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初等中等教育における国際教育推進検討会(第3回)議事録

1.日時   平成16年10月21日(木曜日)10時〜12時15分

2.場所   古河ビルF1会議室(6階)

3. 出席者
(委員) 池上久雄(座長)、佐藤郡衛(副座長)、岩谷栄子、奥村芳和、小野清二、佐藤裕之、紿田英哉、多田孝志、千葉俊治、根道博、長谷川祐子、吉谷武志、渡邉寛治の各委員
(文部科学省) 井上国際統括官、山中大臣官房審議官(初等中等教育担当)、山脇国際教育課長他関係者

4. 概要
(1) 開会(池上座長)

(2) 委員等紹介
 第2回からの出席となる紿田委員より、自己紹介が行われたのち、山中官房審議官(初等中等教育担当)が紹介された。

(3) 配布資料の確認
 事務局より配布資料の確認が行われた。

(4) 議事
事務局による国際理解教育の現状に関する説明、多田委員、小野委員、佐藤(裕)委員、奥村委員の4名からの意見発表ののち、意見交換が行われた。

多田委員】
 私の話は主として、今後の国際理解教育の充実というところに重点を置いてお話をさせていただきたい。そこに迫るために、3つの点を申し上げたいと思います。
 1点目は、持続可能な開発のための教育に向けての潮流が一体どうなっているかという点を確認したい。それから2点目は、私が所属する日本国際理解教育学会がこの3年間、科学研究費をいただいて取り組んでいる現状について短くご報告したい。3点目は、国際理解教育の実践のあり方及びその充実方策を提案したいと思います。
 まず、私がこのように考えたのは、文部科学省国際教育課の示した「初等中等教育における国際教育推進に関する検討の視点(例)」が基となっています。これを受けて、まず1点目ですが、国際教育の世界的潮流ということについては、まさにグローバル教育、開発教育、さまざまな分野でのご意見もありますし、文部科学省の教育施策の中にも多くのことが語られています。
 しかしここでは、1つの例として、「国連持続可能な開発のための教育の10年」までの流れがどうなっていたかについて述べたい。これについても多くの研究者の方がおられますが、ごく概略を言いますと、例えばユネスコ21世紀教育国際委員会による報告「学習秘められた宝」というものがありますが、これによると、秘められた宝とは実践のことを指しているという話を私は伺ったことがあります。つまり、実践が未来を開くということがここで語られていたということです。そしてもう一つは、まさに他者とのつながりの重視というところが重点だということも伺いました。
 その後、1990年代になりますと、どうも国際理解教育のパラダイムの転換が図られてきたように思います。それは要約すると、「地域」から学びを出発させろと。それから知識の問題だけでなく、つながりとか参加とか協働、こういうことを重視した、つまり人間の資質形成の部分が意外と重要なんだと。しかも多様な他者と関わって生きるにはどうしたらいいかというところが重視されているという流れがあると言われているように思います。
 これを集約した一つの方向性が、「国連持続可能な開発のための教育の10年」であったと思います。昨年の6、7月にかけて、日本がこれを提案し、具体的取り組みについて検討する会議が5回ほど開かれまして、私も参加させていただきました。その中で言われたのは、個人のあり方と社会のあり方を変えていくんだという方向性であります。それから具体的な実施計画の中では、地域の問題、教育を一体どう変えていくんだという問題、それからそれを司る教師の問題に関することを国際教育の具体的な自立促進を考えるときに非常に重要だととらえさせていただきました。
 では次に移ります。ちょうどタイムリーに科学研究費をいただきまして、米田伸次会長のもと、約504人の小さな学会でございますが、全学界を挙げて国際理解教育のカリキュラム開発に取り組もうということで、2年目に入りました。
 (以下、科学研究費補助金関係資料に基づき説明)
 学会としては、多文化共生の問題と、グローバル社会の問題、それから地球的課題の問題が国際理解教育を構成するものではないかととらえました。ここで特徴的なのは未来の選択で、いわば新しい市民像をどうつくっていくかというところが、今までの国際理解教育の流れの中では比較的希薄で、これをつくっていこうというところが学会としての一つの方向性であります。
 この「実践的技能」、「資質・能力・態度」の部分については、まだ練られておりませんで、私の考えであります。私は、やはりこの多文化社会の問題についても、グローバル社会の問題についても、もっと基本的な資質が何かということをきちっと考え直さないと、それが効果的に培われていかないと考えております。
 さて、国際理解教育を進めるときに、基本的に心得ておかなければいけないことが2点あると学会では考えています。その1つは、人はなかなか異文化を持つ人を理解できないが、理解できない相手とどのようにいい関係をつくっていくかという視点で、国際理解教育は人間形成を図るべきじゃないかということ。それから、2つ目はそのことに関連して、つながりというものを意識した国際理解教育が必要であるということです。
 次に、「21世紀の市民像の模索」というのは、まだまだメモの段階に過ぎませんが、その後自分たちがどう生きるかという部分については、実践分野でも研究が進もうとしております。例えば大阪教育大学附属池田中学校では、特別教科で市民科というのを中学校レベルで設けています。そのような方向性を国際理解教育の中でどのように取り入れていくかということは、今後の方向としては非常に重要だと考えました。
 国際理解教育の実践というのを考えたときに、やはり私たちの教育とか学習とかいうものを全体的に見直す必要があるんじゃないか、私はそのように思っております。国際理解教育というのは、総合的な学習の時間の中における国際理解教育という部分と、もっと大きな、これからの人間形成における国際理解教育あるいは国際教育というものと、どうも2つあるように思うわけです。現場としては、特に後者についてもっと広い範囲で問い直さないと、総合的な学習の時間における国際理解教育をやっただけになる可能性があると私は思っています。
 その場合に、幾つかの項目でその必要性を述べてみたいと思います。1つはカリキュラムを開発するための視点として、例えばそこに書きましたように「ホリステック(全体的)な視点」とか「多元的な視点」とか「可変的な視点」などです。第2回検討会での池上座長の冒頭の発言にも、変化に対応する力というのが非常に重要だとありますが、学びの中でもやはり変化に対応する力を培うということが必要ではないかと私はとらえたわけであります。
 それから、同じように学習プロセスについても、基本的に私たちが求める資質・能力・態度というのを培うためには、学習のあり方そのものも少し考え直す必要があるのではないかということです。
 なかなか難しいことではありますけれども、子どもたちが現実の国際社会に出ていったときにきちんと生きていく力というものは何か。それに対応した学びのあり方を、さまざまな分野で考えていく時期に来ているのではないか。もう既にやられていることだと思うんですが、そのことを確認したいと思います。
 教材についても、我が国には様々なところに多くの教育資産があるわけで、それをもっと開発すること、そして、うまくネットワーク化にすることによって、実は学校の内部で総合的な学習の時間としての国際理解教育にしても、もっと広い範囲の国際理解教育にしても、我が国の子どもたちに有益な学習活動が展開できるんじゃないかという思いがしてなりません。
 特に重要なのは教師の役割でありまして、従前の伝授型を中心とした教育ではないとするならば、教師の役割が大きく変わらなければいけないということだけを申し上げておきたいと思います。
 国際理解教育を充実させるため、つまり私の念頭にありますのは小学校、中学校、高校あるいは大学という現場を本当に充実させるためには、1つ目は間違いなく教員養成の問題があります。大学の教員養成課程に国際教育に関する講座がないわけではない。例えば、愛知教育大学などもそうです。しかしその内実は、実は国際教育を担当している先生ご自身が、さほどそのことについてしっかりした理念を持っているわけじゃない。
 私は、未来の教師たちに国際教育の重要性を訴えるのであるとするならば、いろんな教科を担当する教員じゃなくて、国際教育を専門に研究する人が、大学の教員養成学部にもっと増えてほしいという願いを持っております。
 それから2つ目に、現職教員への研修の重要性は幾ら言っても言い過ぎることはないと私は思っています。現状を概観しますと、さまざまな状況下で社会科教育研究会というような民間レベルの研修会、研究会は壊滅状態にあるというふうに言われています。例えば、私は3日ほど前に、ある社会科系の学会の会長さんと2時間ほど話したんですけれども、実践者がほとんどいなくなってしまった、学会という名前であっても集まりにくい状況があると言っておられました。これについては様々な要因があると思うんですが、1つはやはり得難い、すぐれた実践者の高齢化なんです。そのことによって中間層が空洞化していると。私もそういう実感がするわけです。
 とするならば非常に大きな問題で、我が国の教師文化というか学校文化が受け継がれていかなくなるという危機がある。つまり授業が非常にうまい先生方が、若手にそれをつないでいく機会が減少しているんじゃないかという気がするわけです。とするならば、今行われている都道府県レベルの研修会というものを、本当の意味で先生たちが高まるような研修にしていかないといけないのではないかと思うんです。
 次に、本検討会の大きな議題の一つとして取り上げられております各教科、道徳、特別活動、つまり現行の教育について、私はやはり小手先ではなく、もっと基本的なところを見直すという機会がどこかで必要ではないかと思っています。一例だけ国語について申し上げますと、国語教育における聞く、話すということを重視するという潮流は出ていますが、前回渡邉委員が英語教育の分野でご指摘なさったように、その潮流が本当の意味で人に伝える、相手を説得するという聞く、話すの指導になっているか。つまり仲良くなる会話と、まさに説明していかなければいけない対話とは違うと思うんですね。その辺の認識を国語教育の中でもきちんと位置づける。これは少し大きくなり過ぎますけれども、各教科の見直しというのは、そのような子どもたちが現実として国際社会に生きていくときに必要な力をどうつけるかという視点で、ちょっと見直す必要があるかなと思っています。
 それから即効的で、なおかつ非常に有効なのは若者たちの交流です。例えば、私の知人が教育困難校と言われている学校におりました。東京都の学校であります。そこにブータンからの留学生が何人か来た。このことで随分と子どもたちは活性化していったという事実があるわけです。やっぱり直接交流がもたらす意味というのは非常に大きいと思います。
 それから、教材の掘り起こし。先ほどお配りいただきましたユニセフの教材などを見ますと、こういうことを子どもたちにというものが実にたくさんあります。
 それから学校教育の中だけでは到底得られない資料をたくさんお持ちの方々がおられるわけで、そういう教育資産を何とか活用できないかということであります。
 最後になりましたが、私はやっぱり実践事例集というものを現場の先生はよりどころにしているんだと思います。ですから、いい実践事例集ができることを切望いたします。ただし現場を見ておりますと、実践事例集が一つのモデルになり過ぎてしまうんです。まねをすればいいという。そうじゃなくて、やっぱり発展型、どうしたら自分でつくっていけるかという趣旨の実践事例集をどうつくっていくかが重要だと思います。発展性のある実践事例集がもしもできたならば、本会議の趣旨が現場に浸透する有用な方法だろうというふうに思います。

