算数・数学の学びと言語力の育成-「筋道を立てて説明する力」に焦点を当てて- はじめに

 算数・数学の学びと言語力の育成とのかかわりについては、大きく算数・数学の学びを通して言語力が育成できることと言語力の育成が算数・数学の学びを支えることがある。文部科学省は、TIMSS2003、PISA2003の結果を平成16年12月、平成15年度教育課程実施状況調査を平成17年4月にそれぞれ公表したが、これらの調査の結果を基に小・中学校の算数・数学科の課題と改善の方向を三つにまとめている。まず、「計算、数量関係の意味を理解すること」に課題であり「計算技能だけでなく、計算や数量の意味を実際の場面と結び付けて理解させる指導の充実」を図ることが必要であるとしている。そして、「数学的に解釈したり、自分の考えや推論の過程を数学的に表現したりすること」に課題があり「数量の関係や図形の性質などを考察し、見出したことを根拠をもって表現させる指導の充実」を図ることが必要であるとしている。最後に、「日常の事象と算数・数学を関連づけること」に課題があり「日常の事象を数学的にとらえたり、学んだ算数・数学を生活に生かしたりする指導の充実」を図ることが必要であるとしている。いずれにも言語力の深く関わる。
 平成18年2月の中教審初等中等教育分科会教育課程部会審議経過報告(平成18年2月13日)では、学習や生活の基盤づくりを重視する必要性が強調され、それとの関連で「言葉の重視」と「体験の充実」が示されている。前者については、次のようにまとめられている。
 言葉は、「確かな学力」を形成する基盤であり、生活にも不可欠である。言葉は、他者を理解し、自分を表現し,社会と対話するための手段であり、家族、友だち、学校、社会と子どもをつなぐ役割を担っている。
 言葉は、思考力や感受性を支え、知的活動、感性・情緒、コミュニケーション能力の基盤となる。
 算数・数学の授業は、「他者を理解し、自分を表現し,対話する」ことなしには成立しない。また、「思考力や感受性、知的活動、感性・情緒、コミュニケーション」も不可欠である。これらの手段として、また基盤として「言語」が位置づけられている。また、後者の「体験の充実」については、算数・数学の学びの充実そのものである。このようにみると、二つの視点は算数・数学の学びの充実に深くかかわっている。
 そこで、まず、算数・数学の学びについて基本的なことをまとめ、それとのかかわりで言語力の育成を「筋道を立てて説明すること」に焦点を当てて検討する。

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)