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資料2

初等中等教育における国際教育推進検討会 論点整理資料


1.国際教育の意義と今後の在り方について

 
1 いかなる人材を育てるべきか −求められる資質・能力
 
 価値観の多様化、都市化、少子高齢化、国際化、情報化など、社会の変化が進む中、日本が活力ある国家であり続けるためには、あらゆる人材が、基本知識・基礎学力、主体性、プロ意識、知力を身に付けることが求められている。

  経済のグローバル化、環境問題等の地球規模の課題の出現等により、日本人の国際化が急務となっている。国際社会に生きていくこれからの人材には、倫理観も含めた社会性や、共存共栄的な物の見方や全世界的な視点をもつことが必要である。その上で、異文化理解、世界的視野、コミュニケーション能力を基盤とした知識、技能(スキル)、能力が求められる。

 加えて、国際社会において、リーダーシップを発揮したり、国際的に指導的立場に立てる人材の育成が求められるようになってきている。

  主体性をもって国際社会に活躍できる人材には、自己を確立し、それに基づいて自己表現していく力が求められる。

 国際社会の中で生きていくためには、異文化を理解することだけにとどまらず、異文化を知ることを通して自国の文化を知り、行動する能力が求められる。

  国際教育を通じて、個人が国際社会の一員として、自己を確立し、自己発信を行い、多様な他者と創造的な関係を構築しつつ、知らないこと、理解できないことへの対処する力を身に付けることが求められている。

 これからの国際化社会では、1いろいろな人とかかわり合う力、2自分と異なるものや人を受容できる力、そして3受容したものから自ら発信していく力、という3つの力が非常に大切になる。

 国際化する社会の中で、主体的に活動し得る人材としては、1時代の変化を先取りして将来像を示すことができる能力、2さまざまな意見や人をまとめ物事を確実に遂行する組織力、3国際場裡にあって各国リーダと対等に渡り合える能力、4その他起業家精神、高度な専門知識、最先端の知識、が求められる。

  「国際教育」とは、「国際社会において、国際的視野にたって、主体的に行動するために必要と考えられる資質・能力の基礎を育成するための教育」と捉えられ、海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育、国際理解教育といった各分野を有機的に関連づけていくことにより効果的に進めていくことが求められる。

 一方で、海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育といった個別分野は依然として重要な教育課題である。国際教育という大きな枠組から見ると同時に、これら分野の充実を図っていくことに留意する必要がある。

2 何を目指すべきか −国際教育の基本的な視点
 
 国際化の進展に伴い、国際社会の中で、日本人としての自覚をもち、主体的に生きていく上で必要な資質や能力を養うことが求められている。さらに、国際化は、国家間の関係のみならず個人と個人の相互交流へと深まりつつある。

 国際社会の中で生きていける資質・能力を有する人材を育成するためには、体験的な学習や問題解決的な学習などを多く取り入れ、実践的な能力や資質、また態度を育成していくことが大切となる。

  学校・地域・社会が連携・協力し、国際教育に関する実践力を向上させることが不可欠である。

 学校における国際教育の充実、活性化を図るためには、当該分野で、幅広い経験や優れた知識を有する国際機関、NPO、社会人や地域住民などの「国際教育に係る資源」を最大限に活用し、学校教育活動を充実することを目指すべきである。

 国際教育として、海外子女教育は、長い経験に基づく高い知見を有している。英語教育、国際交流、少人数教育等、日本の教育改革の先駆的取組を行ってきている。このような海外子女教育の分野での取組みが、日本人の国際化のための教育の在り方を含めた日本の教育改革に資すると考える。


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2.学校教育活動における「国際教育」の充実について

(1)国際教育の実践の在り方

 
1 何が欠けているのか −現状と課題
 
 平成14年の総合的な学習の時間の創設以来、各学校における国際理解に関する取組が進展している。平成16年の文部科学省調査では、小学校では79.2パーセント、中学校では39.4パーセントの学校が、総合的な学習の時間の中で国際理解に関する課題を取り上げている。

 学力向上への対応や学校行事のための時間確保のため、現実的には国際理解教育に使うための時間をなかなか確保できないという声が寄せられている。特に、高校においては、受験対策もあり、総合的な学習の時間への取組みが十分に進んでいないという指摘もある。