小野委員】
 東京都は、昭和63年度から国際理解教育の推進を掲げてます。都内の全小・中・高等学校にいろいろな通知・通達を出して、その推進を呼びかけており、国際都市東京としての実態に則した国際理解教育というのをかなり強く打ち出しております。特に最近では、東京都教育委員会では、都内の全小・中・高等学校に過去3年に渡り、4種類のカラーのパンフレットを出しまして、国際理解教育の推進について呼びかけております。
 東京都教育委員会の場合には大きく分けて7つの教育方針を掲げていて、かなり大きな部分を割いて、豊かな個性と創造力の伸長の中で、国際理解教育の推進を訴えています。基本方針のかなりの部分で国際理解教育の推進について強調しているのは他にあまりないのではないかということで、国際都市東京の実態がよくわかると思います。
 今日は、私は東京都の小学校の具体的な取組の現状と課題についてお話いたします。
 昭和60年から東京都の事業として、国際理解教育推進校というのが設けられました。現在まで小学校では26、中学校では18、高校では35校と実に多数にわたる国際理解教育の推進校を掲げており、各校は取り組みや実践の報告をしております。
 そういう中で、実際に今どうなっているのかと言うと、国際理解教育は全教育活動を通して行うということはご承知のとおりですが、それ以外にどんなことを実践しているかという調査があります。これは私が所属している都の小学校の英語活動研究会の理事等が、23区26市で集めた資料で、全校ではないんですけれども、例えば取り組み状況は、教科以外で国際理解教育を実施している学校は78パーセントということになっています。
 文部科学省が全国の調査で調べていただいたものと比べると、若干東京都のほうがパーセントが高いんだろうと思います。すなわち、国際都市東京としての特殊性から、各学校がどうしても何らかの形で取り組まざるを得ないという状況があるということがよくわかると思います。
 それでは、小学校は国際理解教育をどこに位置づけているのかと言いますと、東京都で調べたほうでは、総合的な学習の時間と回答した学校が81パーセントということです。もっとも、課題にもつながるんですが、英語活動との関連で増えているということもあると思います。
 また、余剰時間を使って国際理解教育を推進している学校が13パーセントあります。この余剰時間は何かというと、授業というのは年間35週で計算されておりますが、実際には1年間は平均42.5週で実施されています。そうすると、35週で計算した時数と42.5週で計算した週では、毎年時数に余剰が出てくるわけです。全学年でも平均180時間の余剰が出てまいります。この180時間のうち、諸行事に使うのが約100時間ありまして、東京の場合で言えば、小学校は約80時間の余剰時間が生まれます。この80時間の余剰を使って国際理解教育等に取り組んでいるというところが13パーセントということで、総合的な学習の時間だけではなくて、それ以外の時間でも国際理解教育に取り組んでいるということがわかります。
 実施時間については6時間から10時間が一番多くて44パーセント。11時間から15時間が30パーセント。かなりの時間を、現時点では国際理解教育に使っているということが調査でわかりました。
 それから、国際交流会というのは、学習の中における交流会と別なんですが、異文化理解とか人間理解という点では、これにかなり重点を置いておりまして、そこに書かせていただいたように2回が18パーセント、3回が54パーセントということで、各小学校では大体年2回から4回、ほとんどの学校が国際交流会を実施しております。
 それから、英語活動のみを実施し、それをもって国際理解教育をやっていると混同している学校が大変多くなっています。
 次に、小学校はどんな国際理解教育をやっているのかという具体例について全都23区26市で調べたものですが、国際交流学習会を中心に、交流学習が非常に多いんですが、これは異文化理解それから異民族理解、多文化理解を目的に推し進めているわけです。
 文化理解については、日本の文化とともに外国の文化も比較し、学ぶということから異文化理解が始まるという観点で各小学校とも取り組んでおります。
 実際には、ただ国際交流学習をやっているだけかといいますと、各学校も、まずねらいを持ってやっており、こんな子どもを育てたいということが常にあります。もちろん大きなねらいはあるんですが、さらに細かく児童像というのを掲げて、どこの学校も取り組んでおります。東京都の小学校では、例えば、自己表現力とか人間理解ということを掲げて、望ましい児童像に迫るため、学年ごとのねらいを掲げております。
 それを裏づけるものとして、例えば、基本的に最も多い小学校の国際理解教育の全体構想像を次に掲げさせていただきました。これは、国際理解教育は何を目指して、小学校段階で何を教えていくのかという基本的構想です。
 東京は大都市としての特殊性があります。ですからいろいろなことに取り組んでいくわけですが、具体的に何をやっていいのかわからないという学校が大変多い。そこで、こういう国際理解教育の全体構想像を、各小学校に配布して、橋渡しをやっているわけです。こういうところから各学校が前進し、国際交流学習等に取り組んでいるわけです。
 それでは最後、課題と方向性なんですが、まず第1に、基本理念の定着がまだ東京でも不十分だと思っております。やっぱり人間理解が根本だろうと私は思っているわけですけれども、異文化理解、世界的視野の育成、コミュニケーション能力というのを基本にして、何を子どもたちに育てるのかということなんですが、これは各学校でどうもまだ不十分で、定着していないと思います。最終的には、国際理解の根本は人間理解だと思いますので、これはまさに教育の原点ですから、それを見据えた国際教育の方向性を示していく必要があると思います。
 そうしますと、やはり教員研修の充実というのは大変大切だと思います。各教育委員会から各学校へなされる指導とか講習、年1回の指導主事の連絡会等を実施しているわけですけれども、これを拡充していく方向がこれから必要なのではないかなと思っております。
 それからもう一つ、英語活動を実施し、これですぐ国際理解教育をやっていますと答える学校がかなりあります。この辺も1つの課題かなと今考えています。私は、英語活動というのは推進派のほうなんですが、それはあくまでも国際理解教育の一環としてのコミュニケーション能力を高めるための方法として行うのだと思っております。ところが、英語活動にALTが来ていれば、国際理解教育をやったと勘違いしている学校が多いのが課題かなと思っております。
 それから3つ目は、国際理解教育の関係諸機関へのサポート体制の確立が不十分だと思っております。ですから、小学校に関しては紹介センターとかネットワークというものの立ち上げが必要なのかと思います。幸いに、例えば今回集まっていらっしゃる委員さんの中には、海外で働いていたり、住んでいた方がいらっしゃいます。そういう方とのネットワークを通じて、各小学校へのそういう啓発活動とか紹介活動をしていくという機関が必要なのかなと思います。
 次に、外国人の日本語適応指導の充実ももう一つ課題としてございます。これは、東京都では平均50時間、適応指導というのを行っておりますが、どうしても課題として残るのは、時間数が少な過ぎて、例えば言葉のトラブルがあったり、家庭環境が複雑であったり、それから法的問題、例えば新宿区では不法滞在者の入学が小学校の例えば20パーセントに及んでいる学校もあります。そういう中で、国際理解とか異民族理解をする以前の問題が結構生じてきており、この辺が今後の課題なのかなと思います。
 最後に、学校間の交流推進が、これから国際理解教育を進めていく上でぜひ重要だなと思いますし、課題だと思っております。日本人学校は、各国で独立して授業を営んでおりますが、そこの学校から帰ってきた子どもたちが日本の学校になじめない大きな理由として、日本の学校についての生活、文化、習慣が必ずしも十分に理解されていないことが挙げられます。だから日本人学校と日本にある小学校との子ども同士の交流をこれから推進していく必要があるだろうと感じています。そうすると、海外経験者とか海外企業で活躍された方の力をかりて、海外企業勤務者とのネットワークをつくり上げ、そして外国の小学校との交流や日本人学校との交流を、今後国際理解教育の中取り入れていけるのではないかと思っています。
 以上、簡単でしたが、東京都の小学校の現状と課題を申し上げました。

