不登校問題に関する調査研究協力者会議
2002/12/17議事録不登校問題に関する調査研究協力者会議(第8回)議事録 |
不登校問題に関する調査研究協力者会議(第8回)議事録
1.日 時 | 平成14年12月17日(火)10:00〜12:30 | ||||||
2.場 所 | ホテルフロラシオン青山「芙蓉(西)」(2階) | ||||||
3.出席者 |
|
4.議事内容
(○委員の発言,●事務局の発言)
○ | おはようございます。定刻となりましたので,これから,第8回になりますが,不登校問題に関する調査研究協力者会議を開催いたします。 本日は,斎藤委員さんが御欠席でございます。 また,本日の会議につきましても報道関係の方に傍聴を許可しておりますので,御承知おきください。 まず最初に,本日のヒアリングのためにお招きしている方々を御紹介させていただきます。 まず,東京都立桐ケ丘高等学校長の天井勝海さんでございます。 |
【天井氏】 天井でございます。よろしくお願いいたします。
○ | よろしくお願いいたします。 それから,兵庫県立の但馬やまびこの郷副所長の片山則昭さんでございます。 |
【片山氏】 片山です。どうぞよろしくお願いいたします。
○ | 本日は,最初に事務局のほうから資料の説明をいただいた後に,大きく言いますと3つの課題について御議論いただくことになります。 まず,前回からの引き続きで,「中卒後の諸課題について」として,ただいま御紹介しました桐ヶ丘高校の天井先生からお話を伺いまして,これを踏まえて,特に高校におけるいわゆる不登校,学校に来てない状況への対応,それから,進路の課題について。 次に,但馬やまびこの郷の片山副所長さんからは,このお話を踏まえて,小中段階の不登校に関する体験活動や保護者・教員への支援等の在り方について。 それから,今日はもう1つありまして,最後に,不登校児童生徒への支援のためのITの活用についてということで議論をいだたきます。 いつもは,ヒアリング,お二方からお話を伺い,あるいは資料説明を全部一括してお伺いをした後で集中審議という形で協議をするんですが,今の3つの内容はそれぞれ多少距離がある問題ですので,今日は,まずお話を伺い,その問題について協議をする。次に,片山副所長さんからのお話を伺って,また協議をする。それから,ITの活用について協議をするということで,若干,いつもと流れを変える形で進めさせていただきますので,本日もまた委員の方々からぜひ活発な御発言を願いたいというふうに思います。 では,まず,事務局のほうから資料の確認及び説明をお願いいたします。 |
● | それでは,事務局のほうから資料の確認,御説明をさせていただきたいと存じます。本日は,通例どおり紙袋の上に中卒後の諸課題等についての論点メモというものを1枚置かせていただいております。その他,一連の資料に関しましては,議事次第,資料1におきまして,配付資料1から7まで一覧を載せているところでございます。御確認いただければと思います。 私のほうから御説明申し上げますのは,ヒアリング関係資料が資料2でございますので,その後の資料3から資料6にかけまして概略御紹介したいと存じます。 初めに,資料3につきましては,高等学校の中途退学等に関するデータということでございます。こちら,めくっていだたきますと,まず,中途退学者数の推移というもののグラフでございます。これを見ていただきますとおわかりのとおり,一番新しい平成13年度ですと,中退者数は10万4,904人ということで,在籍者に占める中退率が2.6%ということで,ここ数年来,2.6%という水準でほぼ横ばいということでございますが,過去からの推移を見てまいりますと,比較的高いレベルで高どまりしているというのが中退率全体の状況でございます。 次にめくっていだたきますと,この中退の事由別構成比の推移というふうになっております。大きくいろいろな区分がございますが,一番上の公・私立高校全体のところをご覧いただきますと,大きなシェアを占めておりますのが,13年度ですと,学校生活・学業不適応が全体で38%,進路変更が36%,次いで学業不振が6.4%という順になっているわけでございますが,ここ数年来の推移を見てまいりますと,一貫して上がっている傾向にあるというものは,例えば,人間関係がうまく保てない,あるいは,別の高校への入学を希望,大検を受験希望,経済的理由,こういったものが,ここ5年ぐらいのスパンで見てまいりますと一貫して構成比が増えてきているというような状況でございます。 続きまして,次のページ,3−3でございますけれども,都道府県の高校における長期欠席等の状況ということでございます。かねて御紹介しております不登校関係のデータというのは,基本的に国におきましては小中学校,義務教育段階のみの調査をしているわけでございますが,高等学校につきましては,先般の平成4年の報告書にも指摘がございますが,それぞれの自治体等での実態把握に努めていただきたいというようなことが挙げられているところでございます。実際に各県におきまして,約半分ぐらい,24県におきましては,何らかの形でこういった高校の長期欠席,あるいは不登校の調査をやっているということでございます。そのうち,この資料ではA,B,C,Dという形で4つの県を御紹介しておりますが,最初のA県,B県は,年間50日以上の欠席者ということでございます。この県におきましても,A県は1.4%,B県は全日制では1%というような数字になっているわけでございます。また,B県の場合,そのうち半分ぐらいが休学という措置をとられているということになっております。めくっていただきますと,C県,D県。これはほぼ義務教育段階の不登校に準ずるような定義を設けて高校段階の調査をしている例でございますが,これですと,平成13年度は,C県は1.65%,D県の場合は2%というような数字になっているところでございます。このようにおおむね1%ないし2%といった数字が幾つかの県で示されているということでございます。 続いて資料3−4でございますが,中退問題に関しましては,やはり平成4年度に有識者会の御提言を踏まえて中退対応に関しての通知というものが発されておりまして,その中でいろいろな対応の基本的な視点,あるいは具体的な対応の在り方というものが触れられておりますので,詳しくはこれをご覧おきいただければと思います。大きくは,対応といたしましては,高校の多様化,柔軟化,個性化,進路指導の充実,生徒指導,学習指導,あるいは高校教育そのものを開かれたものにする,そういった種々の指導がこの中でなされているということでございます。 続きまして3−5という資料で,教育相談の状況,平成12年度のデータを御紹介しているところでございます。これにつきましては,小,中,高それぞれとってございますけれども,高校生の場合でございますと,一番下の欄にございますが,全体として4万件余りの総教育相談が全国的になされているという中で,高校の不登校に関しては全体の相談件数の35%ということで,高校段階におきましても相当程度の比率を不登校関係の相談が占めているというような状況でございます。 続きまして,めくっていただきまして3−6。中卒後の支援に関して自治体でのいろいろな取組の事例というものを幾つか御紹介しております。1つは兵庫県ということで,実際にいろいろな相談窓口を設けて,進路,学習機会,大検,あるいは就職,そういったものに関してのいろいろな相談を行っているというような事例でございます。めくっていただきますと,愛媛県ということで,いろいろな体験活動,保育体験,介護体験,奉仕等体験,そういったものをすべての全日制高校で県を挙げて実施しているというような事例でございます。また,その下半分でございますが,高知県におきましては,新高校1年生を対象に集団生活,集団宿泊でのオリエンテーションをやるというような事業の例というものを掲げさせていただいております。 続きまして資料4でございますが,不登校の対応におきまして,中学と高校の間の接続の問題,具体的には例えば高校入試等の問題が非常にかかわりがあるわけでございますが,この中でどのような配慮等がなされているかということについての資料でございます。 めくっていただきますと4−1でございますが,高校入試改善につきましてはかねて,いろいろな選抜方法の多様化,評価尺度の多元化を国としても進めてきているわけでございますが,制度といたしましては,学校教育法施行規則におきまして,基本的には学力検査と調査書,それらを用いて高校長が許可するというのが入学者選抜の基本的な制度の枠組みとなっているわけでございますが,これに関してもいろいろな柔軟化が図られてきているという,一連のいろいろな指導等の経緯をここにまとめてございます。例えば不登校に関しましては,調査書の記載というのがいろいろな意味でハンディキャップになったり,あるいは不安やストレスを助長するというようなこともよく言われております。そうした中で,例えば,調査書を用いない選抜とか,あるいは調査書以外に主体的に学んだ事柄を記述した自己申告書を活用するとか,そういったいろいろな選抜の資料の多様化というものをこうした一連の通知等において国としても指導してきているということでございます。@からDまでございますが,一番下のDはさらに,先ほど申し上げた学校教育法施行規則というものの制度改正がございまして,従来ですと,調査書,学力検査,いずれかは少なくとも用いなければならないという仕組みであったわけでございますが,Dの制度改正によって,いずれも用いないということも裁量として認められるようになったというような変化がございます。 めくっていただきますと,実際にこうした国の指導,あるいは制度改正を受けまして,いろいろな配慮等が各県でも進められているということで,国の調査では,不登校児童生徒の受け入れに関して特別な取り扱い,配慮を行っているというのは,23県という回答が得られているところでございます。幾つかをここで列挙しておりますけれども,例えば,調査書そのものを使わないで,自己申告書というものをそれに代えて用いる。その他,面接,学力検査を使うという埼玉の事例。あるいは奈良県のように,調査書において欠席日数を記入しないというような取り扱いをする例。北海道のように定員を部分的分割をして,調査書より学力検査を重視するような取り扱いをするような事例。あるいは,本日ヒアリングをいただきます桐ヶ丘高校をはじめとして,学力検査,調査書,いずれも選抜資料として用いない。かわりに志願申告や作文,面接等によって選考するというような事例も出てきているというようなことでございます。 次の3ページ以降は,今御紹介した制度改正等の具体的なものの原典になる資料でございますので,またご覧いただければと思います。 最後の紙,4−2として中学校卒業程度認定試験というものがございますが,こちらは昭和42年度以来設けられている制度でございまして,基本的には,病気とか,そういったやむを得ない事情によって就学する義務を猶予・免除された方,そういった方に,試験を受けて中学校卒業の資格を与える,高校入学の資格を与えるというような性格の試験制度でございますが,これにつきましても,中教審の平成9年の答申を受けまして,一種の不登校の子のためのバイパスとしての活用も考えられていいのではないかというような提言がございまして,ここにあります受験資格,@からCまでございますが,具体的にはAということで,義務猶予・免除を受けてないけれども,免除を受けることができる事由に相当するという事由があれば,中学校に在学している満15歳時点で受験することができるというふうに受験資格を弾力化した。このAという部分を新たに資格として設けたという制度改正がなされたということでございます。 続きまして資料5でございますが,本日,不登校の対策として学校外の体験活動も推進しようということであるわけでございますが,文部科学省におきまして,悩みを抱える青少年を対象とした体験活動推進事業というものを実施しているところでございます。これにつきましては,実施の実際の主体として中心になりますのは,国公立の青年の家,少年自然の家等等でございますが,2ページにございますとおり,実際に17カ所を指定していろいろな事業をこの中で,不登校の子どもを含め,取り組んでいるということでございます。幾つかの事例,新潟,福岡,大阪市の事例の3つをこの中で紹介させていただいておりますが,例えば新潟でございますと,かなり思い切って,9月に24泊25日という,長期間にわたって冒険体験ということで日本横断をするというような,そういうことを集団で,みんなで体験させるということで,いろいろな力を付けていこうという取組をしている事例を御紹介しているところでございます。 続きまして資料6でございますが,マルチメディアを活用した補充指導についての調査研究というものにつきましての資料でございます。こちらも国の事業でございますが,現在,生徒指導研究センターにおきまして推進しているところでございますが,本年度,13カ所を指定して,マルチメディアを使って,教科指導,学習指導,あるいは教育相談への活用をどう効果的にしていくかというようなことについて実践研究をしているということでございます。めくっていただきますと,それに関連する適応指導教室が相当の中心を占めておりますけれども,そこでの対応。あるいは,適応指導教室にも参加できない子どもに対してパソコンを貸与などするというようなことで研究を進めている,その辺のデータをここで御紹介しているところでございます。 また,3ページ,4ページにおきましては,実際の取組の成果,課題というものについてごく簡単に紹介しているものでございますが,活用の方法として,学習の補充に使うか,あるいはメールとかによる人間関係,相談とかに使うか,大きくは2通りの使い方の用途があるわけでございますが,学習に関しては,自主的学習態度の育成につながったとか,マルチメディアによって自分のペースで勉強ができるようになったというような成果が指摘されております。一方で,教育相談に関しましては,担任,子ども同士のメールでつながりをいろいろ保ち続ける。ひきこもらずにつながりを保ち続ける手段になる。あるいは,メールによって比較的抵抗なくいろんな意思疎通ができるとか,情緒の安定につながるとか,そういった効果というものが幾つか指摘されてきているということでございます。 一方で,4ページには課題ということもございますが,学習面では学習ソフトというものの選定が難しいとか,適応指導教室の環境整備がもっと必要じゃないかとか,あるいは,メールだけでは不十分である。電話,家庭訪問とか,いろいろなものの併用が必要であるとか,そういったような指摘・課題もなされているところでございます。 なお,今御紹介したのは国の事業でございますが,今日,関連する資料といたしまして,この後に,松原市教育委員会,菅原委員から御提供いただきました資料とパンフレットを添付しておりますが,松原市におかれましては,適応指導教室のみならず,不登校の子どもに対して実際にパソコンを貸与して,いろいろな働きかけをメール等を使ってやっていく,そういった市の独自の事業をなさっている。その辺を御紹介する資料をいただいているところでございます。後ほどの御審議の中でまた,菅原委員から御紹介を賜れればというふうに思っております。 事務局のほうからは以上でございます。 |
