「いじめをなくそう」子ども会議(第1回)(子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議(第9回))の概要について

平成19年5月20日(日曜日)
東京国際フォーラムG610

≪子どもからの発表・意見概要≫

【千葉県市川市立南行徳中学校・発表】

 生徒会で、いじめについて、オレンジキャンペーンという取組を行っている。私たちの学校でも、いじめに遭っている人がいるかもしれないと思い、生徒会として生徒のみんなと協力していじめについて取り組んでいこうということになり、「目に見える効果があり、しかも個人、個人がいじめをなくそうという意識を自然と高められるもの」として、4年~5年前に行っていた活動をもとに、自分たちなりに「イジメをなくそう、オレンジキャンペーン」を行おうと考えた。

 オレンジキャンペーンには自分の意思で参加してほしかったので、誓約書というものを作って行うことにし、参加した場合には、生徒会で作ったオレンジリボンを制服に着けてもらうというシステムにした。このように目に見える形にすれば、安心感が生まれるだけでなく、周りの見方も変わり、いい雰囲気づくりができるのではないかと考えた。キャンペーン第1回目の初日には、全校生徒の約670人のうち100人近くの生徒が活動に参加して、オレンジリボンを着けてくれ、今では半数以上の生徒が着けている。生徒の普段の会話の中にも、何げなくいじめの話題が入るようになり、「オレンジキャンペーンの効果があったと思いますか」という質問に対し、多くの生徒が「はい」と答えており、みんなの意識は高まったように感じた。
 あくまで自分の意思なので、参加していない人に対し参加しなさいとは言っていない。キャンペーンに参加していない人については、特に深刻な考えのある人はいないようだが、自分の中で参加する自信がない人はいるかもしれない。この活動は、リボンを着ける着けないが大切なのではなく、いじめをなくそうと考えるためのきっかけにすぎない。

 先生も生徒会もほとんど見つけられないような、陰で行われているいじめはどうしてもなくならないので、今後はそれを受け止めるようなシステムを作る必要性も感じている。

【大阪府高槻市立第七中学校・発表】

 生徒会活動の基本として「ジャスミン運動」を展開しており、「J=授業の時間を大切にしよう」、「A=あいさつをしよう」、「S=掃除をしっかりしよう」、「MI=身だしなみを整えよう」、「N=ノーチャイム運動に取り組もう」。周りの人がやっていない人を一緒に誘うような形で取り組んでおり、ほとんどは皆ちゃんと取り組んでいる。掃除も、最初はちょっと面倒くさいと思ったが、ジャスミン運動をやり出して、ちゃんとやろうという意識を持てるようになった。

 年3回の学年集会を大事にしており、問題があるたびにクラスや学年で話し合いを重ね、今まで言えなかったこと、つらい気持ちを伝え、またその気持ちを受け止めることで、1人の問題をクラス、学年、学校全体の問題としてとらえ、一人一人が安心して過ごせる仲間関係を作ろうと努力している。

 ほかにも、「いじめSTOPシール」や意見箱や生徒会メールによる生徒からの意見収集、いじめ撲滅ポスターの周知などで、いじめについていつでも意識できるようにして、お互いに注意しやすい環境を作っている。このような活動を始めてからは、小さな言い合いやけんかはあるが、そのたびに話し合いで解決していて、大きないじめにはつながっていない。今まで、いじめがだめだと思っていても、どうすればいいかわからなかったけれど、これらの運動を続けてきて、自分で動こう、注意していこうという意識が少しずつ広まってきたと思っている。

【新潟県上越市立直江津中学校・発表】

 最近のわが校の状況について、「縦の関係・横の関係」のふたつの観点から見てみると、縦の部分では、上級生と下級生の人間関係がぎくしゃくしていたように思う。特に、専門委員会・部活動ではうまくいかない点が多く、日常生活の中で下級生への暴言が飛び交うことも多くあり、それをされた下級生は、さらに自分の後輩にも同じことをしてしまう、という悪循環となっていた。横の関係でも、同級生同士のグループごとの対立が目立ち、一見平和そうに見えても実は、裏では複雑な人間関係を抱えているという状況だった。