佐藤(裕)委員】
 川崎市の国際理解の取り組みは、昭和50年に、当時は文部省のほうから帰国子女教育研究協力校という指定を受けて、約30年ぐらいの長い歴史があります。教育委員会としても委嘱研究というような扱いで研究指定校を設定して、国際理解教育を進めなさいということで、当時から積極的にやってきた市ではないかなと自負しております。そのころは、国際理解の時間をどう捻出するかということで、教科のねらいに国際理解のねらいをくっつけて、色々なところで広く取り組んでいました。
 そんな折、14年度に総合的な学習の時間ができて、国際理解教育を実践する場も時間もできたと、国際理解教育の市民権が得られたのかなということで、私たちは本当に喜んで取り組みました。そこで、実際に今回、国際理解の実践でどのようなことが行われているかについて、一番実践しやすい総合的な学習の時間での扱いを調べてみました。
 川崎市内の傾向として割と多く出てきているのは、1年生ではスキル学習であり、パソコンの使い方だとか、図書館利用の仕方などが行われており、調べ方や学び方を学ぶような学習方法をそこでトレーニングされている。そして、3学期あたりには地域理解として、地域の地理、歴史などを学んでいると、そのように取り組まれています。学び方を学ぶというようなことが、中学1年生では多いかなと思います。
 2年生になりますと、生き方、職業体験、福祉体験、ボランティア、平和といったことについて多く取り組んでいる。特に職業体験というのは、今大変人気というか、多くの学校が取り組んでおります。そしてたくさんの時間をかけて、子どもをいろいろな職場体験に行かせている。事前に電話でアポイントをとる勉強から、事後にお礼をするところまで全部含めてそのような体験をして、将来につなげるというようなことを取り組んでおります。
 3年になりますと、進路やボランティアのこと。それから最後に、個人課題を卒論みたいな形で、自分が3年間学んできた中で、課題をつくって調べなさいというようなテーマに取り組んでおります。このようなことが多く、広く扱われているかなと思います。
 それに加えて、行事的な取り組みに総合的な学習のねらいをあわせて、総合的な学習の時間を行っています。行事でいうと文化祭だとか合唱コンクール等、校外学習の事前調べや事後のまとめなどのところも、調べ方の学習として総合的な学習の時間で扱っています。
 大体このあたりで、総合的な学習の時間をほとんど使ってしまうんですね。残った時間の中で環境だ、福祉だ、国際理解だというふうにしていきますので、どんどん引いていくと、国際理解として取り組んでいる学校は本当に少ないというのが現状です。
 少ない時間をどういうふうに国際理解で実践しているかというところを紹介したいと思います。川崎市というところは、在日朝鮮・韓国人が多く住んでいるところです。それから今では、ニューカマーと言われる外国人の子どもたちもたくさん来ています。帰国児童生徒と外国人児童生徒の全体の割合は3パーセントという数字が出ています。つまりそれは33人に1人ということですから、どこの学校、どこのクラスにも1人は帰国児童生徒、外国人児童生徒がいるというような状況です。つまり、外国でそういう生活をしたり、文化を持っている子どもたちと一緒に学ぶチャンスがあるということです。
 そういうような特性を生かしながら、中学校では人権尊重教育などとして、日韓の関係、歴史などを国際理解という枠の中で勉強しています。
 それから、ニューカマーと言われる方の多くはアジア出身なので、「身近な国・アジア調べ」というようなことをしております。そして、外国人もたくさん住んでいるというようなところから、民族文化講師ふれあい事業、それから地域人材を活用して、そこで交流活動などがとり行われております。
 それから、川崎市は幾つかの国と姉妹都市関係を結んでおりまして、そこで交換教員などもおりますから、その先生方との交流会、留学生などの交歓という形の交流などが行われています。
 総合的な学習の時間としてはそのような形が多いんですけれども、教科等の学習発展・関連としては、従来の実践を継続するという中でまだまだ頑張ってやっております。例えば、世界のまるまる調べということで、そこの「まるまる」の中に衣食住などが入った場合には家庭科の学習の発展とか、そういうような形で取り組んでおります。また植物、動物、環境などになると、理科との発展ということで工夫している実践もございます。
 あと国際的に活動している機関を調べて訪問したり、ゲストティーチャーとして招くという形で交流をしております。外国調べを個人課題という形でやっているところもございます。ただ、このあたりは、多くは調べ学習が中心というようなことになります。個人課題として、またはグループで取り組むということです。
 課題としては、国際理解の実践がなぜ広がらないのか、深まらないのか、難しいのかというあたりを、現場の先生と話をしました。一番最初に、地域の特性を生かすことの必要性という言葉が出てきたのですが、私はその言葉が意外だったんです。いつも必要性を感じて仕事をしているものですから。先生には、必要性がちょっと弱いんだということを言われました。
 どういうことかというと、環境や福祉のように、町に老人の方が歩いていたりすると、これは何か取り組まなきゃいけない、町が汚れたりすると、これは早く取り組まなきゃいけないと思うのですが、国際理解には緊急に取り組まなきゃいけないというような意識が、教員間にないということを言っているんですね。福祉だとか環境のことは、日常から情報がどんどん入る。でも国際理解の必要性というような情報はなかなか入らないから、学校として国際理解に取り組む優先順位がどんどん下がっていってしまうということがあります。
 それから、2点目には時間設定ということで、小学校では割とよく工夫をして、学年とか学校で取り組んでいるんですが、どうしても中学校は教科担任制なので、ここで2時間まとめてやろうとか、ここで大きく3時間、4時間を使って外に出てというような、時間割を操作するということが難しいということがあります。まして交流などをするときには1時間では到底終わりませんので、一生懸命時間調整をすればできることですが、そのあたりも優先順位を下げる1つの理由になっているかなと思います。
 それから予算です。川崎市も大変財政的に厳しくなってきており、人を呼ぶのに、やっぱり今ボランティアとか無料で呼ぶということはなかなか難しいんですね。何回か継続して呼ぶことで学習が深まっていくんですけれども、それは大変厳しいと。そうなると1回きりのイベント的な取り組みにならざるを得ない。そのようなことがあります。
 「国際理解教育をどうとらえるか」ということについても、現場の先生と話をしておもしろかったのは、広くとらえると、何でも国際理解につながるということです。例えば、かつてはボールゲームなど、グループで体育をやったときに、チームワークでいろいろと交流をすると、協調性が育ったり、コミュニケーション能力が育ったり、それも国際理解につながるというような理由づけをして取り組んでいたときもあります。そうすると、何でもできるけれどもよくわからないということががあるんです。
 それと同時に、子どもたちの国際性が本当に育ったのかという成果がよく見えないということです。教員はどうしてもすぐ成果を求めたくなってしまいますから、子どもはどう変わったのかというような成果がなかなか見えにくいということも課題になっています。
 それでは、国際理解をぐっと狭く絞って、世界のことを理解しようということで扱うと、それは社会の教員や理科の教員というような一部の教員がやる、一部の学習というような捉え方になってしまう。その辺の捉え方がまちまちなので、学校全体で取り組むということがなかなか難しいかなと思いました。
 最後に、「国際理解教育の活性化のために」ということで、7つ考えました。川崎市では、総合教育センターで国際理解教育目標構造図というものをつくって、これを広く市内に伝えております。ここにもう一回戻らなくてはいけないのかなと思います。
 それから、どうしても単発になってしまう実践ですけれども、それぞれの学校または学年間で交流するというような取り組みがやっぱり大事かなと思いました。
 それから、各教科と関連づけていくことも大事だと思います。
 どうしても国際理解をやって、子どもが本当に国際性が身についたのかというような評価についてはわからないんです。ですから、学校のほうはなかなか取り組めないということがあります。これを何とかする必要がある。
 それから、小中の連携について、中学校の1年生で行っているスキル学習、調べ学習だとかパソコン等は、小学校でもやっているんですね。それとか2年生の福祉体験などで、車いす体験だとか点字を打つだとかという小学校でやっていることを、また中学校でやることがあるんです。そこで小・中学校間で、子どもたちの学習内容について情報交換をすることで、少し時間ができるかなと考えております。
 私の業務として、教員の研修を充実しなきゃいけない。それから川崎市では、総合教育センターで国際理解の研究に取り組んでおりますから、その研究成果を発信していくというようなことが課題になっていくのかなと思います。

