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初等中等教育における国際教育推進検討会(第1回)議事録


1. 日時  平成16年9月1日(水曜日)13時30分〜16時

2. 場所  コンファレンススクエアMプラス ミドル1プラス2会議室 (三菱ビル10階)


3. 出席者
(委員)  池上 久雄(座長)、佐藤 郡衛(副座長)、岩谷 栄子、奥村 芳和、小野 清二、佐藤 裕之、多田 孝志、千葉 俊治、根道 博、根本 かおる、長谷川 祐子、平野 次郎、船橋 力、森 由美子、吉谷 武志、渡邉 寛治の各委員
 
(文部科学省)  銭谷初等中等教育局長、井上国際統括官、樋口大臣官房審議官(初等中等教育担当)、山脇国際教育課長他関係者

4. 概要
 
(1) 開会(事務局)

(2) 銭谷初等中等教育局長ごあいさつ
   初等中等教育局長の銭谷でございます。先生方には、初等中等教育における国際教育推進検討会の委員をお引き受けいただきまして、大変ありがとうございます。
 国際化が進展している中、これからの教育を考える上で、国際社会に生きる人材の育成という観点が大変重要な要素になってきているわけでございます。文部科学省では、従来から国際教育ということについていえば、海外子女教育、帰国子女教育、外国人の児童・生徒の教育、あるいは国際理解教育、国際交流活動などを推進をしてまいりました。ただ、国際化が一層かつ急速に進展し、一方で、情報化、あるいは地球環境問題、さらには科学技術の進歩、あるいは宗教的ないろいろな意味での対立とか、私どもを取り巻く環境も大きく変化をしてきているわけでございます。
 こういった変化が起こる中で、これからの国際教育を文部科学省としてどういうふうに考えていけばいいのかということを、総合的に議論する場がこれまでございませんでした。そこで、今回、特に初等中等教育における国際教育について、海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育、そして国際理解教育、国際交流活動といった各分野における施策の連携を図りながら有機的にこういった活動を推進をしていく方策について、1つの場を設けて検討していこうというのが、今回、先生方にお願いを申し上げました会議の趣旨でございます。
 大きくは3つぐらいのことをご検討いただきたいと思っております。1つは、国際理解教育や国際交流活動の充実ということでございます。今まで以上に効果的かつ総合的に国際理解教育、国際交流活動を推進していくための取り組みについて、ぜひご検討をお願いを申し上げたいと思っております。
 2つ目が、国際教育人材の活用のあり方ということでございます。学校の内外に、海外への派遣経験のある教員という方が随分増えてまいりました。また、帰国・外国人児童生徒や外国人留学生等、多種多様な海外経験を有する人材がいるわけでございます。中には、小学校の英語教育などで随分ご活躍をいただいている方もいらっしゃいます。こうした国際教育人材の積極的な活用方策についてご検討いただければと思っているわけでございます。
 3つ目が、時代に対応した海外子女教育のあり方についてでございます。最近、いわゆる現地校志向の高まりといったような、保護者の要望の多様化も見られる中で、海外子女教育のあり方について、幅広くご意見を賜れればと思っております。
 国際理解教育や国際交流活動の充実、国際教育人材の活用のあり方、時代に対応した海外子女教育のあり方、こういったことを中心に幅広く国際教育の今後の方向性についてご議論いただければありがたいと思っているところでございます。
 今回の会議の事務を担当いたします国際教育課は、かつては海外子女教育課と称していましたが、文部省が文部科学省になって発足をした課でございます。今年で4年目になるわけでございます。私ども、この国際教育課が今後、国際教育という大きな枠組みの中でどういう方向を目指していくべきか、それを実現するための方策等について、先生方から忌憚のないご意見をいただければ大変ありがたいと思っている次第でございます。先生方におかれましては、大変お忙しい中、恐縮でございますけれども、初等中等教育における国際教育の一層の推進のために、何とぞ格段のご協力を賜れればとお願いを申し上げまして、開会に当たりましてのごあいさつとさせていただきます。どうかこれからよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

(3) 座長・副座長ご紹介

(4) 座長・副座長ごあいさつ

(5) 委員自己紹介
   各委員より自己紹介が行われた。

(6) 検討会の運営について
   原則公開で了承された。

(7) 配布資料確認
   事務局より配布資料の確認を行った。

(8) 議事
   事務局より、今後の検討の進め方、国際教育をめぐる現状と検討の視点について説明し、長谷川委員より横浜市における国際教育に関する取組について発表が行われた後、自由討議が行われた。