○ | ありがとうございました。 ただいま御説明のありました資料の内容,あるいは御説明に関して何か,この時点で御質問をお持ちの方はいらっしゃいましょうか。 それでは,後ほどの議論の中にただいまの配付していただきました資料も活用していただくということで,早速,本日の予定に入らせていただきます。 東京都立桐ヶ丘高等学校の天井校長先生からお話を伺いたいと思います。 では,よろしくお願いいたします。 |
【天井氏】 桐ヶ丘高校の天井でございます。お手元に資料が,ホッチキスでとめたものと学校のパンフレットがございますので,これをもとにしながらお話しさせていただきたいと思います。
本校は,平成12年4月に新しいタイプの高等学校としてオープンした学校でございます。このニュータイプの高等学校でございますが,どういう点が新しいのかというようなこととか,あるいはそれに基づいてどういう教育活動を行っているのかというようなことについて,今日はお話しさせていただければと思っております。
本校は,小中学校で不登校を経験した生徒,あるいは高等学校を中途退学した生徒など,これまでの学校生活ではなかなか,自分の適性,興味,関心,あるいは能力等も含めて,発揮できなかった子どもたちなど,多様な生徒を受け入れるといったような趣旨で設置された学校でございます。現に毎年,生徒が入ってきます6割か7割は小中学校で不登校を経験した生徒でございますし,3割弱がいわゆる過年度卒の生徒で,その多くは中途退学した生徒でございます。両方足しますと10割近くなるわけですけれども,もちろんダブって中退で不登校という生徒もございますので,数は多くございませんけれども中退でも不登校でもない生徒もおりますが,全体的にはそういった課題を抱えている生徒がたくさん入学している学校であります。今日は,こういったような生徒を受け入れている学校のシステムであるとか,教育活動についてお話しさせていただきますので,若干,学校説明のようなお話になって大変恐縮でございますが,御承知おきいただきたいと思っております。
まず,私どもの学校のシステムですが,カラーのパンフレットをお開きいただきますと,「桐ヶ丘高校のしくみ」というところと「どんな学校?」というところに要約してございますので,ここをご覧いただきたいと思います。
まず1つ,昼夜開校3部制の定時制高等学校であるということでございます。先生方は御承知のように,定時制課程といいますと,5時半,あるいは5時から授業を行っている学校がほとんどでございますけれども,本校は,その表にありますように,朝からI部,II部,III部という形で4時間の授業を3回繰り返している。1日で12時間,朝早くから夜遅くまでお店を開いている学校でございます。生徒は,I部,II部,III部のどれかに属しておりますが,I部の生徒はII部の,あるいはIII部の授業に出ることも可能でございますし,II部の生徒もほかの部の授業,III部の生徒もほかの部の授業に出ることも可能でございます。そのために3年で卒業するということも可能でございます。現に,今年3年目を迎えたわけですけれども,150人が定数になっておりますけれども,約3分の1が今年卒業する予定でございます。もちろん今年度の単位がとれなきゃ卒業できませんが,約3分の1は卒業を目指して頑張っているという状況でございます。
この3部制といいますのは,単に3部制ということだけでなくて,これまでの学校というのは,始業時間等も含めて学校が決めておりましたね。子どもたちはそれに合わせなきゃいけなかったわけですけれども,私どもの考え方は,朝,昼,夜という具合に学習時間帯を生徒が選べるようなシステムをつくっているという考え方に立っております。もちろんいろんなライフスタイルといいますか,価値観,あるいは生徒の能力,興味,関心も多様でございますし,それのみならず,健康的な面,精神的な面も含めて非常に多様な生徒が存在しているという前提に立って,「子どもを学校に合わせさせる」というよりは,むしろ「学校が生徒に合わせる」といった,そういったような基本的な考え方がこの3部制の中にはあるという具合に,私は考えております。
これまで不登校の生徒につきましては,あるいは中途退学の生徒につきましても,多くはその子どもに責任を求めていたんじゃないかなと思うんですね。Aさん,Bさんは学校に来ているじゃないの。Cさん,あなたはどうして学校に来ないのと。もっと頑張って来なさいと。挙げ句の果てには,家庭の親にも,もっとちゃんと学校にやるように指導してくださいと。もちろんこれも大事なことでありますけれども,私どもは,もう1つの視点として,多様な生徒がいるという前提に立って,その多様化に対して学校が十分対応してなかったんじゃないか。むしろ学校が不適応を起こしているんじゃないかという,そういう視点も必要じゃないかという考え方がこの3部制の中には含まれているという具合に,私は考えております。
それから,左のほうでございますが,総合学科で単位制高校という具合になっております。これはもちろん,御承知のように単位制でございますから学年がございません。進級という概念はございません。74単位取れば卒業の主たる条件を満たすということで,しかも総合学科でございますので,普通教科科目のみならず,もちろん学校の規模等もございますのであらゆる専門科目を置くことは不可能でございますが,そこに書いてありますように,福祉,情報・ビジネスの各系列がございます。情報・ビジネスと申しますのは,どちらかというと商業高校の専門科目を置いているということでございます。それから,もう1つはアートでございますが、これは美術の専門科目であります。こういう科目を基本的には「好きなときに好きな科目を好きなだけ」取りなさいというような考え方を持っております。今年,3年で卒業する生徒がいるとお話ししましたけれども,私どもは生徒に,3年で卒業することが必ずしもいいとは言ってないんですね。できる人はすればいいですよと。4年,5年かかってもいいんですよと。場合によっては6年かかってもいいですよと。といいますのは,私どもの学校には,中学校に1日も行かなかった生徒も入ってきております。そういう子どもに,桐ヶ丘高校に入ったから,明日から学校に毎日来なさいと言うこともかなり難しいかもしれませんね。私は,学校説明会のときには,極端に言いますと,本校は1日おきに来てもいい学校ですよ。単位制高校ですから自分で時間割をつくりますから,マイペースで勉強できるスタイルの時間割をつくればいいわけですので,そういう意味ではそういう考え方もあるわけですね。しかしながら,実際には,国語の時間が例えば月,火,木にあれば,1日おきに来るというわけにはいきませんけれども,現にそういう生徒はおりません。時間割をきちっと全部埋めている生徒が大部分ですし,年次の生徒の約7割は他部履修を申し込んでおります。単位が取れるか取れないかは別として,そういったような形で総合学科のよさと単位制のよさを組み合わせた学校であります。もちろん,並んでいる科目も,普通高校に比べましていろんなバラエティーに富んだ科目がたくさん並んでおります。これは,開いていただきますと,「どんな科目があるの?」というところに書いてございますが,もちろん必履修科目はございますが,そのほかにも,総合学科の専門科目,自由選択科目,それから,私どもがつくっている学校設定科目,非常にバラエティーに富んだ科目が並んでおります。
私どもは,こういったような多くの科目の中から,先ほど言いましたようにマイペースで時間割をつくって学校で勉強をしたらどうでしょうかということを提案している学校でもあるんです。従来の学校というのは,時間割,あるいは教育課程がまず決まっていまして,先ほど言いましたように子どもがそれに合わせるというところがあったわけですけれども,私は,そういう学校はどちらかというと「定食メニューの学校」だと思っているんですね。定食を食べなさいと。これを食べないと進級できませんよ。卒業できませんよ。しかも,食べる時間も決まっている。この時間のうちに早く食べなさいと。例えば1年間とか,2年目にはこれを食べなさい。私どもの学校はそういう考え方じゃなくて,どちらかというと「バイキング方式の学校」でございまして,「好きなときに好きな科目を好きなだけ」食べなさいという学校なんですね。ですから,極力,規制を緩和しているのです。1年目にはこれを取らなきゃいけませんよ,2年目にはこれを取らなきゃいけませんよ,あるいはこれとこれの科目は絶対に取らなきゃいけませんよという,そういう規制を極力緩和した学校であります。授業料も実は,取っただけお金を払えばいいという学校であります。1単位 1,500円であります。10単位とれば10倍,20単位取れば20倍,1単位しか取らなければ1,500円でいいわけですね。ですから,私もよくお話しするんですけれども,まさに注文しただけ,食べただけお金を払えばいい学校なんです。実際は授業料というのは前納で,10回のクレジット払いですから,注文しただけということが正確な言い方だと思うんですけれども,そういうような学校で,私は基本的に,先ほどいいましたように,卒業する年次も,勉強する科目も,時間割も,一人一人違っていいという考え方であります。多くの学校はどちらかというと,本来異質な生徒を同質化しようという,そういう傾向が非常に強いと思うんですね。私どもの学校はむしろ社会に近づける。学校も小さな社会です。ですから,異質なものを同質化するんじゃなくて,「一人一人違って,それがいい」という観点に立って,まさに個性,適性,能力を伸ばす,能力を開花するという,こういうような目的を持った学校でもあります。これが学校のシステムの大きな特徴でございます。
お手元のパンフレット,ホッチキスでとめた資料,すべてについて御説明する時間はございませんが,ちょっとページ数がとんでしまって大変申しわけございませんが,3ページを開いていただくとそこに書いてございますが,私どもは,この新しい学校をつくるときに,「学ぶ校から楽しい校」へと。「学校から楽校」へと。音で聞きますと何かわからなんですけれども,楽しい学校づくりと。「学習から楽習」へと。学ぶ習から楽しく勉強する学校へと。こういったようなことをキーワードにして取り組んでおりますが,楽しい学校といっても自由奔放にわいわいがやがややっていることではなくて,楽しい学校というのはどういうことから構成されているのかということを3ページに要因を分析しまして,こういう学校ができれば,子どもたちにとってきっといい学舎であったり,いい居場所であったり,自分の能力も頑張って発揮できる学校ができるんじゃないかというような考えを持って,そこに書いてございます。
一番上につきましては,今,説明をさせていただいたことでございますので,2番目のところの教育活動の話をさせていただきます。本校には,先ほど言いましたように6割から7割,不登校を経験したと。経験したというのは,言葉の音の聞き方によっては,すべて治って学校に来ているような感じもありますけれども,決してそうではありません。中学校に1日も行かなかった子どもたちも含めて,適応指導教室などから本校に入ってきている生徒もたくさんいますので,まさに不適応,不登校,あるいは高等学校に1度入学したんだけれども中途退学して再度勉強しようという,そういったような子どもたちですから,いわば学習から遠ざかっている子どもたちですね。そういう意味で私どもはまず,子どもたちの一番長い学校生活の授業,これをどうするかということが大変大きな課題でございました。そこに書いてありますように,わかる授業とか,参加する授業はもう古いと,私は先生方にも言っているんですね。「わかるまで指導します。」これが本校の授業のモットーであります。これは,学校説明会で校長みずからが保護者や生徒や中学校の先生方に御説明して,ある意味では公約をしていることなんですね。「本校ではわかるまで指導します。もしわからなかったら,これは先生の責任です。」,「指導方法,指導内容,あるいは評価が悪かった。」,「最終的には校長,私の責任です。」これは公約していることですから,是が非でも実現しなきゃいけない,大きな学校の目標でもあります。
