子どもたちが、携帯電話のメールやインターネットを利用する機会は、近年急激に増加してきており、子どもたちの生活スタイルや人間関係づくりの面で多大な影響を与えています。
こうした中で、インターネット上の非公式サイト(いわゆる「学校裏サイト」)を利用し、特定の子どもに対する誹謗・中傷が集中的に行われたり、他人になりすまして携帯電話のメールを利用し特定の子どもに対する誹謗・中傷を不特定多数の携帯電話に送りつけたりするなど、『ネット上のいじめ』という「新しい形のいじめ問題」が深刻化してきています。
昨年9月に再開した、池坊文部科学副大臣主宰の「子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議」では、こうした『ネット上のいじめ』問題について集中的に議論を重ね、昨年12月に、直ちに取り組むべき喫緊の課題を取りまとめ、保護者を中心として「『ネット上のいじめ』問題に対する4つの呼びかけ」を行い、本年2月には本内容をわかりやすく解説したリーフレットを、全国の学校・PTAなどに対し配付したところです。
その後、さらに議論を重ね、このたび、有識者会議としてこれまでに検討してきた内容に関する取りまとめを以下のように行いましたので、ここに、報告いたします。
『ネット上のいじめ』に関しては、
などの点が主に指摘されています。
パソコンや携帯電話から、ネット上の掲示板・ブログ・プロフ等に特定の子どもに関する誹謗・中傷を書き込む。
例 いわゆる学校裏サイト上に、「まるまるさん(実名)を無視しよう」とか、「○○さん(実名)の顔がキモイ」などという書き込みをされた。
ネット上の掲示板・ブログ・プロフ等に、実名入りや個人が特定できる表現を用いて、特定の子どもの個人情報を無断で掲載する。
例 他人にホームページを無断で作成され、顔写真を勝手に載せられた上、容姿や性格等を誹謗・中傷する書き込み(キモイ、ウザイ、死ね等)をされたため、クラス全体から無視された。
特定の子どもの悪口や誹謗中傷を不特定多数の携帯電話等にメールで送信する。(チェーンメール)
例 「○○さん(実名)は、いじめを繰り返し行っている。私は決して許すことができ ない。」という全く事実無根の内容のメールを複数の人物に対して送るように促すメールが、同一学校の複数の生徒に送信された。
特定の子どもになりすましてネット上で活動し、その子どもの社会的信用を落としめる行為などを行う。(なりすましメール)
例 「○○さん(実名)」になりすまして、無断でプロフが作成され、「暇だから電話して」とか、「彼氏募集中」などといった書き込みをされたうえ、メールアドレスや携帯電話番号を勝手に記載された。
理解促進・実態把握
情報モラル教育の充実とルールの徹底
未然防止・早期発見・早期対応
いじめられた子ども等へのケア
理解促進・実態把握
保護者や教師自身が、携帯電話やインターネットが有しているメディアとしての特性や各端末の機能・性能に関する基本的な知識を習得し、理解を深めていくことが必要です。
また、保護者や学校は、子どもたちが携帯電話やインターネットをどのように利用しているのかといった、その利用実態について関心を持ち、日頃からその把握に努めることが重要です。
国や教育委員会は、子どもたちの携帯電話やインターネットの利用実態及びそのことによって生じたいじめ等の認知件数に関する調査の実施や結果の分析を行い、学校や保護者に対してその内容を広く情報提供していくことが必要です。
また、教師や保護者向けの研修・説明会や資料配付などを通じて、携帯電話やインターネットに関する基本的知識の習得や理解の促進に努める必要があります。
各携帯電話事業者等の関連企業においても、事業の実施に伴う社会的責任を認識した上で、子どもたちの携帯電話やインターネットの利用実態に目を向け、子どもたちを『ネット上のいじめ』から守るために適切な措置をより一層講じていくことが期待されます。
情報モラル教育の充実とルールの徹底
家庭では、まず、携帯電話の必要性・危険性について子どもとしっかりと話し合い、必要がない限り持たせることがないようにすることが重要です。
持たせる場合には、携帯電話やネットの利用に関する家庭内でのルールをつくり、それを徹底することが必要です。特に、フィルタリングについては、その必要性を理解・認識し、子どもが利用する携帯電話等について必ず設定していくことが大切です。
