各学校においては、校長のリーダーシップの下、教職員が一体となって人権教育に取り組む体制を整え、人権教育の目標設定、指導計画の作成や教材の選定・開発などの取組を組織的・継続的に行うことが肝要である。また、こうした人権教育の取組については、学校教育活動全体の評価の中で自ら点検・評価を行い、その結果を基に学校が主体的にその取組の不断の見直しを行うと共に、保護者や地域の人々に積極的に情報を提供するよう努めることが求められる。
その際、学校評議員制度を活用する、保護者等の意見を聞く機会を設けるなどの工夫も考えられる。
学校として人権教育の目標を設定するに当たっては、様々な人権問題の解決に資する教育の大切さと共に、「人権が尊重される社会の実現」という未来志向的、建設的な学習目標の設定に留意することが重要である。
また、「自分の大切さと共に他の人の大切さを認める」ことを意味する「人権感覚」の育成が、現在の人権教育の基本的な目標であることと合わせて共通理解を図ることが必要である。
さらに、人権感覚を育成するに当たっては、自尊感情を培うことはもとより、共感能力や想像力、人間関係調整力を育むことが求められており、それらを踏まえると共に、これまで学校の中で取り組んできたことや児童生徒及び地域の実情等も踏まえ、自校の具体的目標を設定することが大切である。
組織的な取組を推進するに当たっては、校内推進体制の確立と共に、その効果的・効率的な役割の充実を図ることが求められる。
児童生徒の意識・意欲・態度・表現力等を培い、人権感覚の育成という学習目標の具体化を一層図る観点からも、教職員の人権問題及び人権教育に関する研修に関する企画立案、人権教育の年間指導計画の策定や毎年の実践の点検・評価のとりまとめ等の役割を果たす体制の確立は、人権教育の推進にとってきわめて重要である。したがって、校長のリーダーシップのもと、人権教育担当者、学年主任をはじめ、進路指導部、生徒指導部、総合学習研究部等、関連研究部担当者が必要に応じて随時参加する機能的な構成が求められる。
人権教育に関する企画立案、人権教育に関する研究部の統括及び学校運営全体との調整又は人権教育の推進に関するコーディネート等、学校全体の指導的役割を果たす人権教育担当者は、校内推進体制の要として重要である。また、人権侵害が生じた場合の迅速な対応や相談活動を行うことも大切である。
人権教育の組織的な取組に当たっては、校内推進組織の確立と共に人権教育の全体計画及び各学年指導計画の策定が必要であり、計画策定に当たっては、指導計画の観点を明確にすることが重要である。
人権教育の全体計画・年間指導計画の策定に当たっては、管理職及び人権教育担当者による全体計画案の作成と運営委員会への提示を出発に、人権教育に関する研究部による具体的な実践的課題の設定、各学年による年間指導計画の作成と研究部によるとりまとめ、職員会議への提示による全教職員の共通理解等、組織的かつ機能的な学校としての対応が求められる。また、このような対応を通して、全教職員の人権教育の推進に対する参画意識を培うことが望ましい。
学校や地域の特色を生かした取組、ボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動の充実や様々な人との交流活動の在り方を示したり、校種、学校や地域の実態等を踏まえた指導目標との関係を明確にしたりする。
その際、小学校の重点として、体験・交流活動を通して、児童が自分で「ふれる」「気付く」こと、中学校では、他者に「気付く」ことを確かな認識に「深める」こと、高等学校では、自分自身の生き方と関連させ、解決に向け地域社会に「発信する」「行動する」ことを重点にした目標が望ましい。
※ 次の項目について、自校の全体計画を見直してみましょう!
身近な人権問題を扱ったり、ボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験活動、様々な人達との交流活動を積極的に取り入れたりする。そのことで、児童生徒が自ら課題に気付き、人権問題に直面した時に「おかしい」と直感したり、相手の心の痛みを自分の痛みとして感じたりすることができるように、人権教育の視点から教育活動を工夫する。
※ 次の8項目を踏まえ、自校の年間指導計画の充実に努めましょう!
取組の点検・評価については、学校として組織的に学期や年度ごとに行うことが求められる。また、年間指導計画に沿って、点検を行い、次年度の学習指導や年間指導計画の改善を図ることが必要である。
また、授業評価も教員相互で積極的に行うと共に、授業参観時での保護者にアンケートを求めることも説明責任という観点から大切である。さらに、一年間の取組後、教職員のアンケートを行うことも考えられる。
児童生徒が自らの学習について評価することは、人権教育に対する意欲・関心、達成感の状況を把握する上にとっても、また、学習の在り方を検証し、今後の指導方法等の工夫改善に生かすことにも不可欠の取組である。また、学習の状況、取組の節目ごとに児童生徒の評価活動を行うと共に、その評価を学級で共有することにより、児童生徒間相互の共通認識を図ることも必要である。さらに、一年間の取組後、児童生徒のアンケートを行うことも考えられる。
保護者等による評価を行うに当たっては、アンケート調査を実施し、その結果を保護者等に公表すると共に、学校運営協議会や学校評議員制度を活用し、保護者等の評価を基に意見交換や提言等を得ることも考えられる。また、積極的に授業参観等を行い、授業後に懇談会を開く中で学校・学年・学級の取組の報告や保護者からの感想や意見を求めることも大切である。さらに、一年間の取組後、保護者アンケートを行うことも考えられる。
初等中等教育局児童生徒課