  【森委員】
   英語教育というものに非常に力を入れておられるところが多いと思うのですけれども、国際教育といったときに、今の横浜のケースなんかでも、子どもの数からいくと、英語が母国語という人の数は、実は5位にある。国際理解といったときに、あるいはほかの文化をより理解しようとするときに、例えば、どこの国は偉くて、どこは偉くないというような、そういう価値観を子どもたちが持つとよくないと私自身思っていて、言葉の優劣みたいなものとは関係がなく、言語体験を含めて、そういった国際理解につながる体験が子どもたちの中にもっとあるべきではないかということを以前から思っていました。

【平野委員】
   資料1の初等中等教育局長決定というのを読みますと、国際教育の定義といいますか、概念みたいなものが出てきます。私は、私なりにこれを4つの柱でくくってみたんです。一つは海外子女教育、もう一つは帰国子女教育、3つ目が在日外国人の子どもの教育、4つ目が国際理解教育。どうもこういうふうになるような気がするんです。このうち、海外子女教育と帰国子女教育は、要するに、日本人の子どもたちの教育にかかわる問題ですから、一くくりにできるのではないか。3番目の在日外国人の子どもの教育は、これはまた一つの柱として立てる必要があるのではないか。4つ目の柱として国際理解教育がまたその後に来るものと。こういうふうに私は理解をしているんです。
 そのうち、国際理解教育については、文部科学省から資料3に基づいて説明がありましたが、これを話を伺ったり、読んだりしますと、英語を媒体とした国際理解を進めるためのものと、こういうような受け取り方が強く出ているような感じがいたします。今、森委員からの、言葉に優劣がないということがございましたけれども、さはさりながら、どうも英語教育の推進というふうに事実上なっているような気がするんです。
 それから、横浜市の場合は、問題点を整理して理解する上で、ものすごくいいデータだったと思うのですが、1つ私が気になったのは、在日外国人で日本語が不自由な子どもたちに日本語を教える場と、それから、帰国した日本人の子どもでもって日本語が不自由である子どもたちに日本語を教える、これを1つにしているところがちょっと気になりました。といいますのは、帰国子女教育、あるいは海外子女教育という、日本人に対する教育というのは、つまるところ、日本人としてのアイデンティティを持たせるための教育であって、在日外国人の子どもたちというのは、日本人になりたいと思っている人もいるかもしれないけれども、なりたいと思っていない人もいるわけですから、便宜上一緒にしたんでしょうけれども、帰国あるいは海外子女教育と外国人子女教育一緒にすることは、これは基本的には正しいことではないのかもしれないなという気がいたしました。
 それから、横浜市の資料を見ますと、横浜市にいる外国人の児童生徒の在籍数が2,172人で、そのうち621人だけが日本語の教育が必要とされているということは、おそらく華僑の人たちの子どもさんたち、あるいは韓国、朝鮮の国籍を持っておいでで、事実上、日本に定住をしている方の子どもさんたちがたくさんいて、その人たちはもう日本語の教育を特別にしなければいけないという状況ではないだろうと思うんです。
 その辺がちょっと気がついたところでございます。一応、このぐらい申し上げてみたいと思いました。

【多田委員】
   時間もありませんので、私は2つの点、特に資料4を見ながら感じたことを言いたいと思います。
 私の意見の背景には、どうも国際理解教育が大きく変わろうとしているという現実があります。こういう現実の中で重要なことが幾つかあると思うのですが、そのうち2つのことを申し上げます。第1点は、教師の研修の重要性ということです。これは、いくら声を大にしても過度ではないと私は思っています。つまり、国際理解教育という、今までの自分自身の中にない資質、能力、態度というものを育てるということを目標にするのであるならば、そのことについての教師の研修というのは非常に重要であろう。それから、やはり「総合的な学習の時間」の中で取り組まれているのであれば、教師のカリキュラムのデザイン力というものが、ややもすると日本の教師は弱かったと思うのですが、その辺についての研修も重要であろう。つまり、具体的に国際理解力を実践する、あるいは国際交流を実践する教師たちそのものをどう高めていくかということは極めて重要であろうと思っております。
 それから、2点目は、例えば国際教育、人材の活用のあり方についてに関係して、今、研修のことを申し上げたのですが、もう一つは、やはり海外、あるいは国内の教育資産をもっと活用するという方向性はどうかと思っております。
 具体的には、全世界にはユネスコ協同学校が1,700校あると言われております。これをどううまく活用するかということは非常に重要なことだろうと思うし、ユニセフの持っている教育資産というものは、全国の学校はこれをもっとうまく活用すると、英語教育も重要なのですが、語学以上に重要な国際的資質というものがあれば、そうした国際的資質を形成する有用な資料となるであろうと思うわけです。
 そういうようなことで2点申し上げてみたいと思います。また、具体的な、どう進めるかという話のときに、もう少し細部についての意見を申し上げたいと思います。

