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資料1

第7回初等中等教育における国際教育推進検討会議事要旨(案)


1.日時   平成17年3月8日(火曜日)13時〜15時

2.場所   経済産業省別館1012会議室(10階)

3.出席者
 
(委員)   池上 久雄(座長)、佐藤 郡衛(副座長)、岩谷 栄子、奥村 芳和、小野 清二、 佐藤 裕之、紿田 英哉、多田 孝志、中島 和子、根道 博、長谷川 祐子、平野 次郎、吉谷 武志、渡邉 寛治 の各委員
(文部科学省)   樋口初等中等教育審議官、山脇国際教育課長 他

4.概要
 
(1) 開会(池上座長)

(2) 配付資料の確認
  事務局より配付資料の確認が行われた。

(3) 議事
 報告書の骨子(案)について、事務局より説明した後、自由討議を行った。

池上座長】
   説明いただいた報告書の骨子(案)は、大きく5つに分かれています。1つ目が「国際教育の意義と今後の在り方」、総論もしくは理念を整理して、あるべき国際教育はどんな姿なのかということを論ずる。2つ目に、1つ目の総論理論に立ち、具体的な課題や問題点を、「国際教育を取り巻く現状と課題」として、5つの観点に分けて述べております。
 その後が、これらに対する具体的な提案事項です。3つ目は、「学校教育活動における国際教育の充実」ということで、教員、学習の方法や異文化体験を論ずる。4つ目は「国際教育にかかるリソースの活用と連携のための支援体制の構築」として、どういうツール、体制で取り組んでいくべきか、について述べる。現有資産の有効活用、例えば海外経験を有する教員の活用というようなことで提言をしている。それから5つ目は少し異なる観点ですが、「海外子女教育の変化と成果の活用」についてです。今まで築き上げてきた海外子女教育の実績を日本の学校教育に生かせないか、もしくは海外子女教育・帰国子女教育というものを、時代の変化に伴い、もう1回見直すべきじゃないのかといった問題提起も含めて述べる。皆さんからは、まだこういうことがあるとか、こういう視点を強調しようとか、論議が出てくるのではないかと思いますが、一応、考え方としては1が総論理念、2が課題、3、4、5が対策という整理で、皆さんと論議を進めていきたいと考えます。
 はじめに、この5つの全体の構成とか基本的な考え方について皆さんのご意見をいただきたいと思います。

佐藤(郡)副座長】
   基本的な構成はこれまで議論してきたとおりだと思うんですが、論理的に見ていくと、それぞれ箇条書きになっている部分で、整合性の問題が多少あるんですね。箇条書きの各部分は論理的につなげようとして構成していらっしゃるか、ということを確認したい。
 それと、ぜひお願いしたいのは、具体的な施策の方向性が書かれている3、4、5をまとめていただければ、非常に読みやすくなるということなんです。
 そして、具体的な施策のところでやや気になるのが、文章の最後が、「期待される」「望まれる」など、非常に第三者的な表現だということです。この検討会では、具体的な施策であれば、こうしようという提案をぜひ記述をしていきたいという思いがあります。基本的な構造がよくまとまっているように読めるので、それを意図的に主体的な表現にしていただいたほうが、非常にわかりやすく、論理的にはスッキリしていくと思います。
 特に3、4、5についてはぜひ通していただければという、まず大きな枠組みについての感想があります。

池上座長】
   ありがとうございます。1つ確認なんですけれども、私はまるで論点を列挙したと思っていたんですが、論理性をもって展開をしているんですか。

山脇国際教育課長】
   一応、論理的に整理するという意図でやりましたが、今ご指摘があったように、そうでない部分があるかもしれません。そこはもう少し内容的にブラッシュアップしたり、どこに重点を置くかを詰めるなどの必要があると思います。

渡邉委員】
   この報告書をつくる最終的な意図についてうかがいたい。つまり、具体的には、中教審で秋までに基本的方向性を出すということがあるわけですが、それに向かって利用していただけるのでしょうか。もしそうだとすると、内容的に個別のものを扱っているわけではないために、かなり急がないと間に合わないことが推定されますので、その辺も含めてどうなっているのかなという、事務局への確認をさせてください。それとも、単に検討会で審議した結果の提言ということで終えていくのかどうか。

樋口審議官】
   今、中央教育審議会では義務教育制度の在り方を今年の秋までに検討して、いろいろな改革の方向性を見出そうとしています。また、ご承知のとおり、学習指導要領の在り方そのものについても、既に部会等を設けて検討してきております。ただ、今年の秋までに学習指導要領の在り方全体について具体的な方向性を出すということは、時間的にも難しいだろうと考えております。各教科の基本的な在り方については中教審の教育課程部会の専門部会できちんと議論していただきますが、学習指導要領の在り方そのものについてはもうしばらく時間を要するかと思います。
 その意味では、この国際教育の問題についても、単に総合的な学習の時間だけではなくて、学校教育活動全体の中で、どのように進めるかというのは長いスパンでの議論になるし、内容によっては学習指導要領への反映も出てくるかと思いますが、今年の秋と必ずしも限定せず、次期学習指導要領の改訂にも、場合によっては反映していく。あるいは、これはこれで各学校現場で一つの指針としていただいて、こういう国際教育を深めていただくための材料になるだろうと思いますので、あまり今年の秋までということにとらわれずに、ご議論いただければと思っております。

渡邉委員】
   本検討会の議論で、推進のための検討会なんだから、施策として、例えば各地域の教育委員会等に、文書で方針を出したりする方が実質的に進むという話が出ていました。学習指導要領への反映が、今回じゃなくて次の改定のときまで延びるということになると、現実的には、不断の見直しとは言うものの、約7〜8年とか、また待たなきゃいけないことになると思うのです。

