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第15期中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(平成8(1996)年7月)」において、教育目標として「生きる力」を育成することが提言された。「生きる力」とは、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力、自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などであるとされている。
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また、同答申では、「生きる力」をはぐくむ中で、国際化への対応の視点として、次の3つのことを提言している。すなわち、 広い視野を持ち、異文化を理解するとともに、これを尊重する態度や異なる文化をもった人々と共に生きていく資質や能力の育成を図ること、 国際理解のためにも、日本人として、また、個人としての自己の確立を図ること、 国際社会において、相手の立場を尊重しつつ、自分の考えや意思を表現できる基礎的な力を育成する観点から、外国語能力の基礎や表現力等のコミュニケーションの能力の育成を図ること、である。
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21世紀においては、人、財、資本、情報が今までの以上の速さと量で移動しており、その形態も多様化、複雑化している。今後も、社会の国際化と相互依存は、一層進展してしていくことが予想される。
日本人の海外渡航が一般化し、日本人が外国に出かけ様々な異文化に接する機会が増えている。また、日本を離れて外国の社会の中で暮らしたり、日本人が国際企業や国際機関の一員として働くという個人レベルの国際化も進んでいる。
一方、日本の国内においても、多くの人々を外国から受け入れるようになっている。日本にいながらにしても、異なる文化や生活習慣をもつ外国の人々と、日常的に接する機会が多くなり、地域においてはそれらの人々と相互に理解し協力し合いながら生活することが求められるようになってきている。また、学校においても、外国人の子どもたちが多数学ぶようになってきているなど、多国籍化、多文化化が進んでいる。
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ものごとの規模が国家の枠組みを越え地球規模で拡大し、国際的相互依存関係の中で生きる現代人には、国際関係や異文化を単に「理解」するだけでなく、自らが国際社会の一員としてどのように生きていくかという点を一層強く意識する必要がある。異文化や異なる文化をもつ人々を理解・尊重する態度を持ち、自らの国の伝統・文化に根ざした自己を確立し、自分の考えや意見を自ら発信することが今まで以上に大切となる。
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以上のような認識に立ち、本検討会では、第15期中央教育審議会第一次答申において示された国際化への対応に関する3つの視点、すなわち、 異文化と共生できる資質や能力、 自己の確立、 コミュニケーション能力の3点を踏まえた人材育成を進める観点から検討を行った。
今日、求められているのは、今日の国際化の一層の進展を考え、他の国や国際関係、異文化を理解するだけでなく、個人が相互理解に基づく多文化共生という視点をもち、国家の枠組みを超えた国際社会の一員として自己を確立し、発信を行い、主体的に行動できる人材である。このため、実践的な態度や資質、能力の育成により重きを置く「国際教育」の推進に力を入れていくことを提言する。
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国際化した社会において、我が国の子どもたちが自立した個人として、いきいきと活躍できるよう、初等中等教育段階においては、すべての子どもたちが、 異文化や異なる文化をもつ人々を受容し、「つながる」ことのできる態度・能力、 自らの国の伝統・文化に根ざした自己の確立、 自分の考えや意見を自ら発信し、具体的に行動することのできる態度・能力、を身に付けることができるようにすべきであると考える。
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多様な人々との日常的な交流が拡大する中にあっては、異文化や異なる文化をもつ人々を理解するだけでなく、理解した上で、異文化や異なる文化をもつ人々を受容しながら「つながる」ことのできる力が重要となる。この力とは、相互の歴史的伝統・多元的な価値観を尊重しつつ、多様な異文化や人々の生活・習慣・価値観について違いを違いとして認識し、創造的な関係を構築する態度や能力であり、葛藤や対立を乗り越えてよりよい人間関係を作り出し、他者との関わりを通して問題を解決しようとする態度や能力である。また、そのためには、共存共栄的な発想を身に付けたり、一国の利益追求のみによらない全地球的な視野、知らないことや理解できないことにも柔軟に対処する能力などを育成していくことが必要である。
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異文化や異なる文化を有する人々に対して敬意を払い、理解し受容することは、自分自身の国やその歴史、伝統・文化を理解・尊重し、その上に立脚した個性をもつ一人の人間として自己を確立することによってはじめて可能となる。そのためには、自らを知り、自分らしさを受入れ、自分なりの判断基準を持ち、国際化した社会の中で生きる個人としての価値観を形成していくことが必要である。
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多様な他者の中で、自己を確立し相互理解を深め、つながっていくためには、対話を通して、人との関係を作り出していくような力が求められる。そのためには、自分の考えや意見を自ら発信し、他者の主張を受け止め、議論をまとめあげ、具体的に行動することのできる態度・能力が必要となる。自分の考えをもち論理的に表現する能力を、ディスカッションやディベート等の具体的な活動を通じて育成することが大切である。また、外国語を含めた言語運用能力の育成とともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成していく必要がある。