 この荒れた状態に危機感をもち、生徒会や学年委員会が中心となって、全校生徒に対して『いじめ防止学習プログラム』を用いた実態調査アンケートを実施した。その結果、『どんなことがあってもいじめは許されない、というしっかりした意識が低いこと』『生徒自身が問題意識をもたないと、いじめに対するあいまいな考え方をしてしまう人が増えてしまうこと』が分かった。

 そこで、「生徒自身の活動を大事にしながら、“いじめを許さない風土”をつくることが大切だ」という意見が、生徒からも職員からも出てきた。
 具体的な取組として、1『アンケート結果についてクラス・学年で分析し、話し合う』⇒2『各クラスで、いじめの4層構造について確認する』⇒3『校長講話・担任講話に学ぶ』⇒4『学年で、いじめについてのパネルディスカッションを実施する』⇒5『各学年のリーダーが小グループ(異学年グループ)をつくり、職員も交えた、いじめについての意見交換会を開く』ということを行ってきた。特に、「いじめの4層構造」を学ぶことで、一番の問題は、いじめの現場を傍で見ている“観衆”や“傍観者”にあるということを知り、私たちは、“仲裁者”にならなくてはいけないのだという意識を持つことができた。

 また、「日常活動を大事にしよう」という考えから、『ピア・サポート・トレーニング』を取り入れた、全校共通で行う学級活動を計画し、一年間取り組んだ。特に、全クラスで毎日行った活動として効果的だったのは、「終学活のピア活動」だ。班ごとに“その日の話題の人”を決めておき、その人のいいところを探して、終学活で紹介し合うという活動を、毎日行った。自分でも気が付かなかった部分を認められ、ほめられると、うれしいという気持ちになる。紹介する側も、その人に対して思いやりの気持ちがわいてくる。こういう活動を続けていると、相手のちょっと嫌なところも、受け入れられるようになってくると思う。また、クラスや学年の雰囲気が、だんだん和やかになるのが感じられた。

 こんな活動をしていても意味がないのではないか、という無気力な人もいる。だが、日常活動がいかに大事か、ということを分かってもらいたい。今後も、生徒会の組織力を生かし、縦のつながり・横の連携を強めていくことで、“仲裁者”を増やす活動を続けていきたい。上越市には、いじめに対する取組を行っている学校がたくさんある。8月に行われる『いじめ根絶スクール集会(上越管内のすべての学校が参加)』を通して、他校の取組に学びたいと考えている。

【千葉県立佐倉東高等学校・発表】

 本校では、千葉県教育委員会でいじめゼロキャンペーンをやるということで、その呼びかけに応じて昨年11月末から取組を始めた。具体的には、評議会を開いて各クラスでいじめについて話し合ってもらうよう求めたり、またその話し合いの結果に基づき、生徒会で、いじめゼロにむけて「とめる勇気、やめる勇気、はなす勇気」というスローガンを立ててポスターを製作したりした。

 今年に入って早々、いじめ実態&意識調査のためのアンケートを実施した。「いじめを見た人は、それに対してどのように行動したか」という質問には「見て見ないふりをした」と回答した人が圧倒的に多く、また、いじめられた人が「どのように解決したか」というと、「自分で」という人が断トツだった。このことは「いじめは自分の力で乗り越えるべき」と考える人が6割にも達していることと符合する。また「いじめられる側にも問題がある」と考える人も6割に達する。しかし、いじめられていい人なんて誰もいないのだ。そのことを一人でも多くの人にわかってほしい。
 さらに、いじめとはそもそも何かということについては、いじめる側といじめられる側との間に意識の大きな食い違いが見られる。いじめる側にとってはたんなる「イジリ」に過ぎないものが、いじめられる側にとっては「イジメ」以外の何ものでもない、というようなことがよくある。そう考えれば、ひょっとしたら私の何気ない一言が誰かを傷つけてしまったことがあるかもしれない、私もまた、いつかどこかで、誰かにとっての加害者だったかもしれないという意識がとても大切で、一人一人がそういう意識を持てば、いじめも徐々に減っていくんじゃないかと思う。