そういう意味で,それを実現するために少人数授業。大体15人を規模とした少人数授業で取り組んでおります。特に,そこに書いております基礎科目,「みんなの国語」,「みんなの数学」,「みんなの理科」,「みんなの英語」という具合に,いわゆる中学校でつまずきやすい,あるいは中学校で学習が十分なされないとなかなかわかりにくいといったような,そういう科目については,「みんなのシリーズ」という具合に呼んでいるんですが,いわゆる基礎科目ですね。これはまさに小学校の算数や,中学校の考え方,見方,そういったようなものを教材化しております。小学校の算数の教材を持ってきて,これをやりなさいとか,ツルカメ算をやりなさいとか,そういうことをやりますと生徒はプライドが傷つきますから,そういうことじゃなくて,例えば数学なんかでも,折り紙を通して数学の見方,考え方,例えば平面と立体の関係を考えてみましょうとか,そういったような,ある意味ではゲーム感覚で楽しく少人数で授業できるという,そういうものがふんだんに取り入れられております。
それからもう1つは,こういう授業は「一話完結型」の授業にしなさいということを言っております。といいますのは,先ほど言いましたように不登校が治っているわけじゃないんですね。例えば,躁うつの状況の子どもたちは,躁のときは元気に毎日来れるけれども,うつの状態になれるとほんとうに人が変わったようになってしまいます。学校に来れない状況だってありますね。そういうときに学校をしばらく休んで,また学校に行こうかと思ったときに,授業に出てないから勉強がわからないということだと困ります。そういう意味で,「連続テレビ型」の授業ではなくて「一話完結型」なんです。今日折り紙をやっていたら,もう明日は折り紙をやってない。測量か何かやっている。極端に言いますとですね。そういったような授業を組んでいるのがこの基礎科目でございます。もちろん,みんながみんな少人数じゃなくて,多くでやったほうがいい科目もございますので,そういったような科目については30人程度の教室もございますけれども,少人数で授業を組んでいるのがこの基礎科目でございます。
もう1つは,指導と裏腹の関係にあります評価につきましても,私どもはそこに書いてありますように加点主義という考え方に立っているんですね。あれもできない,これもできないという,不登校,学校に行ってない子の多くはそういう状況があります。しかし,何かいい点を持っているはずだと。それを見付け出すということで,評価も,高等学校は前々から絶対評価でございますが,往々にして中間考査,期末考査を足して2で割るといったような,そういう傾向が非常に強いんですね。それではいけません。評価の観点を,いわゆる観点別評価,上から下から斜めから,いろんな角度からその子どもを見て,よさを見付け出すという視点ですね。そして,絶対評価であります。AさんとBさんと比べてCさんはどうだと。こういう考え方は本校では通用しませんよという評価観でございます。生徒にも,資料の中に入ってございますが,1科目ごとに1枚ずつのペーパーを準備しております。これは学習成果ノートと言いまして,観点別の観点が示されまして,それに加点主義に基づいてコメントを書くように,10科目取っていれば10枚のペーパーになります。生徒はそれらをとじたファイルをもらいます。そういったような形で評価の多様化・多元化を行い、何かよさを見付け出そうとしているのです。
これまでの教育,都立高校も古くは均一な生徒が入ってきたということもございますけれども,何人いようと同じような教育をやっていたんですね。十人一色の教育をやっていた。ところが,臨教審以来,個性重視ということを言われて,十人十色の教育に変わったと思うんですね。ところが,私は十人十色でもまだだめだと思っているんです。といいますのは,十人十色は十人集まって初めて個性が発揮されているわけで,一人一人にしてみれば一人一色なんですね。私はこれが大きな問題じゃないかと思うんですね。不登校の子,学校に来ない子,友達のできない子,勉強ができない子という,こういうレッテルを貼られている。まさにこれは一人一色だからそういうような評価や見方がなされているんじゃないかなと思うんですね。私どもは,一人十色の教育をやることが大切だと考えています。不登校といえども必ず多くの能力を持っているはずです。たまたま一色が不登校という色であって,あと九色あるじゃないか。この九色を見付け出す作業が桐ヶ丘高校の教育です。そういう考え方で今言ったような評価観を持っております。
それから,急ぎますが,もう1つ,授業で大変重視しておりますことは体験学習であります。極端な場合,ひきこもりであります。学校にもちろん行けない,社会にも出ない,そういうような子どもたちが何とか高等学校で勉強したいという熱意と意欲で本校に入ってきている生徒もおります。そういう子どもたちに,私どもは出口の約束として,有名大学へ進学させますよなんていうことは一言も言っておりません。結果的に進学する人もいると思いますが,今年度は50名のうちにはもうAO入試で決まった生徒もいるんですけれども,それが目的じゃないんですね。私どもは,そういったような課題を持った子どもたちを受け入れているんだけれども,自信を持って社会に自立できる子どもを育てますよと。社会に自立できる力,これを育てなきゃいけないんですね。そういう意味では基礎・基本は先ほど言いましたような形でしっかり身に付けると同時に,「自然とかかわる,社会とかかわる,地域とかかわる,人とかかわる」という,こういう「かかわる力」を是が非とも身に付けていかないと社会に自立できません。そういう意味で,その学習する場として体験学習を選んだわけであります。例えば,7月の1週間は本校で授業を全くやりません。外に行きなさいと言っています。大学に行く子,専修学校に行く子,企業に行く子,保健所に行く子,あるいは,保育園に行く子,福祉作業場に行く子,いろんな子どもがおります。もちろんそういう場所は全部,先生方が確保して,希望をとって1週間の授業をやるわけですけれども,そういったいわゆるインターンシップも含めて実習体験学習を行うわけですけれども,私は,これからの教育,特に本校のような学校は,学校だけで教育を完結するという考え方ではなくて,まさに地域・関係機関のお力をお借りして子どもを育てる。私どもは,「地域の学校化」,「関係機関の学校化」ということもそのプリントに書いてございますけれども,教育のすべてを学校で行うのではなく,子どもたちをみんなのお力をお借りして育てていこうという,こういう考え方が必要です。特に,本校に入ってきている生徒は今言いましたように「かかわる力」を備えて,そして,社会に自立させていくということが必要ですから、体験学習を非常に重視しているということでございます。
そこに書いてございますように,単位の認定も非常に弾力化しております。最近では自らボランティアに行く生徒も少なくありません。3部制の学校でございますので,I部の授業が終わった後,午後,あるいは放課後,ボランティア活動に行くことが十分可能なんですね。私どもの学校の近くに児童館がございます。授業が終わった後,児童館に行くとか,あるいは赤羽警察署の交通安全キャンペーンのお手伝いをするとか,そういったような,いわゆる学校外の学修の成果についても積極的に単位を認めているんですね。ただ,児童館にボランティアに1度行ったからといって1単位になるわけではございません。こういったような時間を,3ページの下のほうの,単位認定の弾力化の下に書いてありますが,クレジットバンキング制度というのをつくったんです。これは,生徒が行った時間,今日は30分ボランティアをやった,夏休みは7時間やったとか,そういったような時間をまさに貯金をしておいてあげる制度なんですね。クレジットバンキングで,クレジットは単位でございますし,バンキングは貯金です。それが一定の時間。一定の時間といいますのは,1単位時間が35週掛ける45分,1時間は45分の授業でございますので,これを掛けますと1,575分になるんですね。1,575分になると,ボランティアという科目がございますので,それの増加単位,1単位増加するという考え方ですね。私は,余ったら1分から繰り越して,また貯金していってあげなさいというようなことを言っております。そういったようなことのほか,資格を取っても,大検を取っても,今,専修学校とも4校と連携しておりますけれども,そういったところで勉強をした成果も単位を認定するということで,まさに学校だけで教育を完結するんじゃなくて,いろんなところで,いろんな交流を通して,いろんな専門の分野を勉強してくる機会を設けているということでございます。
それから,こういったような柔軟でソフトでかなり多様な教育課程や指導内容をつくりましても,それでもやはり不登校傾向の子どもたちが完全に治るわけではございません。先生方は御専門ですから御承知だと思いますけど,そんな簡単なものじゃないですね。そういう意味で,私どもはそういう状況が出ないようにケア体制というのも非常に重視しております。そこにございますように,ホームルームティーチャーは15人に1人です。15人でホームルームをつくっております。非常に小規模なホームルームでございますので,担任と生徒の関係はほんとうにAちゃんBちゃんの関係で,十分わかるといったような関係でございます。ところが,少人数にすると人間関係は濃くなるんですね。それをまた嫌う生徒もいるんです。どうもその担任とウマが合わないということもあります。これは,担任が悪いとか,生徒が悪いという問題じゃないんですね。パーソナリティーの問題で,合わないというのはいますね。ですから,そういう子どもたちは無理して自分の心を担任に開けないわけですから,本校には校長も含めて39名の職員がいるので,みずから担任を選びなさいと言っております。パーソナルチューター制と呼んでおりますが,生徒が選ぶ担任制というのを導入しているんですね。このシステムは,資料の中に私の事例が入っておりますけれども,教員はすべてA4判1枚のプレゼンテーション,自分のプライバシーのことを含めて自己PRが書いてございまして,これが生徒に全部行き渡っているんです。これをファイルで渡してあります。そして,6月ぐらいになりますと,そういう時期が来ますと,登録する方法とか全部,生徒に説明しまして,パーソナルチューターというのを選ぶということですね。現に私も3人のチューターになっているんです。これは,校長であろうと,教頭であろうと,すべてがその対象ということになっております。
それから,大学院とも連携しておりまして,フレンドシップアドバイザーという制度もつくってございます。これは,今,明治学院大学と上智大学と大正大学の大学院,臨床心理士になる学生ですね。これは週1回,今,6人来ていただいております。みんなボランティアであります。この方がまさにフレンドシップ。年齢も近いものですから,いろいろな相談,相手をしてくれているということです。もちろん臨床心理士の方,それから,本校でも授業時間をゼロにしてカウンセリング専従の先生も1人置いてございます。
それでも学校に来れない子どももおります。私は,これは中学校の先生方が悪いと言ってるわけではございません。子どもを迎えに行かせたり,電話をしたりということがございますけれども,私どもの学校に来ている不登校は重症でございますので,そのような方法は通じません。そういう意味で私は,来れるようになったら来ればいいよと生徒に言っています。そのかわり先生方には,とことんかかわりなさいと。放置してはいけませんよと話しております。その具体的な例の1つが,IEP(インディビデュアライズ・エデュケーション・プラン)という個別指導計画です。これはその本人だけの指導計画であります。まさにオリジナルな計画です。これは本人とカウンセラーと保護者でつくります。そして,一定の成果が上がれば,単位も認定します。これまでに8単位取った子がいます。これはレアケースですけれども,今,この子は毎日,学校に来ております。単位制高校ですから74単位取れば卒業ですから,あと66単位取ればいいとか,そういう具合になるわけですね。普通は2単位とか3単位ですけれども,低い階段でもいいから学校に向けてつくっておいてあげる。こういうことをIEPでは目指して,いつかは学校に戻れるようにということを考えてございます。