樋口審議官】
   私の説明がちょっと舌足らずであったかもしれません。義務教育制度の在り方を中教審で検討しているのは今年の秋までですが、このこととこの問題を必ずしもリンクさせる必要はない、国際教育の問題はいろんな形で、例えば今、学習指導要領の見直しについても検討させていただいていますが、そういったものへの反映もあると考えています。例えば、今、18年度を想定しながら学習指導要領の在り方を検討しているのですが、それに反映される部分もあれば、これを具体的に来年度の概算要求の中に、具体的な施策として盛り込んでいくということもありましょうし、また、この提言を受けて、予算を伴わなくても学校現場で活用していただくため、こういった取組をしていただきたいと各県教育委員会を通じて促していくなど、いろんな形でこの提言の活用が可能だろうと私どもは考えております。
 つまり、中長期的ということだけではなく、今度の学習指導要領の中にこうした考え方が反映されていくこともあるでしょうし、来年度概算要求に反映させるような施策を具体的に盛り込むことも考えております。

紿田委員】
   私もこれを読んでみて、構成はいいと思うんですが、あまりにも評論家的だと思いました。今、例えば概算要求や現場に対する示唆等の目的を挙げていただきましたが、このトーンでは、だれか偉い人が集まって何か言っていると受け取られないかどうかを懸念しています。
 したがって、この報告書は、いろいろな使い方がある、ということではなくて、これとこれには使うというターゲットを明確にしたい。

平野委員】
   構成について、今、5つの柱がありますが、これを現状、問題点、それに対する提言の3つにすれば、かなりスッキリすると思います。また、何か目玉をつくらないといけないと思います。

池上座長】
   論点を整理すると、政策にもいろいろなレベルがあると思いますが、ここで提言されたものを中央教育審議会や概算要求に反映すべきものはする、それ以外でも、できるものはどんどん実行すると理解してよろしいですか。

樋口審議官】
   結構です。

池上座長】
   そういう意味では、我々は、実行しやすい政策提言をさせていただくということは、非常に意義のあることだと思います。

根道委員】
   最初、国際教育の総合的な推進を目指してということで3本柱がありました。国際理解教育、海外子女教育、それから帰国・外国人児童教育。この帰国・外国人児童教育というのが、骨子ではわずかに触れられているだけであり、しかも、国際理解教育のための「手段」として扱われているような印象があります。帰国児童生徒あるいは外国人児童生徒をどうするのかという視点が、少し欠如しているのではないでしょうか。

池上座長】
   今、外国人の子どもの教育問題というのは非常に大きな社会問題になっていますし、それを報告書に入れるのか入れないのか。我々としてどうするのかについてはいかがでしょう。

山脇国際教育課長】
   事務局でもそこについては問題意識を持っており、もう少し外国人の子どもたちに対する教育の基本的な考え方と方向性はやはり書くべきではないか、という議論はあります。ただ、個別の外国人の子どもたちへの対応になりますと、個別の対応が必要な部分、例えば日本語指導をどうしていくのか、あるいは不就学児童の問題についてどう対処していくのかなど。そうすると、社会的な問題、例えば労働者問題全体にもかかわりますので、学校教育の中の国際教育をどう推進していくかという観点では、個別の課題についてまで触れるのは難しいかと思っています。
 ただ、外国人の子どもの教育に関する基本的な視点は押さえておきたい。その後、個別の検討が必要になろうかと思っていますので、そのときの指針を与えていただくような形で触れていただくのがいいのかなと、事務局としても考えているところです。

池上座長】
   外国人児童生徒教育については、例えば問題提起にとどめておくということは可能かと思います。また、帰国児童生徒、海外子女教育に関してはもう少し中に取り込んで、1つ章立てとはいかないでしょうけども、項目を立てて論じることはできると思います。

吉谷委員】
   基本的には今みたいな形で触れるということでよいと思います。
 今までいろいろな形で提言を出されたものが、学校教育現場に反映されていかないということが、我々は一番大きな問題であるというのは共通認識としてあると思うので、そうすると、この報告についてもまた同じようなことが起こらないかと危惧してしまいます。
 つまり、外国人児童生徒が少なく、彼らをあまり念頭におかずに進めていける学校は、この報告書をスッと受け入れるものの、新しい異文化理解の問題は触れられないままになる。実際に外国人児童生徒がたくさんいる学校では、課題は目の前にたくさんあるんだけれども、どうしていいかよくわからないまま今までどおりのやり方で進めてしまうといった、ある種の悩ましい問題が、そのまま残ってしまうんじゃないかなという気がします。ですから、報告での記述の仕方については、もう少し議論する必要があると思います。

佐藤(裕)委員】
   自分が学校現場にいたときに感じたのは、国際理解は、何か直接自分と関係ないような感じで受けとめている方が多いということです。外国人児童生徒の編入学は、色々な地域に広がってきており、広い地域で国際理解をやらなくてはいけない現状になっていると私は思っています。
 今までは、私は海外に行くわけではないから国際理解なんて必要ない、と思っていても、今、国内の学校にいても外国人の子どもたちと一緒に勉強するような状況が当たり前になっています。川崎は統計上、どこの学級にも1人はそういう子どもがいてもおかしくないような数字が出ます。ですから、そこも現状の中にきっちりと入れていただき、これから国際理解を進めていく中では、外国人の子どもと一緒に学習することも1つの方法になっていくのかなということを、感じています。
 そういう意味では、報告書ではそこの部分がもう少し盛り込まれてもいいのかなと思いました。