奥村委員】
 大阪教育大学附属高等学校池田校舎は国際教育への取り組みは約10年前からと非常に遅い後発組です。ちょうど小・中・高とキャンパスが一緒になっておりますので、10年前からアジアとともに生きていこう、進んでいこうということで、小・中・高あわせて国際教育に取り組むようになりました。今日は高等学校の実践を報告させていただきます。
 現在、附属高等学校池田校舎は、ユネスコの教育勧告に基づいた国際教育を実践していこうという考え方で進んでおります。最初、1年間、国際教育の理念をどう押さえていくかということを随分考えまして、行き着いた先がユネスコ教育勧告に基づく国際教育ということになりました。現在、教育現場や地域社会では次のような国際理解教育が行われています。
 第一に、帰国児童生徒や、海外在住児童生徒、そのほか中国残留日本人の子どもたちなどの、課題対応型の国際理解教育の実践。
 第二に、人権という考え方に基づいた、女性問題であるとか、民族問題であるとか、偏見差別の解消、そういう視点から取り組まれている国際理解教育。大阪という地は、特に同和教育に非常に意識の高いところです。その同和教育が今国際教育へと姿を変えて、新しい観点から同和教育を実践していこうということになっています。そういう点で、大阪府教育委員会あたりは国際教育を非常に熱心に行っています。先細りというよりも、これからは国際教育を1つのベースにしながら学校運営を行おうとしていて、国際教育の担当者は今もてもてです。
 第三に、他文化理解と呼ばれる、いわゆる自国文化から自文化へと、ナショナルをテーマにした文化から個を単位とした文化へと、この辺もユネスコの1つの考え方でもあるんですけれども、そういう考え方の変化というものが、この10年ぐらい、あるいはもっと前から、異文化理解から他文化理解へというふうな形で進められてきたように思います。
 それから第四に、いわゆるヨーロッパから発祥した開発教育というもの。経済格差の中で生じる南北問題と、その解消をということで、JICA(ジャイカ)やさまざまなNGOとかNPOの団体であるとか、ユニセフといったところが強力に推進しているもの。
 我々はそういうものをいろいろ勉強しまして、最終的に、ユネスコの国際教育というものがそれらをすべてを包含した形でまとめられているんじゃないかということで、ユネスコの教育勧告を基盤とした国際教育を推進することになりました。
 なぜユネスコの国際教育かということですが、去年、ユネスコの協同学校に我々の学校は加盟しました。世界的には7,000校にわたるネットワークがあり、ユネスコの協同学校でASPnet(Associated Schools Projects network)というネットワークが組まれています。そこをベースにした活動をするために、大学のほうから学長裁量経費をもらいまして、中国、タイ、フィリピン、韓国に、本校の国際教育委員会の担当者を派遣しました。
 そのときに、フィリピン女子大学附属高校の先生から、日本の高等学校との交流経験はあるんだけれども、残念ながら日本の高等学校の生徒とは交流にならないと言われました。自己紹介の中身が非常に幼稚であるし、夢や現在の努力を語ることがない、交流する中身を持っていない、とこう徹底的に批判されました。今、高等学校では、海外への修学旅行が積極的に推進されています。けれども、それのほとんどがツーリスト任せです。ツーリストにお願いして、ツーリストがすべて現地の提携校を開発してきて、その上に乗って行くだけという、非常に安直な形で行われています。フィリピンの先生から言われたことに非常に大きなショックを受けたので、海外への修学旅行の在り方をどう考えていくかということもあり、我々は新たなるユネスコの協同学校の中での実践を始めました。
 うちの学校は去年からASPnetを始めたわけなんですけれども、文部科学省の国際統括官付にあります日本ユネスコ国内委員会に非常にお世話になりまして、韓国、フィリピン、タイ、中国、こちらの提携校をご紹介いただき、そして、それらを訪問し、そのASPnetの中でお互いの学校がどういう観点で交流をするかという枠組みづくりに努力してまいりました。
 それぞれの国のそれぞれの学校で、人権教育、平和教育、環境教育、文化理解であるとか、その根底には人権(human rights)というものが存在しているのですが、そういうユネスコの教育の柱を共通基盤にして、お互いの間でネットワークを構成しながらともに学びあっていくことを検討しています。
 現にそのような国際的なプロジェクトというものが、ユネスコの国際教育の中で行われている。それをフラッグシップ・プロジェクトと言うんですけれども、タイ、ラオス、カンボジアなどで、メコン川をテーマにした教科横断的・総合的学習が現に行われています。そういうものを中心として、共通の基盤を持って、環境問題、人権の問題であるとか、平和の問題を学習していく。ヨーロッパに行きますと、もっとたくさんありまして、バルト海プロジェクト、地中海プロジェクトとか、そういったものがたくさん準備されており、EUを中心に、非常に幅広い学習が行われております。
 いわゆるASPnetの1つの学びのあり方というものが、大体そのような方向性を持っているということをご理解いただけたかと思います。
 次に、この7月に本校が、財団法人のユネスコ・アジア文化センター(ACCU)のバックアップをいただいて実施したASPnet Exchange Programについてご紹介します。本校が事業主体校になりまして、大阪府立北淀高等学校、羽衣学園高等学校の参加協力をいただきまして、昨年度、交流の提携を申し入れました韓国の上黨(サンダン)高等学校と中国人民大学附属中等学校、タイ・地域総合大学附属テープサトリ高校、フィリピン教員養成大学附属高等学校、その4つの学校から、2名の生徒と2名の先生、合計16名を本校に招くことができました。ちょうど4月の初め、本校の非常に大きな、3日間連続で行われる高等学校の文化祭の、二、三日目に参加してもらうことができました。
 そしてプログラムの内容は、そこに書いてありますように、「アジア・ASPネットワークの加盟校による教師・生徒間の文化交流」ということなんですけれども、特に環境アクティビティということに重点を置きました。本校は文化祭をやるんですが、ごみがいっぱい出てくるので、ごみの減量と分別とリサイクルに生徒が励むようになりまして、そういった具体的なものにタイやフィリピンの生徒も参加しながら、環境問題を考えるという活動をしました。アジアの先生方や生徒にも新鮮に写ったように思います。
 それからもう1つは、ASPネットワークを通じた学びあいを構築するための枠組みを教師同士の間で議論しました。ユネスコの国際教育のコンテンツには柱となるものが、人権(Human Rights)、平和学習(Peace Education)、環境(Environment)、寛容(Tolerance)、それから多文化理解(Multi Culturel Understanding)、世界遺産(World Heritage)、学習に関する4つの柱(Four Pillar)等11個の項目があります。こういった項目について、今回交流した中国、韓国、タイ、フィリピンのユネスコの協同学校の教育の中で現にどう行われているかについて調べるため、実施しているというところに丸をつけてもらいました。そうしましたら、我々の学校よりもはるかにしっかりとそういったことを生徒たちは学んでいて、それを英語で表現してくるということがわかりました。我々が交流する学校というのは非常に優秀な学校なんだろうとは思いますけれども、そういうことで、ユネスコの協同学校のネットワークの中で、共通の枠組みの中でともに学んでいくということがお互いの共通理解をより深める、単なるごあいさつだけの国際交流に終わらないということがわかったように思います。
 今、ユネスコの事務局長は松浦さん、日本人の方がやっておられるんですけれども、日本の提案で、ユネスコは持続可能な開発のための教育の10年というプログラムを作成しまして、我々はこれからその4つの国の高等学校と、この持続可能な開発というものを1つのベースとして、共通のテーマを見つけて交流を続けていこうと考えております。
 どういうふうな形で進行するかというと、お互いに顔が見えないといけませんので、ビデオレターをつくり、交換しまして、自己紹介カードをやる。それからネットワーク、うちの学校はすべての生徒がコンピュータをいつでも利用できる体制にありますので、4つの国のメーリングリストをつくって、その中で交流していくということです。まだ始まったばかりなんですけれども、何とかその体制ができつつあるということで、ご報告を終えさせていただきたいと思います。