  国際理解教育が学校において浸透しない理由には、
  必要性や緊急性が他の課題(環境や情報等)と比して乏しい
  授業の目標や内容が明確でないため、児童生徒の学びの成果がみえにくい
  指導方法や教材開発が十分進んでいないため教育的効果が十分上がっていない
  英語、社会、理科等一部の教科や関心のある一部の教員が取り組めばよい課題としてとらえられる傾向があり、学校全体の取り組みとなっていない
  等があげられている。

 総合的な学習の時間において、国際理解に関する活動として、クラスにいる外国人児童生徒やその保護者の協力を得て、衣食住などの生活文化を語ってもらうということが行われることも多い。しかしながら、外国人児童生徒は、他の子どもたちにとって直接しかも継続的に関わり合う立場であるだけに、「異文化性(異なっていること)」が過度に強調されてしまう場合もあり、注意が必要である。

 多くの学校で、外国への修学旅行、姉妹校提携、留学、海外への研修旅行など、多様な形態での国際交流活動が行われている。国際教育を推進する観点から、国際交流活動は、異文化理解に極めて大きな意義を有する。

  国際交流活動の中でも、高校生の留学は、大学生レベルでの留学やその後の国際交流活動の拡大につながるなど国際性の涵養に大きく寄与するものである。しかしながら、高校生留学の現状を見ると、国際的にも受入れ・派遣ともにその規模は小さく、不十分といえる。その理由として、例えば派遣については、高校生留学に対する理解や情報の不足、帰国後の大学入試に対する本人や保護者の不安等が考えられる。また、受入れに関しては、ホストファミリー等の受入体制の未発達などが考えられる。また、留学の経験を学校の国際教育に活用するということが十分なされていないとの指摘もある。

2 何を目指すべきか −今後の方向性
 
  学校においては、各教科の学習をはじめ教育活動のあらゆる場や機会において、国際理解教育を実践することが重要である。

  国際教育は、1異文化と共生できる資質や能力の育成、2自己の確立、3コミュニケーション能力の育成、をねらいとするものである。

 国際理解教育を通じて、異文化理解や多文化共生の考え方とともに、対話能力、ディベート能力、自己表現力を育成されなければならない。特に、後者の要素の習得に関する取組みの充実が求められている。

 国際社会は多言語社会であることを考えると、国際理解教育における言語教育は非常に重要である。国際理解教育の中で、外国語教育とは別に、言語の重要性について理解させる必要がある。

 国際社会に通用するコミュニケーション能力の育成ということでは、英語教育をはじめ外国語教育の一層の充実が求められる。

  英語教育は、単に外国語運用能力を習得するだけではなく、外国人とのコミュニケーションという主体的な活動を通じて、自分の考えを持つ、主張するという資質・能力を育成することに関わるものでもある。例えば、小学校での英語学習活動については、子どもの主体的な活動への参加が促されるよう、子どもたちの発達段階を踏まえた話題・素材・題材を扱うことが大切となる。

 国際理解教育が教科や領域として位置づけられていない中では、総合的な学習の時間のみならず、色々な教科や領域の中でも、国際人として求められる資質、能力を伸ばしていく必要がある。

 国際理解教育の発展・充実のためには、教育課程の在り方と、それを支える教員の養成・研修の在り方を考える必要がある。

 ITは、世界中の人々がつながり合っていくコミュニケーションツールとして大きな可能性を秘めている。特にインターネットは、アクセスさえできれば、規模や地域、周辺環境に関係なく、子どもたちが同じレベルで世界とつながり、プロジェクトに参加し交流ができるという性質があり、国際教育のツールとして魅力的である。国際理解教育におけるITの効果的な活用方策についての検討が必要である。

  帰国・外国人児童生徒とその他児童生徒との相互理解を通じた国際理解教育が推進されている。帰国・外国人児童生徒にとっては達成感、存在感、帰属意識の涵養に資し、その他の児童生徒にとっては異文化・異言語に身近に接することができ、教育上の効果も大きい。しかしながら、異文化性が過度に強調されることのないよう、学級経営において同級生・友人として一体感の醸成に努めたり、継続的な指導を実施したり(脱イベント化)、学校内での位置づけの明確化するなど、十分に配慮しつつ進めていくことが大切である。また、外国人児童生徒の立場からは、日本語指導をはじめ学校での生活や学習への適応に対する支援を必要としており、そのための諸施策の充実に努める必要がある。

