日常生活で発生する子どもたちどうしの対立の解決方法を、ワークシートを活用して子どもたちに考えさせる授業について、その指導案づくり等の研修を行う。体験参加型の研修として、教育センターや校内で小グループを活用することが効果的である。
小学校教員
活動 | 留意点 |
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(1)絵を見て、どんな状況なのかを話し合う |
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(2)ふきだしに、せりふを書く |
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(3)書いたふきだしを発表する |
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(4)対立を解決する方法を話し合う |
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日常の学級経営の中で児童生徒間の豊かな人間関係づくりを促進するため、様々な資料(絵カード、ワークシート)を活用した取組を行う指導方法等について、研修を行う。
体験参加型の研修として、教育センターや校内で小グループを活用して行うことが効果的である。
小・中学校教員
絵カード | ふきだしのワークシート | サイコロトークの絵 |
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活動 | 留意点 |
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(1)絵カードを見て、気持ちと場面について話し合う |
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(2)絵カードの気持ちを考え、ワークシートに書く |
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(3)気持ちの伝え方を考える |
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(4)考えた方法で気持ちを伝える | |
(5)気づいたこと、感じたことについて話し合う |
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(6)いろいろな場面での気持ちの伝え方を考える |
人権尊重の理念を学校教育の中で実現するための基礎・基本として、児童生徒理解や集団づくりに関する事項については、教員研修においても繰り返し確認を行い、確実にこれを身に付けることが必要である。
以下に示すのは、児童生徒理解・集団づくりに関し、研修を実施する際の研修テーマの例である。
1.子どもとつながる
2.子どもがつながる
3.集団づくりのために
1.心をはぐくむあたたかな学級づくり
2.子どもや保護者との信頼関係づくり
人権教育においては、その教育内容や方法の在り方とともに、教育・学習の場そのものの在り方がきわめて大きな意味をもつこととなる。
教員は、日々の授業や学習活動、学級経営の中で、児童生徒に対する適切な配慮を行い、一人一人が大切にされる学習環境づくりに努めなければならない。
これらを踏まえ、以下のような視点から、日々の授業等の在り方を繰り返し検証し、学習環境の改善に努めていく必要がある。
場面 | 内容 | 留意点 |
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児童生徒の呼名 | 子どもによって異なる呼び方が不公平感等を与えていないか (「○(まる)さん」、「○(まる)ちゃん」、「○○(まるまる)!」等) |
子ども一人一人に対するイメージやとらえ方が、呼称の違いに表れることがある。 一人一人に不公平感等を感じさせない配慮が必要である。 |
座席替えやグループ決め | くじびき、名簿順等で決めたり、児童生徒同士で決めさせたりしていないか | 座席やグループを決める際には、児童生徒の個々の事情(視力・聴力等の身体的な事情、心理面の状況を反映する友人関係等)に十分に配慮する必要がある。変更等を行う場合にもその判断を行うのは教員である。 |
教室での指名 | 日付順、席順、名簿順、物理的条件等によって指名していないか | 常に児童生徒の応答を予想し指名を行う。求める内容に応じて、教師が指名の方法を選択し、意図的・計画的に発言を求めていく。 |
机間(個別)指導 | 机間指導の仕方に偏りがないか | 児童生徒の求めに応じて机間指導を行うと指導の在り方に不均衡が生じてくる場合がある。個別指導の記録をとり、意図的・計画的な机間指導が行えるようにする。 |