多田委員】
 やや広くなり過ぎてしまうんですが、総合的な学習の時間等における、現行の教育をどう見るかというあたり、少しだけ補説させていただければと思います。
 つまり、それは、私自身の現実の体験から派生しているものです。高校生、大学生、教員を連れて海外に行ったときに、議論をさせてみますと、特に欧米人とのやりとりの中で、最初の意見は皆さんは言えるんです。ところがその2発目、3発目、つまり議論になってくると沈黙してしまう。私は、それはどうしてだろうとずっと疑問に思っておりました。カナダに1年間、高校の教員として行ったことがあるんですが、そこではきちっとしたスキルを学んでいます。ある1つのことを言われたら3つの視点で答えなさい。あることを言われたら事例を言って、その理由づけをきちっと言うようにしなさい。だから、アメリカの大統領選挙のタウンミーティングなんかを見ておりましても、どの人もある程度の意見を言える。
 国語教育に限らないんですが、日本における例えばコミュニケーション教育というものは、ややもすると学校の内部におけるコミュニケーション、という部分があるように思います。そうではなくて、やはり現実に子どもたちが育ち、国際社会に出たときに、どんな力が必要なのかという観点でこの教育を見直していかないと、国際理解教育を幾ら進展しても、結局さっき佐藤(裕)委員のほうから出た国際理解教育によって何が育ったんだという疑問が出てくると思います。

