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高等学校におけるキャリア教育の推進に関する調査研究協力者会議(第1回)議事概要

1. 日時
  平成18年4月7日(金曜日)10時〜12時

2. 場所
  文部科学省10階F3会議室

3. 議題
  高等学校の現状と課題等

4. 出席者
 
(協力者) 渡辺(主査)、新井、上田、鹿嶋、玄田、甲田、西山、和田の各協力者
(文部科学省) 布村大臣官房審議官、坪田児童生徒課長ほか

5. 議事概要
   布村審議官より挨拶後、各委員の紹介があった。その後、互選により渡辺委員を主査に選出し、各委員から自己紹介及び取り組みについて以下のとおり簡単に説明が行われた。

 我が高校では、キャリア教育という言葉が活字となる以前から、普通科ということもあり、生徒全員が職場実習、企業訪問、大学訪問等を実施している。今では正式な制度としてではないが、中学・高校が合同で進路ガイダンスを行っている。我が高校の先生が中学校で説明を行ったり、逆に中学校の先生が我が高校で説明をしたりということも始めている。

 我が校は、二つの高校から成り、一つの高校では技術コース、音楽コース、もう一つの高校では外国語コース、体育コースに別れている。2年後は統合し集合型専門高校として、国際科、理数科、芸術科、スポーツ科という4つの学科になる予定。最近、キャリア教育というのが追い風になって独創的なことができるようになってきている。1年生の総合的な学習の時間では自分の適性を知り、情報を集めるなど、進路選択の手法についての時間を取り入れた。それにより、生徒の進路選択の仕方が前向きに変わってきたが、一方で課題もある。

 現在、日本進路指導協会の調査に関わっている。16、17年度の委託の実態調査は調査としては17年振りだが、高校に関しては、17年前の調査結果と数字的には変わっていないと思う。総合的な学習の時間が設けられたり、産業社会と人間の科目が設けられたりで進路指導に当たる時間が増えてはきたが、普通科高校における進路指導はうまくいっていないのが実感としてある。

 キャリア教育についての意味を現場の先生たちはもっと分かりやすく伝えてくれるよう求めているので、キャリアの意味を学校の先生、また保護者に情報提供する必要がある。全国的な調査がないからはっきりとは分からないが、フリーター、ニートが普通科で多く輩出されることを考えれば、普通科をターゲットに議論することには賛成である。普通科において、キャリアとは何かについての情報を具体的に腑に落ちるような形で提供する必要がある。また、実態についてもっとよく知ってもらうための知恵を出していくべき。抽象的にキャリアについて情報提供するのではなく、具体的な事例を通して情報提供していくべき。
 現状では子どもたちのニーズに適った授業になっておらず、子どもたちは自分の適性を知りたいと思っているのだからそれに適った取り組みをすべき。子どもたちが自分の適性を知るためには、1職場で実際に働いてみること、2目標を持つこと、3基礎を徹底することの3点があると思う。
 キャリア教育では職業と家庭生活は両立するという視点も意識する必要があるのではないか。

 現在の高校では教育課程の位置づけで色々な教育が流れ込んできており、小さな単位数が多く並んでしまっていて、生徒は無力感、不足感を感じているので、キャリア教育を行うのであれば小単位制は止めて選択制にしたらどうか。
 現在の高等学校では生徒の実態に応じて様々な教科を組んでいる。キャリア教育を導入しようとしても生徒たちに負担になってしまうが、キャリア教育の導入は不可欠なので、キャリア教育の何が不十分なのかをより議論すべき。
 子どもの好きなことに対するモチベーションは学校で全てつくることができるのか疑問なので、家庭の役割も忘れてはならない。

 文部省のレッツという事業を担当した時に職場体験をした生徒と体験学習をしなかった生徒の就職後の離職状況についての調査を行ったが、12パーセントほど職場体験を経験した生徒の方が数値が良かった。
 本県はキャリア・スタート・ウィークの取り組みはあまり芳しくはないが、16年度からキャリア教育総合推進事業の中でインターンシップ、保護者啓発、教員の研修等を行っている。職場体験については中学では169校中17年度は168校が3日程度実施している。しかし、高校では県立高校が64校ある中、35校しか実施していない。しかも普通科では6校のみしか実施していない。進学校でのキャリア教育についての認識がまだまだ低い現状。
 本県では教育委員会で普通科高校の生徒をインターンシップで受け入れ、普通科高校の先生に見てもらった結果、18年度に高校で新たにインターンシップを行う高校が出てきたため、一定の効果はあったが、未だにキャリア教育とは何か等の質問があり課題は多い。
 キャリア教育を進めるため及び、受け入れ先企業の開拓のため、地域の商工会議所、商工会連合会と連携を図る会議を設けているが、キャリア教育総合推進事業でインターンシップを経験した生徒が15年度から17年度にかけて1,500名程増加した。受け入れ企業についても倍近くの800程に増加した。
 県内の進学校の普通科高校におけるキャリア教育をどう進めていくのかについて話し合い、進学校においては、とにかく就業体験を経験するのではなく、例えば、医者を希望するのであれば大学について、弁護士希望のであれば弁護士事務所で働くことはどういうことかについて、考えさせる機会をもってはどうか、ということで私学の校長先生を集めて説明会を5月の上旬に予定している。また、中学で職場体験を経験しても高校にそれがつながらないということについて県をあげて検討している。

