3.国が実施する学力調査の枠組みについて

(1)調査の基本的枠組み

 全国的な学力調査は,国において実施する教育に関する基本的な調査であり,

  • 全国の小中学校等の児童生徒の教科の内容の理解・活用等に関する調査
  • 児童生徒の学習意欲,学習方法,学習環境,生活の諸側面等に関する調査
  • 児童生徒の学習環境,生活の諸側面と学力との相関関係等の分析,及び,各学校等における教育条件の整備状況と学力との相関関係等の分析

 を基本的な枠組みとして実施する。

(2)全国的な学力調査の対象とする学年・実施教科等

 対象とする学年については,義務教育における各学校段階の最終学年における到達度を把握するため,まずは小学校第6学年及び中学校第3学年の児童生徒とすることが適当である。

 対象とする実施教科については,国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や一定以上の教育水準が確保されているかどうかを把握する必要があること,大規模な調査を確実に実施する必要があることに加え,

  • 読み・書き・計算など,日常生活やあらゆる学習の基礎となる内容を教える教科であること
  • 国際学力調査において読解力が低下(PISA2000:8位からPISA2003:14位)していることや教育課程実施状況調査において国語の記述式問題や中学校の数学に課題が見られることなどの課題が見受けられること

 を考慮すると,まずは小学校の国語・算数,中学校の国語・数学とすることが適当である。

 実施時期については,児童生徒に対する学習改善に役立てるため,年度の早い時期に調査を実施し,できるだけ早い時期に学校等へ結果が返却されることが必要である。

 実施頻度については,義務教育におけるPDCAサイクルの確立に向けて,教育活動の結果検証を継続的に実施する必要があるため,毎年実施することが適当である。

(3)全国的な学力調査の実施規模

 実施規模については,以下の観点から,原則として,対象学年の全児童生徒を対象として実施することが必要である。

  • 義務教育におけるPDCAサイクルを確立するため,教育活動の結果をきちんと検証するために実施する必要があること。
  • すべての児童生徒の学習到達度を把握することによって,国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や一定以上の教育水準が各地域等において確保されているかどうかをきめ細かく把握するとともに,これまでに実施されてきた教育及び教育施策の成果と課題などその結果の検証を国の責任で行う必要があること。
  • すべての教育委員会,学校等が,全国的な状況との関係における学力に関する状況,教育条件の整備状況,児童生徒の学習環境や家庭における生活状況等を知り,その特徴や課題などを把握し,主体的に指導改善等につなげる機会を提供するとともに,広い視野に立って教育指導等の改善を図ることや教育施策の改善につなげることにより,義務教育の機会均等や一定以上の教育水準を確保することが可能となること。
  • 各学校が,学校評価において特色ある教育活動を適切に評価する際に,具体的な指標に基づいて適切な学校評価を行うことができること。

(4)教育課程実施状況調査等との関係について

 教育課程実施状況調査については,学習指導要領の目標・内容に照らした教育内容全般にわたる全国的な状況の把握を通じて,学習指導要領や指導の改善のための基礎的なデータを得るという意義・目的を明確にすることにより,全国的な学力調査との役割分担を図る。このため,その実施の方法,規模,頻度などを今後十分に検討することとし,別紙1 国が実施する学力調査の基本的な枠組みについての整理のとおり整理することが適当である。

 その際,教育課程実施状況調査については,教育内容全般にわたる全国的な状況をより客観的に経年で把握できるようにするため,様々な難易度の問題を蓄積するなどの技術的な基盤の構築に向けて,中長期的に検討すべきである。

 都道府県や市区町村等が独自に実施している学力調査については,国が実施する調査の意義・目的を明確に示すことにより,対象学年,実施教科,調査内容に関し,国とは異なる取組を推進する目的で実施するなど,地域の特色や工夫を生かしつつ国の学力調査とは異なった視点に立って実施されることが期待される。その場合,学校等における負担の増大を生じさせないよう十分配慮することが必要である。

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初等中等教育局学力調査室