それから,先ほど言いましたように,地域の力,関係機関のお力をお借りして子どもを育てるということでございますので,私どもも,一番下に書いてありますように,地域に開く,関係機関に開くには,学校の垣根を低くする,あるいは取り払うということが必要であろうと考えています。そういう意味で,私の学校はボーダレススクールと言っております。垣根をうんと低くして,取り払って,地域の方を学校にいつでも来ていただけるように,年中授業公開であるとか,あるいは市民講師として地域の方をお招きするとか,我々も体験学習などで地域に出かけていくわけですね。典型的なのはうちの学校の文化祭でございますけれども,私は,もう連携の時代じゃないと。連携から融合の時代と言っているんですね。融合ということは,一体となって,相手方にも一部責任を持っていただくということなんです。先ほど体験学習を1週間するというお話をしましたけれども,お預けするんですけれども,1週間,ただ単にぶらぶら行ってるわけじゃないんですね。私どもは相手の人に,カリキュラムをつくってくださいとお願いしております。1週間のカリキュラムですね。そこまでお願いしているんですね。機関によっては,入校証であるとか,修了証書であるとか,そういったようなところをつくって,きちっとセレモニーもやっていただける機関もございます。そういう具合にして一体となって教育を進める。文化祭の場合には,地域の,先ほどのボランティアでお世話になっている警察も,自治会も,区役所も,企業もお店を出すんですね。お店を出すといいますのは,テントを張って,警察の場合は交通安全キャンペーンをやるとか,自治会の方は演劇をやってくださるとかですね。こういったような場でも本校の生徒はいろんな人とかかわる。あるいは桐ヶ丘高校の教育活動について直接ご覧いただく。ある意味では情報を発信する。こういったようなことを行っております。
最終的にまとめますと,私の学校,今,まさに建設といいますか,つくっている途中でもございますけれども,従来の学校が持っていた画一性,硬直性,閉鎖性というものを打破して,画一的じゃない多様な学校を,硬直じゃない柔軟な学校を,閉鎖的じゃない開放性のある学校をと,こういうことを目指して今まさに努力している途中でございます。
時間が来てしまいましたので,概略だけお話しさせていただきました。不十分なお話で失礼いたします。
○ | ありがとうございました。 大変,内容のあるお話を伺ったわけでありますが,ここで,冒頭申し上げましたように,大変時間が窮屈でございますけれども,20分程度でしょうか。ただいまのお話について,今日の論点メモの中で言いますと,中卒後の諸課題ということで,高等学校における長期欠席の問題。特に,今お話のありました,そうした生徒さんたちをどういうふうに受け入れていくのかという問題。もう1つは,中卒後の進路の問題にも触れて御議論いただきたいというふうに思います。 では,まず御質問からお願いいたします。どなたからでもどうぞ。 |
○ | お話の中で非常に新しい発想で取り組んでいらっしゃるなという意気込みが伝わってきます。 1つ質問をさせていただきたいんですが,これまで小中学校でずっと学校生活,時々休んでいた子も多いようですが,そういう子がこういうところへ入ったときにどんな変化があるか。また,どんな印象を持っているのか。生徒のほうの反応をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。 |
【天井氏】 入ってくる生徒は多様でございますので,まさに一人一人,反応といいますか,違うんですが,全般的に言いますと,こういう学校に入りたかったという声が圧倒的に多いです。先生方の対応も非常にきめ細かなものですから,ほかの学校に比べて温かいという,そういった印象を持つ生徒が大多数でございます。そのことが子どもの居場所づくりのきっかけをつくっていくんだと思うんですね。それから,勉強も非常に少人数で丁寧にやりますので,これなら私もやれるというような自信がもてるのだと思います。部活動なんかも最初は,時間がなかなか難しいからできないんじゃないかなと思っておりましたけれども,部活動も,生徒と先生方とのコミュニケーションの中で,今,35ぐらいの部ができておりまして,全国大会に出る部も幾つもあるんですね。テニスとか,バレーとか,バスケットとか,剣道とかですね。スキー部はインターハイに出るようになりました。そういう具合に,生徒は,学校に対する不安感や不信感とか,先生に対する不信感を持っている生徒もおりますから,最初は抵抗が若干あるでしょうけれども,しかしながら,入ってしまうと結構マイペースで勉強している人が圧倒的に多いと思います。もちろん課題も,来れない子どももおりますので,ないわけではございませんが,全般的にはそのような状況であります。
○ | 大変,取組のすばらしい学校のお話をありがとうございました。こうした学校がもっともっと増えればいいなというのが私の実感でございますが,幾つかお聞きしたいことがございます。 まず,3部制になっておりますので,朝8時35分から夜9時までということになるわけですが,例えば,夜9時までいる子どもたちは当然,その後,クラブ活動なんていうことになるかもしれません。そうするともっと遅くなるわけですが,1人の先生が朝8時半から夜9時半までずっといるのかということですね。もし途中で先生が交代するとするならば,朝来て午後からも別な授業を受けた子どもたちとのつながりといいますか,対応をどうしていくのかというようなところですね。それが1つでございます。 それから,入ってくる子どもたちの内申書,学力検査がないわけですから,能力的に,あるいは学習の進度の状況が非常に多岐にわたるというふうに思うんですが,そうした子どもたちを例えば幾つかのクラスに分けていくということになりますと,相当たくさんの教室を設定しなければならないのではないかというようなことですね。それから,学力が一番下の子どもたちが高校のカリキュラムの内容,例えば数学にしましたら,どんな易しい高校に行っても二次関数から入るわけですが,そうした子どもたちが,例えば一次関数もわかってない子どもたちがたくさんいるのではないかなと。そうした子どもたちがどうして高校卒業の単位につながるのかということでございます。 それから,中退率というのが私は非常に気になっておりまして,これだけ手厚くしていただいて,果たしてどのくらいの子どもたちが中退をしているのかということでございます。 以上,お願いしたいと思います。 |
【天井氏】 座ったままで失礼いたします。先生方の勤務は,A勤,B勤になっております。A勤といいますのは8時半から5時半まででございます。B勤は午後1時から10時近くまでの勤務でございます。そういうことで,A勤の先生はI部とII部の授業を,B勤の先生はII部とIII部の授業を持つという形になっております。ですから,III部の生徒は残念ながらA勤の先生とは時間的には会えないような形になっておりますが,先生方は結構遅くまで残っておりますので,何らかの形で,例えば部活動の顧問をしているとかいった形ではコミュニケーションがとれております。ですから,1年間A勤,B勤が,途中でかわるというようなことはないんですね。A勤,B勤は年間固定でございますので,先生方の労働時間もございますので,そんな形になっております。校長だけはA勤,B勤ございませんので,朝から夜まで勤務しております。
それから,学力差の問題ですけれども,私どもは,学力差というよりも,学力が欠落してしまっている。例えば,中学校へ行ってないわけですから,そういう生徒をどう指導していくかということで,先ほど基礎シリーズの中では15人と言いましたけれども,15人,同じ授業をやっているわけじゃないんですね。15人の中で,ワークシート方式でまさに個別学習でございます。そういう意味では,勉強がほんとうにわかってない,いわゆる中学校で数学を受けてないような子どもたちがおりますので,そういったような形ではかなり個別化された学習が行われているということですね。
高等学校の学習指導要領の目標を達成しているのかどうかという御疑問もあると思いますけれども,例えば高いレベルの学力を付けて単位を取る学校もあれば,一方では分数ができない子が分数ができるようになって,そして,二次関数の考え方も多少わかるようになって卒業していくという学校もございますね。ですから,本校の学習目標としては,ものの見方,考え方といいますか,そういったようなレベルで学習指導要領に書いてあるような内容のところまでは持っていくようにしているんです。ただ,持っていく道筋が従来の学校の教科書とか指導方法とは全く違う。本校でまさに開発したオリジナルな指導方法でそのような考え方,見方を身に付けさせていくということでございます。
ちょうど先週の金曜日,全都立高校,区教育委員会等に御案内いたしまして研究発表協議会というのがございましたけれども,そこでも,実際の指導事例とか,実験,教材,教具の発表をさせていただきまして,先生が今御指摘のような御質問も確かに出されたわけですけれども,そんな形で生徒の実態を踏まえて到達目標を本校なりにつくっているということでございます。
それからもう1つ,中退率でございますけれども,よくこの話も聞かれるんですけれども,本校に入ってきて中退するのは従来の学校の中退の理由とは全く違うんですね。1つには,ここで言っていいのかどうかわかりませんけれども,経済的な理由というのは非常に大きいです。例えば,給食費を払えない,授業料を払えないというような生徒だってたくさんおりますし,経済的に非常に困窮している中で勉強を続けていこうと。でも,なかなか厳しいというような生徒もおります。もう1つは,精神的な疾患も含めた健康上の理由ですね。そういったようなものでやはり続かないというようなことでございます。例えば,後ろに生徒がいると落ちついて授業を受けられないとか,そういったような子どもたちもなかなか厳しい状況にありますので,私どもの先ほどのカウンセリングもドクターと連携しながらやっているというケースもございますし,先生方が病院に行ってドクターのお話を聞きながら対応をしているという事例もございます。そういう意味では,毎年6,7人ぐらいはそういう生徒がおります。ただ,学校に来れないような状況の生徒は,さっき言ったIEPの対象になっている生徒は,今のところ7,8人おります。ただ,IEPの対象にもなれないような子どももおりますので,全体で言いますと15,6人いるんじゃないかなと思いますけれども,ただ,非常に違うのは,ある日突然,学校に来るということもあるんですね。そして,カウンセリングルームまで,保健室まで,担任の先生のところまで来る。でも,授業に入れない。で,またしばらく来ないんだけれども,また学校に来るという,そういう生徒もいます。非常に多様なんですね。ですから,私どもは,3年で卒業しなくてもいいよ,4年,5年でできればそれでいいんだよと言っておりますので,長い目で受容してあげるということが非常に重要なことではないかなと思います。受容できたら,だんだんに力を付けて変容していく。私どもは,受容から変容へという,これをキーワードにしておりますけれども,まずは受容ということなんですね。子どもの実態をまずは尊重していく。そのかわりとことんかかわって子どもと一緒にいろんなことを考えていくという,そういう考え方やシステムをつくっております。
○ | 約60%弱が不登校,重度の経験等についてお話があったわけですが,主なタイプといいますか,タイプ分けは云々という部分もあるんですけれども,どういった傾向の不登校のお子さんが多いのかということが1点です。 あと1点としまして,校長先生というお立場で,都立高校ですので定期的な人事異動等があるわけでございますが,そういった部分についての何か課題など,お感じになっている部分がありましたら,差し支えのない範囲内でお知らせいただければと,そんなふうに思います。 |
【天井氏】 不登校,中学校に行けなかった理由というのは,私どもは一々調査しません。といいますのは,これまで嫌な思いをしているんですね。不登校だった中学校での学校生活についても決してよい印象をもっておりません。私どもは,先ほど不登校は6割か7割いると言いましたけれども,これは調査したデータじゃないんですね。古傷に触れると言いますか,なぜ行けなかったのとか,なぜ学校に行かなかったのというようなことを聞くこと自体がその子どもの意欲をそぐんじゃないかと配慮しております。私どもの学校では学力試験も行いませんし,中学校からの調査書もいただいておりません。「これまでよりもこれから」というのがキーワードなんですね。これまでのことは一切問いませんというのが学校の方針なんです。熱意と意欲があればいいですよ。それを私どもは尊重しますよ。熱意と意欲が本校の学力の資格ですよということを言っております。ですから,一々細かいことは聞かないんです。ただ,カウンセリングなんかで話してくれるんですね。中学校のときはああだった,こうだったと。そういう数字のデータを出しますと,6割か7割は不登校の経験だったということですね。原因の多くはやはり人間関係でございます。友達関係,教師の関係も含めてですね。それから,2番目に多いのは勉強であります。どうも勉強がついていけないといったような,そういうところで教師との間で人間関係が崩れていってしまう。3つ目は家庭の状況です。家庭の状況というのは全部にかかわっている基本的なところもありますけれども,家庭の要因もあります。そのようなところが大きな要因じゃないかなと思います。