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国際教育を通じて児童生徒が身に付けるべきこれらの態度や能力は、国際社会において指導的立場に立つ人材に求められる態度・能力の基盤ともなるものでもある。我が国が、国際社会から理解、信頼され、国際的な存在感を高め、一層発展していくためには、国際社会に通用するリーダー的人材を育成することも極めて大切である。初等中等教育段階においても、個の特性に応じて、基本的な資質・能力に加えて、リーダー的資質・能力の伸長にも配慮しつつ国際教育に取り組むことも必要である。
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各学校における国際理解に関する取組が、異文化「理解」に留まることなく、地球的視野に立って、主体的に行動するために必要と考えられる資質・能力の育成につながるかどうかは、何よりも教員の力量にかかっているといっても過言ではない。
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国際教育においては、教員の役割は、単なる指導者としての立場だけではなく、カリキュラムの企画・構想者(プランナー)、支援・援助者(ファシリテーター)、協働者としての役割も果たすことが求められる。これは、国際教育が重視する学習の形態が、課題探求型・解決型の学習であり、教員は子どもたちの主体性・能動性を引き出すことが必要となるからである。
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多様な実践経験を積み、情熱を持ち、優れた指導力を持つ教員が、国際教育の中心となって実践していくことが求められる。
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教員養成段階における取組の充実
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国際教育の基本的な原理・視点は、「異なるものや異なることへの理解」、「多様性の受容」、「共生」であり、こういったことを教員自身が身に付けることは、各教科等や総合的な学習の時間の指導だけではなく、学級経営、生徒指導などあらゆる面において役立つものと考える。教員養成段階において、国際教育にかかわる基礎的・基本的知識や理解を得ておくことは大切である。
大学の主体的な取組により、国際教育に関する講座などの開設、教育内容や授業方法の改善等を通じて、国際教育にかかわる教員を目指す者の資質・能力の向上を図る必要がある。また、このためには、国際教育について専門的知識と多様な実践経験をもつ大学教員の育成とそのような大学教員の教員養成への積極的な関わりも必要となる。
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現職教員研修における取組の充実
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各研修を通じて、すべての教員が国際教育の重要性への理解を深めることが重要である。また、国際教育に関する実践的指導力が育成されるよう、国・教育委員会・学校の各段階において、研修の充実を図ることが大切である。
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〈参加型・実践型の研修・ワークショップの実施〉
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国際教育に関する指導力の向上のため、研修の実施形態・方法等を見直し、講義だけでなく参加型・実践型の研修・ワークショップを企画・実施していくことが必要である。特に、年間指導計画、指導案の作成、指導方法の習得、教材開発の方法等、教員の実践に役立つ内容が求められる。これらの研修を、国際教育の分野で専門的な知見や豊富な経験を有する大学やNPO等と連携して行うことも効果的である。また、実施時期や研修期間、実施地域に配慮するとともに、多くの教員の参加を得ることができるものとすることが必要である。
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〈校内研修の充実〉
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各学校においては、日常の教育活動や学校運営において、国際教育の観点からも、校長、教頭等が必要な助言、支援、協力を行ったり、教員が研究授業を通じて、学校や地域の具体的な教育課題への認識を深め、学習方法や教材開発について研鑽を積んでいくなど、校内研修を充実させる必要がある。
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〈個々の教員の取組の奨励〉
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個々の教員に対しても、勤務時間外などを積極的に活用し、様々な研修に参加したり、研究授業を実施するなど、自主的・主体的な取組を期待したい。校長も個々の教員の取組を奨励・支援していくことが大切である。
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〈海外研修の充実〉
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教員の国際性を高めるという点では、教員自身が海外を経験することの意義は大きい。教員自らが海外での生活を体験することによって、国際教育の重要性を実感することができ、また、国際教育の素材を得ることができるなど実践力を高めることができる。教員を対象とした海外研修が、国及び地方公共団体等で様々に実施されているが、こうした教員の海外研修制度を充実させ、一層活用することが必要である。
