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第3章 国際教育の充実のための具体的方策

 本章においては、先に示した基本的視点を踏まえつつ、国際教育の充実のための具体的方策を提言する。

1.学校教育活動における国際教育の充実
(1)学びが広がり深まる授業づくり

  各教科等や総合的な学習の時間の相互関連性を意識した授業づくり
  先進的な取組事例の情報提供
  学習内容・方法等の開発・普及
  情報通信技術の活用
  言語教育の充実

  1各教科等の関連を意識した授業づくり
 国際教育は、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間などのいずれを問わず推進されるべきものである。
 総合的な学習の時間だけでなく、各教科等においても、自国や外国の歴史・文化の理解と尊重、地球的視野と多様なものの見方、人間尊重と共に生きるという考え方、表現力・コミュニケーション能力といった国際教育の要素を意識して指導することが重要である。
 また、各教科等で培った基礎的・基本的知識、技能等を、総合的な学習の時間や学校行事において体験などに結びつけ、それをさらに学ぶ意欲につなげることが求められる。逆に、総合的な学習の時間等における異文化体験などを、各教科等での学習への関心や学習効果につなげていくことも大切である。
 例えば、日本と世界のつながりを学習するため、日本と外国の文化について、社会科の学習を通じて理解を深め、美術や音楽の学習を通じてよさを感じとり、総合的な学習の時間を使い、調査や発表、ものづくり体験を行うなど、学習のねらいや内容に関連のある複数の教科等を結びつけることは、国際教育の観点から効果的である。
 学校全体の教育目標に国際教育を明確に位置づけ、各教科等においても国際教育の視点を盛り込みつつ、教科における学習と総合的な学習の時間の関連を常に意識するなど、各教科等を相互に有機的に結びつけながら、授業に広がりと深まりをもたらすことが重要である。その際、貴重な実践経験をもつ学校の外部にある組織や人材等と協働した授業づくりを進めることが大切である。

  2実践的な態度・能力を育成する授業づくりへの支援
 学校や教員が、子どもたちや学校、地域の実情に応じ、創意工夫しながら国際教育に取り組むためには、先進的な実践事例やモデルとなるような学習内容・方法等を普及し、授業づくりを支援していくことが求められる。

〈優れた取組の普及〉
 国際教育について大きな成果を上げている取組が多くの学校で行われているが、このような優れた実践事例を広く提供することが必要である。実践事例の収集・提供に当たっては、各教員が抱える教育課題の解決や授業改善に結びつくヒントとなるよう、質の高い授業作りに役立つ情報の蓄積や共有化を図り、教員自らが工夫・発展させることができるものとすることが大切である。

〈学習内容・方法の開発〉
 各学校において、地域の実情にあった学習内容や方法を開発し、創意工夫を発揮した特色ある国際教育を展開することが大切となる。モデルとなるようなカリキュラムを大学やNPO等と連携して開発し、それを基に、各学校や教員が、必要な工夫を加え、授業に活用していくことが考えられる。
 あわせて、国際教育に関する教材開発を行うことが必要である。例えば、写真、映像、マルチメディアなど多様かつ有用な教材が、国際教育に関連する様々な分野や国内外の国際機関、教育関連団体において作成されている。これら多種多様な教育資産を学校における国際教育に有効活用していくことが大切である。

〈情報通信技術の活用〉
インターネット等の情報通信技術を、国際教育に積極的に活用していくことが大切である。特に、インターネットについては、規模や地域、周辺環境に関係なく、子どもたちが世界とつながり、共同プロジェクトに参加し交流ができるという利点がある。世界中の人々がつながり合っていくコミュニケーションの手段として大きな可能性を秘めているインターネットの活用を促進していくことが必要である。

  3言語教育の充実
 国際教育の推進にあたっては、相手の国の言語を学び合うことが大切である。また、一つの学習課題を次の学習課題に発展させていくためには、コミュニケーション能力が重要な鍵を握ることから、コミュニケーション能力の基盤をなす言語教育にも十分に配慮する必要がある。

〈外国語教育の充実〉
 英語をはじめとした外国語運用能力については、コミュニケーションの手段として国際社会で実際に通用するよう、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」の能力をバランスよく育成していくことが重要である。
 また、外国語教育は、単に言語運用能力の習得だけを目的とするのではなく、異なる文化や言語をもつ人々とのコミュニケーションという主体的な活動を通じて、自分の考えを持ち、それを主張する中で合意を形成していくという態度・能力の育成にも直接的に寄与するものでもある。子どもたちの主体的な活動への参加が促されるよう、子どもたちの発達段階を踏まえた話題、題材、素材を扱うなどの工夫が必要である。
 文化の異なる人々と対話を通して豊かな関係を構築するためには、伝達手段としての言語だけではなく、国や自己の在り方と不可分の関係にある言語を理解することが不可欠である。国の姿や文化を映す鏡としての言語の重要性に対して認識を深めることも大切である。