【根道委員】
   海外子女教育振興財団の根道でございます。
 まさしく今、平野委員からご指摘のあったポイントなのでありますが、私、2年前に、海外子女教育振興財団にまいりまして、文部科学省、それから佐藤先生のところにごあいさつにまいったときに、海外子女教育という言葉は既に古く、今は国際教育という考え方に変わりつつあるんだ、日本の子どもばかりにこだわらないで、もっと大きな視点からもの見るべきではないかという指摘をいただきまして、私もそれを聞いた時点においては、まことにごもっともと思ったのであります。しかし、帰りましてはたと気が付いたのは、やはり海外子女、あるいは帰国子女の問題というのは、解決したのかというと、決してそういうことではなくて、ずっと続いているということです。それから、あまり国家意識を持ち込むのはどういうことかとは思いますけれども、日本の国民の財産ということから考えた場合には、日本の国民の教育というのはやはり重要ではないかということです。実は、海外子女という言葉は、海外子女である皆さん自身が嫌だとおっしゃられることもたくさんあって、どうしようかと思ったのですが、実は適当な言葉が見つからないんです。しかしながら、財団は海外子女教育振興財団という名前は変えないということに、少なくとも私は決心をしたわけであります。もっと適当な言葉があればいいなと思ってはおりますが。
 世の中の変化でございますから、当然、それについていかなければいけませんし、国際教育も重要だし、外国人の子どもへの対応というのも非常に喫近の課題として皆さん苦労しておられるということは、私、目の当たりにして非常によくわかってはおるのでございますが、若干、そういう意味で、帰国子女問題というものについてのフォーカスが薄れてきてしまったというのが、帰国後、この仕事について、私の一番の問題意識でございます。したがって、在日外国人子女教育や国際理解教育のみならず、海外子女・帰国子女教育の重要性の観点からの発言をお許しいただきたいと思います。

【奥村委員】
   大阪教育大学附属高校池田校舎の奥村と申します。
 私どもの学校がなぜここの場に招かれたのか、ちょっと合点が行かないまま来させていただいたのですが、私どもも国際教育につきましては、10数年前からずっと取り組んでまいりました。そして、昨年、国際教育課から、スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールの指定を受けることになりました。
 また、これも昨年から本校が加盟して始まったことなんですけれども、先ほど、多田先生からユネスコ協同学校の話が出ましたけれども、ユネスコ国内委員会からの要請もありまして、ユネスコ協同学校に加盟をいたしました。そして、ASP(Associated School Project)ネットワーク加盟校として、このたび、この7月にユネスコアジア文化センターから予算をもらいまして、韓国、中国、そしてタイとフィリピンから、4つの学校から2人の先生と2人の生徒、合計16人を招きまして、本校を中心に、大阪府立北淀高校、私立の羽衣学園と協同しまして、国際交流の場を持ちました。
 私たちの学校は1学年160人、全体480人のちっぽけな高等学校なんですけれども、帰国生、外国人生徒を入学時に8名受け入れており、その他小・中学校段階でも受け入れておりますので、1学年に30人から40人近い帰国生、外国人生徒がもう既に混じっております。そういうふうなことが非常にいい影響を学校全体に与えながら、学校自身が運営されております。
 国際教育というものと英語教育ということで、森委員さんからも少しご発言がありましたけれども、私たちの学校でも英語科の教員がスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクールをやり、国際教育委員会がユネスコ協同学校をやり、国際教育を担っていますが、やはりさまざまな葛藤がありまして、齟齬があります。そういうところを考えますと、ようやくここへ来まして、うちの学校が、そのちょうど中間の接点にあるのだということを理解しまして、今後、いろいろ発言をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。

【根本委員】
   私ども、国連世界食糧計画は、横浜市に事務所があることから横浜市のご支援をいただいており、横浜の小学校、それから先生の方々に、世界の飢餓の状況であるとか、世界の人道支援の状況とか、いろいろとご説明する機会がございます。それは、ものを考えていくきっかけをつくらせていただくことにはなるのですけれども、それをどのように継続して、持続させて、目指すべき方向に持っていくのか、そこのところが私ども、ちょっとまだつかみかねているというところがございます。
 先ほど、国際機関など、たくさん日本に駐在して、いろいろな材料があるというお話が出ましたけれども、各国際機関には、そのような教育、国際理解の教育に使っていただけるような材料をいろいろと持っていると思います。それをどのように活用していただけるか、それから、国際機関としてもどのようなご提案が私どもからできるのか、そういったこともこの議論の中で検討していただければと思います。

