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後半は、教員以外の国際教育人材の活用について、特定非営利活動法人国際社会貢献センターの細野氏及び藤村氏、吉谷委員より発表があり、その後自由討議が行われた。 |
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細野氏】 |
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私どもの組織は、日本の総合商社がメンバーになっている日本貿易会の下部組織であるNPO法人国際社会貢献センターといいます。現在メンバーは、ほとんどが商社の駐在員のOBで、1,500人ぐらいの会員と国際理解教育の講師として約100人を抱えております。
本日は、学校の外の団体が学校と連携する場合の課題について、講師を実際に派遣する立場として、いつも感じている点をお話したいと思います。
1点目ですが、文部科学省では学校外の人材を講師として活用するため、特別非常勤講師制度を設けていますが、私どもが現場に行きますと、そういう制度があることを知らない先生があまりに多い。私どもが文部科学省からいただいたペーパーを持って、代わりにPRしている状況でございます。これは手続が非常に難しいからではないかと思います。
また現場の先生方に、教育委員会に行って非常勤講師を呼ぶような予算をとってくるというマインドがやや欠けている。ボランティアは無料だという意識がどうも強いように思えて仕方がない。学校にそのための予算をつけていただくことが絶対必要だと思います。私どもの事業は、ただ講義をして帰ってくるのではなく、学校や子どもたちの要望をよく伺った上で講師を選び、あらかじめレジュメを示し、打ち合わせをして授業を組み立てていきますので、大体2ヶ月くらいの準備期間が必要です。その後先生と生徒の感想文をいただいて、それを分析して次回に備えるというやり方をしております。
2点目の、学校との連携をしやすくするための工夫、望ましい制度についてですが、学校の先生は非常にお忙しくて、連絡をとるのが大変です。ですから、少なくとも職員室のパソコンの台数をもう少し増やして、先生方が学校でeメールを駆使できるような体制にしていただきたい。それから、学校にあるプロジェクターなどの機材も古過ぎて手こずります。パソコン教室は非常に立派なパソコンが並んでいるんですが、先生が使えるパソコンは職員室で1台しかないという状態では、我々にとって非常にやりにくい。
また、私どもの講師が学校へ外国の話をしに行くというときは、先生には、児童生徒に事前に必ず予習をさせるようお願いしています。これは非常に効果があります。今はインターネットで、特に外務省のホームページで各国の事情がすぐわかります。予備知識を得た上で生徒が質問を用意したりという中で授業に臨んでくれますので、効果的に指導ができます。
次に、私どもは持論として、国際教育も結構だし、英語も結構ですが、とにかく国語をしっかりやってくれ、美しい、正しい日本語をきちんとしゃべる子どもを育ててくださいと授業のたびに言っております。感想文を見ていると、平仮名ばかりの作文や、誤字脱字は言うに及ばずといったものが多く見られます。もう少し国語をきちんとやらないといけないと思っております。
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藤村氏】 |
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この活動を始める前、国際という言葉が学校でどのように受けとめられているかという点について非常に興味があったんです。例えば「国際何々学校」とありますと、関西では外国籍の子供を受け入れている学校を示します。また、我々が、学校で国際理解教育を行うための活動をやっていますと言うと、圧倒的に英語の先生が対応されることが多い。つまり、国際 英語ができること、という認識です。しかし私たちは、言語の背後にある社会、文化、国の事情を理解するといった国際理解と国際認識、国際感覚、全体世界を見ようということを伝えたいのです。しかし、そこはあまり一般的には受けとめられていない。ですから教科として国際教育というものが小・中・高等学校の各段階で位置づけられるようになれば、我々の活動ももっとやりやすいと思います。
それでは、学校外の人材が国際教育に関わる教育的効果について、生徒に与えられるもの、先生にとって参考となるもの、我々からの要望事項の3つに絞ってお話したいと思います。
まず生徒に与えられるものについてですが、私たちは大体体験談を主体に授業をしますので、生徒からは「実感を持って聞けた」というアンケートの感想が多いです。ところで今の子どもたちに、「将来何になりたいか」というアンケートをとったところ、ほとんど明確な夢を書ける子はいません。それに比べて、同じクラスにいる中国やフィリピンなどの外国籍の子どもは、非常に明確に「将来こうなりたい」という意志を書いております。同じ年代でも非常に大人といいますか、社会人として成長しているところがあるということがわかりました。日本の子どもたちは、そういう点を補わなきゃいけないと思います。