樋口審議官】
   外国人児童生徒の問題をどうするかについては、事務局でも議論いたしました。国会でも最近問題になっていて、公立学校には日本語を話せない外国人児童生徒が約2万近くいて、自動車工場とか製造業を抱えているところに集住している、また不就学という問題もでてきている。それから日本語教育だけじゃなくて、母語教育をどう保障するかとか、母国文化の保持に関する問題も提起されている。これは、OECDでは多文化教育の問題としてすでに議論されている出ている問題ですが、そういった意味では、日本における外国人児童生徒教育の問題は、欧米からするとタイムラグが少しある。
 私どもはまだ入り口にいて、JSL(Japanese as a Second Language)カリキュラムの開発などをやっているけれども、母文化を学校教育の中で保障するかどうか、母語教育をどうするのかという議論があります。結局、国際教育という視点で捉えた外国人児童生徒教育をどうするのか、人権規約に基づく人権としての外国人児童生徒教育をどう考えるかという問題につながっていきます。
 外国人の子どもの教育問題は、国際教育の観点から全く無視する課題ではないけれども、この問題に入っていくと、多文化教育の問題になってきます。今の日本における教育には、多文化教育を受容するような状況にあるのかという問題もあるし、そこまで行かないけれども、不就学の問題にも対応して、日本の中でも外国人の子どもの教育機会をどのようにしっかりと確保していくのかという問題もあります。
 外国人の子どもの教育の問題は、大きな課題であろうと思っておりますので、ここでのご審議に、取り上げていただくことはよいことだと思いますけれども、そういった点も考慮に入れる必要があると思います。

池上座長】
   外国人の子どもの問題は非常に大きく、1、2回の討論で全部をカバーできるかというと、そういうものではありません。先日、群馬県の太田市長と私はお話ししたんですが、大変深刻な問題で、本検討会で観念的に論議できるものではないと感じました。
 労働力問題、セキュリティ上の観点、宗教問題といったことも今後視野に入れながら、日本の国として取り組んでいくべきだという提言にとどめたらどうかと思います。触れないのではなく、大きな問題だからしっかり論議しようという提案ではいかがかと思います。

紿田委員】
   私はそのことについては全く異論はありません。
 私は、目玉は最後の海外子女教育の変化と成果の活用で言っていることだと思います。海外のいろんな日本人学校や補習校の先生が帰ってきて、それが有効に生かされてないという議論がありましたが、例えば教育委員会の認識を変えてもらうために、この先生方がせっかくいい経験しているのに生かされてないという現実をどう改善するかという点に焦点を当てて、アピールしたらいいんじゃないかと私は思っています。

佐藤(郡)副座長】
   国際教育のねらいは、明らかに多文化教育の理念なんです。こういう理念にまで踏み込んでいるのに、外国人についてはまだ、日本の子どもの国際化のための手段という発想が強い。国際教育の基本的な理念を語るのであれば、その共通の枠組みの中に押さえた上で、それぞれの課題があるというふうにしておかないといけない。議論では、その辺のところはぜひ踏み込んだ書きぶりをしないと非常に問題だと思います。

長谷川委員】
   国際教育の意義と今後の在り方というところで、いかなる人材を育てるべきかということを言って、その後に、国際教育を推進するための基本的視点が来てるんですね。ここで、1234と、こう並列されていますが、その中でも1番目、「理解」する教育から、要するに自己発信し主体的に行動できる教育へというのが、事項としてすごく大きいと思ったんです。全部並列じゃなくて、1つ目のような教育へ転換していこうというのがあって、その下に、具体的には授業づくりが大切、それからネットワーク化、支援体制と海外子女教育についてはちょっとまた別個かもしれませんが、そういうような流れになるかと思います。
 3つ目の項立ての、学校教育活動における国際教育の充実となっているが、ここは、初等中等学校教育における国際教育の充実のために、今までの課題や視点を受けて、じゃあ、どうしていくのかということを書くのかと思います。そうすると授業のこと、そして教員の指導力向上といった流れになっていくのかなと思います。

奥村委員】
   我々高等学校の現場の教員は、この構成にちょっと違和感を感じるところがあります。
 例えば国際社会で求められる資質や能力を高めるためにディベートをやったりとか、それから海外交流をしたりとか、そういったさまざまな方法論を駆使して資質を高めていくというのはわかるんですけれども、国際教育という枠の中で何を教えるのか、という部分が抜けている感じがします。例えば、国際的な資質を持つためには、やはり地球環境の問題、平和の問題、あるいは人権の問題、貧困の問題を押さえないといけない、あるいは最近よく言われます、持続可能な開発等次世代に禍根を残さないための開発とはどういうものかとか、そういう内容的なものがない中で資質能力の開発というが、それでいいのか。あるいは、それを意識的に落とした形でこういう施策を立てるところに何か大きな意味があるのでしょうか。

渡邉委員】
   私は、学校教育における国際教育推進も具体的なイメージが見えていないと思っています。では、報告書にどのあたりまで踏み込んで書くか。でも、何らかの形で書くということを提案したいんですね。川崎でいろいろやっているときに、国際教育というのはよくわかるようでわからない、漠然としていて、なかなか即成果、効果というものが見えにくい分野だから、学校現場ではついつい横に置きたくなる状況があると思いました。
 そういうことも考えると、何らかの手段でもう少し具現化した、学校現場で受け入れられやすいようなイメージ化した文言あるいは提言があっていいと思います。

奥村委員】
   この1月に、国連が持続可能な開発のための教育の10年というものが採択されて、これから先10年にわたって、国連自身が持続可能な開発のための教育という、テーマを掲げて、世界の教育へ踏み込んでいくという大きな流れが今できようとしています。その中で、ユネスコが中心になっておりますけれども、我々が今後持たなければならない、国際社会を生きる人間としての資質――非常に抽象的なものなんですけれども、かなり明確に出てきています。それがそのままというわけにはいかないと思いますけれども、せめてはじめにあたりでも、そういうふうな、国際社会で求められる人間像、あるいは学ばなければならない内容に少し触れていただけたらなと思います。

佐藤(郡)副座長】
   問題は、こういう検討会で内容を規定するような記述がいいのかどうかということです。その議論も、ぜひしておく必要があるのではないかと思います。