児童生徒の言動等に対する改善点の指摘 | 特定の児童生徒への改善点の指摘を、他の児童生徒に求めていないか (「(今の発言が)聞こえましたか?」等) |
児童生徒の言動等への否定的な評価に基づく改善点の指摘をクラス内の他の児童生徒に求めていると、当該児童生徒に対する負の評価観を、クラス内で固定化してしまうことにもつながっていく。このような評価・指摘は、原則として教師自身が、自らの責任で行う。 |
時間配分・進行管理等の判断 | 教員自らの判断を曖昧にしていないか (「時間が来たので終わりにしましょう」、「時間が来たら知らせてください」 等) |
学習活動に関する時間の配分や活動の開始・終了の周知は、教員が自らの判断で行う。 個人面談等、一定の時間配分でものごとを進める場合においても、その進行については、他者に委ねるのではなく、教員自身で管理を行う。 |
学校における人権教育の推進を図るためには、教員が様々な研修の機会を通じ、人権教育に主体的にかかわろうとする意欲や態度を高めていけるようにすることが大切である。特に人権侵害が厳然として存在する状況等を踏まえ、個別の人権課題等に関する正しい理解を深めるような教員研修の機会を提供することにより、人権教育に携わる上で必要とされる主体的な取組姿勢を喚起する。
※ 各学校の人権教育担当者を対象とする研修会の内容として位置付け、年間を通して計画的に取り組む。研修を主催する教育委員会の指導主事等が、人権に関わる関係機関との連絡調整を行い、これら機関の協力を得ながら、幅広い人権課題についての研修を行えるようにする。
学期 | 回 | 研修等の進め方 | 留意点 |
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一学期 | 第1回 |
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第2・3回 |
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夏季休業期間/二学期 | 第4・5回 |
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三学期 | 第6・7回 |
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第8回 |
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校内研修等において、アクティビティを取り入れた参加体験型のグループ研修を実施し、教職員の人権感覚を培う。また、これらのアクティビティは、教育委員会が主催する人権教育の指導者養成研修等において、アクティビティの進行役となるファシリテータ(学習促進者)の役割を実際に体験させ、ファシリテーション技能の向上を図る実技研修のメニューとしても活用できる。
教育委員会は人権教育担当教員向けにファシリテーション実技研修を主催し、担当教員はその成果を持ち帰り、自らファシリテータとなってアクティビティを実施することにより、各学校に参加体験型の研修を広めていくことが望まれる。これらの教員を、PTAの研修や公民館等の講座の指導者として活用することも有効である。
全校種の教職員(ファシリティ実技研修のメニューとしては、主に人権教育担当教員対象)
参加体験型の研修において重要な役割を果たすファシリテーターの役割について、講義形式で確認する。
【ファシリテータの役割】
※ ファシリテータの役割を果たす上では、自らもその場から学ぼうとする態度が特に重要となる。
研修の実施に当たり、まず、初めて会う参加者同士が、お互いの緊張した心を解き放ち、これから行う研修への意欲を高めるための活動を行う。その後の研修の中で、率直に自分を表現できるようにするトレーニングとしての意味合いも持つ(心の中の「氷」を割っていくことから「アイスブレーキング」と呼ばれる。)。
【アイスブレーキングの方法例】
1.誕生日チェーン
2.あいさつと自己紹介
3.自己紹介
人権教育担当教員等が、ファシリティ実技研修などの機会を通じて様々なアクティビティの実施方法等を修得した後、自らファシリテータとなって、広く校内の教職員の参加の下に、これを実践する。
1.コミュニケーションスキル -聴いてもらうと気持ちいい-
2.自尊感情を高める -あなたの、よいところさがし-
3.価値観の多様性に気づく -ランキング-
4.先入観に気づく -フォトランゲージ-
個々の教員に求められる役割は、経験年数によっても変わることとなる。人権教育に関しても、個々の教員のライフステージに応じ、適切な研修機会が提供されなければならない。初任者研修、10年経験者研修等の年次研修のプログラムの中にも、人権教育に関する必要な研修内容が盛り込まれる必要がある。
教育委員会・学校においては、ライフステージを通じた総合的な研修機会の提供を行うとともに、個々の教員においても、自らのライフステージに応じ、適切な研修計画を立て、実施していくことが望まれる。