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異文化理解・多文化共生を知識理解のレベルから実践的な態度・能力の育成へと発展させるためには、学校全体で取組むことが大切となる。そのためには、学校全体の教育目標に国際教育を明確に位置づけ、各教科等においても国際教育の視点を盛り込みつつ、各教科等を相互に関連づけながら指導することが重要である。
教員が、明確な課題意識をもち、学校や地域の実態に応じ、教材等について創意工夫しながら授業づくりをしていくことも、単なる体験や調べものに終始させることなく、学習の広がりと深まりをもたらすために大切である。
一つの学習課題を次の学習課題に発展させていくためには、コミュニケーション能力が重要な鍵を握る。授業づくりに当たっては、コミュニケーション能力の基盤をなす言語教育にも十分に配慮する必要がある。
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各教科等の関連性を意識した授業づくり
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国際教育は、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間などのいずれを問わず推進されるべきものである。
総合的な学習の時間だけでなく、各教科等においても、自国や外国の歴史・文化の理解と尊重、地球的視野と多様なものの見方、人間尊重と共に生きるという考え方、表現力・コミュニケーション能力といった国際教育の要素を意識して指導することが重要である。
また、各教科等で培った基礎的・基本的知識、技能等を、総合的な学習の時間や学校行事において体験などに結びつけ、それをさらに学ぶ意欲につなげることが求められる。逆に、総合的な学習の時間等における異文化体験などを、各教科等での学習への関心や学習効果につなげていくことも大切である。
例えば、日本と世界のつながりを学習するため、日本と外国の文化について、社会科の学習を通じて理解を深め、美術や音楽の学習を通じてよさを感じとり、総合的な学習の時間を使い、調査や発表、ものづくり体験を行うなど、学習のねらいや内容に関連のある複数の教科等を結びつけることは、国際教育の観点から効果的である。
このように、各教科等における学習と総合的な学習の時間の関連を常に意識し、各教科等を相互に有機的に結びつけながら、授業に広がりと深まりをもたらすことの重要性を強調したい。
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実践的な態度・能力を育成する授業づくりへの支援
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〈優れた取組の普及〉
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各学校における国際教育の取組の一層の改善・充実のため、先進的な取組事例の情報提供や指導内容・方法等の開発・普及をしていくことが必要である。実践事例の収集・提供に当たっては、質の高い授業作りに役立つ情報の蓄積や共有化を図り、各教員が抱える教育課題の解決や授業改善に結びつくヒントとなるよう、教員自らが工夫、発展させることができるものとすることが大切である。
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〈教材等の整備〉
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教材となる映像やメディアに関するデータベースの作成など、国際教育の特性を踏まえた支援システムの構築が求められる。例えば、教材については、開発教育の分野を中心に、関連する教材が国内外の国際機関や教育関連団体において研究・開発されている。これら多種多様の教育資産の開発を一層進め、また、それらをネットワーク化することによって、学校の国際教育に関する学習活動に有効活用していくことが可能である。
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〈情報通信技術の活用〉
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インターネット等の情報通信技術を、国際教育に積極的に活用していくことが大切であり、国際教育における情報通信技術の効果的な活用方策についての検討が必要である。特に、インターネットについては、規模や地域、周辺環境に関係なく、子どもたちが世界とつながり、共同プロジェクトに参加し交流ができるという利点がある。世界中の人々がつながり合っていくコミュニケーションの手段として大きな可能性を秘めているインターネットの活用を促進していくことが必要である。
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〈学習内容・方法の開発〉
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地域から地球へ、地球から地域への視点をもった学習のためには、学校や地域の実態に応じた工夫が大切となる。学校と、大学やNPO等外部組織とが連携して、学習方法や教材を開発し、国際教育に関する優れた実践を地域全体の国際教育に広めていく体制が必要である。
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言語教育の充実
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〈外国語教育の充実〉
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英語をはじめとした外国語運用能力については、コミュニケーションの手段として国際社会で実際に通用するよう、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」の能力をバランスよく育成していくことが重要である。