学校では、小学校の低学年段階から、情報モラルを確実に身に付けさせるため、本年3月に告示された新しい学習指導要領を踏まえつつ、各教科等を通じて、子どもの発達段階に応じた「情報モラル」に関する指導のより一層の充実を図ることが必要です。
その際に、今回の学習指導要領の改訂においては、「生きる力」という理念の共有がポイントとされ、各教科等を貫く重要な改善の視点として、コミュニケーションや感性・情緒、知的活動の基盤である「言語活動の充実」があげられていることから、「情報モラル」に関する指導においても、子どもたちが他者や社会とかかわる上で必要な力である「言語に関する能力の育成」の観点を踏まえ指導を実践していくことが重要です。
なお、実際にこれらの指導を行うに当たっては、国で作成している教員向けの指導モデルカリキュラムや指導事例を紹介する教員向けWebサイト等を活用することが有効です。
また、子どもの携帯電話の利用やその影響にも目を向けて、外部人材の協力も得ながら、適切に指導していくことも必要です。
携帯電話については、まず、家庭でしっかりと話し合い、必要がない限り持たせることがないようにすることが重要ですが、学校への携帯電話の持ち込みに関しては、これまで、
など、各学校等の判断によって様々な対応がなされてきていますが、今後は、子どもたちの携帯電話の利用をめぐる事態の深刻化を考慮し、学校での携帯電話の取扱いに関するルールを必ず策定し、それを徹底していくことが必要です。
その際に、携帯電話は、児童生徒の通学時における安全等の観点から、有効な場合もありますが、一般的に学校教育活動において、必ずしも必要なものとは言えないと考えられることから、特に、小・中学校においては、真に必要な場合を除き、学校へは持ち込まないように指導していくことも検討すべきです。
学校としても、家庭に対し、情報モラルについて家庭内でしっかりと話し合うことを呼びかけるとともに、有害情報に関する意識の向上を図り、フィルタリングの普及を働きかけていくことが重要です。
国や教育委員会は、「情報モラルを身につける」ことなどが明記された新しい学習指導要領が学校現場において円滑かつ確実に実施されるように努め、「情報モラル」に関する指導方法の改善・充実がより一層図られるようにすることが必要です。
その際に、今回の学習指導要領の改訂においては、「生きる力」という理念の共有がポイントとされ、各教科等を貫く重要な改善の視点として、コミュニケーションや感性・情緒、知的活動の基盤である「言語活動の充実」があげられていることから、「情報モラル」に関する指導においても、子どもたちが他者や社会とかかわる上で必要な力である「言語に関する能力の育成」の観点を踏まえた指導が実践されるように対応していくことが重要です。
学校への携帯電話の持ち込みについては、学校での携帯電話の取扱いに関するルールを必ず策定し、それを徹底していくことについて、今後、各学校の取組を促していくことが必要です。
その際に、携帯電話は、児童生徒の通学時における安全等の観点から、有効な場合もあるものの、一般的に学校教育活動において、必ずしも必要なものとは言えないと考えられることから、特に、小・中学校においては、真に必要な場合を除き、学校へは持ち込まないようにすることなどについても各学校の取組を促していくことが考えられます。
家庭に対しても、情報モラルについて家庭内でしっかりと話し合うことを呼びかけるとともに、有害情報に関する意識の向上を図り、フィルタリングの普及を引き続き働きかけていくことが必要です。
各携帯電話事業者等の関連企業においても、昨年12月の総務大臣からの要請の趣旨を踏まえ、今後、子どもたちが利用する携帯電話に関してフィルタリングの設定が確実になされるように協力していくことが期待されています。
学校では、日頃から『ネット上のいじめ』に関して子どもが発する危険信号を把握するように努めるとともに、その未然防止・早期発見の観点から、保護者や地域人材等の協力も得ながら、インターネット上の学校非公式サイト(いわゆる「学校裏サイト」)やプロフ等の定期的な巡回・閲覧活動を実施していくことが重要です。
