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資料6

平成16年11月19日

「初等中等教育における国際教育推進のあり方」にかかる意見発表



東京都港区立三光小学校 主幹
全国海外子女教育国際理解教育研究協議会
副会長 宇土 泰寛

1. 学校に課せられている多様な課題と現状
  今学校では、様々な対応や改革を迫られる新たな教育課題が次々と出てきている。
 
 →  学校選択制、基礎学力、IT化、英語活動、環境ISO、特別支援教育など
  今多くの学級では、学習や生活面で多くの課題を抱え、教室の危機に直面している。
 
 →  学級崩壊、学びへの意欲の喪失、対人関係での問題、いじめ、不登校など、
 しかも、低学年から、引き起こされている。


2. 現在の教育状況に対する国際理解教育の可能性
  国際理解教育  イコール 「外国を扱えばよい」、「英語をやればよい」などの意識が強い
 現在:異文化理解、多文化教育、グローバル教育も包含
国際理解教育(国際教育)
 カリキュラムの内容と同時に、国際理解教育の持つ「視点」が極めて重要
 視点:多様性の受容、相互依存、未来志向、共生、判断留保の原則など
 価値:多文化共生 目標:態度形成、方法:学校・教室づくり
 → ひとつの教科のような枠組みではなく、教育原理としての視点としての役割
☆ 国際理解教育の視点からの実践 ⇒ 「学級崩壊の危機から地球を物語る教室へ」
 マイノリティーの子供だけではなく、マジョリティの子にとっても必要
[提言1]教員養成段階、現職教員研修に、国際教育の視点の修得を
 21世紀の学校教育においては、国際教育の原理・視点・方法を身に付けておくことは、教科指導や総合的な学習の時間の指導だけではなく、学級経営、生活指導、学習指導などあらゆる面において必須である。もちろん、研修の仕方も改革の必要。
 
 教師の視点の変革 教科でも、総合的な学習の時間の中でも、国際理解教育は可能
21世紀型の学びのスタイルを作るうえでも重要


3. 国際理解教育実践の支援システム
  国際理解教育の実践を盛んにするには、
 [提言2]国際理解教育の特質を踏まえた支援システムの構築を
    1 映像やメディアのデータバンク、あるいはホームページ
    2 国際交流やテレビ会議、外国の学校との共同プロジェクトを可能にするハード、及び、人材のネットワークも含めたソフトの創出と整備
国際理解教育は、日常的な準拠集団外のものとの関係が強いので、映像やメディア素材、教材が重要な役割を果たす。
授業に、すぐ入手でき、加工でき、提示できる映像やメディアのデータバンク
 
  全海研「世界教育メディアネットワークづくり」 海外の日本人学校の教師と手を結んで
これらの使い方や実践事例のデータバンク
国際交流・テレビ会議・外国の学校との共同プロジェクト等の活動支援システム
 
21世紀の学習スタイルであるプロジェクト型の学習やネットワーク型の学習へ
人材のネットワーク:留学生、企業の人材、NPO、海外青年協力隊、日本人学校関係
初等中等教育レベルでの国際教育交流センターや支援窓口などの設立


4. 共生しあう学校づくり
  国際化の進展の中で、学校の多文化化、多国籍化が進んでいる。反面、学校選択制と基礎学力向上の名の下に、外国人児童生徒が多くない学校を選ぶ風潮もある。
[提言3]多文化共生の学校づくりを様々な次元で実施
  教師の外国人児童生徒教育への見方の転換 →単なる日本語指導の教育ではない。
  同一性の探求ではなく、違いは当然であり、多様性は豊かさを生む
  教科書やカリキュラム上でも、多文化主義の原理を反映していく。
  各教科の指導書等にも、国際理解教育の視点を明記する(気づいていない)
  共生しあう学校づくりは、子どもを変え、学びを変える。
  → 特別支援教育へのつながりへ
  外国人児童生徒の国の教師を研修で、国内に呼び、日常的な国際交流を実施する。
☆地球子供教室での多文化共生空間作りの実践