それから,人事でございますけれども,私どもの学校はまさに従来の学校と違ったことをたくさんやっているんですね。例えば,科目にしたって,本校独自の学校設定科目,これは私どものオリジナル商品だと言っておりますけれども,商品を開発しなきゃいけないんですね。新しい商品を売るためには研究開発が必要なんですね。そういう意味ではこれまでの,英語の先生は英語だけやっていればいいですよというわけにはいきません。チョーク1本で授業をやろうなんていう先生は,うちの学校には要らないんです。私は,英語なら英語のスペシャリストであると同時に,カウンセリングも行い,企業回りをして実習のお願いをしたり,ボランティアの受け入れをよろしくお願いしますという具合に外部に出かけていくことも求められるのです。大体,これまでの先生は,腕組んでお客さんが来るのを待っていた商売をやっていたんじゃないかなと思うんですね。私どもは出かけていって頭を下げるんです。うちの学校の生徒の実習を受け入れてくださいと。大抵断られますけれども,2度,3度行ってお願いしてきなさいと言っているんですね。そういう意味では,そういったような能力も含めたゼネラリストじゃないといけないと思っているんですね。そういったような教員を集めることが非常に大事でございますけれども,校長には人事権がございませんので,人事部に,そのような先生をぜひお願いしますというような形で採っていただいているというところでございます。ですから,先生方の熱意と意欲で支えられている学校であります。本校の教訓は「夢 挑戦 感動」という,これは生徒に対する校訓でもあるんですけれども,私どもへのメッセージでもあるんですね。夢を持って日本で初めての学校づくりをやりましょうと。前の学校でこうやっていたからというんじゃなくて,新しいことに挑戦していきましょうと。そうすると,教師としての,教育者としての,プロとしての,ほんとうに感動といいますか,知識だけ教えて,それがいいと言ってたんじゃなくて,教育というのはこういうものだと,このことを教員自身も桐ヶ丘高校で学ぶんじゃないか。そして,もちろん異動等もございますので,あのころは厳しかった,苦しかったけれども,ほんとうに教師としての勉強をさせていただいたという感動も得られると思います。私は,桐ヶ丘高校では子どもも育つけれども,先生も育つんですよということを言っておりますが,そんな学校を目指しているわけでございます。
○ | 校長先生のおっしゃることはほんとうに1つ1つ同意できるんですけれども,2つ質問させてください。 実際,入学試験があるわけで,5倍とか7倍とかっていう状況になると思うんですが,落ちる子,落ちている子というのは何で落ちるのかというのが1つです。 もう1点は,カウンセラーが常勤対応でいわゆるゼロ授業でやっているということなんですが,ほんとうにこういう内容が必要だと思うんですけれども,いわゆる身分としては教員身分でゼロ授業という形なのではないかなとも思うんですが,どういうような形の人なのかということをちょっと教えていただければと思います。 あわせてもう1つ,カウンセリング関係で,校長先生は時間がなくて触れなかったんだろうと思うんですが,総合教育相談室の開設。さらに地域の教育相談体制を充実させる,受け入れるということではないかなと思うんですが,そのことも簡単にあわせてお願いできればと思います。 |
【天井氏】 第1点でございますけれども,この学校はいわゆる適格主義の入学者選抜をやっているわけではないんですね。ですから,本校を希望する生徒は全部入れたいという気持ちでいっぱいでございます。ところが,こういう学校が残念ながら公立の学校としてなかった。1年目は前期,後期の分割募集をしていたんですけれども,前期が7.03倍,後期が16倍という高倍率でございました。ところが,2年目にもう1つ同じような学校ができました。平成19年度までに東京都教育委員会は5校つくる予定なんですね。今,2校オープンしているんです。2校目が世田谷和泉高校でございますが,これができまして倍率が半分になったんですね。前期が4倍弱,3倍台ですけれども,後期が8倍ですね。これは,5校できれば,1.0にかなり近づくんじゃないかなと考えます。こうなればこういう学校を希望する生徒は全部入れるんじゃないかなと思います。今は過渡期でございますので,校長としても大変心苦しいんですけれども,落ちる生徒はおります。
この落ちる生徒に対して,学力検査でありますと非常に明確でございます。私ども,入試で大切なのは,正確性,公平性,客観性という,この3つが確保できないといけないと思うんですが,正確に事務をやれば正確性は確保できるんですが,公平性,客観性という点で特に面接でということが大きい比重を持っておりますので,これはいろいろな見方があると思うんですけれども,客観性,公平性を保つには,様々な工夫が必要です。私どもは面接も極力,客観性,公平性を保つために,例えば,クエスチョンは全部,どの会場も同じにするとか,追質問も同じようにするとか,それから,評定した点数については,3人終わったところで評定水準の調整をやるとか,午前終わったところで,午後終わったところでもう1回やるとかなどの工夫をしております。極力,情報開示の時代でございますから,「どうして私は落ちたの」という問いにもきちっと答えられるような,そういう努力はしてございます。ただ,そうはやっても学力試験の客観性には及びませんけれども,学力でやるよりははるかにこちらのほうがそういう子どもたちにとっては意味のある入学者選抜だと思っているんですね。
それから,2番目のカウンセリングでございますけれども,これは社会科の教員でございます。こういう学校はそんなにたくさんありませんけれども,こういう学校だから都教委に特に認めていただいているわけですけれども,この教員は,かつての都立教育研究所,今は教職員研修センターと言いますけれども,そこでカウンセリングの上級までの研修を受けてきた,どちらかというとカウンセリングの専門家でございます。その先生に来ていだたきまして,今,ゼロ時間にしているわけです。教員のスタッフの数の中には1名と入っているんですけれども,その人の授業はみんなで分け合って持っているということでございますね。
それから,地域教育相談開設というのは,私ども,地域に開く学校ということを最初にお話ししたと思いますけれども,教育相談も,本校の子どもや保護者ということだけでなくて,地域にある学校ですので,地域できっと,小学校,中学校の生徒も含めて,不登校といった課題などを抱えているお子さんもおられると思います。家庭にも門戸を開いて,相談があったらどうぞということで総合相談室を開設しているんです。ただ,まだ自分の学校だけで精いっぱいでございまして,なかなか十分な機能を果たしておりませんけれども,こういったようなことも就学相談や教育相談として一応,機能としては持っているということでございます。
○ | 今のところでもう一度お聞きしたいところがあります。私も選抜のことに関してはほんとうにじっくりお聞きしたいと思っておりましたのでもう一度お聞きしたいんですが,どんな基準に対して正確で,どんな基準に対して公平で,どんな基準に対して客観的なのかということですね。つまり,作文なんかは総合的な能力を見ることができると思うんですけど,面接ではどうしても,教えやすい生徒,つまり指導しやすい生徒を採ってしまうことになりはしないんだろうかということもございますし,それから,例えば,一番左側にいる生徒,一番右側にいる生徒が同時に入学試験を受けてくるということになると思うんですね。あるいは中間的なところにいる子どもたちもいると思うんです。つまり,ナイーブでほんとうに自分のことも表現できないような子どもたちがいて,なおかつこっちは,おれはなと出せるような子どもがいたりすると思うんですよ。それに対して,どんなふうにして正確さ,公平さ,客観性が出せるのか。これは保護者の皆さんも絶対に納得ができない選抜方法だと思うんですね。それがこの学校のいいところであろうかと思いますけれども,その辺をお願いします。 |
【天井氏】 私どもの入学選抜の基準は,先ほど言いましたように,「これまでよりもこれから」がキーワードでございます。これからのことを問いますよと。本校で熱意と意欲があればいいですよと。これだけ言っているわけですね。ですから,熱意と意欲っていうのはどういう要素から構成されているのかということを私どもは大きな要因に分析してございます。それらの分析した大きな大項目についてまた小項目をつくっておりまして,それに基づいたクエスチョンがずっと続いているんですね。そして,どういう場合には5をつけるとか,4をつけるとか,一定の基準を設けてみんな点数化しております。その点数の上位の者からずらっと最終的には並んでくるわけですけれども,先ほど先生御指摘のように,流暢に話ができたから高得点がつくなんていう基準はないんですね。むしろ,本当にぼつぼつでもいいけれども,これまでの学校ではうんと勉強できなかったけれども,この学校で勉強をしたいんだという,一言もしゃべらないとこれはなかなか難しいですけれども,熱意と意欲という点で,本校で勉強をしたいという生徒であれば,基本的には高得点がつくようになっているんですね。ただ,高得点でもずらっと並びますから,作文の点数と,来年度から志願申告書というのも点数化されますので,そういったようなことも含めて総合的に判定されます。ただ,どういう要因で,どういう質問項目がありますかというようなところまではなかなか開示が難しいものでございますので詳しくお話しできませんけれども,先ほど言いましたように,情報開示に耐えれるような極力客観的で公平で,作業にさえミスがなければ正確な作業ができると思いますので,特に公平性と客観性については留意しております。十分なお答えにならなかったとは思うんですけれども,基本的にはそういうところでございます。
○ | 大変すばらしい取組でございまして,この内容はある意味では中学校,小学校へもぜひ返したいという部分が随分ございます。 それで,ちょっとお伺いしたいんですが,この話題は高等学校に限られておりますので,高等学校,あるいは定時制,各種の学校ができ上がっておりますが,そこから漏れた,あるいは中退した子どもたち,この問題の問題点というのが1つ大きく残されていると思うんですが,とりあえず高等学校のほうへお話を戻しますと,現在,学校の中では大変充実したいろんな取組をやられているんですが,通常,私どもがこれまで聞いておりますと,全日制から定時制,あるいは通信制,あるいはこういう総合学科のような,こういうところへ行く子どもたちは随分いる。逆に,定時制,通信制,総合学科のところから全日制のほうへ転入するということは極めてレアなケースになっている。これに関しましては幾つかの問題点がある。制度上,法律上は全く問題はないわけでありますけれども,現在の高等学校の在り方の中に非常に大きな問題点が含まれているだろうと思うんです。今,先生のところでそういうニーズがあるのかどうか。これは大変いい取組なものですから非常に出現率は少ないかということが予想されますが,私が聞いている限りでは,一般の高等学校,あるいはそういう生徒のところには随分あるように聞いております。先ほどおっしゃいましたように競争率が,今現在は2校でございますので半減したと。5校できると1.0になるだろうという,この現象が,少なくともそういう数の,学校の配分の数だけではなくて,やはり世間一般には全日制志向というのが厳然としてあるという事実もございます。そうなりますと,1つは,高等学校間の,公私間の壁というのをもう少し緩やかに低くしていく必要があるだろう。中学校の進路指導というのも非常に大きな問題として,不登校の問題としては切り離すことができない問題としてかかっておりますが,この問題と関連しまして,結局,多様な選択肢を中学校から卒業した段階にそろえていくということは非常に必要ですし,先生の学校の中ではこういう幾つかの取組をまぜた形で,定時制と総合学科,両方をつきまぜながら3部制。それから,単位認定も非常に緩やかにやっていらっしゃる。ただ,公私間の単位の互換性という問題がもう1つ,緩やかにしていく中でどう図っていくかということが大きな問題点になってくるだろうと思います。これは,先生の学校を超えて,いろんな社会の中での単位の互換性というのは図られていく傾向にはあるんですけれど,これもまだなかなか浸透してないという部分がございます。このあたりと,それから,大検制度とどうつないでいくかという問題ももう1つ,単位互換性の中でかかわってくるだろうという具合に思いますので,その辺に関して御意見がございましたら,お聞かせいただければと思います。 |
【天井氏】 先生が御指摘のようなことは確かにございます。学校全体としてでございますね。ただ,私どもの学校にも全日制から転入したり,あるいは全日制を中退して来ているという生徒ももちろんおります。いわゆる中退生の多くはそうでございます。それから,本校に入った生徒は,全日制に行きたいなんて言いませんね。しかも本校はI部であれば他部履修できますから,I部の生徒はお弁当を持ってきてII部の授業に出れば,全日制の生活と変わらないんですね。私は全日制と定時制の区別は要らないんじゃないかと思います,こういう多様な学校が出てきますと。といいますのは,定時制に対するいわゆる差別観とか何か,社会一般のそういう評価があると思いますけれども,これからの学校づくりの中では,通信制は確かに学習の手段が違いますからあってもいいと思うんですが,全定の区別はもうなくしてもいいんじゃないかなと思っております。
それから,学校間連携でございますが,本校も学校間連携をやっておりまして,ほかの学校の生徒も受け入れているんです。もちろんうちの学校からも外へ行っていいですよと言っておりますけれども,ほかの都立高校に行く生徒は今のところおりませんけれども,ほかの学校からは入ってきております。私は,将来的には,先生御指摘のように,どの学校でも,いろんな科目の勉強,それぞれ特色ある科目を設置して,それをいろんな生徒が興味・関心に応じて勉強できるような,そういう学校をつくっていけばいいんじゃないかなと思っているんですね。私どもは定時制課程ですけれども,他の定時制に対しては,うちがマグネットになっていろんな生徒を,ある意味ではマグネットスクールで,来たい人はどうぞというようなことで受け入れております。ただ,本校の課題も非常に多いですし,もちろん定数もございますので,何人でもというわけにいきませんけれども,そういったようなことがもっともっと開かれていくというようなことも,先生御指摘のように必要じゃないかなというのは感じております。