渡邉委員】
   本検討会では、主体性が一つのキーワードになっています。でも現場では、主体性は、どのようにはぐくんでいけばいいのかというところにぶつかっているんです。
 例えば、ディベートやディスカッションくらいのレベルまで、踏み込んで書くことは、大変重要じゃないかと思います。先生方の中には、それが主体性をはぐくむことにつながるのかという疑問をもっている方もいるのですが。
 でないと、自己の確立についてもすごく重要だと思っていながら、実際はどういうことなんだと思っている先生がいますし、各教科、領域も含めて学校教育全体ではぐくんでいかなきゃいけないと思っても、方法論をよくわかっていない先生もいます。検討会でどこまで報告するかによりますが、予算をつけて、推進していこうという方向性を持つ報告書にするなら、ディスカッション、ディベートくらいのレベルの具体性をもって、書いてもいいのではないかと思います。
 そういう意味で、一番大きなキーワードの主体性というのは、生きる力にもかかわってくるだけに重要だと思うので、各教科で例えばこういうことをやると培われていくというイメージ化が図られるような書き方が可能ならば、したいと思うんです。

渡邉委員】
   平成10年度から、小中高等学校の国語の学習指導要領に、「伝え合う力」を養うということが加わりました。それは言葉だけの問題ではなくて、コミュニケーションを通して個の確立につなげていこうということなんだと思うんです。そういったことを具体的に提言の中に盛り込むということが重要かなと思います。
 例えば漢字1つ覚えて習っていくのでも、目先の目標で先生方も精一杯で、ほんとうはもっと先にある学校教育目標といったところに向かっているはずなんだけれども、現実には目先のところで満足して終わっているというようなことがあると思います。基礎基本とは何かといったら、そういう読み書きそろばんだけに終わっていくというとらえ方の先生方が今でもたくさんおいでになりますから、そうでないということを知って頂くために、具現的な提案をする、そういう文言があるといいと思います。

平野委員】
   国際教育も、普通の一般の教育も、教育が目指すものは変わりがないと思うんです。
 国際教育は何かというと、我々はこの小さな星の上に60数億の人間が、好むと好まざるとにかかわらず、一緒になって生活していかなければいけないんだという認識をきちっと持って、その中で、日本人なら日本人としてどういう生き方をすべきなのかという、話だろうと思うんです。ですから、むしろ理念、観念、認識の問題になると思うんです。
 アメリカの学校は先生は生徒に対して、他人と違うことをやりなさい、他人と同じことをやっているとあなたは偉くなれませんよ、いいことができませんよというふうに教えるから、みんな一生懸命になって、そういう生き方をするわけですね。ところが日本の学校の先生は、他人と同じことをしなさいという教え方をするんです。
 どっちがいい、悪いという問題じゃなくて、太平洋の向こう側とこっち側に違った文化がある。
 そういうときに、人間としてきちんとした生き方をするためには、学校教育の基礎の部分でどういうことを教え込まなければいけないんだろうか、そういう視点が必要じゃないかなというふうに私は思うんです。

池上座長】
   今、日本人が国際社会の中で求められる資質・能力というのをもう既に持っているという視点で出発するのか、日本はあまり国際的な社会で求められる資質・能力を持っていないというところから出発するかで、かなり変わってくると思います。

平野委員】
   問題点は教師にあるんです。先生がきちっとした国際教育をできるだけの資質を身につけてないから、子どもたちにきちんとしたことを教えられないんじゃないかと思うんです。覚えない子どもたちが悪いというのではなく、教える側の先生に問題があるんです。どのようにして国際教育をきちんと教えられる先生を輩出し、学校現場をつくり出し、教育の環境をつくり出すかということが重要だと思うんですね。

佐藤(郡)副座長】
   現状をどう認識するかという認識の仕方と、そしてその提言に向かうための理念が1、2の部分に書かれなきゃいけないと思います。つまり、ある理念、人間像があって、そのために具体的にどういうことが、方向性としてあって、そして具体的に、私たちはこういう理念のもとに見たときに、今現状がどうなっていて、そのためにこの施策がどう展開されるかという議論になるので、具体論とか何とかでなくて、ここは要するに私たちの問題意識なり課題が明確になっていればいいと思います。

中島委員】
   理念で一番大事なところは、国際理解教育の授業の中の何かというよりも、学校教育の教育活動全体を通しての視点であることを強調していただきたいと思います。
 読んで非常に不思議だと思うのは、貢献という言葉が1つもない。国際社会に貢献する人間像と、もうちょっと積極的に言ってもいい。もう少し積極的に世界に貢献してもらいたいと、世界は日本に対して思っていると思うんです。それが足りないということ。
 もう1つは、自己を確立、など非常にわかりにくい。私はこれを英語に訳せません、もうちょっとはっきり言ってくださらないと。国際社会の一員としての自覚、あるいは、それと同時に日本人としてのアイデンティティをきちんと持って国際社会の一員としての自覚を持つのか、もう少しはっきり言わないと、一般論の自己確立では、この提言としては非常に不適切と思います。