さらに我々の授業のように外国の話をしますと、子どもたちはあこがれて「外国に行きたい」という気持ちが起きます。そうすると、「行ってみたい」から「そういう仕事をやりたい」「そのためには英語を勉強しよう」というふうに子どもたちに向学心が湧いてきます。また、外国の話をしますと、普段は「日本のこういうことは悪い」と言ってもなかなか聞かない子どもたちが、「ああ、日本はどうなんだろう?」「日本はそうじゃないね」という風に、自分自身を振り返ることができるという効果があります。外国の子供はいつから自立するかというような話をしますと、「私たちもしっかり自立しなきゃいけないな」と思います。今、中国の経済発展はすごい、何年後かには日本もアメリカも抜かれるかもしれないというような話をすると、「うかうかしていられない」という競争心もわく。こういう点が国際理解教育のメリットの一つです。
私たちのOBには非常に外国語の練達の人が多いんですが、言葉をいかに克服するかについては、楽しく覚えることをモットーとし、音楽、歌の歌詞を題材にしてイントネーション、アクセントなどに関する原則を日常会話に活用するといった試みを始めました。
2点目、我々の活動が先生にとって参考となるのは、計画性や熱意であると考えます。計画性については、授業までに先生方と色々事前打ち合わせをするのですが、それを通じて、先生方に依頼することも多くございますので、計画性が身につきます。先生によれば、そこまで準備をするのですか、とおっしゃる方もいらっしゃいますが、私たちにとっては、目的に向かって一生懸命準備するのは当たり前なんです。
また講師が、これまで熱意を持たないと仕事ができないという身上の方々だったものですから、それが授業に表れていると思います。私たちは高齢の割には非常に熱意があると、先生たちが感想を述べられる場合があります。あと、最近は授業の計画や運営方針についての相談を受けるようになってまいりました。
次に3点目の要望事項ですが、学校の先生は忙しくて、じっくりとお話をする場がないんです。したがって、現場の先生と我々校外講師とが討議をし合えるような、時間や会合ができたらありがたいと思います。
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細野氏】 |
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我々の団体は、企業のOBが中心ですから、当然年長者が多いんですが、このごろは核家族化が進んでおじいさんやおばあさんと一緒に住んでいるという子どもは非常に少ないわけですね。学校現場に我々のような者が行きますと、目新しいということで興味を抱いてくれるようです。私どもの場合は、家族、子どもも含めて海外に長年勤務しておりましたので、外国の教育制度も肌で感じております。ですので、書物だけでは酌み取れない実体験に基づく授業ができるのが我々の特色だと思っています。私どもが最も子どもたちに伝えたいことは、「世界は広いんだ」「日本の価値観と違う国も世の中にはたくさんあるんだ」「差を認めよう」「そのためにはまず日本を知ることだ」「日本を知るには、正しい、美しい日本語を学ぶことが大切なんだよ」「我々の授業が世界に対して好奇心を抱いてくれるきっかけになればありがたい」ということです。これを各講師ともいつも授業の終わりの結びの言葉としております。
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吉谷委員】 |
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ここ数年、福岡市と北九州地区で学校や社会教育機関、地域公民館等で国際理解教育あるいは異文化理解教育に携わっている中で、気になっていることを4点ぐらいにまとめました。
まず最初ですが、学校にしろ、社会教育にしろ、その組織内外の人材、つまり外部からの人材や外国人児童生徒、その保護者たち、近所の留学生、国際結婚の方等々を活用する際に成否を左右するのは、そこで使われる人材よりも、その人材を活用する学校や主催者、教師の側の異文化理解、活用方法・条件なんだと思っております。だから、教員の養成段階や現職研修の中で異文化理解をきちっと位置づけないといけない。それから先生方の情報収集能力がかなり低いと思います。それからコーディネートをする力あるいは学校内の実施体制・協働化の必要性ということもあります。よく言われる開かれた学校とか学校経営といいますが、実際には個々の教員の努力に依るという学校文化があって、要するに、「国際理解教育はあなたの時間帯でしょう。その時間帯に頑張ってやってね」というのが普通なんですね。それが学年や、国際理解教育の部会などで、十分にサポートされていない。実感としてはそんな感じがしています。そういう部分にしっかり目を向ける必要があるのかなと思います。
