1 経緯 |
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○ |
特に意見なし
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2 全国的な学力調査の意義・目的について |
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(1) |
国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や一定以上の教育水準が確保されて
いるかを把握し、教育の成果と課題などの結果を検証する |
○ |
目標設定とその実現のための基盤整備を国の責任で実施した上で、市区町村・学校の権限と責任を拡大する分権改革を進めるとともに、教育の結果の検証を国の責任で行うという基本方向に異論はない。教育活動の結果を検証するための具体的方策の必要性についてもご指摘のとおりである。ただし、これらの意義・目的が一般市民にもよく浸透するよう、分かりやすく説明し、理解を深めるための工夫が必要である。
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○ |
全国的な学力調査を実施することにより、各地域等における教育水準の達成状況を把握するともに、国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や一定以上の教育水準が各地域等において確保されているかを把握する必要があるという趣旨は理解できる。しかし、教育課程実施状況調査と別に学力調査を実施する意義や目的をより明確にする必要がある。また、学力調査の実施に当たっては、測定するべき学力の達成目標を明らかにした上で行われる必要がある。
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○ |
教育条件の整備状況や、意識調査等の実施による児童生徒の諸側面や学習習慣等についての状況の把握、及びこれらと学力との相関関係の多面的な把握・分析の必要性は、ご指摘のとおりである。
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(2) |
教育委員会及び学校などが広い視野で教育指導等の改善を図る機会を提供するなどにより、一定以上の教育水準を確保する |
○ |
質の高い調査問題を開発した上で全国的な学力調査を実施することにより、すべての教育委員会、学校等が、全国的な状況との関係の中における学力の状況などを知り、その特徴や課題などを把握して、主体的に指導や学習の改善等につなげる機会を提供することができるということについては、その趣旨は理解できる。
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○ |
各学校が全国的な状況と比較して自らの状況を知り、課題を把握して主体的に改善に取り組むことが期待されているが、後述されるように国語と算数・数学の2教科で実施される場合には、当該教科に偏ってしまうおそれがあり、一部の教師だけが当事者となり、学校全体としての学習指導の充実・改善とはなりにくいと思われる。
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○ |
知識・技能等を活用する力などにかかわる調査問題により、学習指導要領に示される内容等を正しく理解するよう促すとともに、重視される力を子どもたちに身に付けさせるといった国として具体的なメッセージを示すこととなるという点については、以下の理由から疑問があるとの声も聞かれる。
まず「活用する力」などが具体的にはどのようなものか分かりにくい。これまでの学力についての説明を補足するような形で、新たな学力の捉え方を提示するようになり、現場の教員が混乱してしまうのではないか。また、「学習指導要領に示される内容等を正しく理解するよう促す」問題であるとすれば、学習指導要領の目標や内容に照らした教育内容の定着状況を把握する教育課程実施状況調査の調査問題と大きな違いはないように思われる。
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○ |
全国的な学力調査の結果を提供することで、各学校が一つの具体的な指標に基づいて適切な学校評価を行うことができるという点については、特定の学力の一部分、一部の教科の調査結果に基づく指標であり、それだけでは学校の教育活動を適切に評価することはできない点に十分留意する必要がある。
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3 国が実施する学力調査の枠組みについて |
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(1) |
調査の基本的な枠組み |
○ |
特に意見なし
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(2) |
全国的な学力調査の対象とする学年・実施教科等 |
○ |
対象とする学年については、ご指摘のとおりである。ただし、調査結果を学校及び児童生徒に知らせて学習指導の改善を図るのであれば、できるだけ早い時期に実施して、例えば夏季休業前に調査結果を返却できるようにする必要があるのではないか。その際、学校の負担が増加しないよう十分配慮する必要がある。
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○ |
対象とする実施教科については、さらに検討が必要と考える。都道府県独自の学力調査では、35都府県で、国語と算数・数学に加え英語の調査を実施している。一定の教育水準が確保されているかどうかを、国語と算数・数学の2教科の調査結果で把握することは、適切とは思われない。
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○ |
全国的な学力調査は、従来の教育課程実施状況調査とは調査の規模や調査結果の公表・返却の扱いが大きく異なり、教育委員会や学校に対して大きな影響を与えるものと予想される。そのため、実施教科が2教科に限定されることで、学習指導の改善の取組が当該教科に偏ってしまうおそれがある。昨年10月の中央教育審議会答申においても、理数教育の充実や小学校段階の英語教育の充実が求められている。また、答申の冒頭では、義務教育の役割として国家・社会の形成者の育成が掲げられており、社会科教育の充実も重要である。都道府県においては、国語、算数・数学だけでなく、社会、理科、英語を実施教科としているところが多い。全国的な学力調査との代替を考えている都道府県にとって、実施教科が限定されていることが大きな課題となる。
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○ |
実施頻度については、都道府県がこれまで実施してきた同様な調査であれば、国の調査に代替させることにより、市町村や学校の負担を軽減することができるが、内容が異なる新しい調査であるならば、毎年実施することが適当かどうか、十分検討する必要がある。
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(3) |
全国的な学力調査の実施規模 |
○ |
全国的な学力調査の実施規模について国が対象学年の全児童生徒を対象として調査を行うとしている点については理解できるが、更に必要性とメリットを明確に説明することが望まれる。この調査で、すべての児童生徒の学習到達度を把握できるのであれば、一定水準に到達できていない児童生徒に対して、明確な国の支援が必要とする意見もある。