[提言4]日本人学校など海外子女教育への発想を転換
今まで、「日本の教育を海外に」の発想から、「海外での先駆的取り組みを、日本の学校改革に生かす」発想へ
  日本の教育をそのまま、海外でもやればよいという意識では、教師の成長はない。海外の厳しい環境は、教師の自立性とカリキュラムや教材の開発力を付ける。
海外の学校は、日本の教育改革の先駆的取り組みをなしてきている。
  学校評議員制度  海外では、日本人学校設立時から実施、外部評価も
  小学校英語活動  英語や現地語の学習、イマージョン教育
  国際交流  現地理解や現地との交流として実施
  複式学級(マルチエイジ) →    小規模校で実施
  多様な人材による学習  現地スタッフやボランティアなど
現地の学校との交流を教員研修として実施し、日本人学校だけではなく、帰国して、日本の学校改革にも生かす。先進国、開発途上国それぞれに得るものがある。
  日本の学校の「日本人学校」化
  海外にいる間の現地の教育や現地理解教育への取り組みも変わる。
  海外から帰ってきた教師の活用が変わる。


5. 英語活動
  「英語をやれば、国際理解教育はOK」の風潮の再来への危機
[提言5]小学生の知的レベルと国際理解教育の視点を活かした英語活動を
  ゲームと歌だけではなく、高学年は、指導の工夫によってテーマ学習も可能
  国際理解教育の視点や原理を英語活動の中に入れ込む
  学級担任とNT(native teacher)による協働的カリキュラムづくりを


<資料>
1.国際理解教育の戦略的視点

教室の中の実践への構図の図


2.共生教育の実践創出へ向けてのストラテジー

 教育実践の研究は、教育内容の理念的研究と同時に、いやそれ以上に、実践の背後に潜む実践構造の研究が重要である。実践のねらいが達成されないのは、実践の背後にある潜在的構造を自覚していないからである。ここに、実践創出に向けてのストラテジー(戦略)が必要となる。

 (1) 共生教育の理念的側面
  ねらいに向けての大切な要素 → わかっても、実現困難
共生の心を育む
セルフエスティーム、対話、参画、共感、他者の立場理解、多様性の受容、寛容
 (2) 共生教育の実践的構造
実践のインターフェイス
実践者の立場に立ったとき、理念的側面と実践的側面に価値の一貫性があるか。
 国際理解教育の時間    教科学習の時間
 学習内容  学習方法
 方法としてのゲーム  アクティビティ

教育実践のインターフェイスの図

3.学級崩壊の危機から、地球を物語る教室へ

底に潜む体系としてのカリキュラムと学びとして生成するカリキュラム

学級崩壊は、既存の学校文化への不適応であり、逆に、未来の学びへの道しるべだった。

児童の姿 ⇒
子供のエネルギー
社会性の未熟 ↓  マイナスとして作用 プラスとして作用 ↓ 知的世界の広がり
ゴミプラスおしゃべりプラスいじめプラス不信感 <国際理解教育的視点> 対話プラス物語るプラス劇化
《判断留保の原則》
既存の学校文化への不適応
「学級崩壊の危機」
<教室改革> 未来型の教室の創出
「地球子供スタジオ」

教室改革→Myテーマ学習→5つのコーナー(宇宙・地球・動物・世界・乗り物)
 対話から物語る→「地球子供スタジオ」→劇作り→教科学習での融合
 「地球の真中で出会ったペットとボトルの物語」
 「地球の真中で出会ったアフリカゾウと子供レンジャーの物語」