池上座長】
 知識として得るというもの以外に、日本人が国際理解教育を通じて国際的な場で発言する、もしくは自分自身のアイデンティティーをつくり上げて、それに基づいて自己を実現していくというのは、それは必要じゃないかなと、ずっとこれはテーマとして流れてきている。この辺について、国際理解教育のあり方というか、何をまずやるべきだろうかと、このねらいが一番大事な点かなと思います。

給田委員】
 今のご指摘は、実はビジネスにかかわってきたり、あるいは国際会議に出ていった場合でも、全く日本人全体に共通していることであります。国際機関で働く日本人が少ないというのも、議論で負けてしまうということがあるんですね。つまり他の国の連中が勢いよく言うと、反論しようと思っても黙っちゃう、これは日本人の特性みたいなものであります。したがって、国際理解というと、何か他の国のことをもっと勉強して、知識として吸収すると国際理解が進んだみたいに思いがちですが、それも一部ですけれども、やっぱり自分自身で自分を説明する、あるいは自分の学校のこと、家族のこと、何でもいいんですが、自分でプレゼンテーションして相手に理解をさせるという訓練が、日本に一番欠けているんだろうという気がします。ですから国際理解だけの問題じゃないんですが、結果的に、国際理解教育の充実を考える際には、自己をどう表現できるかということが基本的な問題になってくるのではないか。ディベートができない、つまり、最初の自己紹介はできるけれども、何か質問が出てくるともう自分の論理で説明できない。それが、「英語が下手だから、おれはちょっと悔しいけど通訳で、日本語でしゃべらせろ。」ということでできればまだいいんですけれども、それもできないんです。

根道委員】
 帰国子女教育をする人材を育てる必要がある。新しい大学の講座が必要である、あるいは研修が必要であるというお話が幾つか出ていて、おそらくそういうことが実際に今までもやられてきたんだと思います。
 帰国子女教育でも、私のつたない経験でいくと、きっと一時はそういうことが盛んに行われたに違いないんです。ただ、帰国子女教育の場合は何が問題になったかというと、それで技術を身につけた人たちは一体どうなったのかということだと思うんです。つまり技術を身につけて、将来ある程度専門的にそういう方向に進めるという保証があれば技術を身につける価値があるわけですけれども、例えば人事配置等によって、必ずしもそこにたどり着くとは限らないわけです。それからもう1つには、技術を身につけることが評価されるとも限らないと。こういう問題に突き当たっているように私は思います。したがって、実際にこれをやると、その先生はこういう方向が見えてくるよということをはっきり示してあげないと、先生方も積極的に学んだり、あるいは研修に出たり、自分の時間を犠牲にしてやるという気持ちがなかなか起こらない。したがって、やはり帰国子女教育の技術が大事であるというならば、それを身につけた人間をちゃんと将来の展望も含めて遇するということが必要ではないかと思います。

佐藤(郡)副座長】
 2つのアプローチからぜひ考えていきたいと思っているんですけれども、国際理解教育がなかなか充実していかない。一体なぜなんだろうか。おそらくねらいもやることもはっきりしているんだと思うんです。なぜそれが実現できないのか、そこに入り込んでいかないといけない。それはいろんな原因があるんだろうと思うんですけれども、やはり1つは、現職教員の研修のあり方をどう考えていったらいいのかということだと思います。とすれば目標なりねらいははっきりしている。しかし、カリキュラム論とか、もしかしたら学習論がないのかもしれないですね。つまり個人の資質を育てていけば国際的資質になるのかどうかという議論は全くないままに、常にそこは「べき論」で終わっている。そこをどうするのかというのは1つのアプローチの方法だろうと思う。
 もう1つは、私は、ぜひこの会で実現させてほしいと思っているのは、やはりこういう改革をしていくときに、国際理解教育は現状の枠だけではなくて、これからどう政策に反映していくのかという議論はどうしても必要なのではないか。今ちょうど学習指導要領の改訂の時期です。つまりさまざまな教科の中にこういう国際理解という視点をどう反映していくのか、という議論もぜひ考えていけないかと思います。
 1990年代からだと思うんですけれども、カリキュラム論の中では、今までのような地域の独自性とか、学校の独自性だけではなくて、どういう共通性をつくりあげていくのか、共通性とその多様性をどう調和していくのかというような議論が盛んに行われているんです。つまりどういうカリキュラムにするのか、それから教科はこのままでいいのかというようなこと、内容構成をどう編成したらいいのか、そのカリキュラムの内容が社会的要請にどれだけ合っているか、そのカリキュラム評価をどうすればいいか、次から次へと出てくる内容をどういう領域として構成したらいいのか。新しい指導要領等を作成していくときに、そういう視点がどうやったらうまく入り込んでいくのか。そして、そのためには、例えば教員養成はどうあるべきかというような2つの側面から詰めていくと、両方実りあるものになるのかなと思います。

池上座長】
 私は、国際理解教育の「理解」という言葉が、どうもちょっと誤解を招く言葉ではないのかなと思います。理解というのは、教えていただいて知識として身につけるように思うんだけれども。今必要なのは、理解というよりは、もちろん知識を踏まえた上で国際人としてひとり立ちしていくというか、そういうグローバルな行動様式を持つ日本人に育つ必要があるんじゃないのかなという感じがして、この国際理解教育という言葉を少し見直したらどうかな、というふうに私自身は思います。

長谷川委員】
 今、こういう国際理解教育を行うことによって、どういう国際人を育成するのかということを考えると、小・中・高等学校においては、今総合的な学習の時間の中で行われており、そこで求められている資質・能力というのは、まさに国際理解教育の求めるものに直結するものがあると思うんです。というのは、要するにディベート力とか、自己表現力とか、そういうものというのは、国際理解という教育課題だけではなくて、環境とか、あるいはさまざまな福祉、そういうものとの関わりの中から、あるいは体験を通して培っていこうというところが一番主眼になっていると思うんです。子どもたちも自ら課題を見つけて、それを自分の力で解決していくというところが非常に大切で、それをサポートしていくのが教員なわけです。そこら辺がまた教員の資質につながっていくのかなと思います。
 総合的な学習の時間でも調べ学習を非常によくさせています。子どもたちはインターネットや本やいろんなもので調べるわけなんですけれども、その調べたものをどう次につなげていくのか、あるいはどう活用させていくのかというのは、やっぱり教師の支援がないとだめなんですね。それが調べっ放しになってしまうとか、あるいはそれを自分の表現、自分の意見としてどう発表させるのかという点にもやはり支援が必要になってくると思うんです。子どもたちがいかに自分の知識を自分の言葉で発信できるようにしていけるのか、そこに教員の支援がもう少しされていかないと、これは国際理解教育だけの問題じゃなくて、総合的な学習の時間というものが設置された意義にもかかわってくるのかなと思いました。

千葉委員】
 私は、教員の養成ということで、大変難しいなと思っているのは、まず教員になる前に育ってきているということです。大学でも、高校・中学校でも学んできている。そういう意味で、いろんなことを工夫して、どのように子どもたちに伝え、あるいは考えさせ、育てるかと、その辺の視点がしっかりしていないと、教員養成という点では非常に難しいと思っております。
 あと、学校現場からすると、どんどん新しい施策がおろされてきます。今度の学習指導要領で総合的な学習の時間の例として国際理解教育が出されました。これは、私も国際理解教育に携わっている団体に所属している関係からいって、追い風だなと思って歓迎していたんですが、間もなく出てきたのが学力問題なんです。そして、小学校では総合的な学習の時間に英語活動が取り入れられてきた。すると、学校現場というのは、学力となりますと、今度は試験の点数がとれる学力に血眼になりまして、小学校で英語活動に取り組むんであれば、じゃ総合的な学習の時間では何を取り組んでもいいんだとだんだん拡大解釈されていきます。中学校なんかの場合には、行事に時間をとられるのはたまったもんじゃないと。ですから、行事の準備のために総合的な学習の時間が使われるというようなことになりまして、現実には色々難しい問題があるのです。

