三森委員説明 資料1 1.言語技術教育
		1.1 「言語技術」教育の目的と内容
1.1.1 「言語技術」の名称
 つくば言語技術教育研究所における「言語技術」は、「言語技術」という名称の中で、表現技術を扱う「言語技術」と主に文学作品の読解を扱う「テクストの読解」の双方を指導する。従来の「国語」と、外国人への日本語教育の名称として用いられる「日本語」と区別する必要性から「言語技術」の名称を採用。
 
- (1)言語技術=Language Arts(米)の訳語
  
- (2)言語教育の名称とその内容 
 
- 米国の母語教育: 
 
- 名称:Language ArtsplusLiterature
  
- 内容:言語技術+テクストの読解(Critical Reading)
  
   
- ドイツの母語教育: 
 
- 名称:Deutsch
  
- 内容:言語技術+テクストの読解(Critical Reading)
  
   
- つくば言語技術教育研究所: 
 
- 名称:言語技術
  
- 内容:言語技術+テクストの読解(Critical Reading)
  
   
   
- (3)つくば言語技術教育研究所で「言語技術」の名称を採用した理由 
 
- 「国語」との区別
  
- 「日本語」との区別
  
  
1.1.2 「言語技術」教育とは何か
 
- (1)言語の4機能+思考の方法の訓練
  
- (2)「言語技術」教育の柱 
 
- 議論【話す・聞く】
  
- 読解【読む】
  
- 作文【書く】
  
- 思考【考える・論理的思考・創造的思考・分析的思考・批判的思考/Critical thinking】
  
   
- (3)系統的な指導体系
 上記の言語の4機能+思考方法の訓練を確実に実施するためには、教育過程における教育目標を明確にし、幼児から高校生までの各発達段階に応じた系統的な指導体系(カリキュラム)が必要不可欠 
1.1.3 「言語技術」教育の目的
 
- (1)実社会で自立して生きていくために有効な言葉の力を身に付けさせる
  
- (2)全ての児童生徒に必要最低限の言葉の運用能力を身につけさせる
 
 
- ※ 表現の方法を技術として指導する
  
- ※ 理解の方法を技術として指導する
  
- ※ 考えるための方法を技術として指導する
  
  
1.1.4 「言語技術」教育の特徴
 
- (1)部分技術から総合力へ(数学やスポーツなどの指導方法と同じ)
  
- (2)議論を中心とした授業(教え込むのではなく、考えさせ、意見を言わせる)
  
- (3)論証に基づく創造的意見(感覚的な意見ではなく、根拠に基づく意見)
  
- (4)複数の考え方・複数の答の存在(根拠に基づく複数の考え方と答)
  
- (5)記述式の宿題と試験
  
- (6)大量の読書
 
1.2 欧米の母語教育
ドイツの母語教育のカリキュラム
 
1.3 つくば言語技術教育研究所のカリキュラム【幼児月4回(4時間)・小学生月4回(4時間)・中学1~2年月2回(4時間)・中学3年+高校生月1回(2時間)】
 
1.4 麗澤中学・高等学校におけるカリキュラム【つくば言語技術教育研究所作成】【平成15年開始 平成15年~平成16年週1時間、平成17年~週2時間】
 
1.5 留学で求められる英語力と母語教育の関係
 母語教育に「言語技術」(言語技術+テクストの分析と解釈・批判)を導入することは、日本国内のみならず、欧米系の大学へ留学する際にも必要にして不可欠な技能となる。下記の技術が母語で既知か否かが、語学の習得に影響を与える。英語の苦手な日本人を返上するためにも、母語教育の中で「言語技術」の基本技術を生徒に与えることは重要。
 外国人のための中級英語教本「Developing Composition Skills, Rhetoric and Grammar」の目次:
 
- (1)Introducing the Paragraph
  
- (2)Narrating
  
- (3)Describing
  
- (4)Analyzing Reasons (Causes)
  
- (5)Analyzing Processes
  
- (6)Comparing and Contrasting
  
- (7)Classifying
  
- (8)Evaluating Effects
 
 【Developing Composition Skills, Rhetoric and Grammar,Second Edition, Mary K. Ruetten, Thomson Heinle,2003】
1.6 言語技術教育の実施に当たって早急に必要なもの
(1)教員養成のための大学院
 現在、言語技術を指導できる教員は皆無に近いため、可及的速やかに指導できる教員を養成する必要がある。言語技術は社会との繋がりが深いため、一度社会経験があり、言葉の技術の必要性を十分に認識している人物の方が教員に適している
(2)カリキュラム
 幼児から高校まで、各発達段階を考慮した系統的な指導体系
 現在は、現場の教員が各自の思いつきで言語教育を実施している状況のため、教員同士の連携、学年をこえた連携、学校をこえた連携が見られない状況。
(3)教科書と教材
 指導体系に基づいた教科書と教材の作成
 
- 言語技術1年生~高校3年生まで
  
- 文学 
 
- 厳選した詩や小説だけを掲載するのではなく、青少年に読ませたい多くの詩や物語・小説を1冊の本の中に納め、教員が扱う教材を自主選択できるようにする
  
- 例えば、小学校低学年用・中学年用・高学年用・中学生用・高校生用 
 
- ※ ただし翻訳されたものは言語技術的要素(原稿用紙の使い方に則った正書法・段落など)
 を無視して訳されたものが多いため、原書との照らし合わせが必要。
 特に児童書の翻訳は粗雑な物が多い  
   
  
1.7 つくば言語技術教育研究所が考える「言語技術」と他教科の関係
 
 
- 言語技術は全ての教科の基礎とする
  
- テクストの分析と解釈・批判(or 文学)は、日本文学並びに翻訳文学を用いて分析的な読解技術を指導し、かつ小論文にまとめさせる
  
- 国語は、漢字、文法、古文、漢文などを指導する
  
- 社会、特に歴史、現代社会、経済、倫理などは、言語技術と「テクストの分析と解釈」の手法を取り入れ、テクストに基づいた議論を中心にした授業とし、小論文にまとめさせる
  
- 理科では、実験レポート、観察レポートなどに言語技術の作文技術を応用する
  
- 英語は、中級英語においては、ライティングの指導を導入し、言語技術であらかじめ指導しておいた説明のスキルを用いてパラグラフ・ライティングをさせる。
 上級英語においては、日本語によるテクストの分析と解釈・批判のスキルを応用し、英文のクリティカル・リーディングを行う  
- 美術においては、実技に並び、絵を単に鑑賞するだけでなく、議論を通して絵の分析的な見方を指導し、考えを小論文にまとめさせる
 目的:国際社会に通用する教養を育てる  
- 音楽においては、実技に並び、議論を通して楽曲の分析(アナリーゼ)や歌曲の詩の分析などを行い、考えを小論文にまとめさせる
 目的:国際社会に通用する教養を育てる  
- 体育においては、コーチングの手法に言語技術を導入し、思考と実技が関連することを教える。財団法人日本サッカー協会が「言語技術」を指導者研修と10代の選手育成に導入。日本ラグビー協会、日本テニス協会、日本体育協会なども同様の方向性を模索している。
 
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 【広島県教育委員会における講習資料(2005年5月22日作成)より一部抜粋】