  国際交流活動は、国際教育を推進する観点から、意義のあるものであり、このような取組を支援していく必要がある。

3 誰が何をすべきか −改善・向上のための方策
 
 各学校における国際教育の取組の一層の改善・充実のため、国や教育委員会において、先進的な取組事例の情報提供や指導内容、方法等の開発・普及に努めることが望まれる。

 国において、国際理解教育の重要性や在り方に関する指針を示すことが望まれる。

  国際理解教育によって子どもたちがどう変わるのかという評価に関する調査研究が必要である。

 教育委員会において、教育委員会等におけるコーディネーターの配置や研修の充実などの取組みが求められる。

 各学校においては、国際理解教育の校務分掌への位置づけを行うなど、学校全体で取り組むことが必要である。

 実践の在り方については、国際理解教育に関する取組が、校長の理解や関心のある教員の存在に左右される傾向があるという指摘がある。教員が創意工夫しながら国際理解教育に取り組んでいくため、質の高い授業づくりに役立つ情報の蓄積や共有を図っていくことが大切である。

 国において、教材となる映像やメディアに関するデータベースの作成など、ハード及び人材のネットワークを含むソフトの整備など、国際理解教育の特性を踏まえた支援システムの構築が求められる。

  実践事例の収集・提供に当たっては、教員一人一人の抱える教育課題の解決や授業改善に結びつくヒントとなるよう、教員自らが工夫、発展させることができるものであることが必要である。

  国際理解教育の効果的な実践のためには教材開発は非常に重要である。開発教育の分野を中心に、関連する教材が国内外の教育関連団体において開発されている。これら多種多様の教育資産の開発を一層進め、またそれらをネットワーク化することによって、学校内外の国際理解教育に関する学習活動に有効活用できる。

 国際理解教育の活性化のためには、各教科等との関連づけを行うことや、学校内、学校間の情報交換や授業研究を通じて多様な実践の交流を行うことにより、学校全体としての取組を進めることが求められる。

 国際理解教育に関する時間を確保するため、各学校では、小学校と中学校の間で「総合的な学習の時間」に関する学習内容等に関する情報交換を行い、重複を省く、内容を精選するなどの工夫が求められる。

  ITを活用するためには、ハード・ソフトの両面から整備することが求められる。例えば、教材となる映像やメディアを提供するデータバンクやホームページの整備や、外国の学校との共同プロジェクトを可能とするようなテレビ会議システムの開発が望まれる。

  留学を含めて、バランスのとれた国際交流を進めていく必要がある。例えば、留学については、派遣の充実のため、留学の意義の周知を含めた留学情報の提供などにより教員や保護者の理解を促進するとともに、国際理解教育や外国語教育の推進、派遣前オリエンテーションの充実等により生徒の留学に関する理解の向上を図ることが必要である。また、英語圏諸国だけでなく、より日本に近いアジアを含めた多様な国への留学を促進することが必要である。さらには、留学による単位認定制度の一層の推進を図るとともに、大学の入学者選抜においても、高校生留学の経験を積極的に評価することが期待される。受入の充実のためには、受け入れる学校やホームステイ先の拡充を図るとともに、留学生の受入れに関する情報提供の充実により、海外の高校生が日本へ留学することを一層促進する必要がある。


(2)教員の指導力の向上

 
1 何が欠けているのか −現状と課題
 
 教員が主体的、自主的に行っている研修や教科ごとの研究会において、国際理解教育がテーマとなり、取り組んでいる例も数多くある。しかしながら、多忙等の理由により、参加する教員が減少傾向にあると言われている。

 研修の内容について、例えば、外国滞在者や国際ボランティア経験者の体験談や、外国語教育をテーマにしているなど、国際理解教育を取り上げるものの、その中身は、1、2時間の講演程度となっており、国際理解に関する体系的、実践的指導に資する内容となっていないとの指摘もある。

 国際理解教育の優れた実践者の後継者が育っていないなど、国際教育にかかる中核的立場の教員が不足しているとの声があった。

 大学における教員養成課程には国際教育に関する講座は多くあるが、必ずしも国際教育の専門家が担当しているわけではないこともあって、体系的な指導が行われていないとの指摘もあった。

