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資料1

子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議(第5回)概要

※ 佐藤室長より、『「ネット上のいじめ問題」に対する喫緊の提案リーフレット』及び平成19年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について説明

  •  (いじめを認知した学校の割合が55パーセントということをどう評価するかという質問に対して)平成18年度分の調査から、いじめの定義を変更し、子どもの立場に立って広く解するようになったので、認知件数が増加することは当然予測されていたが、55パーセントという割合に対する評価は、定義を変更して1回目の調査ということもあり、判断が分かれるところ。今後の傾向をしっかり見ていきたい。
  •  (都道府県ごとにいじめの認知件数にばらつきがあることをどのように考えているかという質問に対して)都道府県ごとに、調査の方法、把握の仕方にばらつきがあったのは確かである。詳細なアンケート調査や個人面接などを行っているところでは、認知件数が多くなっており、いじめはあってはならないが、必ず起きる可能性があるという認識のもと、引き続きアプローチしていただきたい。また、文部科学省としても、件数の多寡よりも、いじめを把握するに当たって、必ず定期的に子どもたちへアプローチし、きちんと対応策を練ってほしいということを引き続き周知徹底していきたい。

【NPO法人子どもとメディアの取組について】

  •  NPO法人子どもとメディアは、大学教授、高等学校長、幼児教育の専門家、社会教育の専門家、精神科医、保健師、臨床心理士、IT関係者、マスコミ関係者等が集まり、10年程前からノーメディア運動(メディアの活用をやめることにより、メディアが家庭や子どもから奪っているものに気づかせ、メディアとの主体的な関係を作り出す運動。)を始め、ここ3年程は、ネットメディア(インターネットに接続され、パーソナルメディアとして機能するパソコン、ケータイ、ゲーム機、AV機器などの総称。)の問題に取り組んでいる。
  •  ネットメディア総合対策の基本方針として、1子どもの最善の利益、2大人のネットメディアへの認識と対応、3直接コミュニケーション力の回復、4ネットメディア問題への対応体制づくり、5子どもへのネットメディアリテラシー教育の5つを設定し、まずは大人がきちんと問題を把握した上で、体制づくり、子どもへの教育に取り組んでいくことが重要だと考えている。
  •  ネットメディア総合対策はノーメディア運動を基盤とし、1その運動を普及するための支援プログラム、2啓発活動を行うネットメディアインストラクター、3地域の子どもたちが出没するネットメディアを発見し、見守る活動を行うネットパトロール隊、4非常に深刻な状況が生じている場合にネットメディアを介してコミュニケーションをとるネットコミュニケーター、4ネットメディアで起こる多様な問題に対応するネットメディア対策専門家ネットワークといった構成で体系化されている。専門的なことを相談できる体制がなければ十分な対応ができないので、4の専門家のネットワークを構築するところまで含めて総合対策としている。
  •  ネットパトロール隊は、子どもたちの活動範囲である小学校区または中学校区といった地域単位ごとに、保護者や教員、地域の方々で編成し、地域の子どもたちがつくっているサイトを人力で見るという活動をしている。
  •  ネットパトロール隊は、地域の子どもたちと深くかかわり、子どもたちから情報を引き出すことにより、ネットメディアにおける子どもたちの居場所を発見し、発見した居場所を見守る。ネットメディア上では、常にいじめなどの問題が生じる可能性があるので、有害なサイトだけでなく、普通のサイトをじっくり見守ることが重要である。
  •  ネットパトロール隊は、個人で活動するのではなく、隊員同士が連携し、お互いの経験を共有することで、よりよい活動を目指す。こういった活動は、地域の大人の力を高める点で有効。ネットメディアの問題は、保護者が対応しなければならないことが多く、ネットパトロール隊の活動を通じて、保護者を含め、地域全体がネットメディアの問題に対する意識を高め、地域全体で地域の子どもを見守っていこうという組織が形成されていく。
  •  養成講座は、座学の講座、実技習得、実務訓練、地域の状況に応じて組み立てられた他機関との連携に関するプログラムからなる。実際には、例えば福岡県筑後市は、教育委員会とPTAが連携し、今年の6月からネットパトロール隊養成講座を実施する予定にしている。