 我が高校では先生たちは意識していないがキャリア教育を導入している。別の高校に勤務していた頃はドリカムプランということで生徒たちに何が必要かということを現場の感覚で考えた時に、偏差値でなく社会に出た時に生徒の力になるのは何かということで、ドリカムグループという志望別のグループにおいて卒業後の10年後、20年後の自分をイメージして自分の進路選択をしていくという取り組みを行ってきた。
 キャリア教育とは何も特別なものではなく、学校の活動全てがキャリア教育に当たると思っているが、キャリア教育の核となる時間を持つことが必要と思っている。また、進学校では、キャリア教育と受験勉強をどうリンクさせるかを考えていきたいと思う。

各委員の自己紹介及び取組の説明後、以下のとおりフリーディスカッションが行われた。

 小学校、中学校でキャリア教育を導入しようとすると、なぜ、こんなに早い段階で職業教育、進路指導をやるのか、ということで、学校側はキャリア教育の導入には拒否的になる傾向がある。学校は生きる場であり、学校を楽しくし、おもしろさを見いだせる場であるということを認識できるかどうかが課題である。
 現在、中学校ではキャリア・スタート・ウィークを利用しながらキャリアをどうするかという段階にきている。しかし、高校に行った途端にそれが途切れてしまう。小・中学校では連携ができているが、高校でどうしても途切れてしまうのが問題だ。

 我が高校では、生徒が何かやろうとした場合、教師が型にはまったやり方を教えるのではなく、生徒に自分からやるように仕向ける指導を行っている。また、目標を決めて一直線で進むのが人生ではなく、就職に失敗したとしても一年くらい就職浪人してもいいから自分で考えて人生を決めるよう指導したら離職率が改善した。さらに、就職のための面接指導は、一切行っておらず、普段の学校生活の中で社会への接続を意識して行っていれば就職のための面接指導は必要ないのではないかと思う。

 普通科高校の進路指導で改善が必要なところは、学校の中で生徒が選択できる仕組みがないところである。生徒をレールに乗せる仕組み(例えば、生徒に文系、理系のどちらかを選択させる等)にはなっているが、生徒がいろいろ挑戦し、失敗しながら学んでいく仕組みになっていない。生徒一人ひとりが別の選択をすることができる仕組みが必要ではないか。高校でのキャリア教育の中で、子どもたちがどのように学習するかを選んでいく仕組みをどう作っていくかが重要である。

 学校での活動全部がキャリア教育だと考えている。今すでに行っている教育活動がキャリア教育の視点からどういう意味を持っているかを全国の高校の先生に発信していくのが重要ではないか。

 総論では賛成だが、今あることをどう意義づけてやっていくかという意識をもってやらないと現場の先生は「何もやらなくていいのか」という錯覚に陥ってしまう危険性があるので注意が必要ではないか。

 全てがキャリア教育だとしてしまうと、無責任になってしまうので全体としてやりつつ全てのことに意義を見いだし、核になる時間を設けキャリアについて意識させる時間というのが必要ではないかと思う。

 高校生が大学を選ぶ段階では先輩たちの話を聞いて大学をどのような基準で選んでいけばよいのかがわかっているが、大学生が就職の段階になると生徒はどのような基準で企業を選んでいけば良いのかがわかっていない。普通科の高校においては就職のためのノウハウを教えておくべきではないか。

 生徒に労働三権を教えるのもいいが、現実に困った時にどう対処すれば良いかを教えるのが重要だと思う。その際、教員の負担を増やそうとすると失敗するので、地域や産業界との連携だけではなく、大学生、卒業生等の若い力が必要。若者の問題は若者で解決するべきではないか。

 教職課程をとっている学生が中学校、高校へ教育実習ではなく、教員の補助としてインターンに行くというのが私学では進んできている。これを契機として教育委員会も目覚めてくるのではないか。それとの関連で、成績の良くない中学1年生が小学校に教えに行ったりするという制度があれば自信にもなるし、つながりが増えるのではないか。これは大学にとってもメリットがあるだろう。

 現在、生徒たちは非常に多チャンネル化した環境の中にいる。キャリア教育として良かれと思ってやったことが逆に子供たちにとって精神的に圧迫を感じてしまうこともあるので注意が必要。

 生徒が安心感をもって将来を選択していくためには、社会におけるセーフティネットのシステムについて教えるべきではないか。

 それら社会におけるセーフティネットは中学の公民、高校の現代社会の教科書に出ていること。しかし、日本の経済が右肩上がりの時はそれらは教えなくて済んでしまった。今やらなければならないにも関わらず、昔やらなかったから今もやらなくてもよいというわけにはいかない。今の中学校、高校ではやるべきことをやっていないのではないか。

 「生き残っていく力」とはすなわち「選択する力」である。選択するためにはメソッドが必要。メソッドとは、自分を知ったうえで情報を集め、自分の価値観を確認し、それをふまえて自分の将来を考えること。これを学校教育のなかでプログラムしていくことが必要ではないか。


(初等中等教育局児童生徒課)

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