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○ |
「各地域等」における教育水準の把握については、国にとっては、従来の教育課程実施状況調査の集計・公表の単位であった大都市、都市、町村という分類に加えて、都道府県単位の教育水準を把握することが適当ではないか。市町村単位・学校単位の把握は、都道府県や市町村に任せるべきと考える。
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○ |
全国的な学力調査の調査結果をすべての教育委員会や学校が知ることができるようにするためには、悉皆で調査を実施するとともに、すべての自治体や学校の調査結果を国が集計しなければならない。このことが、情報公開の対応など新たな課題を生み出すことになるため、十分な検討が必要である。
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(4) |
教育課程実施状況調査等との関係について |
○ |
学校教育は、学習指導要領に基づいて行われているのであるから、全国的な学力調査の目的である教育水準の達成状況の把握については、学習指導要領の目標・内容に照らした教育内容の全国的な定着状況を把握する教育課程実施状況調査の調査結果で可能と思われる。したがって、本検討会議では、教育課程実施調査を継続していくことを前提として議論を進めているが、教育課程実施状況調査とは別に、全国的な学力調査を実施する意義や目的、役割分担の違いをより明確に示すことが望まれる。また、両調査とも学習指導要領の目標を達成するために実施するものであるので、統一化に向けた検討を行うべきとの意見もある。
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○ |
これまで都道府県や市区町村が実施してきた教育課程実施状況調査と同様な調査であれば、国の調査を補完する形で実施しやすいが、新しい内容の調査である場合は、国と都道府県・市区町村との役割分担が難しく、それぞれに調査することとなるので、結果的に学校の負担の増大につながる心配がある。そのため、例えば国の調査を2・3年おきに実施し、自治体独自の調査との整合性を図るなどの方策を考えるべきであり、国と地方とが協議する場を設置すべきであるとする声もある。
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4 調査問題及び質問紙調査について |
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(1) |
調査問題の出題範囲・内容に関する基本的な視点 |
○ |
測定すべき学力について構造的に捉えるとともに、複数の視点から把握する必要があるということは、ご指摘のとおりである。
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○ |
調査問題の出題範囲・内容について、「各学校段階における各教科などの土台となる基盤的な事項に絞る」ことについては、その趣旨を理解できる。ただし、学習指導要領に示す内容が基礎・基本であり最低基準であるとしてきたので、土台となる基盤的な事項に絞って全国的な学力調査を実施することで、国が二重基準を示すことにならないか検討する必要があるという意見もある。
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○ |
主として活用に関する問題については、具体的にはどのような力をみるのか。調査結果を指導に生かすためには、思考力、判断力、表現力などの評価の観点との関連を明確にする必要がある。
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○ |
多くの都道府県や市区町村等は、教育課程実施状況調査に準じた内容で学力調査を実施しており、全国的な学力調査との代替を考えている自治体にとって、調査内容に隔たりがあることが大きな課題となる。
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○ |
教員による指導改善や児童生徒の学習改善・学習意欲の向上に役立つよう、調査問題の内容や形式を工夫することの重要性については、ご指摘のとおりである。そのためにも、調査の趣旨や必要性、調査内容について、学校の教員が十分理解した上で、実施されるようにする必要がある。
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○ |
保護者や社会に対して客観的かつ正確な情報を提供するという意義があるという点は、ご指摘のとおりである。ただし、公表の具体的方法については、慎重な検討が必要である。
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(2) |
調査問題の形式など |
○ |
対象となる児童生徒に対して共通の問題冊子によって実施することは、ご指摘のとおりである。
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○ |
主として活用に関する問題については、採点に関わる制約はあっても、今回の調査の趣旨から考えれば、できるだけ記述式の問題を取り入れる必要があると考える。
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○ |
調査に要する時間は、2教科で実施する場合は、児童生徒や学校の負担を考慮して、質問紙調査に要する時間を含めて、3単位時間程度で実施できる内容とすることが望ましいと考える。
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○ |
調査問題や採点基準、出題のねらいなどの公開については、ご指摘のとおりである。
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(3) |
質問紙調査に関する基本的な視点 |
○ |
「学力を把握する視点」については、「関心・意欲・態度」以外にどのような視点があるのか明確にする必要がある。
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○ |
「学力の規定要因を分析する視点」については、ご指摘のとおりである。しかし、別紙3で児童生徒の生活の諸側面に関する質問項目は、いずれも家庭生活に関するものだが、学校における生活態度など、学校生活に関する質問項目も加えた方がよいのではないかと考える。
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(4) |
質問紙調査の形式など |
○ |
ご指摘のとおりである。
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5 調査結果の公表及び返却について |
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(1) |
教育課程実施状況調査や都道府県等で独自に実施されている学力調査における調査結果の公表及び返却にかかる現状 |
○ |
特に意見なし
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(2) |