多田委員】
 教員の研修について、短く2点言いたいと思います。
 1つは、先生方が実際に何かをつくる研修をやっていかないと力がつかないということです。この力を実際につくるという場合に必要となるのが、具体的ないい実践の事例です。それから、ユニセフハウスに私はよく行くんですけれども、あそこの教育資産を使うことがどれだけいい意味を持っているか。例えば神奈川では、国際理解教育に関する研修を、3ヶ月間の間に3日を使って行っています。研修の機会は実質的にはたった3日ですが、私は最初の日に、実践事例の紹介やユニセフハウスなどの話をし、2日目に先生方が作ったものを発表し合い、次の研修の機会までにそれを仕上げる、というやり方で3ヵ月間を使った。そうすることによって、教員の育ちというものがでてきました。
 それからもう1つは、もう少し広い意味で、私はやっぱりこれからはグランドデザインみたいなものを考えなければいけないんじゃないかと思うんです。グランドデザインというと、今のところは多文化共生という点で帰国子女、特に外国人子弟をどうするかという地域の取り組みはあるんですが、もう少し広い意味でこれからの子どもたちをどうするかといったものです。しかもそれは地域にある、さまざまな教育資産をどうリンクしていけるか。あるいは色々な人が関わることによって多文化共生的な何か、あるいは多元的な何かというような面のかかわり、あるいは立体的なかかわりを持った国際教育の推進みたいな事例ができないか。そういうものがこれから出てくると、それも参考になるなと思っております。

池上座長】
 私どもは、商社のOBシニア1,400人ほどでNPOをつくり、小中学校への国際教育のお手伝いとして、人を派遣したりしています。確かに実際的に、経験したものはたくさん持っているんだけれども、それを系統的にちゃんとうまく話せるかというと必ずしもそうではなく、シラバスというか、教材、こういうものが必要になるなということで、現在、関西学院大学と共同研究で、そういう国際教育のシラバスと教材を事例として作っています。先ほどおっしゃったように、現場で実践する教師が作っていくということは大変大事なことになるのかなというふうに思います。

岩谷委員】
 今、ユニセフハウスのお話が出ましたけれども、ユニセフハウスにおいでになる学校は、どんどん増えてはいるんですが、どういう方々が目をつけてくださるかなというと、やはりご自身が過去に海外経験がある方とか、それから今ボランティアの方が200名ほどいるんですが、自主的にボランティアを申し出る方もやはり海外経験がある方などが、非常にスムーズにユニセフへ関心を寄せてくださるんです。そういうことを思ったときに、過去の経験というのはとても大事だなということを1つ思うんです。
 私どもとしては、ユニセフの教材をなるべく多くの子どもたちに知ってもらい、グローバルな視点で地球市民的な感覚、国際感覚を身につけてほしいと思うので、教材を提供する側としては、先生を変えていくというのはやはり大きなポイントだなと思いました。先ほどから出ていますように、教員養成の時点でどうあるべきかというのが1つあります。それからもう1つは、現在先生をしていらっしゃる方々の研修をどう強化していくかという、2つに分けて考える必要があるんだなと思います。
 それから、教員になってから国際感覚をというのは、経験がなければとても難しいと思うんです。だから幼稚園、小学校、中学校の段階で自然に国際感覚を身につけていくカリキュラムづくりというのは、やっぱり絶対必要だと思うんです。学習指導要領の見直しのお話がありましたけれども、現在の学習指導要領よりもかなり具体的に国際理解教育は盛り込まれてきていると私は思うんです。そういうものはあるけれども、それを教育レベル、現場の中でどうかみ砕いて指導していくかの部分が全然煮詰まっていないんだと思うんです。したがって、そこら辺の具体性を考えていく必要があるかなというふうに思いました。

佐藤(郡)副座長】
 私どもは教員養成について、国際理解、国際教育に関わるようなものをぜひ充実させていきたいと思っているんですが、問題なのは、全国の教員養成大学で名前としては国際理解教育課程を掲げているものがたくさんあるんですが、実態が伴っていないというのが事実なんです。例えば歴史であるとか、地域研究をやっているような方々が実は国際理解教育を担当しているわけなんです。つまり、現実的には国際理解教育の専門家が授業をやっているわけではない。ですから、私どもとしては、国際理解教育というものをぜひ、教職員免許法の改正などに科目としてきちっと位置づけていくことも必要ですし、また大学の在り方そのものも問われているわけで、ファカルティ・ディベロップメント、そういうものとぜひリンクしながら、教員養成を充実させていきたいというふうに思っております。ぜひ声を大にして言っていただければ変わるんじゃないかというふうには思いますけれども。

山中審議官】
 確かに学習指導要領も今、見直そうとしております。それはタイムスケジュールでいきますと、大体どういう方向でいこうかというあたりはもう16年度中、来年の3月とか、そのぐらいでやって、その後具体的に、ではそれぞれの教科、あるいは総合的学習の時間をどうしようかというあたりについてが17年度ぐらい、それを具体化するのが18年度ぐらい、そんな形で考えております。先ほどの共通的にやるべきことは何かという、例えば自己を表現して発表する能力とか、そういうものが、国際理解教育で重要だというような観点は、ぜひ明確に出していただくと、そういうものの中に反映しやすいというものが1つあるわけです。
 もう1つの観点は、総合的な学習の時間をどうしようかというのは、これは、いろんな要請があり、先ほどおっしゃったように、学校5日制の中で時間の取り合いになっております。そういう中で、小学校の英語教育をどうするのかという問題も含めて検討していくことになっております。
 それから教員についても、これも教員養成制度を大きく変えようとしておりまして、1つは、教員の専門職大学院という制度をつくりたいということで、どういう形でより実践性のある教員を養成していくかということを、ここ1年ぐらいで検討して、来年には結論を出そうということになっております。そういうところに国際教育的なものをアイテムとしてどう盛り込むかということを、ひとつ強く言っていただければ、そういうことに反映できる可能性もあるのではないかと思います。

千葉委員】
 私がお願いしたいのは、非常に学校は余裕がなくなってきていて、いい研修をやっていただいてもそこになかなか参加させられない、それから日本の学校にはいろんなことが余りにも要求され過ぎるという点もあります。いい研修も用意されているので、そこに派遣できるように、先ほど出されました教科の数も、これでいいのかということも含めて、ぜひ検討していただけたらなと思います。