【船橋委員】
   私も帰国子女として大変な思いをしましたし、今は在日外国人の子どもの教育の問題とか、いろいろな課題はあるとは思うのですけれども、私が1点だけ思うことは、今、国際理解教育と言われているけれども、10年前と今の日本と日本を取り巻く国際社会の環境は全然違うと思っていまして、国際を理解するというような現実ではなくて、国際社会の中でどう日本が生きていかなければいけないとか、そういうことを考える時代だと思っています。
 もっと言うと、日本はどういう国になっていきたいのかとか、そういう中でどういう人が必要なのかとか、どういう教育をやらなければいけないのかというところから、つまりビジョンから考えていく部分も、今回のところですごく大事だと思っています。どちらかというと、感覚論で申しわけないのですけれども、外国人が日本にいっぱい来ているから英語が必要だとか、異文化の人を理解してあげなくちゃいけない、そういう対処的というか、対応的な状況が今までだったと思うのですけれども、これからはそうじゃなくて、日本以上に中国がもっとどんどん発展しているような状況の中で、もっと日本の位置を見つめて、どういう人材にならなければいけない、なろうとか、そういうビジョンから考えることが大事だと思っています。
 どうしてそう思ったかというと、私は、今、企業250社ぐらいの研修をやっていますが、企業でも同じようなことが起きていまして、まだ自分たちの島国の中でしか見ていなくて、国際社会の中で随分やられているという感覚を私は受けています。そういう意味では、どういう人たちがこれから日本に必要だとか、どうならなければいけないという視点から考えていく点もとっても必要なのではないかと思っています。

【岩谷委員】
   各先生方より、帰国子女や国内の外国籍の子どもの話が多かったように思います。私はその子どもたちを受け入れる側の日本で生まれ育った日本国籍のこどもたちについてのことに触れてみたいと思います。
 地球上の人々は互いに依存関係にありながら生活をしていることを認識し、地球市民としての国際感覚をどのように身に付けていくか、教育カリキュラムの見直しと整備が必要になると思います。併せてそのための教材開発を創意工夫し、関連団体との共有化を図っていくための検討をしていきたいと存じます。よろしくお願いしたいと思います。

【千葉委員】
   私は、先ほど自己紹介のときに、全国海外子女教育・国際理解教育研究協議会の会長を務めていると申し上げましたが、私どもの研究会が担ってきた役割は何かといいますと、海外子女教育ということを最初に取り上げてきたわけです。そのうち、当然、私たちは日本人学校等に派遣されて帰国してきた教員が中心ですので、帰国子女について、それから、外国人子女教育についていろいろ考えてきました。昨今、教育改革が言われていますが、日本の教育を考え直していく上で、私たちが携わってきた海外子女教育の分野をもう一度見直していくことができるのではないかと考えます。例えば日本人学校は現地の領事館と協力して学校を運営してきましたが、そういう視点を日本の教育改革を考える際に取り入れて見直していくことができるのではないかと考えているところです。
 そういった意味で、先ほど、英語教育というか、英語活動のことも取り上げられてきましたが、私どものところでは、英語活動の実践についていろいろやっていますが、同時に、それだけに視点を当ててやっていくことはどうなのかという、そういった議論もされているところです。その辺のところは興味を持って、参加したいなと思っております。

【佐藤(裕)委員】
   横浜の隣の川崎で国際理解の担当をしている立場で悩みが3つあります。川崎だけの悩みで済めばいいなと思って聞いてください。
 まず1つは、「総合的な学習の時間」ができまして、やっと時間と場と、そして人材が確保されて、それぞれの学校が国際理解教育をやってきているのだけれども、昔、一生懸命時間を工面してやっていたころに比べると、何かつまらなくなっちゃったかなとか、あと、英語をやって国際理解教育になっているという形で広がっていて、そんなこともあって薄まってしまったような感じがしています。自分が頑張らなければいけないのですけれども、悩んでいます。
 それから、川崎というところは、工業の町ですから、ニューカマーと言われる外国人の方たちがよく編入学してきます。日本語指導ということでは一生懸命やっているつもりですが、面接に立ち会う中で、たくさんある彼らの夢をかなえてあげたいと思うときに、学力を保障しなくてはいけないという問題がでてきます。もう少し具体的に言うと、小・中学校までは川崎は面倒を見られるけれども、高校に入る術がなかなか見えてこない。そのような悩みを目の当たりにしています。川崎の悩みだけであればいいかなと思っております。
 もう一つは、6月ごろにたくさんの学校から電話が来ました。こういう電話です。「低学年の外国人の子どもです。最初は何でもわかっていたのだと思っていたのだけれども、6月ぐらいに学期末なので試験をしてみたら、何もわからないということがわかりました。センターでどうにかしてください」。川崎では、日本で生まれ育った外国の子どもたちが学校に入るようになりました。そうすると、家庭では一定の母語、そして急に日本の学校に入って日本語を習うということになります。専門的な言葉で言うと、二言語不十分と言うそうです。つまり、勉強を進めていく上での言語がないために、学習活動についていけない。どうしようもなく悩んでおります。
 以上、私の悩みです。よろしくお願いします。