○ | 履修年限を特に定めていない。4年と書いてありますけれども,4年でも5年でもという先ほどからのお話があったんですが,上限というのは設けてはないんでしょうか。 |
【天井氏】 法律的には3年以上の就学だけ決められておりまして,上限はないんですね。ただ,生徒も10年も20年もいていいことはないわけです。先ほど,「好きな科目を好きなときに好きなだけ」と,「バイキング方式」と言いましたけれども,私どもはその一方でキャリアガイダンスというのをやっているんですね。これで将来のいわゆる社会に自立するというような指導も行っておりますので,その段階で,怠けて7年も8年もいてもいいわけではございませんね。でも,なかなか学校に来られなくて7年いる生徒もいるかもしれませんね。そういったような生徒についてはまさに個別的に対応していきます。上限は一応6年ということは内部的には定めておりますけれども,まだその6年を迎えておりませんけれども,例えば6年目に来て,あと数単位で卒業できるとか,学校に来れるような状況であれば,あなたはだめよという気持ちは全然ございません。
○ | どうもありがとうございました。いろいろ聞きたいことはあるんですが,1点に絞らせていだたきます。こういうすばらしい精神で教育ができるといいなということと,先生方がそういう意気込みでやってくださるととてもいい学校になるなということを感じました。校長先生のお気持ちはすごくわかるんですが,一般の先生方がどういうふうに過ごしていらっしゃるのかなというのをもう一つお聞きしたかったんです。先ほど人事の件で,かなり選抜しているというか,そこでいい人を採るというか,いい先生に来ていだたくということに心がけていらっしゃるようなお話だったんですが,その先生が来られて,その後の研修と言ったらいいんでしょうか,かなり新しいこととか,カウンセリング的なこととか,従来の教育とは違ったこともされていると思いますので,そういった先生方の研修制度とかについてお聞きできるとありがたいんですが。 |
○ | 実は私も今日,この会場に来るときに,ここにいらっしゃるある委員の方と,不登校問題の克服のためには,学校の校長先生,先生方の姿勢というのが非常に重要な意味があるななんていうことを話しながら来たものですから,先ほどからの先生のお話を支える,特に多様に応じる学校づくりという意味での先生方の指導力,あるいは姿勢,そういうことについて何か特別なことをされているのか。それは特別にはないのか。もし特別なことがあるとすると,どんなことがあるのかということを,今の御質問に関連してちょっと触れていただけるとありがたいなと思います。 |
【天井氏】 先ほど言いましたように,基本的にはこういう新しい学校をつくろうという同意のある人に来てもらうわけですね。全然関心のない人には来ていただかないということの前提がありますね。それでも,従来の学校でしか先生方は経験してないわけですから,研修というのは非常に重要でございます。私ども,臨床心理士の方であるとか,ドクターであるとか,いろんな先生をお招きして研修会というのを定期的にやってございます。大変ありがたいことに文部科学省の研究開発校に指定していただきましたので,そういう意味では予算も幾らかございますので,先生方も出かけて行きます。我々の校内でも研修してございますけれども,一番基本的なことはまさにオン・ザ・ジョブ・トレーニングなんですね。そういう子どもとどう対応していくかという,日ごろの対応の仕方について先生方が研さんしていくということが非常に重要だと思うんですね。そういう意味では,私は日ごろから,「もしあなたの子どもだったらあなたはどうしますか」,「あなたが親だったらどうしますか」と,この発想で十分ですよということは言っております。ただ,そうは言っても学問的なこともございますので先ほど言ったような研修の定例化もしてございますし,それから,新しく来られた先生は,本校では4月に入ってすぐオリエンテーションが始まります。いわゆる春季休業とか,休み中でございますけれども,これは,校長以下,新しく来た先生に分厚い本校のガイドブックを渡しまして,本校はこういう学校ですよということを徹底的に連続して始業の日までやっております。これには,教務主任であるとか,生活指導主任であるとか,入れかわり立ちかわりレクチャーをするという,そういう時間もございます。ここで多くは基本的なことは体得して,あとは,年次であるとか,分掌であるとかというところで,まさにオン・ザ・ジョブ・トレーニングで,やりながら学んでいくというところが大きいと思います。ただ,先生方は基本的には子ども一人一人を大事にするという気持ちがないわけではないですから,そういうところをむしろ育てていくというところが大事かなと思っております。
十分なお答えはできなかったかもしれませんが。
○ | まだお伺いしたいこともあるんですが,予定もございますので次に移らせていただいて,続きまして兵庫県立但馬やまびこの郷の片山副所長さんのほうから,まず,12分程度というふうにお伺いしていますが,ビデオを視聴。その後,時間を切って大変恐縮ですけれども,13分くらいの目安で御説明をいただければというふうに思います。 よろしくお願いいたします。 |
【片山氏】 失礼します。御紹介いただきました片山です。最初に説明をして,ビデオのほうは途中で流したいと思いますので,よろしくお願いします。
今,桐ヶ丘高校の校長先生のお話をずっと伺っておりまして,私のところの取組がそのまま学校になったらこういう形かなというふうなことも若干思いました。言うことを全部言われたなという感じがしておりまして,何を言おうかなというふうに思っているんですが,ここに来られている皆さん方も,委員の先生方はそれぞれ何回かお集まりですので何か非常にぴりぴりした感じがするんですけれど,不登校の子どもさんはどうしても緊張して来るんです。親御さんも含めまして。4泊5日の体験活動を一緒にやっているわけですけれど,そういったときにいきなり,「出会いの集い」というビデオを見せますが,やるんですが,自己紹介なんて言ったら,びびってしまうわけですね。ものを言うのもなかなか苦手な子どもさんが多いので。そういうときに,ちょっと隣の人とじゃんけんをしていただけますか,なんて言うわけですね。ちょっとじゃんけんをしてもらえますか。隣の人とちょっとじゃんけんをしてください。
(委員,隣同士でじゃんけん)
親子で来てますので,親子でしている場合もあるんですね。後ろで傍聴されている方も隣の人とじゃんけんしていただけますか。おそらく知らない方同士だと思うんですけれど,嫌がらないでちょっとだけお願いしたい。時間がありませんので。嫌ですか。負けた人は勝った人の肩をたたいてあげてくださいとか,そんなところから始めたりするんです。
平成8年9月にオープンいたしました。全国に先駆けてというふうなことで,不登校の子どもさんを対象に体験活動を一緒にやっていこうということで開設したわけですが,何せノウハウが全くございません。そういう状況で出発しました。レジュメを1枚だけ配っております。それと,私のところの資料を束にして7冊ほど配っておりますので,説明の途中で入れていきたいと思います。
趣旨,目的というところなんですけれど,何らかの理由で学校へ行けない子どもさん,また,不登校傾向の子どもさんをできるだけ集団活動を通しまして学校生活に適応できるように,子どもさん並びに保護者,教師を支援していこういう目的で設置された施設でございます。
対象者は,そこに書いてありますとおりでございます。時々,学校へ行ってる子どもさんも来ます。そのような状況があります。
それから,スタッフですけれど,後側に載せているんですが,所長が臨床心理士で,非常勤で来ておりまして,あと,指導主事,研修員等々,書いてございます。実働部隊は,指導課長,主任指導主事,指導主事2名という,この4名でございます。主に子どもさんとのかかわりがあるのは。
それから,建物なんですけれど,要覧をちょっと見ていただきたいんですが,今年は桜の花がものすごくきれいかって,こういう非常に自然に恵まれた中にありまして,自然がいやす力というのの大きさを随分感じております。季節感が非常にはっきりします。ここへ来る前も雪が降りまして,伊丹,宝塚,尼崎等々,都会のほうから来た子どもさんは雪を見ただけではしゃぎ出します。そんな部分もございます。
それから,要覧の12ページをあけていただきたいんですけれど,そこに施設の簡単な概要等を書いておりますが,名前も,最初はわからなかったので,学校という言葉,学校というような雰囲気を出したら具合悪いんじゃないかというふうな気持ちがございまして,やまびこの館とか,いろりの館とか,ゆったり温泉とか,星の館とか,そういう名前にしております。それに伴いまして私たちスタッフも先生とは呼ばせておりません。全部,愛称で呼んでおります。ちなみに私の場合は「たるさん」という名前で呼ばれております。何のことない,おなかが出てるからだけなんですけれど,所長なんかも「れいさん」とかですね。子どもたちも4泊5日いる間に,自分が呼んでほしい名前を自分で決めて,名札を付けるようにしております。その中で特徴的なのは,ゆったり温泉と書いてある,これはほんとうの温泉でございまして,近所に泉源がありまして,そこからお湯をもらっております。だから,いやしの効果はこの点につきましても非常に大きいんじゃないかなというふうに思っております。
それから,遊びの部屋とか,やまびこの館の中にいろいろな部屋があるわけなんですが,できるだけいろんなことが体験できるようにということで,様々なものを用意しております。特徴的なものを言いますと,本物のビリヤードの台ですね。それから,カラオケなんかも置いております。ただ,当所を開設する前にこういったところを何カ所か,適応指導教室を含めて見させてもらったんですが,どこの部屋にもテレビゲームが置いてあったんですが,これはどうかなっていう気がしましたので,テレビゲームは一切置いておりません。コンピュータ関係も,やりたいという子どもさんもいるんですが,予算の都合上,子どもが扱うコンピュータは今のところ置いておりません。ただ,そういった中で気になるのが,最近,中学生なんですが,携帯電話を持ってくる子が非常に増えております。都会のほう,田舎のほうに限らずそういった傾向がございまして,神戸,阪神地区のほうで,うちへ来た子どもさんの中で出会い系サイトでちょっと遠くまで行ってしまったとか,それで親御さんが非常に心配されたとかいう事例も,たくさんはないんですけれど,あるような状況になっております。それと,メールをずっとやっている子どもさんも見るんですけれど,せっかくうちへ来ているんだからお友達づくりをしたらどうですかみたいな形で勧めるので,幸い山の中にございますので電波がなかなか通りにくいというところはあるんですけれど,そこらあたりは,子どもさんに応じてなんですけれど,できたらお話ししようねという形で勧めております。人と人との関係が非常に持ちにくい子どもさんですので,そういった方向にはまるというふうなことも十分注意しておく必要があるんじゃないかなと思っております。
それから,活動内容なんですが,4泊5日の宿泊体験活動。これは「利用の手引き」のほう。これは保護者用につくっている「利用の手引き」なんですけれど,1ページをあけてもらったら,この4泊5日で,使用料,宿泊料等,経費ですけれど無料になっております。食費代だけもらっております。食費代が4泊5日で6,000円,リネン代が300円。それに体験活動に要した経費が幾らか。例えば,粘土とか板が100円とか200円で,1週間うちにおりまして大体6,500円ぐらいというふうな経費になっております。
それから,「利用の手引き」の3ページに書いてあるんですが,「要覧」にも書いてあるんですけれど,プログラムが一応書いてあります。基本的なパターンは決まっておりますが,自然学校だとか,いわゆる林間学校だとかいうふうな,何時に起床,何時に就寝というふうな形はとっておりません。わりと規制されるのが嫌いな子どもさんじゃないかなということがありましたので,大枠をつくりまして,その中で自主的にいろいろなことを判断してやっていこうというふうな体験活動をやっております。中学校2年生,3年生になってきて進路がちょっと気になる子どもさんが来られましたら,自分で勉強道具を持ってきて勉強をやっているような子どもさんもいます。また,設定してくださいと言ってくる子どもさんも中にはおります。「やまびこタイム」と書いてありますが,各プログラムとプログラムの間に結構,自由時間が長くありますので,そういった中でも子どもたちが多くの人とかかわるというふうなことをやっております。
それから,運営方針なんですけれど,「利用の手引き」の3ページのところに書いてあるんですが,「心の虹を未来へ!」というふうなキャッチフレーズですね。「虹」という言葉を使いましたのは,実際,私のところの職場は虹も出るんですが,親御さんと子どもさん,学校と家庭,児童生徒と先生方,この間のかけ橋役というふうなところを目指しております。