2 何を目指すべきか −今後の方向性
 
 国際教育を充実させるためには、国際教育を実践する教員の質の向上を図ることが重要であり、そのためには教員養成や教員研修の充実が求められる。特に、国際教育の指導的立場に立てる教員を、養成段階と現職研修の中で育成していく必要がある。

 また、21世紀の学校教育においては、国際教育の原理、視点、方法を身に付けておくことは、教科指導や総合的な学習の時間の指導だけではなく、学級経営、生活指導、学習指導などあらゆる面において役に立つ。

 このため、教員の養成や現職研修の各段階において、国際教育の視点が修得されるよう、その充実・改善が求められる。

  各教育委員会においては、国際教育の重要性等について、各学校への研修・啓発活動を進めていく必要がある。

 学校が一体となって国際教育に取り組むためには、教育活動や学校運営においても、校長のリーダーシップの下、国際教育の視点をもって、校長、教頭等が必要な助言、協力を行うとともに、教員の国際教育にかかる資質向上を図ることが大切である。

 国際教育は、全教育活動を通じて進められるべきものである。このため、国際教育に熱心な教員だけでなく、個々の教員が、国際教育にかかる指導力の向上が求められており、教員の自主的・主体的な研修への取組が期待される。

 国際教育の充実を図るためには、大学の教員養成課程において理念のみでなく実践に結びつく指導を行えるよう、国際教育に関する専門講座の充実等が期待される。

 国際理解教育に関して専門的知識を有し指導できる者が求められており、この分野での若手研究者の育成が望まれる。

 教員自身が海外経験を持つことは大切であり、教員にも留学の機会を与えるなど海外経験の機会を拡充することが求められる。

3 誰が何をすべきか −改善・向上のための方策
 
  国際理解教育に関する指導案の作成、指導方法の習得、教材開発の方法等、実践的な研修を行う必要がある。

 国として、国際教育の重要性を示し、教育委員会等の研修の充実を促すとともに、国際教育に関する指導力の向上のための具体的な研修の在り方について検討することが必要である。

 各教育委員会等では、研修の実施形態・方法等を見直し、国際教育に関する指導力の向上のため、講義だけでなく、参加型・実践型の研修の企画・実施が望まれる。

 各学校における国際教育に係る教育活動の充実のためには、校長や教頭が教員の日々の職務の遂行に助言・協力を行ったり、学校や地域の具体的な教育課題や教材や教授技術について教員が協力しあって授業研究を行うなど、校内研修の充実が期待される。

  教育委員会等においては、カリキュラムや指導方法に関する研究を行うなど、国際教育に係る教員の資質向上のための具体的な取組が求められる。

 国際教育にかかる指導力を向上させるため、勤務時間外などを積極的に活用し、様々な研修に参加したり、研究授業を実施したり、個々の教員の自主的・主体的な取組が求められる。また、教育委員会においては、国際教育に関する研修機会の提供や研修に関する情報提供、指導者の派遣等により教員の自主的・主体的研修活動を奨励・支援することが必要である。

  研修の体系的整備が必要である。全国レベルでは担当指導主事研修の一層の充実や、都道府県レベルでは研究主任クラスの研修会の設定を行い、その際、参加しやすいよう期間や時期、実施地域に配慮するとともに、実践的な指導方法等を主体とすることが求められる。

 教育養成段階において、国際教育にかかる基礎的・基本的な知識や理解を得られるようにしていくことが必要である。


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3.国際教育に係る資源の活用について

(1)海外経験を有する教員の活用

 
1 何が欠けているのか −現状と課題
 
 国際人を育成するためには、教員の果たす役割は非常に大きい。特に、在外教育施設派遣教員やREXプログラム派遣教員は、自らが異文化体験をしつつ日本人学校や現地校で教育に当たっており、学校における国際教育人材として一層の活用が望まれる。

 帰国・外国人児童生徒教育の一層の充実が求められている中、このような児童生徒の受入体制や支援に、海外派遣教員の経験や知識を活用することが有効である。また、それ以外の子どもであっても、そういった経験を経た派遣教員に接することで、日本の子どもたちも刺激を受け、学ぶことは多い。

 派遣された教員自らは、例えば、「全海研」や「REX-NET」などの組織を結成し、個々人が得た経験や知識を自らの実践に生かすべく研究を行うとともに、その成果を他の教員に普及することを行っている。