【吉谷委員】
   いろいろなところから出ているので、今のお話、最初の全体の話と、横浜の話を伺った上で、一つの感想みたいなところが最初なのですが、国際理解教育という問題と、それから、外国人児童生徒あるいは海外から帰国してくる児童生徒の問題というのは、前者が国全体の多数の問題であって、後者が数的に言えば少数の問題であって、対局にあるのですけれども、実は、非常にこれが悩ましいところは、両方が絡んでいるということであるということを再認識させられます。
 つまり、少数者のほうに、例えば言語の教育だけをやって、片一方のほうは国際理解教育としていろいろな日本の子どもたちの育成ということを別々にやっていてはうまくいかない。つまり、少数の子どもは常に多数の子どもと一緒にいるし、多数の子どもは常に少数の子どもを見ているという中で動いているということなので、両者は別々のものではないような形でつくっていかないと、おそらく対症療法的になってしまうのではないかという感想を持っています。どう両者をうまく絡めていくのかということをしっかり考えていかないといけないのではないかと思っています。
 それから、私は、地域性のことを申し上げると、九州大学周辺のそうした学校を見てきているのですが、そこで常に気になっているのは、先ほどの横浜の場合、それぞれの地域、区によって特色があるという説明があったのですが、それと同時に、言語の問題であったり文化の問題であったり、生活習慣も違いますので、学校によって、そこにいる子どもたちの特質が違ってしまっている、同じようにできない部分がどうしてもあるという状況です。
 そういう意味で、8カ国の言語に対応できるような指導員を置いていますとか、5名いるところにはもう1名先生を加配しますという形で、非常にきめ細かくやっておられることは感銘したのですが、きめ細かく対応しようとすればするほど、予算にかかわる話が最終的に極めて大きな問題として出てきてしまうだろうと思います。しかし、その辺の問題を含めて、この検討会では逃げずに提言していくような方向が欲しいと私は思っています。
 それから、ちょっと細かいことを言いますと、先ほど、日本語指導が必要な児童生徒数621人、あるいは中国、韓国・朝鮮の国籍の方がこれだけいらっしゃるという説明があったのですが、外国人の子どもたちの問題にかかわっていて常に思うのが、今現在出ている数字が実態をどれほど反映しているのかということです。この子ども621人のうちに6月の時点になって学習についていけないことがわかったお子さんが入っているのかどうかというと、おそらくカウントされていないと思うのです。「6月の時点で初めてわかりました。」ということは、つまり普通に日常的な言語が話せれば、それでこの子は大丈夫だという形で、現状ではかなり動いているところがある。あるいはそういう子がいるということへの理解が進んでいない。先ほど教員研修が必要だということがあったのですが、そういう問題を同時に抱えながら動いている。それから、福岡の例でいえば、フィリピンの方が多いのですけれども、国際結婚でお父さんが日本人の方が結構多いんです。そうすると、二重国籍の方もいれば、日本国籍をもつ子どもたちも入ってきたりして、地域実態を統計が表していないとすれば、統計上の数字がどの程度、施策の役に立つのかということは、しっかり見直すべきではないのかと思います。単純な統計のとり方でも、こういった子どもさんが621人に入っていないとすれば、この辺の問題はクリアしないと、先ほどの予算にも絡んできますし、いろいろな意味で大きな問題になってくるだろうという気がしています。

