3.海外子女教育の成果の活用と変化への対応

(1)海外での成果を日本の学校教育に生かす

  • 小学校段階からの外国語教育、地域との交流活動、小学部・中学部併設による乗り入れ授業等、多様かつ豊富な経験
  • 日本の国内教育に生かすという視点から海外子女教育を

 海外子女教育分野での取組は、日本の教育活動を考えていく上で示唆を与えることができると考える。例えば、日本人学校では、小学校段階における英語を含めた外国語教育、地域の住民や学校との交流活動、小学部・中学部併設による乗り入れ授業等を長い間行ってきており豊富な経験を有している。また、保護者や地域住民の学校運営の参画ということでは、日本人学校や補習授業校では、教職員、教材、運営経費の確保等様々な課題を抱えつつ、地域の実情にあわせて、また、保護者のニーズに応え、地域住民や保護者、日系企業関係者の参画を得ながら多様な運営を行っている。
 今までの「日本の教育を海外に」という視点に加え、「海外の日本人学校の先駆的な取組を日本の学校教育に生かす」という視点をもち、海外子女教育における成果を日本国内の教育にどう生かせるかという観点から見つめ直す必要がある。そのためには、海外子女教育の成果を具体的に検証し、国内の教育に還元できるものについては、積極的に情報発信を図ることが適当である。

(2)時代の変化に対応した海外子女教育・帰国児童生徒教育

  • 日本人学校等や海外子女・帰国児童生徒の実態やニーズを把握し、海外子女・帰国児童生徒教育の充実方策を検討(例:幼稚園段階の子どもへの支援の在り方、補習授業校における教育の充実、日本語指導の充実など)
  • 特性に配慮した帰国児童生徒教育の充実

1.実態・ニーズを踏まえた海外子女教育の充実方策の検討

 昨今の海外子女教育をめぐる状況やニーズの変化を踏まえ、日本人学校等への支援の在り方について、具体的に検討していくことも必要である。検討に当たっては、海外に住む日本人の子どもたちの現状をできるだけ客観的に把握し、その成果と課題を踏まえた上で行うことが大切であり、日本人学校等の実態調査や帰国児童生徒の保護者を含む日本人学校等の児童生徒・保護者のニーズ調査を行いつつ、進めることが必要である。
 例えば、幼児期は、母語習得の重要な時期に当たることから、海外子女教育分野での幼稚園段階の教育は今後ますます重要となるものと思われる。現在、日本人学校等に対する国の支援は、義務教育段階に限られているが、政府としてどのような支援が可能かを含めて具体的に検討していくことが必要である。
 また、補習授業校について、現地校へ通う子どもたちが増加する中、週1日国語や算数・数学を中心とした教育を提供する場として貴重なものである。しかし、それだけでなく、永住権を取得している日本人の子どもや現地市民の子どもなど帰国を前提としない子どもを受け入れている学校もある。また、補習授業校は現地との教育・文化交流の一翼を担っている面もある。これらの点を踏まえた、補習授業校における教育の充実方策についての検討が必要である。

2.特性に配慮した帰国児童生徒教育の充実

 帰国児童生徒に対する指導については、その受入れを円滑に進めることと、海外での経験を通してはぐくまれた特性をさらに伸ばすことの双方に配慮しつつ進めていかなければならない。
 帰国児童生徒が伸びやかに学校生活を送り、その特性を効果的に保持・伸長できるよう、各教育委員会等がその実情に応じて取り組むことが必要である。例えば、帰国児童生徒の個に応じた指導の在り方に関する調査研究の成果を踏まえ、帰国児童生徒の受入れに特色を置く学校の設置や、帰国児童生徒の培った特性、例えば語学力や積極性等の伸長に重点を置いた指導体制の充実などの工夫が考えられる。
 海外にいる子どもたちを取り巻く状況と連動して、帰国児童生徒の最近の傾向として、海外滞在期間の長期化、現地校のみに通った子どもの増加、幼少期からの海外渡航などの理由で、日本語指導や日本の学校生活への適応に一層の配慮を要する子どもが増えている。帰国児童生徒の実態を踏まえた指導の充実が求められる。

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