 しかしながら、派遣教員が海外で身に付けた能力や得た経験が十分に生かされていないという指摘がある。

 その理由には、派遣された教員自身の取組不足という側面もありうるが、そのほかにも、
  派遣元である教育委員会に、海外で教えてきた経験を評価し、そして活用するという方策がない
  海外派遣ということに対する周囲の好意的でない目
  等があるとの指摘があった。

2 何を目指すべきか −今後の方向性
 
 派遣教員を国際教育人材として活用するためには、国際教育人材として何を求めるのかということが明確にされることが大切である。

 また、海外派遣経験を持つ教員を評価し、積極的に活用するなど人事制度などの改善も求められる。

 教員においては、国費によって派遣されているということを十分意識し、「自分の意識が変わりました」とか「自分の目の前の生徒だけに伝えています」ということだけではなく、学校教育全体に広く還元していくという姿勢が求められる。派遣する側としても、「海外で働くと同時に帰国後、それを国内で生かしていかなくてはならない」という点をしっかりと伝える必要がある。

 一方で、個人で情報発信できることは限られている。個人の意志・意欲に加えて、そういった人が情報発信できるような体制があることが非常に大切になる。

 派遣経験を国際理解教育の専門家として生かすためには、2、3年という派遣期間は不十分である。その経験を踏まえ国際教育に関する専門性が深められるようなキャリア形成の在り方を考える必要がある。

3 誰が何をすべきか −改善・向上のための方策
 
  派遣によって得られる知識・経験、派遣教員の帰国が学校現場にもたらす効果等について調査研究する必要がある。

  派遣教員を活用するためには、教育委員会レベルでの組織的な取組が必要である。例えば、帰国児童生徒教育に当たらせるなど、その経験や力量を生かせるような人事配置を行うことも必要であり、国がそのような取組を促すことが必要である。

 派遣教員の自分の経験を伝えたい、活用したいという思いの実現のためには、個人の意志・意欲に加えて、そういった人が情報発信できるような体制があることが非常に大切になる。各都道府県においては、派遣教員のネットワーク化を支援していくことが必要であり、国がそのような取組を促すことが期待される。

 各教員が自己の生涯にわたる研修に関するビジョンを確立し、これに基づいて計画的に研修を行っていくことが求められているが、国際教育の専門家として活躍したい教員が、国際教育にかかる資質向上を図るためのビジョンをもって取り組むことが期待される。


(2)外部人材や関係機関の活用と有機的な連携

 
1 何が欠けているのか −現状と課題
 
 教員自身の国際化や国際理解教育に関する取組がまだ十分になされていない現段階においては、人材を含む外部資源の有効活用が求められる

  学校現場では、外部の人材・組織を活用したいと思っても、それらに関する情報を十分持っていないため、なかなか踏み出せないという現状がある。

2 何を目指すべきか −今後の方向性
 
 社会人講師の活用等を通じて、民間の幅広い経験、優れた知識や技術を有する人材を学校現場に導入し、学校における国際教育の活性化・多様化を一層促進する。

 教員にすべてを任せるのではなく、国際社会で活躍したことのあるビジネス経験者などを学校現場に招くなどの取組を行うことにより、書物だけでは得られない肌で感じた実体験に基づく授業ができる。

 国際理解教育の教育内容の充実にあたっては、教材やカリキュラム開発が重要となるが、例えばユネスコやユニセフ、WFP等国内外の教育資産を活用し、またこれら機関と連携して進めていくことで、効果的に行うことができる。

 外部人材の活用を成功させるためには、教員の異文化理解、情報収集力、コーディネート力が鍵となる。また、学校内の実施体制・協働化、開かれた学校・学校経営への姿勢が必要である。

  外部の組織や人と学校の連携・協力を促進するため、教育委員会や学校における体制づくりが必要である。

3 誰が何をすべきか −改善・向上のための方策
 
 外部人材を学校現場で活用するためには、特別非常勤講師制度の一層の活用が望まれる。また、外部人材を組織として継続していくためには、経費が必要であり、外部講師を呼ぶための予算の充実が望まれる。

  国際機関、海外企業、地域在住外国人等との交流を促進するために、学校とそういった機関等とをつなぐ支援体制の確立が求められる。例えば、国においては、外部資源の活用に関する先進的な取組について、情報収集・発信等を行い、教育委員会や学校における取組を促す。