それから,子どもたちを中心に考えていますということなんですが,いろいろな場面で弾力的に柔軟に対応するというふうなことで,例えば,県のこういった公的なところがやっているんですよと言えば,申し込みは教育委員会を通してですかとか,学校を通してですかとか,何かそういうふうなことが必ず起こってくるような気がしました。そういうふうなのにわりと耐えられない子どもさんが多いんじゃないかなというふうな予測がありましたので,どこからでも結構ですと。電話だけで応対できるようにしておりますが,必要書類については,「利用の手引き」の後ろに付けております書類を提出していただくことになっております。柔軟に対応するということで,4泊5日は必ずするんですかとか,親子で必ず行くんですかとか,そういった問い合わせもあるんですが,中には,見学だけ,とりあえず1泊だけとかいうふうなところからスタートをしていく。お母さんだけの相談とか,もちろん先生だけの相談とか,そういったことも受け入れております。小さい子どもさんで,小学校2年生ぐらいの子どもさんで,下が幼稚園,保育所の子がいて,この子が動かないから一緒に行けないというふうな場合がありますが,そういった場合も,お部屋の関係で空いている場合にはみんなオーケーにしております。そうしましたら,中には犬も猫もというふうな,かなりペットを飼っている人もありまして,そういった方もあったんですけれど,ユニークなヘビとか,そういうのを飼っている子もいまして,それはちょっとと言ってペットだけはお断りしているんですが,小鳥は持ってきた子があるんですけれど,できるだけ子どもさんの中身に合わせて柔軟に対応しようと。お部屋の割り振りなんかもそのようにしております。親子で,どうしても母子分離がなかなかできてないとかいうふうな子どもさんの場合にはそういうふうなことをおっしゃいますので。
じゃあ,こういった中でどんなことをねらっているのかといいましたら,「未来への扉」,これはちょっと資料が古いんですけれど,平成12年度に兵庫県の小中学校の先生全員に指導資料として配布いたしました。その中の10ページを開けていただきたいというふうに思います。再登校につながる子どもの力を伸ばすメカニズムと書いておりますが,完全に再登校につながらなくても,人と人とのかかわりができるようになってきたとかいうふうなことなんですけれど,居場所ができる,自信回復する,自己決定,意欲の向上,こういったものを目指して取り組んでいる。まさに今さっき校長先生がおっしゃったような中身なんですが,例えば,体験活動で竹トンボをつくります。ペットボトルロケットをつくります。飛んだ,飛ばなかったで評価するだけじゃなしに,どうしても飛ばない子が出てくるわけですね。そういうところをうちのスタッフがよく見ておいて,どんなところを褒めて伸ばすかみたいな。竹の削り方はすばらしかったよと,その一部だけで,先ほど一人十色と言われましたけれど,まさにそういった部分を含めまして,存在感がない状態で学校で暮らしている子どもさんが非常に多いような気がしますので,できるだけそういった点を見付けて伸ばそうというふうな姿勢です。それから,安心しておれるというふうなことですね。自分で決めてやっていくというふうなこと。こういったことが前へ向いていこうかなという姿勢に随分つながっているような気がしております。
それから,こういったことは先ほど高校のほうの説明でありましたように,まさに私は授業そのものやないかなというふうに考えております。中でも,何をやったかということよりも,うちのスタッフのかかわり方が一番大事やないかなと。いわゆる人間関係ですね。そういったものが大事やないかなというふうに考えております。
それから,2番目の地域やまびこ教室。これはうちの出前事業でして,兵庫県下各7地区で,うちまで来られない子どもさんを,7カ所に出かけていって1泊2日で短縮版をやっているということです。
それから,3点目。カウンセリングと書いておりますが,主に親御さんが多いわけですが,入所のときに来られたときに1回制になる場合が多いんですが,一応,お話を伺うことにしております。また,帰りのときにお話を伺わせてくださいという親御さんもございます。子どもさんの場合は,向こうから求めてくる場合もあるわけなんですが,いろいろな体験活動をしながら話すことのほうが,子どもさんについては多いような気がしております。
4点目に指導者の研修ということなんですが,これは不登校担当教員が今60名配置されているわけで,その先生方の研修会。それから,自主的に先生方が来る自主講座。それから,適応指導教室連絡協議会。兵庫県に設置されている50ぐらいの適応指導教室を全部束ねて,私のところで研修会をやっております。それから,講演会とか,お母さん方だけ集める「不登校をともに考える会」も年間2回ほど,1泊2日でやっております。自主講座も1泊2日です。それから,自主講座に来られる先生,不登校担当の先生方は非常に熱心な方が多いような気がしております。中には,その学校の校長先生以下全部連れて夏休みに研修に来られるとか,そういった例もございます。先ほど委員さんの質問にもあったんですけれど,そういう学校は確実に不登校は減少している傾向にあります。見ていますと。「心配なんや,片山先生」「何が心配なんや」「ゼロになったら,これは引き揚げられるんやないのか」とか,そういうようなことを言いながらでも頑張ってくださいよと言っているんですが,確かにそういった,特に神戸市のほうにたくさん配置しているわけですけれど,私も行ったんですが,月1回,必ず勉強会をやっておられますし,非常に他の先生方の連携も図りながら,自分たちで独自に研修されている先生が多いような気がします。
あと,情報提供ということで,こういった機関誌。「やまびこ」というのは,兵庫県で5,999名,13年度のデータで30日以上行けない小中学生。その5,999名に全部渡るように印刷して,親御さんも向けです。それと,「虹のかけ橋」は教員向けです。これは小中学校の全教員に年間2回,「やまびこ」は3回,配布しております。それから,そこに置いてる緑の「研究紀要」,これは年1回つくっているわけですが,そのようなことをやっております。
そのほか,今日は来られてないんですけど,委員の斎藤環先生なんかに来てもらったりして,講演会なんかも自主的にやっております。
一応,私のところがやっている概要はこれだけです。平成8年に開設して以来,現在までに小学生が実人数で283人,中学生が1,082人,合計1,365人が来ております。それに伴って保護者の方は1,134人の方が御利用になっております。もちろん,相談とか,来所とか,電話とか,そういうのを含めますともっともっと増えるわけです。
それでは,ここで,簡単ですけれど,ビデオをご覧ください。
(ビデオ上映開始)
自然の中にあるというのは,見ていただいたらわかると思います。これはいろりの館です。今言った4つの柱です。
兵庫県各地から,とにかくあちこちから来ます。これが先ほど言った出会いの集いなんですが,後ろのほうにスタッフがいたり,それから,大学生のボランティアに来てもらっています。3人に1人ぐらいのわりです。
これは親御さんですね。
最初に名札づくり,先ほど言いましたプレートづくりなんかを一緒にやります。プレートというのは,部屋に張るプレートです。
それから,施設を案内して回ります。どんなことができるのかなということを知ってもらうために。
これは虹の館と言っております体育館です。
遊歩道。裏山に700メートルぐらいの遊歩道がございます。春はワラビ,秋はクリ,そういったものがたくさんなりますので,それをとってきて食堂に入れておくと,おばちゃんがおかずに出してくれてやと。そんな感じです。
製作体験をやるところで,調理実習をやったりするところです。
月曜日が終わって,大体2日目,火曜日なんですが,午前中はみんなでその日に食べる昼食の1品をつくることにしております。学校へ行けてない子どもさんばかりなんですが,スタッフよりもはるかに調理のことに詳しい子どもさんがおります。そういうときはその子が先生です。必ず火を通すものにしております。ああいう包丁の子もいるんですけれど。
それから,2日目の午後は地域の交流ということで,このときは地元の老人会の会長さんに来てもらって,しめ縄づくりをしました。ついこの前もやったんですけれど,最近ですとクリスマスのリースをつくったりとか,炭を焼いたりとか,それから,この後,陶芸が出てくるんですが,私のところのスタッフ以外の方が来ると結構集中してやったりするというふうな傾向がございます。いろんな方に来てもらってます。これは,兵庫県に立杭焼という焼き物の郷があるんですが,そこから来てもらって指導してもらいました。地元の老人会の会長さんが毎年正月に門松をこうやってつくってくれます。
3日目は選択活動で,午前中は主に製作とか創作の体験です。午後はスポーツ活動。両方とも大体80種類ぐらいの中から自分たちがやりたいものを選んでやるようにしております。イラストを描いたりするのが好きな子どもさんが多いですね。
これは,山へ行って材料を自分でとってきて,さっき言いましたクリスマスのリースをつくっております。
午後は先ほど言いましたようにスポーツです。スポーツといいましても,こういったものだけじゃなしに,マウンテンバイクだとか,そういうようなものも持っておりますし,それから,昔の遊びで子どもが喜ぶのが缶けりです。こういったものは全体でできるので,非常に喜んでやります。
これはペタンクという競技です。できるだけいろんなことができるようにしようと思っています。
4日目,木曜日になるんですが,お弁当を持って,私のところは29人乗りのバスを持っていますので,うちでできない活動をやりに行きます。このときはスケートでした。これからは,スノボーとか,スキーとか,それから,夏の間ですと釣りとかですね。魚釣りなんかも結構好きな子がいるので。それから,季節のいいときにはハイキングとか,そういったことも取り入れております。
これは夜の「やまびこタイム」の様子なんですが,4日目ぐらいになってきますと,こうやってみんなで仲よくいろんなことができるように徐々になっていきます。大学生のボランティアの子と将棋をやっております。こういった時間に先ほど言いましたように勉強する子も中には出てきております。
5日目,金曜日の午前中はみんなで後片づけ,部屋の掃除等々をやりまして,これはお別れ会。最後,今週行ったことでよかったことなんかをスタッフが話します。大学生のボランティアも話します。自分たちは,どんな思い出ができたかなというようなことを話すようにしています。
最後は,今はこの歌を歌っているんですが,毎年,歌は変えております。泣くのがよいとは思いませんが,帰りしなに,もっとおりたいとか言って泣き出す子が結構おります。1人ずつこうやって見送ることにしております。自家用車で来ている子もありますので。
これが4泊5日の活動です。
カウンセリングにつきましては,カウンセリングの部屋を2つ持っておりまして,これはうちのスタッフなんですけれど,こんな感じですね。
それから,先ほど言いました不登校担当研修会とか,自主講座とかですね。このときは花輪先生に来てもらった。うちの所長ですけど。こういった講義だけじゃなしに,グループワークとか,体験活動そのものも先生方にしてもらったりしております。
それから,情報の発信は先ほど言いましたようにこういうことをやっております。配布しているわけです。
知ってもらうということに苦労しておりまして,もう7年目になるんですが,広がりが十分じゃないなということは県内でも感じております。最近,少しずつ知っていただけるようになった。これは,保護者ばかり参加する1泊2日の「不登校をともに考える会」です。年間2回やっております。たまっているものを出したいというふうな気持ちがあるのか,とにかく明け方までお母さん方も話し込んでおられます。私のところのスタッフも中に入るわけですが,とどまりません。ずっと話しておられます。こういったグループワーク的なこともやるんですけれど,お互いに情報交換をしたりとか,先ほど,いろりの館と言いましたが,冬ですといろりの火をたいて,そういうところでお話をしたりもしております。当然,こういった精神科のお医者さんに来てもらった講義もやっております。
保護者同士の交流会は,小さい集団に分かれて,必ずコーディネーター役のうちのスタッフが1名入るようにしております。
ありがとうございました。
(ビデオ上映終了)
あと,いろいろな感謝の便りとか,登校を始めたよというお手紙をいただいたりするので,そういったところへは必ず返事を書くようにしております。
それから,成果になるんですが,レジュメのほうには書いているんですけれど,緑の「研究紀要」の66ページをちょっとあけていただきたいと思います。数であらわす分だけがすべてじゃないとは思っているんですけれど,66ページに過去3年間の,登校意識がどれだけ出てきたとか,というふうな追跡調査をやっております。うちを退所後3カ月後に全部の子どもたちにとっているんですが,登校状況がよくなったというのは12年度で58%。これは完全に復帰したという状況じゃございません。保健室登校だったのが教室にも行けるようになったよとか,そういったことも含めての話でございます。それから,その次のページですね。保護者対象にも同じように行っておりまして,家庭の中の様子についてはこのような状況になっております。それから,68ページのほうに児童生徒への調査。当所を退所するときに子どもたちにアンケートを書いてもらっているんですが,よかったことというところを見てほしいんですが,友達が欲しいけどできないというふうなことで困って来る子どもさんが多い。友達とトラブって不登校になっているような子どもさんが多いような気がします。したがって,その結果,人間関係がよかったというふうに書いているんですが,これは,当所のスタッフ,ボランティア,それから,同時に入所してきた子どもさん同士の中での友達関係,人間関係ができたということに喜びを感じる子どもさんが一番多いというふうに思います。体験活動そのものがよかったということよりも,そちらのほうに重きを置いている子どもさんのほうが多いような気がします。
