人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(第8回) 議事要旨

1.日時

平成16年1月22日(木曜日) 10時~12時

2.場所

虎ノ門パストラル 本館6階 「雅」

3.議題

  1. 論点整理について
  2. その他

4.出席者

委員

 福田座長、押谷座長代理、有村委員、伊藤委員、梅野委員、岡田委員、神山委員、志水委員、菅原委員、高橋委員、仁科委員、森委員、山田委員、若井委員

文部科学省

 金森審議官、関児童生徒課長、亀田児童生徒課課長補佐、宮川保之視学官、高田人権擁護調査官補佐(法務省) 他

5.議事要旨

(1)論点整理について

 事務局から説明の後、自由討議を行った。主な内容は以下の通り。
 (○:委員、△:事務局)

○ 人間をどう捉えるかという人間観や、他人との関係性などについて、言及する必要があるのではないか。

△ 人権教育の指導方法に関する検討の中で、人間の捉え方や人間観というものを、具体的にはどのような観点、内容で盛り込むことが必要であると考えるか。

○ 人間は尊重されなければいけない、ということが基本であるが、教育の観点からは、子どもを受け入れることが特に大切であり、そのことが人間を尊重することの前提となると考える。関係性については、個人と集団、教師と子どもの関係など、人権教育を考える上での関係性の捉え方について、どこかで触れることができればよいのではないかと思う。

○ 人権、人権教育というものについて、関係者がその意味を理解していることを前提にすることは問題であると考える。教育の現場では、人権とは何か、人権教育とはどうすればよいか、ということについて明確な定義がなされないままに、人権教育の取組がなされているのではないかと感じる。自分の大切さというとき、なぜ大切なのか、どうすれば大切にできるのか、ということにも絡んでくるため、注釈を付すなど何らかの形で触れることができるのではないか。

○ 教員に対して人権教育の指導方法・内容について指導助言を行う立場にあるが、教員に始めに話すことは、人権、人権教育とは何かについて、子どもや保護者が理解できるように、自分の言葉で定義できるようにしてください、ということである。また、学校では、必要感がなければ取組が進まないので、人権教育の必要性についても言及する必要があるのではないかと考える。

○ 人権教育の定義をした場合、教員の立場からは、それでは人権尊重の精神とは何か、という解釈を続けて行う必要がある。学校教育現場の立場からは、分かりやすい言葉で定義できればよいのではないかと思う。また、人権教育の取組の成果を示す、具体的な実践例を盛り込むことができればよいのではないかと思う。

○ 人間観については、「学校教育における人権教育の改善に向けた教育活動」の部分で言及してはどうか。

○ 人の命が有限であることから、人権が生まれると考える。命の大切さについて、どこかで触れる必要があるのではないか。また、市民権思想の基本的な考え方についても、何らかの形で言及してもよいのではないか。

○ 大学生を見ていると、色々なことを知っているが感覚の面が不十分である、と感じることが多く、感覚を育成する教育をどう充実させていくのかが課題であると考える。感覚の育成を基盤として、知識理解を広げていくというアプローチが重要ではないか。その観点から、自分と他人の大切さが認められるような学級をどう作るのか、という視点が大事であると考える。

○ 人権というと抽象的になりがちであるため、具体的な人権課題についても言及する必要があるのではないか。また、人権教育の内容は、知的理解とともに、人権の価値や意義、それを尊重する態度や技能が一体となって、人権感覚につながるものであり、これからの人権教育の在り方として必要であると考える。権利と義務、責任の関係についても触れておいた方がよいのではないか。

○ 人権とは完成されたもので変えようがないものである、という考え方から、人権がなじみにくいものになっていると感じるが、人権そのもののイメージを、変化、発展しつつあるものとして捉えれば、人権を自分に結び付けて捉えやすくなり、感覚や行動力につながるのではないか。

○ 現在、学校では、保護者からの意見を踏まえて学校評価を進めているところであるが、保護者からは、学力の向上だけでなく、学校生活の中で、子ども達に生きていて良かったと思える体験をさせてほしい、という意見が多数ある。教員は人権教育の大切さをある程度は分かっていても、本当の意味で分かっていないということも多いため、しっかり定義することが必要ではないか。
 また、学校教育現場の取組を支え、より良い実践を促すためには、より具体的な内容を提示していくことが必要ではないかと考える。必要性を分かっていても、なかなか十分にできない教員がいるため、そこを指導していくための方法論が必要である。

○ 具体的な指導の在り方については、来年度以降、引き続き検討していく必要がある。人権教育の捉え方としては、確かに知的理解と人権感覚は重要であるが、感覚から知識へ直接に結び付くというよりも、感覚レベルのものが意識まで高まり、それが意欲、態度につながるという流れで考えることもできるのではないか。

○ 人権とは、人の命を奪わないということが基本であると考える。教員は、意識の上では人権教育の大切さは分かっていても十分な取組ができていない、という状況であり、現場の教員が自分の取組を検証でき、教員に具体的な示唆を与えるような内容にする必要があると考える。なお、地域社会との連携については難しさもあるため、具体的な留意点などを盛り込んであると教育現場としてはありがたい。

○ 人権教育を進めるに当たって、中立性の確保ということについて、政治活動と区別した上で外部の団体と連携することは問題ないのか、何をすることが中立性を侵すことになるのか、といった判断が難しく、教員は迷うことが多いのではないかと思う。中立性の確保という考え方が、全ての市民団体との連携を絶つ方向で捉えられると、問題であると考える。

