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全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議(第2回)議事概要

1. 日時: 平成17年11月24日(木曜日)10時〜12時30分

2. 場所: 如水会館 3階「松風の間」

3. 議題: (1)問題作成について
(2)質問紙調査について
(3)その他

4. 出席者:
(委員)
梶田座長、浅田委員、荒井委員、市川委員、大江委員、加藤委員、喜多委員、澤本委員、清水(静)委員、清水(美)委員、田村委員、寺井委員、中村委員、耳塚委員、山崎委員
(事務局)
文部科学省: 樋口審議官、布村審議官、宮川視学官、田中視学官、常盤教育課程課長、高口視学官、山下専門官
国立教育政策研究所: 惣脇教育課程研究センター長、舟橋研究開発部長、三宅基礎研究部長、長崎総合研究官、富山調査官、西辻調査官、吉川調査官、永田調査官、長尾調査官

5. 議事
(1) 座長より本日の会議を非公開にすることが諮られ、了承された。
(2) 各都道府県における独自の学力調査について、東京都、和歌山県、広島県の学力調査に関わっている各委員から、現在の取り組み状況や課題などについての説明後、質疑応答が行われた。主な意見は以下のとおり。(○:委員、●事務局)

委員  最近、「学力」に関心・意欲・態度を要素に入れるという考え方が一般的になっているが、それをどう意識し、調査にどう取り入れているのか。また、現場にどうフィードバックしているのか。

委員  東京都の場合、学力を単なる知識の量のみで捉えるのではなく、学習指導要領に示された基礎基本的な知識や技能を身につけることはもちろん、自ら学ぶ思考力、判断力を含めて調査をしている。関心・意欲・態度をペーパーテストで測り、分析的に示すための方法等については、引き続き研究する。

委員  和歌山県の場合、県独自の調査については、記述式問題を取り入れて、関心・意欲・態度も測れるように工夫している。

委員  広島県の場合、基礎・基本を中心としたものになっており、関心・意欲・態度については、意識調査を併せて実施することで把握しようとしている。

委員  全国的な学力調査においても質問紙調査を想定しているが、この方法が関心・意欲・態度を捉える一つのアプローチとしてこの30年ほど定着してきている。また、記述式問題等でも関心・意欲・態度が測れるのではないかという意見もあるので、今後議論してもらいたい。

委員  問題の難易度をどのように設定しているのか。

委員  東京都においては、教師が通常想定される授業を行って児童生徒が支障なく学習すれば回答できる問題を基本とし、通過率7割程度を目途にしている。

委員  和歌山県においては、1年目は設問ごとの期待正答率を80パーセントとしたが、2年目からは、設問ごとに設定正答率(期待正答率)を出している。

委員  広島県においては、毎年おおよそ平均通過率が60パーセント超えているかどうかを1つの判断基準としている。また、80パーセント以上、30パーセント未満の児童生徒の割合も出している。

委員  和歌山県では、記述式の問題が多いようだが、その出題の形式、評価基準の決定、転記する際の労力などで、ご配慮された点があれば教えて頂きたい。また、東京都や広島県では、選択式の問題が中心のようだが、記述式の問題を含めていない理由があれば、教えて頂きたい。

委員  和歌山県では、現場で採点する期間を長めにとるなどの配慮を行った。本県では時間的余裕がなかったため十分にできなかったが、記述式で配慮すべきなのは、学校間、採点者間で差がでないように、明確な解答類型を作っておくべきという点である。

委員  東京都においては、基本的には選択式問題が中心である。理由は、規模等の問題から、採点がぶれないようにするため、記述式問題を精選している。

委員  広島県においては、学校で採点しているため、採点の客観性と教員の負担を考えると、記述式問題を多く入れることに限界がある。

委員  大規模な調査であると、採点の現実的な問題から、選択式だけになるというイメージが日本にはあるが、アメリカの大学入学試験SATでは、数十万人規模のテストで、論述式が入っている。どうやって採点をしているのかを調べると参考になるかもしれない。

(3) 問題作成に関する主な論点例について、事務局より説明の後、意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。(○:委員、●事務局)

委員  全国的な学力調査と教育課程実施状況調査は継続していくことが前提なのか。

事務局  両者を継続していくことが前提であるが、教育課程実施状況調査の実施時期や規模については、今後検討していきたい。

委員  全国的な学力調査について、教育施策の成果と課題の検証し、教育条件の整備などにより義務教育の水準確保につなげるなど、その意義を明確にすることが必要。

委員  生きる力との関係で考えると、自尊心や態度という部分まで学力調査に含めるのか、知識理解面のみの調査とするのかなどについて、明確にしておくことが必要。

委員  教育課程実施状況調査は、各学年の内容がどのくらい習得されているかを学習指導要領に密着した形で測るのに対して、全国的な学力調査は、いわば小学校・中学校段階で学習した内容の総合的な力、各学校段階の出口のところでの力を測る。その点で、知識・技能等を実生活の様々な場面などに活用するための力を問うという調査内容が重要な意味をもつのではないか。

委員  全国的な学力調査と教育課程実施状況調査を平行して進めるのであれば、全国的な学力調査は、小学校・中学校を出るにあたって最低限必要なもののみに絞って、各学年段階でクリアすべき根本的な学力指標を入れたようなシンプルな形なものにしてはどうか。