 生徒会役員や各クラスの代表である評議員などが集まってリーダーとしての資質向上を図るリーダー研修会を毎年4月に行っているが、今年は、昨年からのいじめゼロに向けての取組を受けて、仲間はずれを体験するゲームをやったり、また、いじめについて話し合う分科会を新たに設けたりした。分科会での話し合いは、実際にいじめを受けた人の実体験も交えながら進めた。その話し合いの結果は、最後の全体会で発表した。いじめを受けた人が深い人間不信に陥ってしまうことや、普通の人は気にならないようなことにまで敏感になってしまうことを伝えた。また、親や教師ではなく、クラスメイトの友人のように、上下関係のないフラットな関係の人に誰か一人、心の支えになる人がいるだけで、すごく救われるということもあわせて訴えた。

【京都府京都市立塔南高等学校・発表】

 生徒会としてのいじめに対する取組は、昨年11月に行われた全市立学校277校生徒会議の参加から始まった。この京都市の中学生、高校生が集まったいじめに立ち向かう会議で、私は塔南高校代表としていじめ根絶の決意表明を発表した。

 一口にいじめと言っても、いろいろないじめがあるし、暴言についても言った側は何も思っていなくても、言われた側からすればどんなとらえ方もできる。そこで、暴言防止キャンペーンという暴言を規制する取組を学校全体で行い、各クラスの教室や学校の廊下に「暴言はやめよう」「暴言は人権侵害です。先生にも友達にも暴言を決して言ってはいけません」等と書いた張り紙を貼った。暴言のない学校ではいじめも起きにくいと考える。

 いじめは、いじめられていると感じたら、そこでいじめは始まっていると思う。周りからすれば仲間外れにしているつもりはなくても、本人が自分は仲間外れにされている、いじめられていると感じたら、それはもういじめになってしまう。一人でいるより友達といたほうが楽しいと感じるのはみんな一緒だと思う。生徒会としても、一人でもつらい思いをする人が少なくなるように、親睦を深めるような行事の運営にこれから力を入れていきたい。

 学校裏サイトと呼ばれる掲示板のことが問題になっている。時には実名を出したり個人を特定できる発言もあり、書かれた人にしてみれば、書き込んでいる人が誰なのかがわからない分、恐怖が大きいと思う。こういうサイトでのいじめは、携帯電話が普及した現代だからこそのいじめであり、学校サイトの利用をなくすために何ができるかが、私たちの今の課題。

【いじめについて誰に一番相談しやすいか】

 一番は友達。親に話すと親は心配するから、絶対言えない。先生に言っても、結局親に伝わる。

 悩んだときにはいつでも相談できるような親友がいる。

 小学校の時にはスクールカウンセラーに聞いてもらうことが多かった。中学になると交友関係も広がり、いろんな人に話を聞いてアドバイスを得ることがある。

 中学時代に不登校になったときに、スクールカウンセラーや保健室の先生に会うために学校に行って話を聞いてもらったことがあった。高校に入ると、自分で抱え込んでも、気づいてくれる友達や先生がいる。

 今までずっと一緒にいて、一番理解してくれるので、一番は母親。

 両親や先生は自分を育ててくれた人なので、申し訳なくて相談できない。何でも話していいよと言われても、いざというときに逆に出てこない。



会議の模様(※国立国会図書館ホームページへリンク)別ウィンドウで開きます
(※フォトジャーナルへリンク)

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)