小野委員】
   まとめ方の話で、1にあるべき姿、2に現状と課題、3に具体的改善方策をもってくる、というのは私も賛成です。
 具体的な報告として出すときには、現場で先生たちがいかにこれを活用して取り組む姿勢を示し、実践に結びつけていくかということを考えながらやらなければならない。先生の力量は劣っているかもしれないが、だからこそ具体的に改善方策を示すことが大切です。すると今度は、先生の力量は劣っているとは書けないから、報告書では具体的に示さないことになります。実際、今までの報告書はすべてそうなんです。
 例えば、単なる体験学習と、学校の現場でのことに触れているところで言えば、8ページの一番上のまるで言っている、国際教育における云々ということは前にも述べているし、ほかの報告書でも述べられている、かなりこれは具体性に欠けるというか、概論的なことが書いてあるんです。しかし、9ページでは、例えばITならITについてこうである、という書き方がされている。報告書では、このように、何を到達点としてねらっていくのかということの表現が必要なのかなと思います。
 例えば9ページの4つ目のまるもそうです。コミュニケーション能力はなぜ必要なのか、どういうことをねらってどういうふうにするのかということで、すべてにおいて1、2、3の3に当たる部分を、例示をする、具体的な目標設定をする、到達点を明確にするなどしてまとめたほうがいいのではないかと思います。そうでないと、概論を読んで終わりということになってしまうと思います。

佐藤(郡)副座長】
   2ページ目のリーダーシップを発揮して指導的立場に立てる人材については、今までになくて、かなりおもしろいと思うんです。ただ問題なのは、これに後半のどこが対応するのかということです。基本的にはこれは上のレベルの話なんですが、後半は大体、すべての子どもたちにどのように国際性を高めるかというトーンで通されているので対応していないのです。

池上座長】
   1、2では問題指摘までして、3のほうを具体的提言に絞ってまとめ上げていって、その提言には具体的にはこういうことがあるぞという具体論もつけながら、あまり低次元にならないということも意識する。多少、現場の先生が、目に見えるような、理屈理論、抽象論だけじゃないということをわかってもらう程度のものをつけたらどうかと思うんですけど。

平野委員】
   例えば、仕組みに関わることで提言したいのですが、国際交流基金が2002年度に、外国で日本語を教えている学校がどのくらいあるかという調査をやっているんです。5年に1回やっている調査なのですが、そうすると、9,881機関あるんです。これは驚くべき多さだと思います。そのほとんどにおいて、日本人以外の現地の人が日本語の先生になって、現地の人に日本語を教えている。そういうところに日本の公立学校の先生って派遣できないのかなと私は思うんです。
 そういうところに派遣されて何をするかというと、もちろん日本語も教えますが、日本はこういう国だということをその国の人に教えるとともに、その国はこういう国だということを体得して帰ってくるわけです。体得してきたものを日本の国内の教育現場で還元すれば、こんなにいい国際教育というのはないと思うんですが、これは今の仕組みの中では、多分、ないと思います。日本の公立学校の先生が外国のそういう教育機関に行くというのは、せいぜい日本語学校の先生になるくらいですよね。

樋口審議官】
   10ページにREXプログラムについて書いております。このREXプログラムが海外の中等教育施設に教員を派遣して、現地で日本語教育等を担当するプログラムなんです。

平野委員】
   あるいは、海外に姉妹校をつくって、その姉妹校に先生として行くなどの仕組みはできないものでしょうか。

佐藤(郡)副座長】
   地方自治体でかなりやっていますね。

池上座長】
   そういうのを奨励していくという手もありますし。

樋口審議官】
   国として行っているものが、まさにREXプログラムなんですね。

中島委員】
   ただREXプログラムは非常に小規模ですね。

樋口審議官】
   はい、その問題があるんです。それと、それぞれの地域レベルでの姉妹校提携などの形でやっておられるかもしれませんが、結局、教員事情が逼迫しているという問題がございます。もっぱら財政事情による問題をどうするかというところは大きい。

池上座長】
   ですから私は、このREX教員を大幅拡充して、それが今みたいな分野に行くとか、それは一つ大きな目玉だと思っておりました。ですから、それはそれで、同じスキームを拡張して新しいものをつくるという提案はいいのではないでしょうか。ほかにも、各学校に国際教育担当の先生を指名し、その人たちを集めて研修をすると。しっかり研修してまた学校へ戻ったら、その人を中心に学校で責任を持って展開してもらう。全部予算が必要ですが、予算をつけてくれるという前提で提案するところは提案したいというお考えは、皆さんそれぞれお持ちだと思うんですけど。
 そうすると、一応、1、2、3の3のところを目玉で提言をしていくという絞り込みでいこうかと思います。
 これだけは提言で入れておきたいというような、目玉になるものがあれば事務局まで御提案をいただくなどして、やってまとめていってもらうと、めり張りのある報告書になるかと思います。

中島委員】
   例えば、国際社会に貢献してというような言葉を入れていただきたいと思いますので、それは事務局に申し上げます。

岩谷委員】
   私も1、2、3の大きな枠組みというのは賛成です。私は特に目玉の部分として、11ページにあるような、国際教育を担当する教員を、5年目あるいは10年目あたりでしっかりと育てていくような教員研修のシステムづくりも合わせてできるといいなと強く思いまして、お願いしたいと思います。

小野委員】
   2ページの、リーダー的資質・能力の伸長ということが議論になりました。ところが、これを後段で受けているところがほんとうにないと思います。リーダー的資質・能力の伸張にも配慮した教育を望みたいということが書いてあるわけですから、だから、どういうふうなことを学校に望んでいくのかという点を明確にすべきではないか、ということが1点です。
 次に、2ページの3つ目に、さっきから出ているコミュニケーション能力とディベートのことが書いてあります。この部分に関しては、まさに英語活動が出てきているわけで、国際理解教育が英語活動になってしまうことは望ましくない、という意見もありましたが、一方で、9ページには、コミュニケーション能力の育成の文脈で英語活動について書かれており、これと対応した形で、きちんと2ページの本論で色々書かれている、この中心となるべき具体策を3でしっかりと触れていただけるといいかと思いました。
 ただ、心配しているのは、4ページの、英語活動をやっていれば国際理解教育をやっているという考え方をする先生が多いと述べている点についてです。このような形で国際理解教育が広がっているのではないか、それに対して少し否定的な声もあったということを述べているのですが、これだと、英語活動の否定や国際理解教育の先進的な取組を行う学校に影響を与えていくのではないか。だから、国際教育の中で英語活動はどういう位置づけでやるべきかということをきちんと、述べてもらいたいと思います。

