資料2 言語力育成のための教育内容の改善について(これまでの主な意見の例)(素案)

1.基本的な考え方及び課題

  • 言語力は、読む、書く、聞く、話すための技能であるにとどまらず、「思考・論理」や「感性・情緒」などの能力とかかわり、自己及び他者と「対話」するための手段となる。
  • 言語に関する豊かな環境が言語力を育てる土壌となる。子どもを取り巻く環境が大きく変化するなかで、言語を交わす機会が限られ、言語で伝える内容が貧弱なものとなり、言語に関する感性や技能などが育ちにくくなってきている。
     また、社会の高度化、情報化、国際化が進展し、言語情報の量的拡大と質的変化が進んでおり、言語力の育成に対する社会的な要請が高まっている。
  • 幼稚園・小学校・中学校・高等学校における児童生徒の発達段階に応じて、言語による理解・思考・表現などの方法を身に付けさせるための教育内容・方法の在り方について検討する必要がある。
  • 言語は、学習の対象であると同時に、学習を行うための手段である。学習で用いる言語を精査し、国語科を中核としつつ、各教科等での言語の運用を通じて、種々の能力を育成するための道筋を明確にしていくことが求められる。

2.思考・論理に関すること

事実・思い・考え

  • 思考・論理には、正確性が基礎となるので、事実を記録する、描写する、報告するなどの言語表現法を身に付けることが必要となる。
  • 「思いを述べる」ことと、「考えを説明する」こととを区別する必要がある。

筋道・概念・論述

  • 学習が進むにつれて、根拠や論理(推論)に基づき、「筋道を立てて考えを説明する」ことへと思考の客観性を高めていく必要がある。
  • 学習が進むにつれて、学習内容には、個別的・具体的な事象から、一般的・抽象的な概念が多く含まれる。「概念の意味を理解する」、「概念に基づいて説明する」活動が重要となる。
  • 学習が進むにつれて、クリティカル・リーディングの考え方により、与えられた情報や資料を分析・解釈したり、自らの有する知識・経験と結びつけたり、批判的に検討したりして、自分なりの「意見を論述する」ことが重要となる。

論理的な思考力を養うための教育内容

  • 観察と説明の間に「なぜ」を補って指導することや、視点を変えて多面的・多角的にものごとを見るよう指導することが重要である。
  • 書かせる指導がより一層必要である。説明文を書くことを通じて、自分の中で考えをフィードバックさせるべきである。
  • 問答やディベートなどの対話や議論の形式を用いたりすることが有効である。ディベートの形式を用いる場合には、自分の判断を保留し、肯定と否定の両方の立場から議論を作らせ、主観と客観を意識させるプロセスが重要である。
  • 指導方法を明確にするために、ワークブックなどの教材や教員の研修が必要である。
  • 日常生活の中で、新聞を読んで、自分の意見を言ってみることも大切。日常生活の中での論理的思考の育成が必要である。

3.感性・情緒に関すること

  • 論理と情緒を二項対立の問題としてとらえることは適当でない。例えば、ものごとを直感的にとらえるだけでなく、分析的にとらえることも情緒を深めることにつながる。例えば、名画の説明や分析などの活動を行うことも有効である。
  • 国語科における感想は、豊かな人間性を育成する上で大切。精神を高揚させることや感性を磨くことも重要。
  • 小説を扱うときに、内容についての討論を前提として、登場人物の関係性を分析する、作家の発しているメッセージを分析するなどの活動が有効である。

4.対話に関すること

  • 自己を表現する、他者を理解するだけでなく、自己と対話することが重要である。
  • 察することに価値を置く我が国の文化の優れた点を継承しつつ、新たな対話文化を創造することが必要である。
  • 教室内のコミュニケーションの充実により、集団としての学習力を高める視点が重要である。

5.留意点や教材など

  • 義務教育の期間の中で、言語表現法の指導を十分に行う必要がある。
  • 生活語彙が乏しくなっている。それを充足させるとともに、論理や情緒に関する高度な語彙を身に付けさせることで、思考力や情緒力が身につく。
  • 従来の教育においては、情緒・感性の面に重点が置かれ、論理や表現法への配慮が不足していた。
  • 言語力は一種の力である。それに伴うモラルや責任を併せて教える必要がある。
  • 日本のことを深く理解するために、教材として日本の文学作品を重視すべきである。
  • 子どもが熟読する対象となるような古典を教材とする必要がある。
  • 言語技術の説明や報告を積み上げるための教材も必要である。
  • 教科書を厚くして、しっかりと内容を入れる必要がある。