○ 本校においても、NPOと連携した指導について、保護者からの反発を受けたこともあり、連携についてはそのような難しさはある。

○ 中立性の確保の考え方は、時代の変遷等の中で変化することもあるが、地域社会などの外部人材を、人権教育の目的に沿ったかたちで活用することは必要である、ということを併せて強調することが大事であると考える。また、これからの人権教育の在り方としては、保護者、市民への啓発や合意形成を図っていく中で取組を進めていくという視点も必要ではないか。

○ 人権教育の必要性は基本計画でも言及されているが、現場の教員が身近なところで人権教育を行うことが必要であることを捉えられるような提示の仕方が必要ではないか。

○ 教育次第で人は大きく変わる、という人権と教育の関わりを強調する必要があると考える。また、命が有限であるという事実から、人権がことさらの大きな意味合いを持つのであり、命の大切さを特に強調してもよいのではないかと考える。
 それから、人権の大切さを全く理解していないなど、国民の間にも、人権の大切さの理解には、大きな隔たりがあるという現実についても指摘する必要がある。
 人権教育と啓発の相互の関連についても意識して進めることが必要であり、啓発について、教育との関わりの中で何らかの言及をすることが必要であると考える。
 現代社会を利害関係が複雑化した社会と捉えるならば、十分に相手のことを考えながら、自らの言動を律することができる人間を育成するため、自ら考える力を育てていくことが必要であり、基本的な考え方として盛り込んではどうか。
 また、どのように、児童生徒の人権についての認識の広がりを十分に図っていくのか、ということが大きな課題である。

○ 人権審答申に使われている「人間の尊厳」という表現を入れてはどうか。また、「自分の大切さとともに周りの人の大切さを認めることができる」ということは、何を目指すのかをイメージできるように、共により良く生きる児童生徒の育成、といった表現を入れてはどうか。共存し、幸福を追求する、ということを学校教育の基礎として訴えることにより、学校づくり、社会づくりというところにも広がりが出ることになり、より積極的な人権教育のイメージを打ち出していけるのではないか。

○ 人間は固有の尊厳を有する、ということが基本である。また、大切さとはどういう意味なのか、ということについても触れることが必要ではないか。

○ 人間とは何か、ということをあらゆる場面で自分に問いかけることが必要であり、問いかける必要性に触れてはどうか。また、知的理解と人権感覚については、感覚が知識に先立つのではないか。

○ 知的理解を理性的認識、感覚は感性的認識と捉えるなど、認識として細分化するという整理の方法もある。同じレベルで並列することがよいのかどうかは、検討が必要である。また、知識があっても感覚が不十分ということはあるが、一方で、知的認識があってはじめて感覚の面が目覚めてくるという面もあると思う。

○ 現場の教員に、人権とは日常生活の中で密接に関わっているものである、ということを分かってもらうことが必要である。また、人権はリスクマネージメント的な捉え方をされることが多いが、人権教育は人間性を豊かにする、といようなプラス面を前面に出すことが必要なのではないか。

○ 人権教育を前向きに捉えるとすると、自分と他人が衝突したとき、というよりも、他人と関わる際に必要とされる人間関係を調整する能力、といった形にしてもよいのではないか。明るく前向きに生きていこうという意欲、態度を育てていく、という方向でまとめれば、学校にとっては受け入れやすいのではないかと思う。

○ 趣旨は分かるが、必要感につながらない可能性もある。

○ 教員同士がよく話し合い、共通理解をもって子どもに接するなど、教職員間の関係を人権尊重の理念に基づいたものにすることが出発点である。教員集団の在り方や教員研修を、人権教育の観点からどのように改善していくか、という視点を入れてはどうか。

○ 人権を尊重する学級、学校ということは国際的にも重視されているポイントであり、研修や学校運営の問題にもつながってくる。

○ 自分の気持ちや経験だけで考えるのではなく、他人の気持ちを思いやることにつながる想像力をどう養うかは1つの課題である。人権感覚の基盤になる意識化、体験を経験まで深め、それを表現する能力を身に付けることがないと、人権教育の成果が出てきにくいのではないか。

○ 情操面やコミュニケーション能力などについては、具体的な指導方法や教材等の検討の中でカバーできるのではないか。

○ 表現力や行動力が十分に身に付いていない場合が多いと感じるが、知的理解と人権感覚に加えて、行動力や表現力が併せて入っているとバランスがよくなるのではないか。

○ 人権教育に関する国際的な文書などのこれまでの蓄積に謙虚に学びながら、より明確な人権教育の中身を提示する必要があるのではないか。人権教育についての原則を整理するのであれば、各発達段階に共通した普遍的なものとして伝えることも可能であり、具体的にどのような内容を提示していくかは、アウトプットのまとめ方によって変わってくる。

○ 大切さが十分に認められていない、とは何を意味するかについての共通理解を得るための説明を記述できればよいのではないか。また、知識理解と感覚について、確かに知的理解にとどまってはいけないが、これからは感覚育成の部分だけをやればよいということではないため、知的理解と感覚育成の相互の重要性、関係を理解できるように説明を工夫する必要があるのではないか。

○ 人権教育には様々な側面があるということが分かるように、注釈や資料等、何らかの形で提示することが必要であると考える。また、人権教育について、現在、何が問題となっていて教員は何をやるべきなのか、ということ分かり、具体的な教育活動に活かせるものとして、教育現場を支援できればよいと考える。

○ 現実には、社会では様々な人権侵害事件が非常に多く発生しており、学校教育における人権教育を考える際には、リスク管理の考え方についても、前面に出す必要はないにしても、視野に入れておく必要があると考える。

  事務局より次回日程について説明の後、閉会。

以上

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初等中等教育局児童生徒課