【小野委員】
   私は、西新宿小学校というところで現場で国際教育を担当して進めていますが、きょうの概要の説明を聞きまして、これから討論していくべき内容として3つぐらい、大切かなということを感じました。
 1つ目は、国際教育の基本理念をここでしっかり検討していってもらいたいということを思いました。言うまでもなく、第一は人間理解ということが中心となっています。国際理解教育というのは、3つの大きな柱、そして14年11月から1つ追加されて、国際的視野の育成というのが加わってきました。やっぱり人間理解、すなわち相互理解に基づく共生という視点をどのように子どもたちに教えていくかということだろうと思います。この共通理解をきちんと図って、国際理解教育を進めていくべきだなと思いました。
 したがって、その中で私どもの地域との関連でいえば、例えば、帰国子女の問題、それから在日外国人の問題があります。新宿区では、先日、新聞報道がありましたように、歌舞伎町地区で外国人の子どもの事件がありました。私の学校は新宿西口の都庁のそばにありますが、例えば学区域を接した隣の学校では、1クラスの半数が在日外国人で、日本語が話せない子どもたちが1年生から6年生までいるような学校があります。そういう中で、やっぱり人間の共生とか、人間理解とか、そういうものを進めていく学校教育がどうあるべきか、この辺をきちんと討論していくことが大事かなと思いました。
 2つ目は、私がこの会に呼ばれたのは、東京都小学校の英語活動研究会の会長をしておりまして、英語活動の方向性について、全都の委員を集めていろいろな研究をしている立場からだろうと思っているのです。実は、英語活動が国際理解教育の一環として、今、全国各地で進められているところですが、英語活動についてはいまだに反対それから賛成の両論があります。例えば、先日の毎日新聞の論評でもそのことが両派に分かれて論じられていました。しかしながら一方では、英語というのは時代の流れである、そして国民的な要請がある、あるいは保護者の要望で否定できない、そういう状況にあり、そういう中で、国際理解教育の一環としての英語活動をどのように立ち上げていくかという問題があります。英語に親しむという活動だけで10年、20年と続けていくことはできないだろう、それでは、カリキュラムづくりはどうするのか、教員の指導、養成はどうするのかという問題について、やはりこれから当然課題となってくるべき、小学校における英語活動についてのあり方についての議論をしていくことが大事かなと思います。
 もう一つは、海外子女教育についてなのですが、最近、日本人学校よりも現地の学校へ行く子どもが増えているという説明がありましたが、これはそのとおりだろうと思います。一方で新宿区あたりでは帰国子女がたくさん戻ってきますが、口々に保護者の声は、やはり学力の問題を話題にしております。すなわち、日本で教育された子どもたちの学力と、海外へ3年ないし5年赴任した結果の学力の問題、そこが大変気になるわけです。これは現実の保護者の問題でありまして、だから、海外での教育における基礎学力の向上をどのように図っていくべきかという指針をこの検討会でも示していただきたい。
 概論と発表を聞いて、そんなことを今後話題にして、皆さんのいろいろなお話を聞きたいということの感想を持ちました。