【株式会社ガイアックスの取組について】

  •  株式会社ガイアックスは、インターネット上の誹謗中傷や有害情報を、有人で24時間365日監視するビジネスを事業として立ち上げ、そこで培ったノウハウを子ども同士のコミュニケーションにおける有害情報を発見するところに生かせないかということで、昨年、スクールガーディアンというサービスを開始した。
  •  学校裏サイトとは、学校がオフィシャルに立ち上げたサイトではなく、生徒同士や卒業生が非公式に立ち上げた交流型のサイトのことであり、一般的に学校裏サイトと呼ばれるものはたくさんあるが、実際に有害な情報が書き込まれるケースは確率的に低いと考えており、一部のユーザーの問題発言がトラブルに発展するケースがここ近年で見られるようになってきている。
  •  学校裏サイトの具体的リスクは、大きく分けて2つあり、1つは他人になりすまして個人情報を書き込んでしまうというような個人情報の流出という問題であり、もう1つが、ネットいじめや自殺などの事件に発展するリスクを内包した生徒同士の誹謗中傷の問題である。
  •  学校裏サイトは、誰でも簡単に作成できてしまうということが問題点の1つとしてあり、運営会社が提供するサービスを利用して子どもたちが学校裏サイトを作成し、口コミでそのサイトの存在が広がっていくとともに、日々新たな学校裏サイトが作成されている現状にある。
  •  運営会社側の対応にも様々なレベルがあり、書き込みをしっかり監視しているところもあれば、全く監視せずに放置しているところもある。対応のレベルがばらばらであるために、誹謗中傷の書き込み等がずっとインターネット上に残ってしまうという問題に発展している。
  •  インターネット特有の問題を内包している学校裏サイトへの対策としては、1子ども、保護者、教員などにインターネットの怖さをしっかり理解させるためのメディアリテラシー教育、2フィルタリングなど、未成年に対するアクセス制限、3違法有害情報の検索・削除という3つが考えられ、1は根本的な解決になるものの、非常に時間がかかる取組であり、2はフィルタリングの精度の問題や、多種多様なメディアを広くカバーすることができないといった問題がある。そのため、これらの対策とともに、3の対策が必要であると考えている。
  •  スクールガーディアンという学校裏サイト対策サービスは、まず、学校裏サイトの検索から始まり、発見したサイトの中にどういった書き込みがあるかを分析し、分析結果を対策レポートという形で学校に渡すサービスである。学校裏サイトは、日々作成され、広がっているので、1回きりの対策ではなく、ある程度定期的継続的に検索・対応していく必要がある。
  •  学校現場がネットいじめへ対応する際の問題点は大きく分けて2点あり、学校裏サイトを検索するのが非常に難しいという点と、相談があったときにどう対応していいかわからないという点である。
  •  ある程度意識の高い学校では、先生方が自分の学校の裏サイトを定期的に検索し、監視するということに取り組み始めている。
  •  スクールガーディアンは、有人の検索を行うだけでなく、自社で開発した検索エンジンを活用し、学校裏サイトの複合的な検索を行っている。有人の検索で対応せざるを得ない部分もあり、ネットパトロールを省くことはできないが、今後、検索作業の自動化を検討し、そういったサービスを広く社会に提供できるように取り組んでいきたい。

(質疑、自由討議)

<NPO法人子どもとメディアの取組に関する質問・意見>

  •  (学校現場は費用の面で、こういったサービスの利用に二の足を踏むことが多いが、費用はどれくらいかかるのかという質問に対して)ネットメディアインストラクター養成講座は、3〜5万円程度の参加費がかかる。また、ネットパトロール隊は、講座の受講と3ヶ月程度の実働サポートということで、40〜50万円程度の費用がかかる。
  •  (強制的に削除できないということになると、問題を認識していたにもかかわらず、手を打たなかったということで批判されることも考えられるが、そういった問題にはどのようにかかわっていくのかという質問に対して)多くのサイトは、当事者もしくは学校、保護者からであれば、削除を受け付けるというスタンスであり、受け付けない場合には警察と連携して業者そのものに対して注意を発することができる。また、子どもたちの問題に、予備知識もないまま大人が直接的に介入すると、逆に深い傷になってしまう可能性もあり、子どもたちへの直接的なアクセスには非常に慎重になっているというのが現状である。
  •  (学校に知らせて、学校が対応できずにいる間に問題が生じたとき、学校の責任はどういう風に考えられるのかという質問に対して)今はまだ実績がなく、そういったケースはないが、今後生じる可能性のある問題である。しかしインターネットや携帯電話に係る問題は、第一義的責任は保護者にあるのであり、保護者にその点をしっかり認識してもらうことを基本方針としている。
  •  ネットパトロール指導員的な存在を養成し、継続的に活動を行うことにより、地域の子どものためにというボランティア的な意識の土壌を形成し、その中から意識の高い保護者を中心にネットパトロール隊を編成し、さらに活動を波及させていく仕組みをつくっていく。これにより、非常にローコストで運用できる体制が実現できると考えている。

<株式会社ガイアックスの取組に関する質問・意見>

  •  (学校現場は費用の面で、こういったサービスの利用に二の足を踏むことが多いが、費用はどれくらいかかるのかという質問に対して)スクールガーディアンについては、週1回の検索とコンテンツのチェック及び月1回のレポートというサービス内容で、月額10万円程度の費用がかかる。費用を抑えるために有人の作業を減らせるよう、システムの研究開発に取り組んでいる。
  •  (学校にレポートすることで、知らなければ済んだことを知ってしまったにもかかわらず、要請しても削除されないケースがあるということについて、実際現場ではどう考えているかという質問に対して)削除実績は6、7割程度であり、残りは依頼しても運営会社から返信さえなく、削除できないケースである。削除をすればそれでいいということではなく、実際起きているいじめや誹謗中傷をしっかり把握することが重要なことではないか。
  •  (業者の立場から見て、フィルタリングなどの規制をどう考えるかという質問に対して)フィルタリングのような規制が急ぎ足で進行するのは、インターネット業界の健全な発展という観点からも非常に危険である。

<ネット上のいじめの問題全般について>

  •  書き込みによって人が傷つくことがあるということをしっかり教育する必要がある。また、メディアを通じて流れてくる情報をただ受け入れるのではなく、自律的に判断するという訓練を小さいころから積んでおくことが重要であり、そういった意味で、特に乳幼児期からのメディア接触コントロールは大切である。
  •  学校裏サイトの問題は、これまではもっぱら中学生の問題であったが、キッズケータイの普及に伴い、ここ1年で小学生のサイトが増加し、危険度が非常に高くなっている。
  •  インターネットの問題は、地域との関連性がとても強い問題であり、保護者を含め、地域の方をいかに当事者として引き込むかが重要である。地域の子どもたちを地域で守ろうという意識を活用して、ネットパトロールの活動に参加できるよう、システム化、パッケージ化をしてほしい。
  •  特に幼児期や小学校の学童前期に、いじめと適切につきあう訓練を十分に行い、思春期になった頃にはいじめをしない子どもに育てることが大切である。
  •  いじめの問題は、まずその問題をしっかり認識することが大切であり、きちんと実態を把握し上で、積極的に対策を打ち立てることが重要である。