池上座長】
   私も今大学にいて、東大の学生と北京大学、ハノイ大学と、それからソウル大学と4大学の色々なレベルの交流をやったり、ディスカッションの場がありますが、どうしても日本人はニコニコして無口で、主張がないし、議論への参加が少ない。
 ほかでも、ダボス会議の学生版と言われているスイスの会議がありますが、そこも、中国、韓国の学生は国がお金を出す、滞在費も出すというだけでワッと手が挙がって、争奪戦になる。これに対し日本は、行ってわざわざ勉強して、英語で論議なんかしてもねと参画せず、おい、行ってこいよ、おまえ、順番だなどと言って参加者を出すようです。やはり国際会議の場で日本人がほんとうに活躍できるのかという疑問を抱いてしまう。
 それが結局は、国益がちゃんと主張できないということにつながっていく。日本として言うことは言い、相手のことは聞いてくるという、主張すべき点はし相手を理解できる人材の層が薄いという点で、やはり問題です。
 やはりこれは、日本の現状としてかなり寂しい。外国で経験を積んできた人が混じることによって良くなってきたということもあるので、外国ではそういう人をどのように育てているのかということをしっかり調べて、国際社会で議論に参加できる人材を育てる必要があるということも思います。

佐藤(裕)委員】
   この提言を学校現場でみたときに、興味や関心のある人はこれが非常にいい道しるべになると思いますが、一方で、そうでない教員も半数以上はいるだろうと思います。やはり時間がなかったり、ほかにやることがたくさんあったり。
 川崎では10年目研修が工程化されており、国際理解のコマが入っています。10年目の先生はやらなくてはいけない。文科省から、10年目研修の中身としてこれを位置づけなさいということは可能なんでしょうか。

樋口審議官】
   10年経験者研修というのは、個々の10年経験された教員の、それまでの10年間の在職キャリアを踏まえた個別計画で対応しています。ただ個別計画といっても、90万人いる教員すべからくということではなくて、ある程度のまとまりはありますが、それぞれのキャリアを踏まえた個別計画になっておりますので、一律にこれという形にはなりにくいところはあろうかと思っています。
 ただ、教員に求められる資質・能力として、大学の教員養成過程ではこういう必要最低限の知識を身につけたけれども、IT能力や国際教育を推進する能力、カウンセリングマインドの力など、いろいろ新しい教員に求められる力が出てきてますから、そういうのを適宜織り込んでいくように教育委員会を促していくことはできます。例えば10年経験者研修、ほかにもたくさんの研修がございますが、そういったものの中に国際教育の観点を適宜織り込んでいくようにという方法で、教員の資質向上を打ち出していただくということはあると思います。ただ、これを一律、おしなべてとするのが適切かどうかは、ちょっと課題はあろうかと思います。

佐藤(裕)委員】
   例示で盛り込むことは可能でしょうか。

樋口審議官】
   それはあり得ると思います。

渡邉委員】
   今のことに関連して、神奈川県の場合、今後、小中高12年間で英語教育に本腰を入れた国際教育をしていきたいということで、今、そのカリキュラムを作成しています。例えば、理念を具体的なカリキュラムにおろしていく際に、その際、例えば中堅の、筑波研修も終えた教員が、もう一つ力になってくれる人に育っていないという現実があります。だから、何年目研修のときに国際教育に関するメニューを入れるなど、こちらからどんどん具現化した、イメージ化できるような提言をしていくことを念頭においた報告書づくりをしていくべきだと思います。
 私は、国際教育は基礎教育として非常に重要で、国際教育で育てるものを学力観としてとらえていけるように教師を変えていくべきだと思います。そうしないと、高等教育の段階になってから育成しようとしても、急には変われない、時間がかかるので、義務教育レベルから国際教育を行っていくことが重要です。神奈川の例も申し上げましたが、ちょうど都道府県レベルで、地域発信型の教育行政を行うところが増え始めていますから、各都道府県へのメッセージとして、ちょうどいい時期に本検討会の報告を出せるんじゃないかなと思います。各都道府県にきちんとメッセージを伝えるためには、かなり具現化した提言が必要だと思います。

中島委員】
   コミュニケーション能力が1つのポイントになっていますが、それと英語教育との関係はあまりはっきりしてないと思います。でも、そこは扱わないのであれば、コミュニケーション能力を英語教育と結びつけるだけではなくて、コミュニケーション能力の一番核になるところは母語でのコミュニケーション能力ですので、英語力とあまり結びつけないで、高度な言葉の力が必要だというような書き方をしたほうが合っていると思います。
 それから、国際教育と国際理解教育の両方が区別されずに使われているという印象ですが、そこは、大分国際教育に収束してきたと思います。

山脇国際教育課長】
   基本的には国際教育という考え方でまとめているつもりです。ただ、現状や課題は総合的な学習の時間で行われている国際理解教育の現状なので、国際理解教育としています。
 ただ、3章から5章の提言の部分については、国際教育として我々が考えている資質・能力を育成するための教育、それに共通する課題だと思っていますので、国際理解教育よりも国際教育の推進法策としてとらえたほうがいいのではないかと思っています。

渡邉委員】
   ある学会に出たら国際理解教育と国際教育の違いについてだけで1時間以上、学者さんが論議したことがあったんです。そういうとき、文科省はこういう言葉を使っている、とすぐ引き合いに出される。
 今までずっと、国際理解教育とは何かという感じで公文書には出てきていますから、今後は国際教育ということで行くのであれば、それはそれで私は個人的に賛成ですが、どういう方向ととらえておいたらいいんでしょうか。今まで使われている国際理解の理解が入っているものは、それはそれで消すことはしないが、今後は国際教育という言葉で行くなどの整理はあるんですか。