〈国語教育の充実〉
 コミュニケーション能力などすべての知的活動の基盤となるものが国語力である。国語を用いてものごとを正確に理解し適切に表現する能力を育成するとともに、伝え合う力を高めることは極めて重要である。国際教育に関する取組においても、読み書きなどの徹底はもちろんのこと、相手や目的、場面に応じて国語を用いて正確に理解し適切に表現する能力が育成されるようにするとともに、特に、互いの立場や考えを尊重し言葉で「伝え合う力」を高めることを意識しつつ指導していくことが大切である。

(2)教員の実践力の向上

  多様な経験を有し、国際教育に情熱を持ち、実践的な指導ができる教員を育成
  学習指導や教材開発の方法の習得など参加型・実践型の研修を重視

   国際教育の充実は、何よりも教員の力量にかかっているといっても過言ではない。
 国際教育における教員の役割は、単なる指導者としての立場だけではなく、学習の成果を高める学びの企画・構想者(プランナー)、学習者をよく理解し、励ますとともに適切な情報や学び方を提供する支援・援助者(ファシリテーター)、教員相互や関係者と連帯・協力する協働者(コラボレーター)としての役割を果たすことが重要となる。
 様々な実践経験を積み、情熱を持ち、指導力の高い教員が、国際教育推進の中心となって実践していくことが必要である。

  1教員養成段階における取組の充実
 国際教育の基本的な理念・視点は、「異なるものや異なることへの理解」、「多様性の受容」、「共生」などである。こうしたことについて教員自身が認識を深めていくことは、各教科等や総合的な学習の時間の指導だけではなく、学級経営、生徒指導などあらゆる面において役立つものと考える。教員養成段階において、国際教育にかかわる基礎的・基本的知識や理解を得ておくことは大切である。
 大学の主体的な取組により、国際教育に関する講座などの開設、教育内容や授業方法の改善等を通じて、国際教育にかかわる教員を目指す者の資質・能力の向上を図る必要がある。また、このためには、国際教育について専門的知識と多様な実践経験をもつ大学教員の輩出とそのような大学教員の教員養成への積極的な関わりも必要となる。

  2現職教員研修における取組の充実
 国際教育における教員の重要な役割に鑑み資質向上のための方策を講じることが必要である。各研修を通じて、すべての教員の国際教育の目的・内容への認識を深めることが重要である。また、国際教育に関する実践的指導力が育成されるよう、国・教育委員会・学校の各段階において、研修の充実を図ることが大切である。

〈参加型・実践型の研修・ワークショップの実施〉
 国際教育に関する教員の実践力の向上のため、研修の実施形態・方法等を見直し、講義中心ではない、参加型・実践型の研修・ワークショップを企画・実施していくことが必要である。特に、年間指導計画、指導案の作成、学習方法・教材の開発等、教員の実践に役立つ内容の研修を実施することが求められる。これらの研修を、国際教育の分野で専門的な知見や豊富な経験を有する大学、学協会、NPO等と連携して行うことも効果的である。また、実施時期や研修期間、実施場所に配慮し教員の参加しやすいものとすることも必要である。

〈校内研修の充実〉
 各学校においては、日常の教育活動や学校運営において、国際教育の観点からも、校長、教頭等が必要な助言、支援、協力を行うことが大切である。また、教員が研究授業を通じて、学校や地域の具体的な教育課題への認識を深め、学習方法や教材開発について研鑽を積んでいくなど、校内研修を充実させる必要がある。

〈個々の教員の取組の奨励〉
 個々の教員に対しても、自己研鑽に積極的に努め、国際教育にかかわる研修等の様々な活動に参加したり、研究授業を実施するなど、自主的・主体的な取組を期待したい。校長も個々の教員の取組を奨励・支援していくことが大切である。

〈海外研修の充実〉
 教員の国際性を高めるという点では、教員自身が海外を経験することの意義は大きい。教員自らが海外での生活を体験することによって、国際教育の重要性を実感することができ、また、国際教育の実践を進めるための有用なアイディアや素材を得ることができる。教員を対象とした海外研修が、国及び地方公共団体等で様々に実施されている。海外派遣機会の拡充を図るとともに、こうした教員の海外研修制度を充実させ、一層活用することが必要である。