また、外国語教育は、単に運用能力の習得だけを目的とするのではなく、外国人とのコミュニケーションという主体的な活動を通じて、自分の考えを持ち、それを主張する中で合意を形成していくという態度・能力の育成にも直接的に寄与するものでもある。子どもたちの主体的な活動への参加が促されるよう、子どもたちの発達段階を踏まえた話題、題材、素材を扱うなどの工夫が必要である。
文化の異なる人々と対話を通して関係を打ち立てるためには、コミュニケーションの手段としての言語能力の育成だけではなく、文化やアイデンティティーと不可分の関係にある言語を理解することが不可欠であり、国際教育を通じて言語の重要性への認識を深めることも大切である。
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〈国語教育の充実〉 |
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コミュニケーション能力などすべての知的活動の基盤となるものが国語力である。国語を用いてものごとを適切に表現し正確に理解する能力を育成するとともに、伝え合う力を高めることは極めて重要である。国際教育に関する取組においても、読み書きなどの徹底はもちろんのこと、相手や目的、場面に応じて国語を適切に表現し正確に理解する能力が育成されるようにするとともに、特に、互いの立場や考えを尊重し言葉で「伝え合う力」を高めることを意識しつつ指導していくことが大切である。
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外国人の子どもたちへの教育については、従来より、日本語指導等に対応する教員の配置、母語のわかる指導協力者の派遣、JSL[Japanese as a Second Language:第二言語としての日本語]カリキュラムの開発、日本語指導者に対する講習会など、必要な支援が行われてきた。
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今後とも、日本語指導の内容充実や指導方法を改善するため、教員に対する実践的研修の実施、JSLカリキュラムの普及などを通じ、外国人児童生徒の日本語能力の向上や学校生活への適応を着実に図っていくことが必要である。
また、問題となっている外国人の子どもたちの不就学についても、教育委員会が地域の関係機関やNPO、民間企業と連携して取り組むことにより、不就学の実態把握及びその要因分析、それらを踏まえた就学支援を行い、外国人の子どもたちの学ぶ機会を確保することが必要である。
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外国人の子どもたちを取り巻く環境は、保護者の意識、経済状況や来日前の学習歴など多様である。このため、子どもたちの就学環境の整備に当たっては、教育機関のみで取り組むことは容易ではなく、入国管理面や労働環境面など関係機関との一層の連携が不可欠である。従来より、市町村での外国人登録の際、公立学校への編入学に関する情報を提供するなど、地方公共団体内で必要な連携が図られているところであるが、外国人の子どもの教育環境の一層の充実のためには、関係省庁や地域の関係機関の密な連携が期待される。
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各学校においては、外国人児童生徒の母語や母文化を紹介し、国際理解を進めるという取組が行われている。このような取組は、外国人児童生徒にとっては達成感、存在感等の涵養に資し、その他の児童生徒にとっては異文化・異言語に身近に接することができ、教育上の効果も大きい。外国人児童生徒の異文化性が過度に強調されることのないよう、常に「ともに進める」という視点をもち、学級経営においても必要な配慮や継続的な指導を行いつつ、今後とも、外国人児童生徒とその他児童生徒との相互理解を通じた国際教育を推進していくことが大切である。
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外国人の子どもたちも日本人の子どもたち同様、国際社会に生きる人材として育成していかなければならない存在である。自立して学び働くことのできる学力の育成とともに、外国人児童生徒の母語や母文化を尊重しつつ国際社会に通用する態度・能力を有する人材として育成していくことが必要である。
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国際教育の活性化・多様化を一層促進するためには、学校の外部にある幅広い経験、優れた知識や技術を有する人材や組織を学校現場に導入することが効果的である。
学校の外部にある人材や組織等の教育資源は、学校の明確な教育目標、教員の確かな課題意識、しっかりとした指導計画の下で活用することによって、実践的な授業づくりに効果を発するという点に留意し、活用を進めることが大切である。
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連携のための体制づくり
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学校の外部にある人材や組織等と学校の効果的な連携のためには、両者を結びつけるコーディネーター的存在が鍵となる。学校や教育委員会、地域のNPO等について知識と理解を持つコーディネーターが、関係者のネットワークの構築や、関係者の対話の場の設定、関係者への助言や提案等の役割を果たしながら、連携のための具体的な仕組みづくりを行っていくことが求められる。
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〈地域の国際教育ネットワークの形成〉
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国際機関、民間企業、地域在住外国人等との交流を促進するため、学校・教育委員会と学校の外部にある人材や組織等とを結びつける仕組みや体制の確立が必要である。教育委員会・学校と地域のNPOやボランティア団体が連携し、専門のコーディネータの配置、情報バンクの整備、連絡調整の実施など、地域の国際教育にかかわる教育資源のネットワーク化を促進していくことが必要である。