調査結果の公表の具体的方法 |
○ |
国が公表する調査結果は、国全体の状況に加えて、都道府県単位の状況とすること、また、市区町村単位の状況については、個々の状況を公表するのではなく、地域の規模に応じたまとまりごとの状況にとどめることについては、概ね賛同できる。
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○ |
ただし、都道府県単位の状況を公表するに当たっては、調査結果を踏まえ、必要な都道府県に対して、国が教員加配など特別な支援を行うよう努めるべきではないかという意見もある。
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○ |
調査結果の示し方については、さらに検討が必要と考える。学力の高低だけでなく、課題を明らかにするために、4つの区分毎の公表に加えて、その分析結果に基づいて今後の指導方法・内容の改善の方向を具体的に示すべきである
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○ |
「学力に関する分布の状態をあらわすグラフ等」に関する括弧内の説明の意味が不明である。「現時点において個々の単位の状況まで公表すると序列化や過度な競争につながるおそれがありその影響は大きいと予想されることなど考慮し、市区町村単位の状況を公表するのではなく、地域の規模等に応じたまとまりごとに公表する。」とする中間まとめと矛盾が生じる。
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○ |
都道府県単位の調査結果を公表する場合は、序列化や過度の競争を招かないようするために、何らかの形で期待される達成水準を示すべきと考える。
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○ |
具体的な得点等の示し方についても十分な検討が必要である。標準偏差などを示すことにより、個人の調査結果を返却した場合、偏差値の算出を促して進路指導に影響を与えることにならないかなど、データの活用の在り方を含めて慎重に検討する必要がある。
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○ |
質問紙調査の結果の公表については、ご指摘のとおりである。
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○ |
公表に当たっての配慮については、序列化や過度な競争等につながらないよう、国の責任で十分な取組をお願いしたい。
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(3) |
調査結果の返却の具体的方法 |
○ |
調査結果の返却の具体的方法についてはご指摘のとおりだが、返却された調査結果の公表や情報公開の対応について十分検討して課題の解決を図ることが前提となる。
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○ |
返却に当たっての留意点はご指摘のとおりである。
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○ |
個々の児童生徒に対する調査結果の返却についてもご指摘のとおりである。返却に当たっては、調査結果の見方や留意点を示した説明資料を添付するなどの配慮が必要である。
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○ |
都道府県等に国から返却された調査結果を独自に公表することについての指摘は、概ね賛同できる。しかしながら、8つの都県では、市区町村間の序列化や過度の競争につながらないよう配慮しながら、それぞれの目的や役割を勘案して、市区町村単位まで調査結果を公表しているところであり、都道府県等が国から返却された調査結果を独自に公表することについては、都道府県や市区町村の判断に委ねるべきとの意見もあるため、引き続き検討が必要である。
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○ |
都道府県、市区町村、学校が、自己の調査結果を公表することについては、ご指摘のとおり引き続き十分な検討が必要と考える。
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6 その他の諸課題について |
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(1) |
得られた調査データの取扱い |
○ |
情報公開法における不開示情報として取り扱うことが本当に可能なのか十分な検討が必要である。また、国においては不開示の扱いができても、調査結果を返却された各都道府県等では、情報公開条例によって開示請求が出された場合、公開せざるを得ないのではないかとの疑問も残る。都道府県、市区町村段階での情報公開への対応を国の責任において明確にすべきとの意見もあるしたがって、調査データの結果公表による学校間の序列化や過度な競争が生じないよう、この点についても十分に配慮する必要がある。
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○ |
調査データの取扱いに関する配慮や研究機関等への提供については、ご指摘のとおりである。
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(2) |
国立学校、私立学校等の参加についての扱い |
○ |
特に意見なし
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(3) |
配慮が必要な児童生徒に対する調査について |
○ |
ご指摘のとおりであるが、あくまでも原則とし、各児童生徒の実態に応じて、当該教育委員会や学校長の判断に委ねるべきと考える。
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(4) |
地域の特色ある教育活動への配慮 |
○ |
学校間の序列化や過度の競争を生じないような配慮が不十分な場合は、逆に、全国的な学力調査の実施が地方や各学校の特色ある教育活動を阻害するおそれもあり、調査結果の公表・返却については、十分な検討が必要である。
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○ |
都道府県や市区町村で独自に実施している学力調査に関する指摘には疑問がある。全国的な学力調査は教科が限定され、調査内容も従来の教育課程実施状況調査と異なるため、都道府県や市区町村の学力調査との代替や役割分担が難しく、学校の負担の軽減を図りにくい。
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(5) |
実施体制や将来の展望など |
○ |
概ねご指摘のとおりである。
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○ |
実施運営に当たっては、学校の負担軽減に十分留意する必要がある。
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○ |
国においては、全国的な学力調査の実施とともに、国としての教育条件の整備に一層努める必要がある。
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