人権教育の指導方法等に関する調査研究会議(第44回) 議事要旨

1.日時

平成24年11月12日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館5階第5会議室

3.議題

  1. いじめ問題への対応について
  2. 平成24年度人権教育担当指導主事連絡協議会について
  3. 人権教育の推進に関する取組状況調査について
  4. その他

4.出席者

委員

福田委員、有村委員、稲村委員、梅野委員、神野委員、神山委員、金子委員、桒原委員、谷口委員、林委員、増田委員、森委員

文部科学省

白間児童生徒課長、春山児童生徒課長補佐、堀江指導調査係長 他

5.議事要旨

(○:委員、●:事務局)


※人権教育に関する特色ある実践事例における「留意すべき表記表現等」、「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議によるコメント」、「来年度の実践事例の収集・公表の在り方等」について、またその他の事項について、意見交換を行った。

(1)いじめ問題への対応について

○いじめ問題というのは、単なる道徳問題では済まないと考える。例えば、いじめを受けた場合、当該の児童生徒は学習権を奪われ、学習権を奪われると、将来働こうとしても、不利益をこうむる恐れがある。このように、いじめによって「就労」、「生計」、「家庭を営む」といった権利が連鎖的に奪われることになり、これは正に人権問題と言える。
○平成25年度概算要求のいじめ対策関連事業の資料中、未然防止の対策について、道徳教育等の推進、体験活動の推進と記載があるが、ここに人権教育の推進が入ってもよいと考える。
○我々日本人は人権意識の立ち遅れがあることを真剣に受け止める必要があると感じている。今回のいじめ問題に関しては、例えば教師の方も、けがをされている。教師だから殴られてよいということは絶対になく、これも、いじめと同じく、明らかに人権問題であるが、こうしたことが表に出てこなかった。こうした課題に対して、我々調査研究会議でも、例えば、特色ある実践事例がより活用されやすいようコメントを作成するなどして、人権教育が全国で取り組まれるよう、様々な取組を実施していく必要がある。 
○最近、大学の学生約300名を対象に、自身が小学生児童、中学生生徒、高等学校生徒だった時期のいじめ体験について、調査した。9割の学生が、当時被害、加害のいじめの体験がある、との結果だった。一方、ある調査によれば、現在の中学校、高等学校生徒のいじめ被害、加害の認知は、3割程度にとどまるとのことだった。このように、大学の学生になり過去を振り返ると、9割の者が当時のいじめ体験を認知するのに対し、中学校、高等学校在学中は、3割しかいじめ体験を認知していないギャップがある。このことは、十分に検証されているわけではないが、現実の中学校、高等学校において、いじめの醜さといったことをストレートに学んでいない部分があると考える。 

(2)平成24年度人権教育担当指導主事連絡協議会について

○グループ別協議の後の全体会において、グループ別の協議内容を発表する際、発表者をその場で指名していたが、突然の指名よりも、全体会で発表していただきます、と事前に知らせておいた方がよいと考える。
○最後の講評が、非常に好評であったのは、参加者が話し合われた内容を踏まえて、講評が行われたことも大きいと考える。こうしたことから、グループ別の協議の後、かなり長めの講評、あるいは講演を行うと更に現場につながりやすいものになると考える。
○グループ別協議において、自己紹介の時間の使い方に工夫が必要と考える。参加者は初対面の方も多いので、アイスブレーキング的に自己紹介は必要であるが、一人数分ずつ自己紹介するだけでも、かなりの時間を要する。そして、あるグループでは、司会の方がテーマのことを中心に話題提供して、グループ協議をテーマに焦点化するとともに、時間を有効に活用していた。
○参加者には、この協議会の経験者もいるので、こうした方に司会、まとめといった役割を依頼する方法もある。
○事例発表について、特別に先進的な事例を選びがちになるが、参加者が所属する教育委員会等の状況は様々であり、いつもトップクラスの事例だけだと、雲の上を見ているような気持ちで帰られる参加者もいるのではないかとの不安がある。特別に先進的な事例ばかりでなく、教育委員会が状況に応じて工夫している事例の発表もあってもよいと考える。
○自らの取組が進んでいないと考える教育委員会等にとっても、「肩身が狭い」で終わりにするのではなく、現状の取組に対して、今後のヒントを与えるような協議会とする必要がある。 

(3)人権教育の推進に関する取組状況調査について

○この取組状況調査は、私立の学校を調査の対象としているのか。
●私立の学校は調査の対象外である。
○この取組状況調査の調査方法について、前回の調査では、調査用紙を紙媒体で提出していたが、今回の調査では、電子媒体で提出することとなるのか。
●御質問のとおり、今回の調査では、電子媒体で提出するよう依頼する。
○公立学校に対する調査のうち「協力的・参加的・体験的な学習への取組」について、前回の調査で、一定程度の普及が確認できたので、今回の調査では、実践内容などが把握できるとよい。
○上記の意見に関連して、「協力的・参加的・体験的な学習」での一番のポイントは、学習者が主体的に経験して感じ、考えることであるが、教師が、例えば機器を使って映像化するなどして、児童生徒の感性あるいは知性が働く場面を遮断してしまうケースがある。
○当調査研究会議では、指導方法と学習教材とその他の三つを検討課題としているが、この調査では、学習教材については、1問だけである。前回調査との比較との意味から問いの大幅な変更には反対だが、学習教材について、より詳しく聞く問いを追加してもよいのではないかと考える。
○調査の最後に自由記述があるが、課題や今後の重点取組事項等以外にも、要望事項も記載できるとよいと考える。
○こうした調査は、回答する側にとっては負担を伴う。そこで、文部科学省として、前回調査以降、新たに取組を始めた人権教育担当指導主事連絡協議会の開催や人権教育に関する特色のある実践事例の公表に関して、取組の成果を検証する姿勢が重要と考える。
○前回の調査では、ちょうど学習指導要領の改訂直後だったが、今回は、小・中学校で新学習指導要領が実施されており、このような状況下で、どのように人権教育の時間が確保されているか、把握する意義があると考える。 

(4)その他

○本調査研究会議でのとりまとめは、平成20年3月の第三次が一応の最終のとりまとめという形になっているが、その後の経緯や実践の検証などを踏まえたメッセージの発信の必要を強く感じる。
○国際人権A規約における高等教育の無償教育の漸進的無償化について、日本政府が留保を撤回したが、これは、大きな出来事と認識している。


・事務局から、人権教育の推進に関する取組状況調査及び人権教育に関する特色ある実践事例の公表に対する今後のスケジュールについて説明した後、閉会。

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

電話番号:03-5253-4111(代表)