(3)直接的な異文化体験の重視

  留学、海外研修旅行、海外修学旅行、姉妹校提携による学校間交流など、バランスのとれた国際交流の推進

   異なる文化・生活・習慣をもつ同年代の若者との交流活動は、異文化を直接体験し、国際理解を深め、国際性を養うという点で大きな意義をもつ。多くの学校で、留学、研修旅行、海外修学旅行や姉妹校提携など、様々な形態での交流活動が行われているが、今後とも、学校段階に応じ、地域の実情にあわせて工夫しながら、バランスのとれた国際交流を進めていく必要がある。特に、海外からの受入の充実など派遣と受入れの両面での一層の交流を図るとともに、英語圏諸国だけでなく、近隣のアジア諸国との交流の促進が求められる。
 また、地域で行われる国際交流活動への参加や、地域の外国人学校との交流など、身近な国際交流を進めることも重要である。

〈高校生留学の促進〉
 高校生の留学や海外研修旅行は、大学生レベルでの留学やその後の国際交流活動の拡大につながるなど国際性の涵養に大きく寄与するものである。これらの海外派遣を充実するためには、国際教育や外国語教育の推進、派遣前オリエンテーションの充実等により生徒自身の留学に関する理解の向上を図ることが必要である。また、留学の意義の周知、留学情報の提供などにより教員や保護者の理解を深めることも大切である。このほか、留学による単位認定制度や大学の入学者選抜における高校生留学の経験の積極的評価の一層の推進なども求められる。
 海外から日本への留学を拡大するためには、受け入れる学校やホームステイ先の拡充とともに、留学生の受入に関する海外への情報提供の充実などが必要となる。

〈学校間交流の促進〉
 学校間交流を促進するため、姉妹校提携や姉妹都市交流による交流先の拡充、優良な交流事例の紹介や普及、外国の学校との交流や受入れを希望する学校についての相互の情報提供などが必要である。
 また、海外修学旅行は、直接的異文化体験の機会として有効であるが、単なる施設、史跡名勝への訪問やお仕着せの交流活動にとどまることのないよう、目的の明確化や事前の準備学習、交流活動の意味づけなどを十分に行い、体験が学びの深まりにつながるような活動として充実する必要がある。

(4)外国人児童生徒教育の充実

  日本語指導等の一層の充実・不就学等新たな課題への確実な対応
  外国人にかかわる政府関係省庁や地方の関係機関の連携促進
  外国人児童生徒とともに進める国際教育の推進

   外国人の子どもたちへの教育については、従来より、日本語指導等に対応する教員の配置、母語のわかる指導協力者の派遣、JSL[Japanese as a Second Language:第二言語としての日本語]カリキュラム注4の開発、日本語指導者に対する講習会など、必要な支援が行われてきた。

注4 JSLカリキュラム 日本語を母語としない子どもたちの学習支援のためのカリキュラム。文部科学省において開発、平成15年に小学校編を完成、平成18年中には中学校編が完成予定。

〈日本語指導等の充実〉
 今後とも、日本語指導の内容充実や指導方法を改善するため、日本語指導等に対応する教員の配置、教員に対する実践的研修の実施、JSLカリキュラムの普及などを通じ、外国人児童生徒の日本語能力の向上や学校生活への適応を着実に図っていくことが必要である。あわせて、母語を活用した教育支援が、日本語指導・適応指導の両面で効果的なことから、母語が理解できる人材を指導協力者や教育相談員等学校支援スタッフに登用するなど、受入体制の充実を図ることが求められる。
 また、問題となっている外国人の子どもたちの不就学についても、教育委員会が地域の関係機関やNPO、企業と連携して取り組むことにより、不就学の実態把握及びその要因分析、それらを踏まえた就学支援を行い、外国人の子どもたちの学ぶ機会を確保することが必要である。

〈関係機関の連携促進〉
 外国人の子どもたちを取り巻く環境は、保護者の意識、経済状況や来日前の学習歴など多様である。このため、子どもたちの教育環境の整備に当たっては、教育機関のみで取り組むことは容易ではなく、入国管理面や労働環境面など関係機関との一層の連携が不可欠である。従来より、市町村での外国人登録の際、公立学校への編入学に関する情報を提供するなど、地方公共団体内で必要な連携が図られているところであるが、外国人の子どもたちの教育環境の一層の充実のためには、関係省庁や地域の関係機関の密な連携が期待される。