また、国や教育委員会が作成する「対応マニュアル(例)(注2)」を活用するなどして、誹謗・中傷等を発見した場合や子ども・保護者等から相談があった場合の学校としての対応について、学校全体での共通理解を日頃から確保していくことが大切です。
万が一、誹謗・中傷等を発見した場合には、当該「対応マニュアル」を踏まえ、学校として迅速かつ適切に対応することが必要です。
(注2)「対応マニュアル(例)」
被害・加害児童生徒への対応、保護者への対応、サイト管理者やプロバイダへの削除要請の方法、警察等関係機関との連携の方法などをその内容とするもの。
家庭では、子どもの携帯電話やネットの使用方法等の面で従前に比して変化が見られる場合など、『ネット上のいじめ』に関して子どもが発する危険信号に十分留意する必要があります。
また、その未然防止・早期発見の観点から、学校や専門性を有する地域人材などと連携しつつ、ネット上の巡回・閲覧活動に協力していくことも考えられます。
万が一、子どもから相談を受けた場合には、子どもに対するケアやサイト管理者・プロバイダへの削除要請などの面で、学校と連携して対応する必要があります。
国や教育委員会は、ネット上の誹謗・中傷の書き込み等を発見する方法等についての実践的な研修等を実施したり、ネット上のパトロールを行う人材の養成・研修の実施機関への支援を行うことが必要です。
また、ネット上の誹謗・中傷等を発見した場合や子ども・保護者等から相談があった場合の学校としての「対応マニュアル(例)」を作成・配付するとともに、当該マニュアルを使用しての実践的な研修等を実施すること、(ネットの専門家等を含む)学校問題解決支援チームの派遣やそのことへの支援を行っていくことなどが必要です。
さらに、「ネット上のいじめ問題」に関する各学校や地域における効果的な取組について事例集を作成・配付することにより、対策の一層の充実に資することが必要です。
関連企業においては、プロバイダ等の立場として、悪質な書き込み等に関するチェック体制を整備し日常的な巡回活動を充実させること、学校等から削除要請があった場合に迅速に対応すること、また、ネット上のパトロールを行う人材を養成していく上での専門家の派遣に関して協力することなどの面で期待されています。
なお、学校等から削除要請があった場合の迅速な対応は不可欠でありますが、実際に削除されるまでの間に一定の時間が経過し、その間に被害が極めて深刻になることも懸念されることから、削除要請があった場合の暫定的な措置などについても、今後検討していくことが期待されます。
学校では、誹謗・中傷を発見した場合等には、「対応マニュアル」を参考に、被害児童生徒や保護者に対して迅速かつ適切に対応するとともに、日頃から校内の相談体制を整備しておくことが重要です。
また、『ネット上のいじめ』の特徴として、加害児童生徒が簡単に被害児童生徒になってしまうことがあることから、加害児童生徒に対しても同様に迅速かつ適切な対応が求められます。
家庭では、学校と連携して、子どもへのきめ細やかなケアを行っていく必要があります。
国や教育委員会は、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー等の配置、「24時間いじめ相談ダイヤル」の活用、学校問題解決支援チームの派遣など、教育相談体制の整備及びそのことへの支援を行うことが必要です。
今後、『ネット上のいじめ』問題に関して有効な対策を講じていく上で、とりわけ重要なことは、既に指摘したように、各携帯電話事業者等において事業の実施に伴う社会的責任を認識し、適切な措置を講じていくようにすることとともに、保護者や教師など身近な大人が、そして社会全体が、子どもたちの携帯電話やインターネットの利用の実態を十分に認識した上で、情報モラルについて子どもたちにしっかりと教え、『ネット上のいじめ』の未然防止・早期発見・早期対応等に努めることであります。
今こそ、社会全体で、次代を担う子どもたちを『ネット上のいじめ』から守り育てていくために、子どもたちのケータイ・ネットの利用実態を直視し、より望ましい利用のあり方へと、我々一人一人の意識を高め、具体的な行動へと移すべき時であり、是非、関係者の方々の御理解と御協力をお願い申し上げます。
初等中等教育局児童生徒課
-- 登録:平成21年以前 --