人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(第28回) 議事録

1.日時

平成19年2月19日(月曜日) 13時~16時

2.場所

虎ノ門パストラル 5階 「マグノリア」

3.議題

  1. 「第3次とりまとめ」について
  2. その他

4.出席者

委員

 福田委員、伊藤委員、梅野委員、神野委員、神山委員、小島委員、菅原委員、谷口委員、林委員

文部科学省

 木岡児童生徒課長、塩原児童生徒課課長補佐、他

5.議事録

(1)指導等の在り方編について

※ 資料2、3に基づき「実践編(資料編)」の原案について、事務局より説明が、各WGリーダーより補足説明があった後、意見交換がなされた。

実践編:全体について

 文言で「偏見や差別意識」という言い方をしているところがある。差別には「差別意識」と「差別行為」があるが、「偏見」も「意識」にかかわるものであり、「偏見や差別意識」という言い方では、「行為」面が抜け落ちてしまうので、例えば、これを「偏見や差別行為」に置き換えるといったように、文言の整理が必要ではないか。

 第2次とりまとめのときに、意識面も行為面もまとめて、基本的に、「人権侵害」という言葉で統一することで整理している。その上で、「人権侵害」という言葉が、どうしてもその文面の中になじまないということがあれば、その場面で調整することになっていた。

 「実践編」では、指導内容・指導方法等の事例と、研修の事例とがそれぞれ取り上げられているが、指導内容・方法等の事例を見て、実際に授業を行おうとする教員が、当該授業の準備のために行う研修等のモデルをタイアップして載せていくべきではないか。指導内容・方法としてこれをしろと言った場合、それをするときに教員がトレーニングをする部分をフォローするような関連づけのあるものを、何か書く必要はないのか。

 今回載せた指導事例の資料を使いこなすためにさらに研修が必要かということで考えると、そこまでやらなくても大丈夫だと思う。

 実践編の最初に載せる資料が、学習指導要領の抜粋では、ぱっと見て、印象を与えない。最初に実践事例があって、客観資料的なものは、最後にあった方がよいのではないか。

 実践編の事例資料等は、文字ばかりでなく、ワークシートで挿絵的なものがあると、ほっとするというか、非常に落ち着くような気がする。著作権の問題もあるが、こういう挿絵的なものできる限りを入れられればよいと思う。

 実践編原案の84頁の「もめごとの場面」の絵については、チェーンを引っ張っているのは非常に不自然で、普通はいすの部分に誰かが座っていて、他の誰かがかわってほしいと言っている図柄の方が、仕事上、子ども観察をしている観察からすれば、より自然な感じがする。

 事例として示す場合、特定の地域性の出るようなものをどう取り扱うかという点は、統一して考えていったほうがよい。

 指導の在り方編との関連を示すインデックスについては、例えば、第3ワーキングでは、「在り方編」の項目後ろに、実践編中の関連部分を小文字で入れるやり方をしているが、別の方法として、実践編のそれぞれの事例のページに、「1 テーマ」、「2 目的と概要」等と続く項目の最後として、統一的に、「 指導等の在り方編との関連」の項目を入れるという方法もあるのではないか。

 実践編にも、冒頭「はじめに」として、実践例の趣旨などを書いた方がよいのではないか。

 実践編の構成は、指導の在り方編の構成とパラレルになっているということであると、実践編にも、在り方編の節レベルの区切りに準じて、それぞれの項目ごとの前文が要るのではないか。

 「児童生徒の発達段階等を踏まえた指導方法の工夫」のところで、情報モラルについてまとめて取り上げている一方、研修関係では、情報関係について全く触れられていないが、これでよいか。

 実践編の構成を、在り方編とパラレルにして、それぞれの資料に見出しや番号を付けたり、その事例のねらい・目的を書いていった場合、その資料が、その目的でしか使えないもののように見えてしまうことになる。実際には、指導の在り方編の他の部分にも関連しており、違うところでそれを利用しても、効果が得られることはあるのではないか。実践編である以上、「使ってもらって何ぼ」のものだと思うので、使ってもらうためにはどのような符号のつけ方が一番いいのかというところも、検討して欲しい。

 実践編に掲載したアクティビティーの一つ一つは、とっつきやすいのでよく使われるが、そのうち飽きてくるというようなことがある。これらはあくまで一品料理であり、これを献立にするとか年間の食生活にするには、年間計画にきちっと位置づけて、しっかりした単元プランのもとで活用する必要があるということを、「はじめに」の中で言っておく必要があるだろう。

 実践編の「はじめに」に盛り込むべき事項としては、1つは、指導の在り方編に沿った実践編であるということ。2点目は、第1~第3のそれぞれのワーキングごとの総論とは別に、なぜこのような実践例を載せたのか、どう活用して欲しいのかという実践編全体の総論。大きな3点目にいわゆる留意点ということで、指導の在り方編に沿ったものではあるが、同時に、多様な活用方法があるということと、また、全体の教育課程、年間指導計画とか年間のプログラムの中で趣旨を明確にさせて、それぞれの学習目的と十分関連させながらやらなければいけないということ。4点目として、例えば、事例として、たまたま障害者や高齢者福祉等に関するものを挙げているが、それらの事例は、他の個別人権課題とも十分関連している、他の課題の学習にも、そのノウハウは十分使えるのだということがあるだろう。