それから2番目は、外部の機関、例えばJICA(ジャイカ)や地域の国際交流協会、NGO、いろいろな団体や機関がありますが、そこの資源や人材の派遣、助成をしていただいた場合でも、学外者の方が学校教育や個別学校の事情を知っているとは限らないという点です。同時に、その機関に任せられるところ・使える素材等については大いに利用すべきである。そのために授業に行くまでに準備に2カ月ぐらいかけたり、情報を交換したりした上で授業をしないと、とても中途半端なものになってしまうのではないかと思っています。そういう意味でも、情報の収集、学校とか学級の情報提供は、学校のほうからする必要があります。個々の学校には、思わぬところで色々な異文化の問題や葛藤を抱えている場合がありますので、十分に打ち合わせをやるような物的、時間的条件を整備する必要があると思っています。例えば、福岡は中国からの帰国児童生徒がおります。この方たちは例えば日本国籍であるのか、中国籍であるのか、そういった状況が全然見えませんので、その辺の配慮は常に必要です。
3番目、学校内の児童生徒、その保護者を活用する場合ですが、大体どの方も喜んで応じてもらえる場合が多いです。しかしながら、異文化接触であるだけに、周りの子供たちに異文化性のみが過度に強調される場合があります。国際理解教育の「3F」(衣服、食物、祭り)というものがあり、よく授業で取り上げられます。例えば、留学生の方々の民族衣装を見せてくださいとか、食事をしてください、どういうお祭りをするんですかなどというものです。これも後のケアをしないと、それがその子どものすべてであるかのような印象を他の子どもたちに与えてしまい、同じ同級生、友人としての一体感というものがうまく醸成されない場合があります。また、脱イベント化のために、継続的な指導はしっかりとやる必要があると思います。
それから学校内での位置づけを明確にする必要があります。例えば、PTAの中に外国人や留学生が委員として部会を作り、参加していくような学校も少しずつ出てきています。自分たちの友達であり、親でありその中でやっていくようなシステムをつくっていく必要があると思います。ある種のオリエンタリズムというものが学校にはありますので、それを克服していく必要があると思います。
4番目ですが、現在、異文化理解、国際理解は総合的な学習の時間の一部分で取り上げられています。あるいは、ある教科の中でクロスカリキュラム的な形で取り上げられる、あるいは触れられる程度のものは結構あると思うんですが、そういう場合には、見た目や方法の借用になりがちだなという感じがしています。例えば、体験的参加型学習をJICA(ジャイカ)などが持ち込んでくださるんですが、それ自体がイベント化してしまっているような状況があります。校務分掌などでは国際理解教育というのは、人権や同和教育など他の様々なものと抱き合わせになっています。実際、国際理解教育部会があるので、その先生がやればいいじゃないかというんですけれども、実はその先生は3つぐらいの部会を重ね合わせて持っていて、国際理解教育に使えるような時間や物的な条件はほとんどないのが実態です。
したがって、異文化理解教育あるいは国際理解教育の担当者の位置づけを、システムとして明確にする必要がありますし、ある種のコーディネーターみたいなものを考えていかないといけないという気がしています。
最後に、福岡・北九州の具体的な事例についてご紹介します。「教室から世界をのぞこうプログラム」というのはJICA(ジャイカ)の行う活動の流れだと思います。この活動のおもしろいところは、海外青年協力隊のOBやOGの方々と留学生をペアにするというような試みがあります。つまり、外部の方だけではなく、教師以外に授業をつないでくれる人をもう1人参加させます。これはかなり事前に打ち合わせを行います。
また、財団法人オイスカという団体が行っている研修があるんですが、そういったものも利用されています。
PTAの活動についてですが、福岡市の東区にある、中国帰国者の方が多い団地の中にある学校なんですが、ここはむしろPTAが先に国際理解教育や異文化理解の問題を取り上げました。まず親同士が学校からの色々な文書を翻訳するというようなことから始まり、PTAに部会をつくり、学校組織の中に入れて、最後に、現在は夜間の日本語ボランティア教室までつくっていきました。この主体となったのが親です。親と地域の留学生、ボランティアの方々から積極的に学校へ入っていき、学校を開いていきました。
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多田委員】 |
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私は、先ほど細野さんのレポートにあったように、現場は全然知らないというのが実態だと思うんですね。ですから、こういう組織があって、そこと結びつくことによってこういうことができるということを知らせる努力が非常に重要だと思いますね。その場合に、現場に入っている人間として申し上げると、実は現場では、どの組織と関わればよいか不安な面があります。営利目的の方も結構いますから。ですから、例えばこのような取組みを行っている団体の一覧のようなものに、その特色や実践事例の形でその団体の良さを載せるといったことが必要だろうと思います。