基礎学力と総合的な学習の新たな展開

教科学習 / 総合的な学び

子供たちの関心 → Myテーマ学習 → 一つの学びの空間

地球時代・高度情報社会  ↓  新たな児童像・新たな学びの場

Myテーマプロジェクト
 トピック:海がめとペットボトル・アフリカゾウ

子供たちが関与し、生き方を自ら問う課題  イコール  自らの学びの意味がわかる・枠を越えた経験

知的関心・様々な出来事・教科書を越えた知識・結びつける・意味付け
物語る
本当の社会の現状と問題← 書く・描く →本当の社会での問題解決方法の提示
「地球の真中で出会った物語シリーズ」
地球の真中で出会ったペットとボトルの物語 劇化 地球の真中で出会ったゾウと子供レンジャーの物語
配役・効果・表現
劇空間 → 共同体験
非日常から日常的な関係の見直し ↓  個性を生かした関わり
書く・描く ← 物語づくり → 内省 → 態度
さらに豊かに書く ← 聴きあう → 共同的な内省 → 学びの共同体へ
感性的・寓話的な表現 →  教科学習の中での融合→ 科学的・論理的な探求と報告
教室空間・地域へ・現実空間 →野鳥観察と自然探検→ 中学年の学習・知の世界へ


4.国際理解教育におけるメディアネット

国際理解教育におけるメディア関わりの図

世界教育メディアネットワークづくり
   国際理解教育を実施するときに、実際の物や道具、あるいは、写真・ビデオ、絵本や物語、インターネットの利用、さらに、外国の方との交流など、様々な媒体や活動などを活用しながら行っている。現実は、さらに厳しくほとんど個人的なつながりの中で、実践していることが多い。この世界の現実や現象という国際理解教育の素材の収集をIT化の進展した今、個人ルートから教育メディアネットワークとして「ひらき、つなげる」ことの意義と可能性を探りたい。

 全海研の中期戦略「クウォリティ・ネットワーク・プロダクト」の具体化として、特徴を活かし、世界中に派遣されている教師や学校とのネットワーク、国際理解教育の実践に関わる教師・NPO・ボランティア等、さらに行政機関や研究機関、民間企業や大学等とのネットワークをも図り、世界教育メディアネットワークの実現をめざす。


メディアと関わる国際理解教育の実践例
  地球子供博物館とインターネット
1 地球子供博物館づくり
2 ホームページを使った活動
 外務省ホームページ「探検しよう!みんなの地球」


5.多文化共生をめざした地球子供教室
 「地球子供教室」は、外国人児童及び日本の児童に対して、多文化共生の視点から、環境構成、ネットワーク作りなどを協働的な実践として展開してきた。

1 ねらい
教室設置の原則と役割
1. 学級社会への外国人児童の無意識的な自発的な同化傾向が生み出す問題への配慮
2. 外国人児童の母語尊重と母語保持への取り組み
3. 世界的教育動向としての、多文化共生の教育原理への移行
教室のねらい
  教室の運営及び活動は、その子供たちの日本社会での生活・学習を援助し、その子供たち自身が自他の文化を尊重し、自己実現にむけて生きることを支援していく。

2 教室の役割
  子供達の抱える問題解決と支援、学級や学校の国際化への対応の促進と協働的実践

地球子供教室
外国人児童の教育・支援
1日本語の指導
2学習支援
3心理的安定・開放感
4肯定的自己イメージ
5対人関係
6家庭との連絡支援
教室の役割の図
教室の国際化
同化から共生原理
 1言語習得の理解
 2多様性の受容
 3人間関係づくり
 4国際理解
 5開かれた教室

3 地球子供教室の役割と学級社会のサポートシステム
  ・学級へのサポート国際化、情報化やいじめなど新たな教育課題に対応するために、学級へのサポートを行い、課題解決に向けて、学級と連携し、協働的に実践を創り出す役割を持つ。

「地球子供教室」の概念図
「地球子供教室」の概念の図

4 協働的実践ネットワークシステム
  多くの課題の解決→開かれた組織と運営の活性化→専門家や専門的機関との連携ネットワークは、単なる依存ではなく、各々の立場を生かした協働的実践研究


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