委員  小学校・中学校の各学校段階において、本当の土台となる基盤的な部分だけに絞った内容とし、そのプロファイルを測るような調査内容とするとともに、まずは国語、算数・数学に絞った調査とすべきである。

委員  全国的な学力調査を行うことによって、この調査で行った問題や取り上げられた「学力」が、現場サイドで意識的に教育されるという現象が生じてくると思う。例えば国語で言うと、PISA型の読解力の分野で取り上げられた熟考や評価における課題は、これまでの国語科では十分ではなかったと思う。そういうものを意図的に学力調査に取り上げ、学校や地域で意識化させることが必要ではないか。

委員  都道府県、市町村、民間など他のテストが相当ある中で、それぞれの方がどんなことを全国的な学力調査に期待しているのかを、何らかの形で把握する必要がある。

委員  全国的な学力調査は数々の学力調査の中で、相当な人力と財政力、長期的な観点を投入する非常に貴重な施策だと思う。全国的な学力調査の実施に伴って、広い意味での「学力」を測る上での技術的な方法が開発され、現場に反映されるよう、ぜひ実施して頂きたいし、それが全国的な学力調査の意義の一つであると思う。

委員  全国的な学力調査の基本的な方向性について、現在の義務教育行政の方向性と関わらせて位置づける必要性があるのではないか。インプットとプロセスとアウトカムの流れにおいて、アウトカムについては、国の責任に置いて義務教育の質を保証していくのだという方向性が明示されているのだから、それに対応した質を測る、評価するシステムが当然あるべき。全国的な学力調査は、ナショナルスタンダード、ナショナルミニマムについて、国が質を保証するために行う調査だと思う。
 市区町村が独自に実施している学力調査については、国が国による学力調査の仕組みを持ったときには、だんだん変化し、ローカルオプティマムという視点を入れた調査になっていくだろうし、そうなってほしいと思う。
 プロセスについて、市区町村や学校の裁量権を広げると言っているので、市区町村、学校レベルで学力の面での達成状況を、ナショナルミニマムという観点から評価する仕組みを国が持っておくことは矛盾したことではない。

委員  例えば、自治体レベル、学校レベルにおいて、学校評価における重要なデータの一つとして学力調査の結果を活用するということになれば、悉皆に近い規模が必要と考える。

委員  教育課程実施状況調査は、学習指導要領の改善のためのデータを得るために、全領域をカバーしているが、個々の学校、市区町村のレベルで達成度を見ることが出来ない。このことが、全国的な学力調査との大きな違いであると思う。

(4) 質問紙調査に関する主な論点例について、事務局より説明後、意見交換が行われた。主な意見は以下のとおり。(○:委員、●事務局)

委員  プロセスを問う時には、児童生徒の思考過程に加え、実際どういう指導を受けたのかなどについても聞いてはどうかと考える。

委員  学習の方法と先生の教え方が学力とどのように結びついているのかについて、調べる意味があると思う。項目としては、施策として実行可能で、教育的改善が望めるものとすべき。

委員  学力に影響を与える要因は、実際には多くの変数が複雑に関連しており、まず前提として様々な要因が学力に関わっていることを共通理解としておくべき。その上で、政策的に操作可能な変数、指導に生かせる変数を抽出して、疑似相関に注意しながら分析をする事が重要。

委員  授業方法、指導方法等、学校によって異なる様々な実態も把握できるようにしてほしい。

委員  学力を分析していると、指導方法等よりも家庭の影響等の方が強いという結果が出ることが多い。家庭の状況を聞きたいが、それを調査するのは難しいので、全国的な学力調査ではどうするのか十分考慮する必要がある。

委員  図書館を活用したシステムがあるかとか、国語あるいは算数・数学に特化したカリキュラムがあるかなど、学校全体での学習に関わる取り組みに関することを問うことも、大きな意味があると思う。

委員  国語では、教師自身が持っているコミュニケーション観や読解観、基礎基本観、例えば、要点・要旨を要約する読み方だけでなく、批判的な読み方を基礎基本と考えるかどうかが学力に影響を与えているのではないかと感じており、このようなことも調査できればよいと思う。

委員  教師の指導方法については、実際に行ったかどうかを確認できないなど、質問紙調査の結果はあまり信用できないと思う。むしろ学力調査とは別に、数を限定して提言をする方が指導の改善に意味があると思う。

委員  学力の中に、自己概念や学習方略などを含むのかによって、質問紙調査の位置づけが違ってくる。ペーパーテストと質問紙調査を併せて学力として捉えることが適切と考える。

委員  学習方略については、児童生徒が実際に行っていることと、それについての質問紙調査における回答に乖離が生じることがある。調査で解いた問題について、問題を解くプロセスを具体的に問うなどの工夫が必要。

委員  何を質問紙調査に項目としていれるかということについて、2つの視点で考える必要がある。1つは広い意味での学力の一部分として考えるもの、もう1つは学力の規定要因として考えるもの。
 後者については、見かけ上の学力の規定要因としてだまされてしまうこともありうるため、単に相関だけを見るのではなく、きちんと分析を行うことが必要である。

(5)  事務局より今後の日程について説明があり、次回会議の公開・非公開については座長に一任され、閉会となった。

(以上)

(初等中等教育局教育課程課)

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