それから、ある団体とだけ長年関わり、その団体でなければいけないという感じになってしまうことは、非常に危険だと思います。学校教育というのは、学校が主体になってあれもこれもとってくるものだと思うんですね。そういう意味では、やはり多くの情報が必要だと思います。
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紿田委員】 |
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今のご指摘、私も全く同感です。私がかかわっていた経済同友会と学校との関係を見ると、校長先生の理解があって、一度経済人を呼んで授業をしてよかったというところは、頻繁に繰り返し依頼が来て定着していく。ところが、とてもいいことをしているのですが、なかなかそれが他の学校に広がらない。そういうことから考えると、国際社会貢献センター等様々な組織がそのような取組をなさっていますが、特にシニアの方で教育のために一肌脱ぎたいと思っておられる方はたくさんいるわけですし、少なくとも信頼の置ける組織というのは幾つかもう出てきていますので、それを学校と結びつける努力というのがすごく大事だと思います。
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奥村委員】 |
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高等学校の立場から言わせていただきますと、周りから幾ら国際教育をしようと言っても、高等学校の中にそれを受け入れる場がなければ話は全然前に進みません。今、ようやく高等学校では総合的な学習の時間というものが3年間で3単位できたところです。それが今、いわゆる学力論から袋だたきにあいまして、おそらく受験校などでは、ほとんど実態として行われていないだろうと思います。我々の学校は国立ですから、何とかその時間は守っていかないといけないと思ってやっていますけれども、その総合的な学習の時間の枠を守るだけでも大変です。さらに、その中で何をするか、国際教育にするのか、環境学習にするのか、それとも人権学習にするのか、についてはいろいろ考え方があると思います。
我々の学校には、全国の高等学校からたくさんの方が、総合的な学習の時間をどのようにしたらいいのか、と見学に来られるので、我々としても国際教育ではこんなカリキュラムが編成できるんだ、外部から色々な人を呼び込んで、国際感覚を持つ人間の育成ができるんだということを実践で示していかないといけないと思っています。ただ、現状で考えますと、ほんとうに総合的な学習の時間の場を守るということ自体が大変な努力が必要で、だからその場が失われてしまうと、国際教育が再び学校現場に入ること自体が難しくなるんじゃないかと思っています。小学校や中学校でも同じだと思いますが、総合的な学習の時間を定着させるのだ、という指針が出てくれば、学校における扱いもかなり変わってくるんじゃないかなと思います。
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岩谷委員】 |
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私も総合的な学習の時間をきちっと確保していただきたいというのは全く同じです。一方、学校現場というのはすごく忙しいというのも、本当にそう思います。私どもも、ユニセフ協会としてユニセフの学習会を様々な形で展開していますが、学校では、その枠をとるのがとても大変なんですね。一度年間の指導計画の中に位置づけてしまうと、2回目、3回目という具合に活動が展開していきやすいと思うのですが。
じゃあどうしたらその位置づけができるか、については、教育委員会の大きな力が必要だと思うんです。しっかりと国際理解教育の重要性を位置づけて、それを各学校に発信していけば、各学校の校長も前向きに取り組みやすいと思います。特別非常勤講師制度についても、知らないわけではないけれども、なかなか活用できないというのが実態だと思います。
そういうことを考えますと、やはり教育委員会、地方自治体における国際理解教育の位置づけをどのように強化していくかということについて、国レベルでしっかりと考える必要があると思います。
それから、川崎は開発教育の観点でも取り組みが進んでいます。かなり長い歴史を経てそれが可能になっているんだろうということと、それからやはり教育委員会がそういうシステムを実現すべくしっかりと取り組んでいる成果かと思いますが、そうしたシステムを広めていく。具体的には、これは夢ですが、国際理解教育が教科として位置づけられるとすばらしい。そうするとそれに対する指導主事等の周辺環境も整備されていくだろうと思いました。それは無理でも、学習指導要領の総則の中で国際理解教育をきちんと打ち出していただけると非常に強いかなと思いました。