 実践編の全体を通してみると、個別課題のうちでも高齢者の事例が特に多く、その点が目立つ感じになっている。

 全体のバランスについては、最終的に事務局で調整してもらいたい。

実践編:学校としての組織的な取組と関係機関等との連携等関係

 実践編15ページの「学校の指導体制」のチェックリストと、16頁の教師用チェックリストとの間で、項目の整理が必要と思う。
 18ページの保護者のチェックリストについては、学校における人権教育の取組に対する保護者の評価という観点だけでなく、むしろ、例えば、家庭の中であいさつをきちんとしていますかとか、家族で週に1回は食事をしていますかとか、家族同士で話す機会はありますかというような、保護者としてどうあるべきかというところをもっと求めるような、家庭生活自身を見直すようなチェック項目を入れた方がよいのではないか。

 児童生徒用にチェックリストに関し、「地域の社会で、困っている人がいたら助ける」、という項目に加え、もう一つ、自分が困っているときは周りの人の支援を求めるという視点が非常に重要じゃないかなと思います。

 第1ワーキンググループの検討では、チェックリストの項目数についてはもっと減らした方がいいんじゃないかという意見もあった。こういうものは、詳しく突っ込むような感じでリストを提示したのがいいのか、あまりきつくすると反発も多いんじゃないかという話もありまして、このあたりいかがなものかでしょうか。

 多過ぎて反発ということはないと思うんですけれども、あまり多過ぎると、こんなにやらなきゃいけないんだなということで、やる前にくじけてしまいそうなので、ある程度精選は必要だと思います。

 精選の際に、この指導の在り方編の項目の見出しにちょうど沿うような形ですると、整合するかと思う。

 指導の在り方編・第2章の原案については、第1節のところは、「【参考例】」を実践編に移すなどして、本文編が変えることにしているが、第2、第3節はあまりそういうことをされていない。このあたりのバランスはどう考えるのか。第1節も、第2、3節に合わせて、もう一度在り方編に戻す必要はないか。

 実践事例の一部に授業時間数を明記しているものもある(12ページ、71、72ページ)が、このような時間数を入れるか入れないかも統一しておいたほうがよいのではないか。

 時間数を書いて、一人歩きしてもよくないので、外した方がよいだろう。

 14ページの年間指導計画表の例をつくるときに、学習指導要領の内容との整合性があれば、説得力があるのではないかと思う。

実践編:人権教育の指導方法と指導内容関係

 「指導方法の基本原理」の部分は非常にわかりやすく、また、注目度が高いのではないかと思うが、事例と基本原理の関係として、指導方法のどれが、どの事例でどのように生かせるかとか、そういった部分までの対応がとれた方がよいかと思う。
 具体的に言えば、例えばブレーンストーミングという方法とウォール・ライティングという方法を組み合わせて、この事例をさらに充実できますよというような感じで書ければと思う。

 全体を見て、文科省の調査研究会議で出すにしては、丁寧過ぎるというか、情報が多過ぎるような気がしているところですので、そこまでの配慮はする必要はないのではないか。

 例えば38ページの「人権概念を明確にする」の前文で、「いわば頭と心、手を使って学習し、納得できる指導をする試みの例」であると述べているが、これの関連として、指導の在り方編(25ページにも)にも、「これまでは、社会科を中心に扱われる場面が多かった」が、これからは、単なる知的伝達に止まらずに、その知識内容を自らのものとして肯定的に受け止め、情緒的にもそれに共感するようになれる主体的な学習を可能にする教授法を活用する努力が求められる等の記述があるので、こうしたところからも引用して少し書けば、何のためにこの「指導事例-1」があるかというのがわかるようになる。
 どういう指導方法の改善なのかという知識をお教えする形ではなくて、ゲーム的なもので、人権ってこういうものなんだなということを知るための事例ですということを、指導方法の視点として、一文か二文、入れていくとよいと思う。

 53ページの基本原理の下のところに、なぜ基本原理を提供するのかというコメントが少し入っていればよいかと思う。

 一つ一つの事例と、在り方編の文章の一つ一つを対応させてしまうと、かなり固定化されて見られるおそれがあるのではないか。
 節ごとなり、節の中の項目ごとぐらいのくくりで、大まかに対応していますという形の前文があって、そして事例のほうは、様式を整えながら、ほぼ同じ様式で羅列していく形のほうがよいのか、そのあたりについて少し検討いただければと思う。

実践編(資料編):個別的な人権課題に対する取組関係

 「障害者」の関係では、国連で障害者権利条約ができたので、我が国の批准が間に合えば、これも入れた方がよい。

指導の在り方編関係

 国連の「人権教育のための世界計画」の行動計画等については、資料に入れられるのか。

 第2次とりまとめについても、現場に配る冊子には、後ろに、「資料」と「参考資料」を付けており、「資料」の中に、国際的な潮流についての基本資料を掲載しているので、ここに追加していきたい。

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初等中等教育局児童生徒課