全校種の教員
※ 各ライフステージにおける教員に求められる役割と年次研修のねらい
ライフステージの早い時期には、まず、人権に関する正しい理解と認識を持つこととともに、児童生徒の実態の把握と理解、保護者への対応等、人権教育にかかわる基礎的な知識と技能を習得することが必要である。
一定の経験経た段階においては、これまでの研修や実践を基礎に、研究会等で授業公開・実践発表ができるような力を身に付けさせたい。また、自らの成果と課題を明確にすることも大切である。
経験を積むにしたがい、学年や学校全体としての取組において主導的役割を求められるようになる。また、社会の変化に伴い人権教育の内容も時代と移り変わっていくことや、児童生徒・保護者の意識が、今後ますます多様化が進んでいく等を勘案すると、経験を積むだけでは様々な変化に応じることが難しく、一定の期間を単位とした研修の機会を充実させることが望ましい。
学校教育と社会教育が連携し、総合的に人権教育を推進するために、両者の関連を意識した研修計画を立案する。学校・教育委員会における教員のライフステージに応じた研修と社会教育研修とを相互に密接に連関させ、家庭・地域の取組等とも協力して、総合的な研修機会の提供を図る。
(学校及び教育委員会における研修)
教員のライフステージに応じた研修と家庭・地域の取組等との連携(例)
<教員のライフステージに応じた研修>
長期休業期間中の教員が、教育委員会が主催する人権教育の指導者養成研修会に参加し、指導者として必要な知識や技能を身に付ける。研修を終えた教員は、PTAや地域の人権研修会の講師等となり、人権教育指導者としての更なるスキルの向上を図るとともに、保護者や地域住民等の人権意識の啓発等に資する。
全校種の教員(人権教育担当者)、保護者・地域住民等
各学校の人権教育担当教員を、地域における人権教育指導者として養成するため、参加体験型の研修方法を体験・実習させ、指導者として必要な基本的な知識と技術を身に付させる。
「教員のための人権学習ファシリテータ入門講座(10回)」
夏季休業日中前期に10回の集中講座を実施する。
【第1~7回】
出会いのための人間関係づくりのトレーニングをはじめとしたファシリテータとしての基礎的な技術を取得し、個別の人権課題について学ぶ。
【第8~10回】
受講者自らがグループでワークショップのプログラムを作成し、発表し合う。
※ 研修の工夫
指導者としての養成を受けた教員がリーダーとなり、保護者等を対象とした校内での研修会の指導に当たる。教員と保護者等が共通の体験を通して、人権教育の基本的な内容を理解し合い、学校と家庭の連携の基本的な体制を整える。
社会教育及び関係部署との連携を図り、教職員・PTAを対象とした研修と同じ内容の研修会を地域の教育関係者を対象に実施する。この研修会には、教職員・PTAの代表者の参加も求め、三者の共通理解を深めるとともに、その地域における人権教育の基本的な方向性について確認し合う。
学校・家庭・地域が連携した人権研修の取組を、人権週間の活動の中に位置付けて、様々な対象者別の研修会を企画・実施するとともに、教員、保護者、地域住民等が一堂に会する場を設定することにより、相互の理解促進と連携体制のより一層の充実を図る。
全校種の教員、保護者、地域住民等
教育委員会が指定する人権教育の研究奨励校が研究発表を行う。研究発表には、全学校の参加を求め、研究の成果については、各学校における教育活動に還元させる。
授業公開や人権意見発表会、教育講演会を実施し、お互いの人権を尊重し合うことの大切さについて参加者とともに理解を深めていく。
保護者を対象として、複数のテーマの人権教育講座を、連続して実施する。文部科学省が配付している「家庭教育手帳」等も活用し、人権教育のテーマと子育てとの関連性を持たせるよう、研修内容の調整を行う。PTA組織に働きかけ、全ての学校の保護者が何らかの形で参加するよう協力を求める。
学校を開放し、保護者や地域住民等が自由に参加できる学習会等を開催する。
教育委員会等と関係各部局・機関が連携して、教員、保護者、地域住民が一同に会した研修会(「人権フォーラム」)を開催する。
研究奨励校の発表、各学校における実践の紹介など、学校による積極的な参画も求めるとともに、保護者・地域住民等を対象とする課題別研修や、講演会、体験型の研修の機会も設定し、様々な観点から、人権意識の啓発と高揚を図る。
市教育委員会と市長部局担当課等のコーディネートにより、人権週間を、人権教育・啓発の1年間の取組を総括する期間として設定し、学校、地域等において様々な成果発表の機会を設けるとともに、課題の検証を行い、次年度へとつなげる。
さらに、人権週間中の日曜日には、学校・家庭・地域の関係者が一堂に会す場(「市民のつどい」)を設け、相互の交流を図る
人権週間における成果発表、課題検証等の取組
初等中等教育局児童生徒課