【渡邉委員】
   最後になりましたけれども、渡邉です。国立教育政策研究所教育課程研究センターというところに勤めております。研究官でして、実際、研究したりしながら、あるいは各地域の現場、あるいは教育委員会の教育センターの指導、支援をしております。
 きょう、第1ラウンドですので感想と報告めいたことを述べさせていただこうと思っております。特に、千葉委員と森委員、小野委員から小学校英語の活動に関する御意見がありました。私自身も平成4年度以来13年間、小学校英語活動を支援してきており500校以上の学校を支援してきていることになると思います。具体的に指導してきたのも300校以上になっております。
 そういう中で、現場の先生というのは、実は、どういうふうに感じておられるのかということをご報告しておきたいと思います。と申しますのは、今、小野委員からもご紹介がありましたが、小学校の英語教育について某新聞の懸賞論文で、ほとんど賛成ではないようなご意見もございましたし、いろいろなマスコミの情報からしますと、英語教育の英語の技能の部分だけを突っついて、そこでもって論議をするというような報道がなされているような気がしてならないからです。
 資料3の4ページを見ていただきたいのですけれども、平成8年7月19日の中教審第1次答申を図式化してくださったものだと思っております。国際教育の一環ということで外国語活動、英語活動ということを推進してきておりますが、そのことを、先生方がどう見ているのかというと、多くは、どうも自分の育ってきた、体験してきた英語教育、特に受験というものを背後にした文法的なものも含めて、言語の能力にかかわるようなところ、しかもあまり実践的コミュニケーションに役立たない、あの嫌な英語教育だったということがどうも脳裏にあるようです。
 しかし、中学校、高等学校でも、外国語教育には3つの目的があって、1つ目は、言語や文化に対する理解を深めるということ、2つ目が積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成すること、そして最後が、あまりできないので特記されたのですが、聞くことや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を養うということです。
 したがいまして、学校の先生にも、4ページのところにあるように「共生」と「個の確立」、「コミュニケーション能力」という3つの丸を重ねるような形で説明すると理解していただけます。先生方はこの中でも、「個の確立」ということは非常に気にしておられます。「共生」というのは、地域によってなかなか実態がつかめないと実感として持てません。私が住んでおりますさいたま市の大宮地区なんかは、工場の関係で、ベトナムの方とか、それから中国、ブラジルの方がおられることもあり、共生ということをテーマに挙げてさいたま市は国際化教育を進めております。そんな中での英語活動と、ほとんどそういうことが関係ないところで従来型の英語教育で学習させているというところでは随分違うわけです。
 学校の先生方は、外国語指導助手(ALT)と英語の授業を行う中で、異質な文化の人と触れ合いつつ、実質的に音声による言語コミュニケーションを図っていくときには、自分の考えをしっかり持っていないとだめなんだということ、そういったことを、子どもを通して先生方が気づいていかれるんですね。例えば、私が指導しておりました目黒区の小学校なんかでも、2年を終えたときに学校の先生方が何とおっしゃったかといいますと、実は子どもっていうのはもっと発信したがっていて、日本語の授業でもそういうことをやらなければいけなかったんだねと。つまり、もっとしっかりと自分のものを持って、それをコミュニケーションするということが必要なんだねということを、ALTとの授業を通して知っていったということを言うわけです。
 そういうことがとても重要でして、英語というのは、表面的な技術のところだけを取っていって、英語学習するような感じのものではなく、一緒に生きていくことと個の確立の窓口としてのコミュニケーション能力なんだと。このコミュニケーションをするためには、真の自分のものを持っていないとできないんだという意味で個が確立していないといけないし、ともに思いやっていく共生の心がないといけない、という風に説明していくと、大体学校の先生はきちんと理解していきます。なぜなら、今いわれている「生きる力」の3要素、すなわち「確かな学力」と「豊かな心」と「健康と体力」、特に「豊かな心」を育てるといったところで、コミュニケーションを通して、新しい異質なものを子どもたちが受けていくということにつながっていくからなんです。
 ということを考えていきますと、最終的には、到達目標である評価基準というものをしっかりおさえながら、どこまで子どもを育んでいくか、ということがとても重要だということを学校の先生は知っていくことになります。教員は、そういう意味では教育のプロでございます。英語というものをしなければいけないと思い込んでおります。しかし、「国際化への対応」という視点を、ここのような4ページのような形で説明していきますと、大体皆さん、きちんと理解していきます。
 ということを踏まえて、じゃあここで何が言えるかといいますと、いろいろな問題で今、学校が変わらなければいけないといわれているけれども、今後は、教科型で教え込んでいくというやり方から、俯瞰的な視点で自作のカリキュラムでもって動かしていかなければいけない総合的なものが出てきて、英語活動もその一つになってきたということです。何をどこまでするのか、何をしたら子どもがどこまで進むのかというふうな、この活動は何のためにやっているのかということを考えたカリキュラム、そして評価基準をつくって、その上で教育をしていくということが求められているんだということを、先生方にお話すると、すとんと理解していきます。
 以上のようなことを踏まえて、これからの国際教育ということを、今までの教科型中心というところにきちんと取り入れてやっていくにはどうしたらいいのかということを論議していかなければいけないということを感じております。
 一応ご報告でございます。ありがとうございました。

【佐藤(郡)副座長】
   ぜひ、ここで議論をしてみたいなと思うのが、今まで、例えば海外・帰国子女、外国人の子どもの問題、国際理解教育という分野ごとに個別に議論をしてきたのだけれども、それをどういうふうにして有機的にかかわらせていくのかということだと思うんですけれども、そのときに、それぞれの固有性があるのはもう間違いない事実だと思うんです。ただ、固有性から見るのではなくて、共通性というところを押さえたときに、何が必要なのかということと、そこから何が見えてくるかという議論が多分必要だと思うんです。海外子女と外国人の子ども、さっき平野委員のほうからお話がありましたけれども、海外の子どもたちも国際結婚によって、日本人というカテゴリーが非常に拡大してきているんです。じゃあ、そうしたときに、一体、この子どもをどう育てていくのかとか、そうしたことを考える際にいろいろな共通性が出てくるのだろうと思います。
 ただ、その議論をしていくときに、私たち、ぜひこれは考えていかなければいけないことは、きちんとした事実を踏まえて、実態を踏まえた議論が必要なのではないかと思います。と申しますのは、これは機会があればお話をしたいと思いますけれども、海外の日本人学校の学力調査を国立教育政策研究所が小学校5年生から中学3年生を対象にやりましたところ、国内よりもはるかに優秀だという結果が出ました。つまり、日本人学校の子どものほうが学力が高いんです。
 あるいは、先ほど、吉谷委員のほうからも出ましたけれども、例えば、日本語の指導が必要な外国人の子どもの数というのも、だれが指導が必要だと決めるのかというと、要するに学習言語の問題です。そういうこともどうしても必要になってまいりますし、それから、人材活用といったときに、例えば、海外の日本人学校で派遣された先生方が、じゃあ、具体的にどういう力量を形成してきたんだろうか。それをどう生かせるのかという議論がどうしても必要になってくると思うんです。つまり、共通性としてくくったときに、やはりそれぞれのかかわりを持っていったときに、私たちが自らの経験に基づいて議論してきたのですけれども、そうではなくて、実態を踏まえた議論をこれからしていく必要があるし、その実態を少しいろいろな形で事務当局なり私たちのほうからも出していって、その上で実りある議論をぜひしていきたいと思っているところでございます。