山脇国際教育課長】
   まず、この検討会の報告書を受けて、いろんなところでもう少し具体論を固めていかなければいけないので、すべてが一瞬にしてという形にはならないと思います。まず、この報告書で出された理念や方策を踏まえて、予算的な措置、指導の考え方ということを次にやっていくのではないかと思います。

佐藤(郡)副座長】
   神奈川県ではとうの昔から国際教育という言葉が使われているようです。
 ただ、学問的には国際理解教育学会という学会もございますし、かなり厳密な概念定義というのは当然必要です。現在は、一方で国際教育の下位概念として国際理解教育という概念があって、それは独自の実践を踏まえたものを国際理解教育と、現実的には呼んできているものです。しかし、他方で国際教育と国際理解教育を同義で扱っている議論もあるので、混乱を来すことがあります。このように、あいまいなままに来ているところにもまた問題があるので、あえてここでこういう表現を使おうという政策意図であれば、それはそれでよろしいと個人的には思います。

平野委員】
   8ページの部分で、コンピューター、インターネット等の情報通信ネットワークの積極的活用は1つの柱になるのではないかと思います。教育の媒体として、国際教育の媒体にもなるものとしてそういうものが出現したわけですから、これはいいと思います。

佐藤(郡)副座長】
   その部分に関連して、「体験学習」・「調べ学習」が、ただのお遊びに終わっていることを問題視しているのだと思います。活動至上主義になっているから、もう少しきちんとした学習としてやるべきだ、と。例えば、コンピューターを使ってインターネットでホームページにアクセスして、それを切り張りして、発表して終わりという活動が多すぎる、という問題もある。それを克服し、きちんとした学習方法として位置づけられるようにしよう、という提案なんだろうと思います。

平野委員】
   私は、発音なども、やろうと思えばインターネットを使って覚えることもできますし、インターネットの活用可能性は高いと思うのです。ですから、もっと積極的に使いなさいという提言だと考えています。

池上座長】
   7ページの4つ目のまるに関連して、国際教育が現場任せになっていることについて、私は疑問を感じています。教材をある程度組み込んだ効果的な形で、国際教育のマニュアル化、体系化を図った、こういう教材を使えばここまでは到達できるというモデルはあるのかないのか。今までお話を伺ったところでは、各学校が工夫して国際教育を行ったり、やらないところもあるなど、現場任せのマイナス面が出ているようにも思いますが。

奥村委員】
   すくい上げていけば、すぐれた教材というものは開発されているんです。ただ、それが現場の教員に伝わってない。それを伝える仕組みが要るんですね。
 それとともに、8ページの上の「体験学習」・「調べ学習」から「学びが広がり深まる学習」へという部分で、学びが広がり深まるというのはいいんですけれども、現場としては概念的、抽象的すぎると思います。要するに、系統的な「学習と体験」・「調べ学習」との融合をどこに持っていくかということだろうと思います。
 それからもう1つ、総合的な学習というものが「体験学習」・「調べ学習」に終始して、実を結んでいないという表現があちこちに見られると思うんですけれども、総合学習というのは文科省の指導要領では、横断的・総合的学習と正式には言われるものです。だから、各教科がお互いに連携して総合学習の中に入り込んで、教科の特性を生かしながら連携しなさいという、もっと高邁なる理想があるはずなので、総合学習というものをあまり、それこそ矮小化しないようにする表現が必要なんじゃないかなと思います。

樋口審議官】
   ここでは、今、総合的な学習の時間全体で問題になっていることが、国際理解教育とか国際教育の切り口でも、課題となっていると思うんです。いわゆる体験主義に陥りがちであった総合的な学習の時間の在り方が、各教科を相互に関連づけて子どもたちに考える力、調べ方を学ばせるという風に、もう少し全体計画を明らかにして、その中で単に学習するだけじゃなくて、起承転結をつけた指導を通じて、どういう能力・資質を身につけさせるか、それを国際教育の中でやっていこうというお考えのようですから、これはもう少し私どもは総合的な学習の時間の在り方を書き込んだ上で、方向性を出していきたいと思っております。
 総合的な学習の時間が誤解を生んだり、現場での不十分な点もありますが、私どもは新しい学習指導要領の中で、これは非常に大きな分野だと思っておるんです。いろいろな議論はありますけれども、引き続きこの時間は大事にしていきたいと思っております。

吉谷委員】
   「単なる」という言葉がつけてありますね。「体験学習」・「調べ学習」でも非常に質の高いものはあり得るので、今、単なる体験という言葉を使われたのだと思います。

樋口審議官】
   そうです。調べ学習というのは、調べ・まとめ・発表するというのが一応総合学習の1つの例示としてあげている。考える力とか、ハウ・トゥ・ラーンということを身につけさせるための1つの方法なんです。

吉谷委員】
   それならば、ワーディングを少し考えた方がいい。

樋口審議官】
   調べ学習は方法としては非常に大切な要素ですから、ただ体験に終わるという、単なる体験学習というのが課題だといいたいわけです。ですから、調べ学習をここに入れるのが適切かどうか、1つ課題があるかもしれない。

吉谷委員】
   そうですね。ワーディングをうまくやっていただくと、もうちょっとパッとわかるし、逆に言えば、場所が2番目でいいのかというふうな形もおそらく出てくる可能性があるんですね。

池上座長】
   直接的な異文化体験に海外修学旅行まで載せていますが、これでいいのかと思う部分もあります。海外修学旅行はただの物見遊山で、これを書くとレベルが下がってしまうかなと私は思いますが。

奥村委員】
   海外修学旅行は見直しの時期が近々来ると思います。量的には十分拡大してますし、すべてが業者任せになってますし。

山脇国際教育課長】
   ここで海外修学旅行を入れたのはまさしく中身の問題です。今、半分ぐらいの学校は海外修学旅行で学校訪問をして交流活動もしていて、単なる物見遊山で、旅行会社がつくった旅行日程に従っていくというのではないものもあります。