6.体験と言語、言語体験

  • 体験を言語化して経験とすることが重要である。
  • 体験の中から自分が伝えようとするメッセージを整理・明確化することが必要。
  • 読書の基礎体力を養うことが重要。
  • 国語と他教科との違いを認識した上で、どういう本を読んで何をするのかという指導内容を明記する必要。

7.子どもの発達段階を踏まえた改善について

基本的な考え方

  • 小さいうちは型を教え、型を使ってものを考えさせ、それが身についてくるに従って型を崩して自分の技術として使えるようにすることが必要である。
  • 発達段階の大きな流れとスパイラルの考え方とを組み合わせて教育内容を配列していくことが大切。

学校段階ごとの特質

  • 幼児期は体験や知識を共有している人に如何にうまく伝えるか、小学校では、体験を共有できていない人に伝える、小学校高学年ではものごとを複眼的に見ることにより論理的な思考を身に付けさせることが大切である。
  • 小学校では観察・実験において丁寧に見て、記録することが重要。中学校では、問題を発見・検証して他人に説明すること、高等学校では、なぜかと問いながらの活動で、事実判断に加えて価値判断を自分の言葉で他人に伝えることが大切である。
  • 幼稚園は先ず体験する時期、小学校は体験を組織化して目的に応じて整理できる時期、中学校は自らの考え方にのっとり論理的に考える時期、高等学校は妥当性をチェックし論理的に表現できる時期である。
  • 小学校段階では、観察・見学事象の表現。高学年になると、具体の世界から抽象の世界に渡ることができる。意図の推測もできるので、目的的行為の説明などが有効である。中学校段階では、問題・仮説・検証過程の表現が重要。留保条件付きの判断も重要。高等学校段階では、自己の判断根拠の表現が重要。いずれの段階でも、なぜと問いながらの活動は重要。
  • 幼児期には、イメージの形成が中心であり多くの体験が重要である。小学校低・中学年では具体的な思考が中心となるので、事実の正確な理解・記録・伝達が重要である。小学校高学年では形式的・抽象的思考が中心となるので、概念の意味を理解したり、概念に基づいて説明することが重要である。中学校・高等学校では自分なりの考え方を形成が中心となるので、文章や資料を読解し、評価し自分の考えを論述することが重要である。

8.各教科等における改善の考え方

  • 国語力を高めるためには、国語科が行うことと、各教科等が行うこととの分担と連携の整理が必要である。
  • テクストの分析・解釈・批判は、各教科等で適用できる技能である。
  • 習得と探求の間にある「活用」とは、教科の言葉で書き表すことや、自分なりに書き、それを対話により深めることではないか。
  • 算数・数学科では、筋道を立てて説明することが重要。帰納的な考え方、類比、演繹的な考え方が重要。
  • 社会科では、身近な地域の観察・調査などの項目の学習に当たって、細部に留意して記述・報告すること、法則性や概念を基に事象を説明すること、価値判断が必要な場面を設けて各自の解釈・判断を説明して意見交換することなどが重要である。
  • 理科では、小学校中学年では、植物の観察において問題意識や予想に基づいて事実を的確に記録・伝達すること、小学校高学年では、重量の保存などの科学的概念に基づき説明すること、中学校から高校では文章や資料を用いて、科学的概念を、結果とそれを検証するデータから読み解き、実証性・再現性・客観性などの視点から評価し、論述することが考えられる。
  • 理科においては、予想(仮説)の設定場面で、発想した予想(仮説)とその検証方法を互いに発表し、互いの予想(仮説)とその検証方法を承認しあうこと、結果の解釈場面で、結果の確証や反証から観察・実験の方法や予想(仮説)の真偽を検討しあうことが、コミュニケーション能力の育成に有効と考えられる。
  • 小学校の英語教育は、幅広い言語力の向上につながる。無自覚で使っている言葉を英語では言語として自覚できる。人にものを伝える難しさを知ることもできる。
  • 小学校の英語活動では、身振り手振りを含めて、知識を総動員することが大切。
  • 総合的な学習の時間を中核として、教科等における体験の体系化を図る。

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