〈外国人児童生徒と共に進める国際教育〉
 各学校においては、外国人児童生徒の母語や母文化を紹介し、国際理解を進めるという取組が行われている。このような取組は、外国人児童生徒にとっては達成感、存在感等の涵養に資し、その他の児童生徒にとっては異文化・異言語に身近に接することができ、教育上の効果も大きい。外国人児童生徒の異文化性を過度に強調してしまうことがないよう、児童生徒一人一人の実態を十分に踏まえ、学級運営において必要な配慮や継続的な指導を行いながら、取り組むことが必要である。児童生徒がお互いの違いを理解・尊重し、対等な立場で意見や考えを述べ、また協力しあう関係を構築するという「共に進める」視点をもち、今後とも、外国人児童生徒とその他児童生徒との相互理解を通じた国際教育を推進していくことが大切である。

 外国人の子どもたちも日本人の子どもたち同様、国際社会に生きる人材として育成していかなければならない存在である。自立して学び働くことのできる学力の育成とともに、国際社会に通用する態度・能力を有する人材として育成していくことが求められる。その際、母語・母文化を尊重し、家庭や地域の諸活動を通じてその保持・伸長されるよう配慮していくことも大切である。

2.国際教育資源の活用と連携のための支援体制の構築
(1)海外派遣教員の活用

  在外教育施設等派遣教員や海外研修経験者の一層の活用・登用
  人事配置上の工夫など組織的な活用の促進
  海外派遣教員による経験・知識の発信の充実

   学校の中に自ら異文化を体験した教員がいるということは、帰国児童生徒や外国人児童生徒だけでなく、それ以外の子どもたちにとっても刺激となる。海外派遣教員を一層活用していくことが必要である。
 また、海外に派遣されたことはなくても、国際教育に関心をもち、実践を行ってきた優れた教員たちが多数いる。こうした教員と海外派遣教員が協力し合い、お互いの実践力をより向上していくことは国際教育を普及していくためにはきわめて効果的であり、両者の協力・連携を支援していくことが必要である。

〈人事配置上の工夫〉
 海外派遣教員が国際教育を担当するなど、その経験や力量を生かせるような人事配置を行うことが必要である。そのためには、まず、個々人のみならず教育委員会や校長が、海外経験を生かすという意識を共通してもつことが大切である。また、各教育委員会において、例えば、海外派遣教員の国際教育への活用を人事方針に位置づける、あるいは、教員の採用に当たって国際経験を積極的に評価するなど、工夫することが考えられる。

〈海外派遣教員の経験・知識の発信〉
 海外派遣教員にも、個々人がその経験や成果を積極的に普及していくことが求められている。海外派遣教員は、国費によって派遣されていることを十分意識し、派遣期間中に多様な経験を積み、識見を深め、帰国後は、地域や学校の国際教育の充実に役に立てるべく、その成果を自らの周囲だけでなく広く還元していくことが必要である。そのためには、そのような意志・意欲を有する個人や組織が情報発信できるような体制を整備することが必要となる。海外派遣教員のネットワーク化や例えば国際教育に関係する研究協議会等における研究・発表などを支援することが考えられる。

 なお、海外経験を国際教育の専門家として生かすためには、2、3年という派遣期間では不十分であり、その経験を踏まえ専門性が深められるようなキャリア形成の在り方を考える必要があるという指摘があった。国際教育を専門分野としたい教員が、自己の生涯にわたる研修構想を確立し計画的に研修を行い、当該分野に関わる資質向上を図ることを期待する。

(2)地域における協働の促進

  外部の資源を活用した学校における国際教育の活性化・多様化の一層の促進
  外部の人材や組織と学校の連携・協力を促進するための地域国際教育ネットワークの形成

   学校における国際教育の活性化・多様化や地域の広がりを一層促進するためには、学校の外部にある幅広い経験、優れた知識や技術を有する人材や組織と協力しながら進めることが効果的である。
 学校の外部にある人材や組織等の教育資源は、学校の明確な教育目標、教員の確かな課題意識、しっかりとした指導計画の下で活用することによって、実践的な授業づくりに効果を発するという点に留意し、活用を進めることが大切である。