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平野委員】 |
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私は、国際社会貢献センターの話を伺って、これはいいなと思いました。夢や温かみがあります。この事業によって、生徒側だけではなく、教えに行く商社OBの方々も恩恵を受けると思います。私だったら、自分が卒業した小学校、中学校にその卒業生を派遣します。そういう形で、外国についての教育のみならず、人間についての教育もそこでするようにしたいなと思っているんです。
国際社会貢献センターのような団体はたくさんあって、信じて良いものと良くないものがあるというのは同意します。これは全海研がリストをつくればいいと思います。
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佐藤(郡)副座長】 |
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私は、やはりコーディネーターがすごく大事だと思います。国際理解教育に関係する人材や団体は山ほどあるんだけれども、それをどうコーディネートするかが大事です。コーディネーターを養成するような研修を国レベルでやればいい。その上でそれぞれの地域において色々なことをやっていただければいい。それが1点です。
もう1点は、これまで40年に渡り在外教育施設に教員を派遣しているのだから、政策評価をやったらどうか、ということです。インプットする、アウトプットするだけの問題じゃなくて、一体何をやってどんな効果があるのかということの評価をきちんとやるべきであって、そのための調査などをやっていく必要があるのではないかと思っています。
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渡邉委員】 |
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国際理解教育の内容面を論議しなきゃいけないと思います。例えば私が住んでいるさいたま市は、大宮地区を中心に、海外からの労働者の子どもが多いものですから、国際教育を進めなきゃいけないという市の課題があって、共生という大きなテーマを抱えています。ところが、同じ市であっても外国人児童生徒の少ない地域では、非常に先生方の意識が低いんです。こうしたケースは全国に多くあると思います。このように、同じ市の中でも外国人児童生徒の多い地域と少ない地域があるような場合は、先生方の意識を高めるために、国際理解教育の内容、あるいは必要性についてきちんと議論する必要があります。何らかの形で文部科学省のほうから教育委員会が動けるようなシステムを制度上考えてあげると現場も動いていける。現場の先生が動きやすい状態をつくってあげることが非常に重要かなと思っています。
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紿田委員】 |
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先生方については、自分だけが得たものがあるのだったらもっと発信すればいい、片方でそういう気持ちはあります。しかし同時に、しっかりしろと誰かが言うだけではこの問題は解決しない。やっぱり先生方が自らの持てるものをうまく発信できるように持っていくような仕組みを作ることが、僕は国の重要な使命だと思うんですね。
そうすると、実際に海外に派遣された先生が一体どれだけのものを吸収してきたのか、つまり発信できるものが何か、を考えることは非常に重要です。おそらく個人としては発信できる何かを持っておられるんだろう、しかしそれを幾ら個人でやろうと思っても世の中は受け入れてくれない。しかし、持てるものを活かさないのはもったいないと思う人たちが、自分の力だけで足りないからグループを組んでやろう、という形になってきている。私は、今ようやく始まりつつあるそうした動きを、大事に育てていかないといけないんじゃないか、社会がそういう認識を持たなきゃいけないんじゃないかと思います。
そこで制度的に何ができるかというと、川崎市や東京都のようにある程度国際教育が進んでいるところでは、私は、国はあまり介入しないほうがいいと思います。しかし、これから地方分権が進むと、国際理解教育みたいなものはおそらく地方では非常に進みにくいだろう。そういう場合には、ガイドラインなどを作り、リード役となることが、私は国の持つ非常に重要な役割だろうという気がします。
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中島委員】 |