 外部機関等と学校の効果的な連携のためにはコーディネーターが必要であり、研修を行うなど、国際教育に関するコーディネーター養成が求められる。

  国際理解教育に関係する取組や人材を有する団体について、その特色や実践事例と併せて紹介することが求められる。

 国際教育について例えば、企業人と学校の教員との交流や意見交換の場を設ける、指導内容への企業人の経験・知見の反映等に関する共同研究の実施など、学校、地域、企業、関係機関等が協議・連絡する場があることが望まれる。


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4.海外子女教育の変化と成果の活用について

 
1 どのような変化が起きているのか −現状と課題
 
 海外在留期間の長期化や英語圏における現地校志向の高まり、海外勤務者の若年化に伴う子どもの低年齢化など海外子女教育を取り巻く状況が変化している。

 現地市民や国際結婚による子どもの受入等、海外子女教育に対するニーズが変化している。

 このような中、今後の日本人学校を中心とする海外子女教育の在り方について総括的に検証する時期を迎えている。

  海外子女教育と密接な関係を有している帰国児童生徒教育については、近年、帰国地域の分散化が進むなど各地域の実情に応じた工夫が求められている。また、海外滞在期間の長期化等により、伴う日本語能力不足や日本の学校への適応に一層努力を要するなどの課題も生じている。

2 何を目指すべきか −今後の方向性
 
 海外子女教育については、従来より、その時々の海外子女をとりまく教育上の課題と改善方策について提言されてきており、それら報告等に基づき、関係機関において教育や施策の充実等が図られてきているが、なお一層の充実が求められるものや、未だ改善が十分でない課題などがあり、海外子女教育を引き続き推進していく必要がある。

 一方で、日本人学校では、小学部・中学部併設の日本人学校における日常的な乗り入れ教育、小学校段階からの英会話活動の導入等、日本の教育改革の先駆的取組を行ってきており、日本の教育改革を考えていく上で、海外子女教育の分野での取組みが示唆を与えうる

 今までの「日本の教育を海外に」という発想から、「海外の日本人学校での先駆的な取組を日本の学校改革に生かす」という発想に転換し、海外子女教育における成果を日本国内の教育にどう生かせるかという観点から見つめ直す必要がある。

 海外に在留する子どもの低年齢化に関連して、幼児期は、母語習得の重要な時期に当たることから、海外子女教育分野での幼稚園段階の教育は今後ますます重要な課題となる。現在、日本人学校等に対する国の支援は義務教育段階に限られているが、これら幼児に対する教育の在り方について、政府支援の在り方を含めて検討する必要がある。

 補習授業校について、現地校へ通う子どもたちが増加する中、補習授業校は、帰国後における学校教育への円滑な適応を目指して、週1日国語や算数・数学を中心とした教育を提供する場として貴重なものである。それだけでなく、永住権を取得している親の子どもや現地市民の子どもなど帰国を前提としない子どもを受けいている学校もあり、補習授業校は現地との教育・文化交流の一翼を担っている面もある。この点にかんがみ、補習授業校における教育の充実方策について検討する必要がある。

  帰国児童生徒に対する指導の充実については、その受入れをいかに円滑に進めるかということと、海外での経験を通してはぐくまれた特性(外国語能力や国際性等)をさらに伸ばすこと等に配慮しつつ進めることが必要である。

3 誰が何をすべきか −改善・向上のための方策
 
  昨今の海外子女教育へのニーズや状況の変化を踏まえ、特に、日本人学校等の特別支援教育や幼稚部への支援について具体策等の検討を図ることが求められる。

 そのためには、海外子女教育の現状をできるだけ客観的に把握し、その成果と課題を踏まえた上で検討することが大切である。このことから、まずは日本人学校等や保護者の実態調査やニーズ調査を行う。

 また、海外子女教育の成果を具体的に検証し、国内の教育に還元できるものについては積極的に情報発信を図ることが適当である。

 海外に在住している子どもたちが帰国後、円滑に日本の学校に適応できることは、海外で学ぶことの意義・意欲や成果と大きく関連してくる。帰国児童生徒が伸びやかに学校生活を送り、その特性を効果的に保持・伸長するためには、各都道府県において、帰国児童生徒受入に特色を置く学校を設けるなどの工夫を行うことが期待される。


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