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ドリカムプランの導入に対して保護者の反応はどうだったのか。
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平成6年の31回生の時の保護者は保護者自身ドリカムプランの趣旨をよく分かっていなかったと思う。一期生が卒業してから数年経って初めて保護者はドリカムプランの趣旨が分かったのではないか。
生徒が将来どのような職業選択をするかということを考えるのは家庭教育で本来やることである。生徒の社会的自立のために我々教師ができることは何かということで始まったものである。ドリカムプランが始まって生徒が家で自分の将来について語りだしたのを見て、また、子供の自立という親と学校が共通に目指しているものであるので、ドリカムプランそのものは保護者に好評だった。
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しかし、保護者はまず大学に入学させるのが第一で、就職は二の次と考えるのではないか。
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我が校は志望動機を高めるドリカム活動と進学指導を平行して行っている。ドリカムプランは注目度が高いため、進学指導は行っていないというような誤解を招くことがあるが、実際はそうではない。生徒が家で多くの宿題をやっている姿を見て親もそのあたりは安心していたようだ。
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保護者が子供を観察してドリカムプランについて好印象を持ったのか、それとも学校が機会を設けて保護者に説明をしたのか、
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ドリカムプランを説明した文書を親に配付した。それまでの観念的な志望から具体的な志望にしようということを伝えた。創設の段階では保護者もドリカムプランが具体的にどんなものかについてよく分かっていなかったようだ。
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ドリカムプランについてだが、オープンキャンパスには生徒全員が参加しなければならないのか。
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基本的に夏休みに1人につき1校は行かせるようにしているが、強制ではない。
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引率の先生はいるのか。
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我が高校の場合、地元の九州大学の場合は多くの生徒が参加するので、先生が引率する。高校からのキャンパスツアーは、東大、一橋、慶応、早稲田、京大に行き、約120名の生徒が参加し、教員も同行した。
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ドリカム企業研修は修学旅行で行うということからすれば、生徒全員が参加するということだが、受け入れ先の企業は確保できるものなのか。
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教員が持てる全てのつてを使って様々なところに連絡をし、受け入れ先の企業を探している。また、生徒が行きたいと考えている企業に生徒自身でどのようにして行けば良いのかも生徒に調べさせる。それも勉強になる。
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12年も続いている秘訣は何かあるのか。
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ドリカムプランで行っている取り組みはどこの学校でも行っていること。これを3年間で体系的に組み立てたことが特色であるだけで、何も全く新しい取り組みを取り入れたわけではない。
生徒に卒業後の力を育てるためにと思ってやり始めたことだが、創設1年目の時に、我が校の校長がドリカムプランを全学年で行うと宣言してくれたことが大きい。職員がボトムアップで始めたことを上が拾い上げてくれた。
我が高校の場合では「のれん分け」をやった。具体的には、10人の最初のスタッフがいたが、その年の学年主任を最初の10人の中から選び2期生の時に1年目に行ったことをよりブラッシュアップして伝達するというようなことをし、1つの学年が行っているのではなく、学校全体で行っているというようなシステムづくりを特に2年目からは意識した。
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組織化がTQCを入れたのか。
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なぜ生徒指導の困難な学校が改善したのかというと、まず学校と生徒、学校と保護者の関係になると対立してしまうので、学校を変えていくに当たってはまず保護者を味方にしようと思った。PTAの役員に話しをして、生徒の保護者を一軒一軒説得しにまわった。そして、学校の方から保護者に対し要望するのではなく、逆に保護者の方から学校に生徒指導基準を提示するようにした。また、茶髪、ピアスにしても、教師がなおさせるのではなく、保護者に学校まで来てもらいなおすようにした。保護者が都合により学校に来られない場合は、地域で保護者の代わりとなる人に来てもらう。その結果、茶髪、ピアスを学校にしてくる生徒は全く見られなくなった。
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進路指導、キャリア教育にしても保護者、地域、家庭との連携は重要ということだろうか。
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連携もそうだが、もう一つの大きな要因としては、先生方のベクトルが一致していたので、一気に学校を変えようという機運が高まったことが大きい。さらに管理職のバックアップがあったため、弱い立場にある先生も物怖じせずに意見が言えるようになった。 |
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私はキャリア教育は既に全国の学校に広がったと認識している。我が高校の職場ガイダンス、出前講座、オープンキャンパスのような取り組みはどこでもやっていることだろう。
我が高校に話を聞きに来る先生がドリカムプランのノウハウだけ移行しようとするが、うまくいかないのではないか。学校が持つ文化も異なるし、それぞれの学校の問題点、学校として目指すべきものを考え、学校それぞれのドリカムプランを創るべきだ。キャリア教育の教育課程上の位置づけだが、キャリア教育は全体の学校活動でやるべきことだが、全体でやると分散してしまう可能性もあるため、やはり核となる時間が必要ではないか。総合的な学習の時間が一番核となりやすいのではないか。これがキャリア教育だというのはなく、もちろん核はあるだろうが、キャリア教育は学校それぞれのバリエーションがあるはずだ。
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我が校の課題として、各教科の中で学ぶことと社会のなかで生きる力がつながらないかということで、授業の中で試験のためのだけの知識ではなく、社会に出て役にたつようなことも教えるよう、各教科の先生に働きかけている最中である。