〈地域の国際教育ネットワークの形成〉
 国際機関、地域国際交流協会、企業、学協会等との協力を促進するため、これら学校の外部にある組織等と学校・教育委員会とを結びつける仕組みや体制の確立が必要である。学校や地域の関係組織が日頃から交流の機会をもち、信頼関係を築きながら、効果的な連携の在り方について共に考え、地域の国際教育ネットワークを形成していくことが大切である。
 このような中で、教育委員会・学校と地域が協働し、国際教育資源の掘り起こし、国際教育情報バンクの整備などを行うことが必要である。また、国際教育にかかわるNPO等の育成・発展を支援していくことも求められる。
 地域における協働の鍵を握るのが、コーディネーターの存在である。学校や教育委員会、地域のNPO等について知識と理解をもつコーディネーターが、例えば、関係者の交流の場の設定、関係者への助言や連絡調整、プログラムの提案等を行い、連携体制を築いていくことが必要である。

〈教育委員会や学校における体制整備〉
 教育委員会においては、国際教育を担当する部署を置き、学校と外部の組織や人材との間の連絡調整や学校や教育一般に関する情報提供など必要な支援を行うことが求められる。また、学校においては、国際教育の担当者を置き、他の教員が学校の外部にある教育資源を活用する際の支援を行うなど、各教育委員会や学校が、その実情に応じて工夫していくことが必要である。

〈優れた連携事例の普及〉
 外部資源の一層の活用を広く促進するためには、学校の外部にある人材や組織等の教育資源の活用に関する先進的な取組や優れた事例について情報収集・提供を行うことが必要である。あわせて、国際教育に関係する取組や人材を有する組織について、その特色や活動事例を紹介することも必要である。

3.海外子女教育の成果の活用と変化への対応
(1)海外での成果を日本の学校教育に生かす

  小学校段階からの外国語教育、地域との交流活動、小学部・中学部併設による乗り入れ授業等、多様かつ豊富な経験
  日本の国内教育に生かすという視点から海外子女教育を

   海外子女教育分野での取組は、日本の教育活動を考えていく上で示唆を与えることができると考える。例えば、日本人学校では、小学校段階における英語を含めた外国語教育、地域の住民や学校との交流活動、小学部・中学部併設による乗り入れ授業等を長い間行ってきており豊富な経験を有している。また、保護者や地域住民の学校運営の参画ということでは、日本人学校や補習授業校では、教職員、教材、運営経費の確保等様々な課題を抱えつつ、地域の実情にあわせて、また、保護者のニーズに応え、地域住民や保護者、日系企業関係者の参画を得ながら多様な運営を行っている。
 今までの「日本の教育を海外に」という視点に加え、「海外の日本人学校の先駆的な取組を日本の学校教育に生かす」という視点をもち、海外子女教育における成果を日本国内の教育にどう生かせるかという観点から見つめ直す必要がある。そのためには、海外子女教育の成果を具体的に検証し、国内の教育に還元できるものについては、積極的に情報発信を図ることが適当である。

(2)時代の変化に対応した海外子女教育・帰国児童生徒教育

  日本人学校等や海外子女・帰国児童生徒の実態やニーズを把握し、海外子女・帰国児童生徒教育の充実方策を検討(例:幼稚園段階の子どもへの支援の在り方、補習授業校における教育の充実、日本語指導の充実など)
  特性に配慮した帰国児童生徒教育の充実

  1実態・ニーズを踏まえた海外子女教育の充実方策の検討
 昨今の海外子女教育をめぐる状況やニーズの変化を踏まえ、日本人学校等への支援の在り方について、具体的に検討していくことも必要である。検討に当たっては、海外に住む日本人の子どもたちの現状をできるだけ客観的に把握し、その成果と課題を踏まえた上で行うことが大切であり、日本人学校等の実態調査や帰国児童生徒の保護者を含む日本人学校等の児童生徒・保護者のニーズ調査を行いつつ、進めることが必要である。
 例えば、幼児期は、母語習得の重要な時期に当たることから、海外子女教育分野での幼稚園段階の教育は今後ますます重要となるものと思われる。現在、日本人学校等に対する国の支援は、義務教育段階に限られているが、政府としてどのような支援が可能かを含めて具体的に検討していくことが必要である。
 また、補習授業校について、現地校へ通う子どもたちが増加する中、週1日国語や算数・数学を中心とした教育を提供する場として貴重なものである。しかし、それだけでなく、永住権を取得している日本人の子どもや現地市民の子どもなど帰国を前提としない子どもを受け入れている学校もある。また、補習授業校は現地との教育・文化交流の一翼を担っている面もある。これらの点を踏まえた、補習授業校における教育の充実方策についての検討が必要である。