奥村委員】
   いや。学校訪問もエージェントがつくっているところがあります。

山脇国際教育課長】
   とすると、もう少しそこの中身まで踏み込んだ形で言っていくほうがいいんじゃないかなと思うんです。

池上座長】
   この間、中国で修学旅行生がぞろぞろ歩いてて、みんな日本語でしゃべって、漫画の本か何かを見ながら歩いていて、これじゃ、修学旅行にならんなと思いました。修学旅行のレベルアップを提言することにしたいと思います。

根道委員】
   そうですね。せめて海外から帰国した教員を活用することはすべきです。もちろん、海外から帰ってきた先生がすべて国際人になっているとは思いませんが、それがもし活用できないようだと、それ以上のことを望んでもきっと難しいだろうと思わざるを得ないと感じております。

佐藤(郡)副座長】
   リソースという言葉はどうなんでしょうか。響きとしてね。つまり、リソースという言葉は、人間に当てはめるには相応しくない。違和感がないでしょうか。

根道委員】
   私は全くありません。

佐藤(郡)副座長】
   私は抵抗があります。

平野委員】
   普通は「ヒューマン」をつけますね。

佐藤(郡)副座長】
   ヒューマンリソースという言い方のほうがよろしいのではないか、少なからず。もっとも日本語のほうが更によろしいのかもしれませんが。
山脇国際教育課長】
   ここで言っているのは、人材だけではありません。
 ノウハウや実践、あるいはNPOの活動を行っている組織の知恵など、学校現場とのつながりがいろいろあるのではないかと思います。人材に限らないので、このような表現にしています。
中島委員】
   情報を提供してもらったりする点で、在外教育機関自体がリソースでもあると私は思うんですね。それがどこにも入ってない。

池上座長】
   ネットワーク化というのは、外がやるものじゃないという意見がありました。これはどうしましょうか。

平野委員】
   いや、こだわりません。

池上座長】
   入れておいてもいいですかな。一部、それでもわかるんですけどね。

渡邉委員】
   基本的なこととして、読者としてどの辺を想定するかによりますが、REXなどは、どこかで正式名称で書いておく必要があるのではないかと思います。

山脇国際教育課長】
   11ページに連携とネットワーク化という形で書きましたが、先ほどの仕組みの議論を受けて、ここで意図しているのは、単に学校の中だけ、先生の個人の努力だけでやられている部分が多いんじゃないかというご意見もありましたので、それだけじゃなくて外部の社会人やNPO組織、国際機関と協力していく仕組みもここでできないか。そのために、地域的な拠点をつくって広げていくという方法論もあるかと、そんなことをイメージしながら書いているつもりではあります。

池上座長】
   学校側、日本の教育機関の中でのネットワーク化について、発信地を例えば国際教育課として、色々なところにネットワークを張って、国際教育というのはやり方はいろいろバラエティーがあるから、選択はどれでもいいが、このようにやっていこうというようなネットワークがつくれないものかどうかと。末端の小学校に至るまで担当を1人ずつ置いて、それで、時には集まって国際教育について話す。そういう人たちが、自分はこんな悩みがあるんだけどどうしたらいいんだろうということを話せるような、学校側のあるいは行政側のネットワーク化というのはできませんか。

奥村委員】
   国際教育担当主任というのは、ちょっと行き過ぎかな。

山脇国際教育課長】
   校務分掌の中に位置づけていく、ということを書いてはいますが、それがうまく機能するかどうかという問題があるかもしれません。一方で、校務分掌は細かすぎるから、まとめろというような議論も別の場でありますので、細かく規定するのはどうかという議論は、先にあるかもしれません。

岩谷委員】
   国際理解教育推進校となっている高校などでは、国際教育担当もきちんと位置づけているようですね。

山脇国際教育課長】
   そういう推進校からうまく広げていく、段階的な取り組みが必要という気はしています。いきなりすべての学校といっても、ノウハウもないのに、うまくできるかどうか。前、野球選手を育てろという議論がありましたが、野球選手を育てろといっても、投げ方や打ち方をどうやって教えていいかわからない先生に、あなた、これ担当ですよと言うだけでは広がらないかもしれない。だから、現実的にうまく拡がるようにしていく必要があります。

池上座長】
   段階があるかもしれませんが、しっかりと担当をつくっていくということは必要だし、いろんなところで、安全衛生管理者などつくっていますよね。それは違う次元かもしれませんが。やはり、検討はいただきたいと思います。

吉谷委員】
   そういう意味で、ここの4のところは支援体制の構築なんですね。リソースと書いて、それを受けて、すぐに教員の課題が出てきているので、リソースは、人に直結しますね、という感じがある。

根道委員】
   海外子女教育の部分については、日本の中で国際教育をやるために、帰国の生徒とか外国人生徒をあたかも利用するというような表現になっているから、手段化するのはまずいと思います。要するに外国人生徒あるいは帰国生の問題は、その問題自身として取り上げるべきだと申し上げたい。

多田委員】
   全体的には、具体的な内容が盛り込まれていて、私たちが思っていたことが具現化するようで大変うれしく思っております。

池上座長】
   全体をまとめると、1、2で、あるべき姿はこうだろう、それに対して、現在、こういう問題があるということを書く。3番目として、ではあるべき姿に持っていくための具体論として、提言を具体的に盛り込もうと、このようなまとめ方をしようということになりました。

(4) 佐藤郡衛委員より、挨拶
 3月末から8月まで渡米する予定の佐藤郡衛委員より、挨拶があった。

(5) 今後の日程について
 事務局より、今後の日程について説明した。

(6) 閉会
  (了)


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