【池上座長】
   それでは、私も一言、一委員として話をさせていただきたいと思うんですけれども、2つの点を思っております。
 1つの点は、多分、今後のディスカッションではかなり具体的なところを今回は突っ込んで話すということから、あまり場がないのかもしれませんが、先ほど、船橋さんがおっしゃられた点の延長上なのですが、実は、私どももこういうグローバル化した時代で国際教育は何なのかということです。その先にある日本人像、もしくは教育を受けた後の生徒像、それから大学生、社会人となっていったときの、国際的な能力というものは何なのかということにつきまして、先ほどちょっとお話しいたしましたけれども、2000年3月に経団連の教育問題委員会での議論をベースにして経団連全体の提言ということで、「グローバル時代の人材育成について」という提言を出したんです。それから、その後も、教育基本法が初めて変えられるという際の検討の段階でも、今、これだけグローバルな時代というときに、グローバルというものに対して、どういうふうな国民にしていくんだというような、ある程度のビジョンというものがあってしかるべきではないかということを相当強く出したんですけれども、今の全体の流れとしては、そういうものはどこかに消えていって、教育の崩壊の問題とか、国際教育をどうやっていくかというレベルに納まってしまった。何もここで話すのは一定の帰国子女だけの問題ではなく、国際教育、国際理解というものを全体像として話すことをしたい。それから、国際人をどういうふうに育成していくのかという国全体の問題については、確かに教育の問題、崩壊の問題、いろいろなところの前では小さな問題だったかもしれないけれども、やっぱり1回は、「あるべき国際人とは」という問題にじっくりと取り組んで、そういう国際化した日本人を、企業ではグローバル化の中の世界的な分業体制下の生産体制とか、そういう観点から言っているんだけれども、そうではなく、やはりどういう教育をたどりながら育成していくのかという点からもう1回見るべきじゃないのかなと。大学評価・学位授与機構が昨年度実施した大学評価に関して、たまたま私も評価委員をやったのですが、昨年度のテーマは国際交流で、各大学がどこまで取り組んでやっているのかというようなことを評価したのですけれども、やはりかなり具体論、抽象的なところだけで、しっかりした理念から取り組んでいるところが少なかったなという印象を持っていますので、何人かの方からもご指摘がありましたその問題を一度はやるべきだろうと思います。
 2つ目の問題としては、こうやって話をしていって、文科省を中心に総括的な議論は出るのですけれども、教育の現場までは直接届けられない。文部科学省から都道府県の教育委員会に伝わり、都道府県教育委員会から市町村教育委員会に、そして実際のやり方とか実施は、全部学校に任されているというような形になっていて、最終的には学校レベルでの温度差が非常に大きい。
 例えば、海外に派遣された先生がたまたま校長をやっている学校は、非常に国際感覚が優れていて、積極的に取り組んでいるけれども、そういう経験がないところは、もう国際教育といっても、自分たちはあまりいい経験もないから、できるだけそっとしておこうということで、かなり温度差がある。こういう現実に対して、行政としてどこまで踏み込んで指導力を発揮していくのか。これは当然のことながら、文科省は考えておられると思うのだけれども、やはり我々としては、横から見ていて、文科省にはここまでやってほしいというようなもの、ここから後はそれぞれ各学校で自主独立の精神でやるべきだ、この辺のところは1回は触れてみたいと私としては感じておりますので、ちょっと耳ざわりかもしれませんけれども、いつかその問題をさせていただきたいと思います。これは一個人としての私の意見でございます。

(9) 今後の日程について
   事務局より、年内の今後の日程について説明した。

(10) 閉会
  (了)


(初等中等教育局国際教育課)

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