キャリア教育は日々の生活が全てそれにあたる。雨が降ったとしても親に迎えにきてもらうか、傘をかりるのか、雨が上がるまで待つのか選択肢はたくさんあるので、解決策を生徒に考えさせる。これがキャリア教育ではないか。
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キャリア教育は広まっているようで広まっていないというのが現状ではないか。やはり教育課程上、位置づけを明確にすべきではないか。
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キャリア教育が広まっていない要因は現場の先生がそもそも必要性を感じていないからだと思う。進学校では進学実績が全てと思っている先生もいることは確か。そのような先生は社会の雇用情勢の変化に目を向けていない。生徒達が大学へ進学したとしても、卒業後の生徒の不安感を考えているのだろうか。その不安を私たち教師が取りのぞく必要があるのではないか。学校の先生も社会の変化に目を向けるべきだ。
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キャリア教育が教育の問題だとしたら、教育課程に組みこむことによって先生に気づかせることが重要だと思う。学校教育の中でどのように位置づけるかが重要ではないか。
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キャリア教育は評価で1〜5というような数字で表すものではないと思う。評価を求めると基準が必要になるし、教師の負担の問題もあり、なかなか難しい面がある。それらは特別活動、総合的な学習、ロングホームルーム等の時間を使って効率よくやるべきであり、教科の中ではできる範囲でやれば良い。社会は非常に良い題材が転がっていると思う。
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教育委員会にいるので、18年3月の卒業生の就職状況調査をしたが、昨年が96.2パーセントで今年が96.1パーセントだった。就職状況が改善した学校の多くが2、3年生の総合的な学習の時間でキャリア教育を導入し、生徒に考えさせる教育をしたことによって未内定が減った。本県ではキャリアカウンリング研修を行っており、先生の意識も変わった。また、本県では、学校経営品質というものに取り組んでおり、例えば管理職のリーダーシップはどうか、情報の発信、共有化の観点から、公開授業をどのくらい行っているのか、、特に高校の場合だと、地域の小学校、中学校の先生に公開しているのかということでアンケートをとっている。また、キャリア教育を含めた学校の取り組みについての保護者、生徒の満足度を調査するための調査を実施している。そして、その結果を踏まえて、キャリア教育をどうするかについてのOJT研修に多くの学校が取り組んでいる。
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教育課程上にキャリア教育を位置づけることには賛成だ。キャリア教育はあらいゆる場面でできるが核になりやすい時間は総合的な学習の時間ではないだろうか。すぐに効果はでないだろうが、後々大きな効果が出てくるのではないかと思う。以前、沖縄のキャリアセンターで講演を行ったが県の教育委員会が全校にキャリア教育を実施するようにと要請していたために全校の先生が講演にきたことがある。やはり旗振り役が必要ではないかと感じた。トップがリーダーシップをとるべきではないか。そうすれば下からキャリア教育の良い事例があがってくるかもしれない。 |
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大学でキャリアプランニングの授業も出てきていると思うし、高校から大学への接続はできてきているのではないか。
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大学でそのような授業は既にある。大学の教育がキャリア教育の視点でどのように組み立てられているのか見直してみると、大学全体で、キャリア教育を行うためのシステムができていると私は思っている。しかし、大学の先生はそれを意識していない。中学校、高等学校の学校教育も少し手を加え、見方を変えれば学校のシステムとしてのキャリア教育の姿はありえるのではないか思う。
キャリア教育の柱を何にするのかをまず考えて、それをもとに、高校のシステムを見直し、キャリア教育の位置づけを見直し、どう学校教育で構成させるかを見直すべき。
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うかがった委員の話の中で職業だけではなく、社会に適合していく力の養成が重要だとうかがったが、それは非常に重要な考え方だと思う。また、委員の仰った大学生のキャリア形成の視点で大学教育全体を見直すと、キャリア教育は既に行われているのではないかと仰ったが、高校においてもどのようにキャリア教育が行われているのかを洗い出し、今すでに進路指導、生活指導等、あらゆる面で無意識のうちに行われているキャリア教育が生徒の職業観、勤労観の形成にどのように貢献しているのかを意識化することが重ではないか。また、その意識化をするための核となる時間が必要でないか。
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高校の進路指導、キャリア教育がいかに大切なのか大学の先生も分かっていない。大学の学生で、自分がやりたいこととかけ離れたところに就職してしまった学生が相談にきたことがあるが、そのような学生を見ると、大学生がもつ悩みを高校にも発信する必要があるのではないかと思う。
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高校時代の状況がどのように大学教育を意味づけるかという連携が必要になってきていて、大学という教育機関と高校という教育機関の接続というのを考えてみるべき。
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キャリアカウンセリングで肝心なのはどういう高校を目指すから、あなたはどのような分野で練習が今必要で、高校でどのような科目を学習するのかをしっかり指導するのが重要ではないか。
高校教育で問題なのは、選択の余地が文系・理系の2つしかないことである。生徒のやりたいこととあまりマッチしないケースがある。やりたいことが決まる前にコース分けが決まってしまうという問題がある。
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我が高校では1年の6月に文系・理系コースに分かれる。それとドリカムのグループ分けは同時並行で行われるが、ドリカムグループは自分の希望が変われば、別のグループに変えることができるが、文系・理系コース分けでは途中から変更ができないということで、保護者からも不満が出ている。
選択していく力が高校で教科を選択する過程で行われ、大学の学部を選ぶ過程で行われ、その結果どのような結果になるかということの話をするのが重要。また、それと全くの逆の視点で、ドリカムの視点で、高校生段階で知っている知識には限界があり、高校生のうちにやりたいことを探させると視界が狭くなってしまうことがあるので、ある程度のいいかげんさも必要だと思う。 |