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先ほど海外に出られた方がエリートだというお話がありましたが、私のように30年も海外にいますと、先生方個人によりけりです。しかも、非常に保護された、限られた場の教育しか経験されていないので、お帰りになったら、その経験をもう少し普遍化して、ほかの経験とまぜ合わせて一般化しないと役に立たないんではないかという危惧があります。例えばもう少し、3カ所ぐらいの日本人学校を回るシステムであるとか、1カ所であっても違った立場で、例えば日本人学校だけではなくて地域の教育を受け持つというような体験をなさる先生が増えることが大事かと思います。
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小野委員】 |
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東京都では、外部人材や機関のさまざまな活用方法があるということは示されていますが、学校において活用できる団体などを一覧表にして各学校に配布するということはしていません。ですから、熱心な校長とか学校だけがそれを活用する、そして、1回活用すれば2年も3年もということになってしまっているので、それは学校の怠慢であると言われればそうです。しかし、こういうのを機会に、パンフレット的なものを提示していく必要があるかなと思っています。
それから2点目は、本質的には教師は、一人一人の資質や能力、個人によるわけなんですけれども、一方では制度と組織がある中で、お互いに啓発しながら全体を高めていくという方法も必要なわけで、それらが両方必要であるということを感じました。
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佐藤(裕)委員】 |
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国際教育に関心がある学校が授業を組むことになった場合に、それを授業公開というような形でみんなで見合う、そういうところから広まっていくのかなと思っています。ペーパーだけだとやはり活動が見えないのでなかなか広まらない。その意味では、見合えるような環境を整えていくということが大事だろう、そのためのコーディネーターを、自分がやっていかなきゃいけないと感じております。
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永井氏】 |
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教員がやれることはまだたくさんあると思いますが、自分が生かしてもらえないというフラストレーションが海外派遣教員にあるのは、多かれ少なかれ事実ではないかと思います。
この前、横浜の中田市長と話したときに、公のお金を使って行っているんだから、「自分の意識が変わりました」と「自分の目の前の生徒だけに伝えています」で済ませるのはちょっと筋違いではないかというお話を受けたところにインスパイアされたのです。つまり、REX−NETの教員たちは現場の最低限やるべき使命は果たしていると自負しております。その上で、さらにネットワークを生かして、NPOの人的リソース団体としてアピールすべきだと思っております。つまり、現場でもやっているけれども、ほかのネットワークを使ったらもっとお節介ができるんではないかという感じですね。全国の地方都市の中には、国際教育をできる人材が1人もいない、ということがあります。そのようなときに、このREX−NETというのに目を向けていただき、「なんだ、学校の教員の中にもそういうことを行ってきた者がいるんだ」と、そういう団体があるんだということを伝えようと思って、そもそも私たちはこのREX−NETを立ち上げたのです。実際、組織率を見ますと、全海研よりも劣るかもしれません。REXプログラムで今まで300名近くが海外に行っていますが、REX−NETに参加しているのは3分の1ぐらい、約100名しかいないのが現状です。ただ、REXプログラムでは毎年派遣していますので、新しく水が入れ変わってくるであろうことを期待しながら、これからも組織をさらに充実していこうと思っています。
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根道委員】 |
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私が全海研のことを申し上げたのは、だんだん全海研に入るメリット、つまり国際教育に携わること自体が評価されておらず、参加する人が少なくなってきているんじゃないかなということを一番恐れている。そして、やはり埋没した者は埋没したで仕方がないが、そうして全海研から離れている先生が、むしろ海外に行ったことをなるべくあらわさないようにして生活しているという姿自体に着目をすべきではないかなと思っております。
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今後の日程について
事務局より、今後の日程を確認した。
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閉会 |