給田委員】
 国際教育部門をどう強化していくかというときに、いろんな議論がありますけれども、詰まるところ指導者なんです、先生なんです。先生にその意欲がなければ、文部科学省やあるいは教育委員会が幾らビジョンをこうありたいと掲げても、それは絵にかいた餅である。だから、先生が自信を持ってできるために、今おっしゃった時間の配分の問題、それから経験のないことを教えるというのは、それはしょせん何か借り物ですから、それらを含め、先生たちにどうやったら自信を持ってもらえるか、を考えるということが私は一番根本だと思うんです。
 そういうことからすると、実は、私は二、三回頼まれて経済同友会に話に行ったときに、先生方と話をして無理もないなと思ったんです。例えば国際問題を話していても、先生方も新聞やテレビからの情報、それ以上は何もないわけですから、自分が子どもたちに話していることが、現実の姿なのかという自信がない。しかし先生ですから、あたかも自信を持っていたようなふりをしてしゃべらないといけないから、内心じくじたるものがある。そういうときに、実際にビジネスの経験があった我々が行って、一緒に話をして、先生と例えばやりとりをする、新聞にはこう書いてあるけども、こんなこともあってねという話をすると、話が非常にビビットになってくる。ですから、先生に何もかも、時間がないところで勉強してというんじゃなくて、私は世の中にはいっぱいいろんな人がいるんだから、その人たちを引っ張り込んできて手伝わせるという、そういうトレンドが出てくると、もう少し現場の先生はやりやすくなるんじゃないかなと、そんなことを感じました。

多田委員】
 そういう事例がいっぱい出てくるといいですね、こういうふうに使えばいいとか。

給田委員】
 ぜひお伝えしたかったのは、現場の先生方は、ビジョンはわかる、こうありたいと思う、しかし体がついていかない、時間がないという状態です。それはなぜかというと宿題が多過ぎるんですよ、課題が。ということは、何の仕事でもそうですけれども、やっぱり一番生の現場の人たちの悩みを、それを決める人たちがどれだけ吸い上げているか、吸収しているか、その上で施策を立てているかということに尽きるような気がします。

佐藤(郡)副座長】
 私も、自分で最近つくづく感じるんですけれども、先生の多忙感が多いんです。それはどういうことかというと、引き出しがいっぱいあって、こっちを引き出して、こっちを閉めて、あっちを引き出すと、実は後ろがつながっていないんです。ビジネスの世界は多分つながっているはずなんです。多忙感がすごく大きいというのは事実だと思うんです。やることが多いんですけれども、基本的には、国際教育、環境、福祉だとかということの共通のねらいというものが、つまりこれからのグローバルな時代の中でどういうことをねらっていくのか、ということがおそらく大きな視点になって、それが教科の編成の重要な視点になっていく。そういうことが最近の議論の中で非常に強くなってきているし、私たちもそこをやはり強く打ち出していったらいいのではないかなという感じがします。それが、今日議論になっているコミュニケーション能力であるとか、自己の確立であるとかという議論になっていくのかなというふうに思います。

池上座長】
 そういう教科の絞り込みと、メソッドとしてついでに私からも提案させていただきたいのは、私の息子どもが海外で教育を受けてきて思うのは、ヨーロッパでもアメリカでもディベートというメソッドを教育に取り入れて、とにかく自分の仮説に対して、何とかそれを論理的に説明するという工夫を徹底的にさせていますね。ですから、それは日本でも、メソッドとして取り入れたらどうかという、検討をしていただいたらどうかなと思います。論理的に議論をし合う方法論、これは方法論ですけれども、一つ入れていただきたいというのは、私の個人の意見です。

渡邉委員】
 教育政策と具体的な現場とのかかわり合いで、こういう接点があるんじゃないかと思います。
 例えば、小学校の英語については、先生も一生懸命やってくださっているわけです。具体的に今行っている小学校の英語活動の中で、良い点は何かというと、実際にネイティブも含めて、異国の人が入り込んでいて、そこに子どもも先生も非常に異質なものとぶつかっていること。これはまさに海外生活体験者の方に今後ご協力していただく場合と同じことだと思うんです。
 特に大切なところは、その中で先生方は、きちんと自分の考えを持って物を言っていかなきゃいけないんだなということを学んでいくことです。これはまず大人である先生方が学んでいくわけです。もう既にそういう場で研修が始まっていると私は見ているんです。具体的に小学校に英語が入って、各地域で動きがあるけれども、少なくとも先生方は、英語活動は単に語学勉強というだけではなくて、お子さんの中の自分の考えを持つという資質・能力の育成に関わるものがあるという点に、気づいている部分があると思います。そういった点から小学校の英語活動を見つめ直すと、英語活動も、国際理解教育や国際教育関係人材の活用につながるんではないかなと思います。
 つけ加えて言うならば、そういったところに海外生活体験者の方もボランティアとして一緒に入っていくと。ということは、ある意味で非常に教育観が重要になってきます。お子さんを見る観点が複眼的になっているということも事実ですから、そうすると学力感も変わってくるきっかけになっているんではないかと思います。少なくとも我々が一緒に小学校で英語活動を推進している中で、成功例と見たいのは、先生方が点で評価していたのから線で見ていかなきゃいけないという風に変わってきているというものです。自閉症の子がALTとだけだったら話すようになっていくという事実があるわけですが、それは一体何なんだろうかと。そういったことの非常にいい成果をやっぱりつぶすことはないと思いますから、それは、行政の方に頑張っていただいて、カリキュラム論でも生かしていただけるとうれしいなと思います。

吉谷委員】
 九州の場合では、帰国された方などの人材が少ないんです。福岡は比較的都市部ですけれども、あまりいない。
 例えば東京での研修とかそういう機会があって先生たちは行かれるんですが、東京まで行くということは大変なことで、行った個人はいいんだけれども、その後、個人で地元の学校や地域に広げたりするのはなかなか難しいものがある。だからある種、人材育成や研修等々では、ある程度地域ごとに組んでいただいて、北九州でもやるなどすればよいのではないかと思います。ところが今は、人材育成研修のときに一極集中化して、全部済まそうとしているところがあるのではないかと思います。外国人児童生徒教育や日本語指導の担当教員の研修もそうですし、国際理解教育もそうなんだけれども、地方の資源活用という方策を入れていただかないと、九州にいて、東京に来られるものばかりではないから、非常に厳しい。それが1つ。
 それから、先ほどの最初の話で、川崎市で、国際理解教育が今非常に低調だということで、驚いております。九州では、アジアの留学生も多くて、アジアから仕事でお見えになっている方もたくさんいる。だから、まさに地域の中でやろうというのが活発です。おそらく先生たちの意識が強いんです。それなのにできないのはなぜだろうというのを考えたときに、ユネスコの21世紀教育国際委員会の4つの学びの中で、例えばともに生きることを学ぶというところにまず到達するまでに、そこで言われているものが国際理解であり、地域理解であり、文化理解である、ということがいろんなところで言われているけれども、本当ははっきり理解されていないんじゃないかというのがすごく気になっています。
 それから、今後ディベートとか、実践例とか、マニュアル等が作成されていくと思うんですが、それができたときにもう一度きちんと例えばこうした4段階の中に位置づけられないといけない。そうしないとマニュアル化してやっているが、また成功しないということになる。ユネスコは多分この4つの段階というのはずっと言ってきたことだと思うんですけれども、こうしたものもきちんと示しつつ、その中で位置づけ等を与えてあげないと、また、ディベートさえやれば国際理解が全部終わるというようなことになりかねない点はすごく危惧するところです。


(5) 今後の日程について
 事務局より、今後の日程について説明した。

(6) 閉会

(了)


(初等中等教育局国際教育課)

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