しているが、せめてプレーリーダーが普通に生活できる支援をお願いしたいものです。このプレーパークシステムも全国に波及し、その数、二百を越えたようです。 |
事例 |
文部科学省として、子ども専門のソーシャルワーカー制度の確立を |
|
|
スクールカウンセラーの身分保障がまちまちのようなので、子ども専門のソーシャルワーカー制度を確立し、スクールカウンセラーを包含してはどうかと思います。この養成には最低二年間をかけて研修してもらい、資格と身分保障を確保し、措置権を備え、学校のみならず、児童相談所への専門職としての派遣も大きな力となるでしょう。研修の一部を先生の初任者研修に役立てることもできそうです。
以上、勝手なことを述べましたが、「ボランティア仕掛け人」という役を30年演じてきた老人の所感です。お許しください。 |