  2特性に配慮した帰国児童生徒教育の充実
 帰国児童生徒に対する指導については、その受入を円滑に進めることと、海外での経験を通して育まれた特性をさらに伸ばすことの双方に配慮しつつ進めていかなければならない。
 帰国児童生徒が伸びやかに学校生活を送り、その特性を効果的に保持・伸長できるよう、各教育委員会等がその実情に応じて取り組むことが必要である。例えば、帰国児童生徒の個に応じた指導の在り方に関する調査研究の成果を踏まえ、帰国児童生徒の受入に特色を置く学校の設置や、帰国児童生徒の培った特性、例えば語学力や積極性等の伸長に重点を置いた指導体制の充実などの工夫が考えられる。
 海外にいる子どもたちを取り巻く状況と連動して、帰国児童生徒の最近の傾向として、海外滞在期間の長期化、現地校のみに通った子どもの増加、幼少期からの海外渡航などの理由で、日本語指導や日本の学校生活への適応に一層の配慮を要する子どもが増えている。帰国児童生徒の実態を踏まえた指導の充実が求められる。

4.国際教育の総合的な推進のために

国は、以下の施策により、各地域の取組を支援し、国際教育を総合的に推進
  1 地域の実情や特色を生かし、先進的な取組を行う国際教育拠点の形成
  2 国際教育にかかわる教育資源の共有化や連携の促進
   
参加型・実践型ワークショップの実施
地域の人材や組織の連携支援 等

   本章においては、これまで、国際教育の充実を図るため、「学校教育活動における国際教育の充実」、「国際教育資源の活用と連携のための支援体制の構築」、「海外子女教育の成果の活用と変化への対応」の三つの観点から、今後の方策の具体的方向性について述べてきた。
 初等中等教育全体における国際教育の推進を図るためには、本章各項で示した広範かつ多岐にわたる充実方策を、国として効果的に推進していくことが必要である。特に、学校における国際教育の充実と地域の国際教育資源の有効活用が重要となる。
 このため、1先進的な取組を行う国際教育の拠点を形成し、優れた実践を積むことにより国際教育の質の向上を図る、2外部資源の掘り起こし・共有・連携により国際教育を支援する裾野を広げ国際教育全体の底上げを図る、という2つの政策手段により取り組むことが有効である。
 国においては、以下のような施策を展開することにより、地域における学校や関係機関、NPO等の取組を支援し、国際教育を総合的に推進していく。

  (1)地域の国際教育拠点の形成
 国際教育について先進的な取組を行う地域を指定し、国際教育を総合的に推進する国際教育の拠点を形成する。拠点の中核となる学校では、大学等と連携しながら、地域の実情や特色に応じた国際教育にかかわるカリキュラムや教材開発に関する調査研究を進めるとともに、地域の他の学校を先導し、地域全体の国際教育の振興を図る。
 例えば、海外経験を有する教員の集中配置、海外姉妹校との交換留学、ITの活用等、地域の実情や特色を生かした国際教育に関する取組が期待される。また、このような取組の中で、個の特性に応じて、国際社会で指導的立場に立つために必要な態度・能力を初等中等教育段階から育成することも考えられる。

  (2)国際教育にかかわる教育資源の共有化と連携の強化
 学校における国際教育を支援・活性化するため、学校の外部にある人材や組織、それらがもつ学習プログラムや教材などの教育資源を掘り起こしつつ、それらの共有化・連携強化を進める。このため、学校における国際教育への支援や国際教育資源の共有・連携に取り組む学校外の組織に対して支援を行う。
 具体的には、例えば、以下の取組を行う。
 
  1 国際教育にかかわる指導力向上のためのワークショップの実施
     国際教育に携わる教員等の実践力向上を図るため、学習方法や教材開発等実践力の向上を目的とする参加型・実践型ワークショップを実施、あわせて研修プログラムを開発。
  2 国際教育に関する情報発信の充実
     国際教育にかかわる優れた実践事例を収集するデータベースの開発を着実に進める。また、関係者間の情報交換、専門家による助言の提供など自己発展的なデータベースとする。
  3 地域の国際教育資源の連携
     地域の国際教育資源の効果的な共有・連携を図るため、地域の国際教育関係者の情報交換、コーディネーターの配置、外部人材・組織の活動への支援や掘り起こし、それらのもつ資源の共有化・連携強化など、学校と外部の人材や組織との協働支援を行う。
   これら施策による地方における取組については、全国レベルのフォーラム等を通じて情報交換や普及を図るとともに、現在文部科学省で構築中の国際教育に関するウェブサイトを通じて広く公開する。

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