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〈教育委員会や学校における体制整備〉
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教育委員会においても、国際教育を担当する部署を置き、学校と外部の組織や人材との間の連絡調整機能を持たせたり、情報バンクを整備することなども考えられる。また、学校に国際教育の担当者を置き、他の教員が学校の外部にある人材や資源を活用する際の支援を行うなど、各教育委員会や学校が、その実情に応じて、工夫していくことが必要である。
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〈連携事例にかかわる情報収集・普及〉
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学校の外部にある人材や資源の活用に関する先進的な取組や優れた事例について情報収集・提供を行い、また、国際教育に関係する取組や人材を有する団体について、その特色や活動事例を広く紹介し、外部資源の一層の活用を促進することも必要である。
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なお、学校と外部にある人材や組織等との円滑な連携のためには、学校や地域の関係組織が日頃から交流の機会をもち信頼関係を築いていることが大切である。関係者が交流や意見交換の場をもち、効果的な連携の在り方についてともに考えることなどが期待される。
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本章においては、これまで、国際教育の充実を図るため、「学校教育活動における国際教育の充実」、「国際教育にかかわる資源の活用と連携のための支援体制の構築」、「海外子女教育の変化と成果の活用」の3つの観点から、今後の方策の具体的方向性について述べてきた。
初等中等教育全体における国際教育の推進を図るためには、先進的な取組による国際教育の質の向上を図りつつ、一方で指導力の向上等を通じ国際教育の裾野を広げ底上げを図る必要がある。
国においては、以下のような施策を展開することにより、地方における学校や関係機関、NPO等の取組を支援し、国際教育を総合的に推進していく。
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(1)地域の国際教育拠点の形成
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国際教育について先進的な取組を行う地域を指定し、国際教育を総合的に推進する国際教育の拠点を形成する。拠点の中核となる学校では、大学等と連携しながら、地域の実情や特色に応じた国際教育に係る学習内容や教材開発に係る調査研究を進めるとともに、地域の学校への助言等を行い、地域全体の国際教育力の向上を図る。
例えば、海外への派遣経験を有する教員の集中配置、海外姉妹校との交換留学、ITの活用等、地域の実情や特色を生かした国際教育に関する取組が期待される。また、このような取組の中で、個の特性に応じて、国際社会で指導的立場に立つために必要な態度・能力の育成を初等中等教育段階から意識し教育することも考えられる。
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(2)国際教育にかかわる資源の共有化と連携の強化
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学校における国際教育を支援・活性化するため、国際教育指導力向上にかかわるワークショップの開催等による教員の国際教育に係る資質向上を図るとともに、学校の外部にある人材や組織等、またそれらがもつ学習プログラムや教材など国際教育にかかわる資源の共有化や連携を強化する。
具体的には、例えば、以下の取組を行う。
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国際教育にかかわる指導力向上のためのワークショップの実施
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国際教育に携わる教員等の実践力向上を図るため、指導案、学習方法や教材開発等実践力の向上を目的とする参加型・実践型ワークショップを実施、あわせて研修プログラムを開発。
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国際教育に関する情報発信の充実
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国際教育にかかわる優れた実践事例を収集するデータベースの開発を着実に進める。また、教員や学校等が直接情報交換、専門家による助言の提供など自己発展的なデータベースとする。 |
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地域の国際教育資源との連携
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学校・教育委員会と学校の外部にある人材や組織と効果的な連携を図るため、地域の国際教育関係者との交流、コーディネータの配置、人材や教育資源のデータベース化、学校と外部の人材や組織と学校との「協働」支援等を行う。
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これら施策による各地方公共団体における取組については、全国レベルのフォーラム等を通じて情報交換や普及を図るとともに、現在文部科学省で構築中の国際教育に関するウェッブサイトを通じて広く公開する。
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