それから,成果といたしまして,去年あたりから学校の先生が当所に研修に来る人数がものすごい増えております。それと,校内研修等に来てくださいというふうなことで依頼を受ける場合が多いです。学校のほうもどういう状況かわからないというふうなことで,ぜひ講義をしてほしいとか,一緒に考えてほしいとかというふうなことの中で,レジュメのほうにも書いていますが,3,017人。これはちょっと前と比べたら大幅に増えております。中身的には,例えば,家庭訪問はどのように進めたらいいのかとか,それから,保護者との関係づくりですね。それと,子どもとの信頼関係づくり等々についての話がよく出ます。
それから,保護者が参加しているということを言いましたが,体験活動に一緒に参加するということは,今見ていただきました体験活動は,保護者は基本的には自由にしております。だから,4,5人泊まっておられるときは保護者同士で別メニューを組んでされる場合もございますが,こういうふうなことになるんですね。体育館で例えばバトミントンとかバスケットをやっている子どもさんの様子を見ている親御さんは,大体が家の中でずっと一緒にいた場合には,大体ですよ。すべてじゃないんですが,ビデオを見ているか,CDを聴いているか,テレビゲームをやっているか,そういう状況を見られているんですね。それでだんだんと生活のリズムが変わってきて昼夜逆転傾向にありますよというふうな子どもさんが多いわけですが,何せ中学生が多いんですが,エネルギーはあり余っているような子どもさんが多いので,運動ははじけるようにやります。たくさんのことをやります。それは運動だけじゃなしに物づくりなんかにしてもそうなんですけれど,そういった様子を見るのが久しぶりやという,そういう見方で親御さんが見ておられます。そうすると自然に笑顔が多くなってきます。笑顔が多くなってくるということは,子どもさんに対する言葉かけが全く変わってきます。それは子どもを信じるということにつながるんやないかなと思うんですが,そういった意味での親子関係も非常にいい関係が構築されていくんやないかと。それと,親御さん同士,同じ悩みを持つ者同士の話ができるというふうなことで,それもいいんじゃないかなと思っております。親御さんのほうの来所の相談は,今年に入ってから昨年の2倍に増えております。
それから,体験活動なんですけれど,ちょっとレジュメとは違うんですが,私は子どもの様子を見ていて,体を動かせば心も動いてくるというふうな効果があるんじゃないかなということを感じております。まず当所へ来るということも動くということの1つですし,体験活動を何かやるということはもちろんなんですけれど,体が動いてくると話をしたがる。しかけてくる。こっちが問いかけても話をしやすい。そのような状況が起こっているように思います。そうするといろんな意味で自信につながる。前を向いて進もうかなという気運が出てくる。それから,そういうふうなことが友達とのかかわりにも有効に働いて,社会性の発達につながっていくんやないかなと。だから,じっとしているよりも動くということがいかに大事かなということを,うちへ来る子どもさんを見ていて感じております。
それから,効果というのか,成果というのか,そこらあたりを一番強く感じるところなんですが,課題なんですけれど,先ほども言いましたが,校長先生の話にもあったんですけれど,タイプとか,そういうのはいろいろあるんです。よい子の息切れタイプとか,非常に神経症的な子どもさんとか,それから,最近では非行傾向の子どもさんも随分やって来ますが,とりあえず当所は何らかの理由で学校へ行けない子はすべて受け入れております。ADHD,アスペルガー症候群等々,それのたぐいの子どもさんも時々やって来ます。そういう子どもさんも含めましてすべて受け入れておりますが,総じて一番感じるのは,これは課題やないかなと思うんですが,人間関係がいかに希薄かと。そういうふうな傾向にあるかということに若干恐ろしさも感じております。13万9,000人という数の示し方なんですが,私たちも学校の先生方の研修会で中学校の各学級に1名ずついるような状況ですよという言い方をしていたら,ある先生から四国全部から中学生が皆消えた数ですよというふうな話を聞いたんですが,そちらのほうがインパクトが強いかなと。なおかつ上のほうの年齢の子どもさんのひきこもりは,小,中,高で何らかの不登校を体験した子どもさんがずっと引き続いているというふうな情報も間接的に聞いたりするんですが,そういうことを考えると非常に恐ろしいなという気がしております。したがって,我々を含めまして,学校のほうも危機感を持つ必要があるんじゃないかなということを強く感じております。学校だけじゃなしに,当然,家庭とか,地域とか,そういった部分の教育力を十分活用していくということも大事なんですけれど,私たちにできるのは,とりあえず学校の中でどういうふうに変えていったらいいのかなというようなことを主に中心に考えておりまして,先生方に対する思いが非常に強いです。いわゆる頑張ってくださいというふうな意味も含めてなんですけれど。
そういうふうなことが1つは課題かなというふうに思うのと,それから,いろんなデータはあるわけですが,やまびこの郷へ来る子どもさんですね。子どもさんと体験活動をしながらいろいろ話す中で,ほとんどの子どもは,やまびこに来る子どもさんの9割ぐらいは,学校へは行ったほうがいいと思っていると答える子どもさんのほうが多いです。行けてない自分を責めている子どもさんは確かに多いです。例えば家庭で荒れているような状況にある子どもさんでも,いろいろ話をしていると,お母さん,お父さんには悪いことをしていると思っているというふうなことを私たちスタッフには言う子どもさんが結構多いというふうに思います。
それから,親御さんも,当然なんですけれど,できれば行かせたいというふうな願いがある親御さんが多いです。先ほど千何人って保護者の数を言いましたが,そのうち,行かせなくてもいいよと,行く必要はないよと言った方は1人だけでした。その方は,長いこと,3年生ぐらいからずっと行ってなかった子どもの親御さんで,多分なんですけれど,そう言わざるを得ないような状況にあったんやないかなと思うんですが,うちのスタッフがかかわる中で,お母さん,子どもさんがみずから学校へ行き出すと言い出したらどうされますかと聞いたときに,それは行かせてもらって結構ですというふうな答えでしたので,本心そのものは,できれば行かせたいというところにあるんじゃないかなというふうに思っております。
そういったことを考えたら,子どもさんの気持ちの中ではいろいろ葛藤があるとは思うんですが,今までの協力者会議の中でも話はされたと思うんですが,未然に防ぐ方法ですね。どうやったらいいのかなというふうなことを,私のところのノウハウなんかをできるだけこれから先は出していって,兵庫県下でいい方向に行けばいいなというふうに考えております。何とかなるんじゃないかなと。
それから,3点目に,社会性の育成ということが,先ほど人間関係が希薄だと言いましたが,その部分が一番問題かなと思っているんですが,社会性を育成する場合に,学校だけがそうじゃないよと。そういったこともわかります。例えば,小学校,中学校に行かなくてもも,高校から私のところへ来た子どもさんで行ってる子もありますし,兵庫県ではこういった,ちょっとパンフレットを持ってきたんですが,15歳から20歳までの子どもさんの不登校,中途退学等々に対応する,学校じゃないんですが,神出学園という中間的な施設を県立でつくっております。全寮制の施設なんですけれど,2年間の進路探しみたいなことなんですが,こういったところへも行って,当所へ来てからそこで寮生活をやっている子もいますし,どこかで何らかのそういう社会性が身に付けばいいなというふうには考えているんですが,不登校という問題につきましては特に,そういったことから言いますと,先ほどもちょっと言いましたが,学校の先生の資質の向上とか力量とかにかかわるところが多いんじゃないかなということを考えております。というのは,私のところへ来る子どもさんに先生が会いに来るわけですね。会いに来る。そのときに,大体の反応ですが,その本人は嫌がる場合が多いです。また学校に来いと言いに来たんやないやろかいうようなことも含めまして,会いたくないと言う場合が多いんですが,その周り,ほかに来ている子どもさん,お母さん方の大体の評価は,あんたんとこの先生はええ先生やな,こんな山奥まで来てくれるんか,というふうな反応が多いんです。そういうことを聞くにつけ,私は,先生方に対する期待であったり,それだけ先生が与える影響というのは大きいんじゃないかなと。特に学校の中で先生方と子どもさんとの信頼関係をいかにつくっていくか,確立していくかというふうなことが大事やないかなと思っております。
本年度利用した子どもたちは,例えばやまびこの郷が学校やったらあんたらは来るかというアンケート調査もしているんですが,8割以上の子が来ると言います。勉強するんやでと。体育も,英語も,普通の学校のようにあったりするでというふうなことを言うと,来ると言う子が8割ぐらいありますので,そういうことを考えるにつけ,うちのスタッフと子どもさんとの関係,ボランティアとの関係,その関係づくりを一生懸命やっている中でそういうことが生まれてくるんじゃないかなと。私のところでは,子どもさんにとにかく行動で示せと,泥まみれになってかかわりなさいというふうなことを常々言っております。ですから,最近の話ですと,例えばの例ですが,「ごまっとう」って知ってるって聞いたときに,知らないじゃだめですよというふうな話とか,子どもが今,何に興味・関心があるのかとか,そういったことも感じながらやらなくてはならない。それから,指導主事ですからそんなに若くはないんですが,例えば,先ほど言いました缶けりだとか,体を動かすものなんかも,できるだけ子どもさんと一緒にかかわるようにしております。そういった中で信頼関係が生まれてくる。だから,うちは繰り返して来ることも構いませんので,子どもさんが2回目,3回目に来たときに,あのスタッフに話を聞いてほしいということが結構ございます。
この9月からある中学校と連携して取り組んだんですが,その中学校の先生方の意識が徐々に変わっていったというのは,私のところのスタッフが出ていって校内研修等に参加したり,保護者の会に参加したり,また,来てもらったりとかいうふうなので,そこの中学校の子どもさんが何人かうちを利用したりと,そういうことをこの9月からちょっと実験的に,来年度の予算を取りに行こうかなということも含めましてやったんですが,ついこの前しましたら,既に先生方の意識が変わってきた。意欲が出てきたというふうな流れの中で,3割,昨年度よりも不登校になる子どもさんの数が減ってきたというふうな情報も得ておりますし,それから,特に1年生が少なくなったというふうな,いい情報も知っております。ところが,5,999人という子どもの中で私のところを利用するのは年間300人程度なんですね。実人数で言いますと。もっともっと,どうしようもない部分があるわけですね。そのうち,適応指導教室のほうで約1割ぐらい。学校の力で約3割ぐらい。それ以外の6割の子が残っているわけですね。そういったところにこれからどうすべきなのかなということも大きな課題だなということを感じております。私のところへ来る場合も含めてなんですけれど,来る子はいいんです。その6割の子どもさんというのはわりとどこも行ってないような子どもさんで,そこへどういう手だてをしていくか。私は,うちへ来る親御さん,子どもさんのいろいろな話を聞きながらですが,これからは訪問してやっていく訪問指導というふうなことが大事になってくるんじゃないかなということで,兵庫県では,私のところを中核施設として,今,サテライト構想を立ち上げつつあります。もっと子どもさんに近いところに持っていって,大学生のボランティア,担任の先生,適応指導教室の先生と協力して,そこから訪問指導なんかに,家庭訪問なんかに行くというふうなことですね。そんなふうな構想を持っているんですが,ただし,ボランティアの活用というのは,ボランティアにすべて任せるわけにはいきませんので,当然,うちのスタッフなり学校の先生との協力の上なんですけれど,まだ具体的じゃないんですが,そのような構想を一応持っております。その6割の子にどうするかというのが,これから兵庫県でも課題じゃないかなというふうに考えております。
それから,進路のことなんですが,先ほど言いましたが,神出学園以下,これも学校と十分連携を図りながら,一応,高校と言われる,私学なんかも含めまして,うちのほうでは情報をたくさん集めまして,定時制,通信制等々を含めまして,中学校の子どもさんには紹介するようにしておりますが,私のところが直接手を下して進路指導をするわけにはいきませんので,あくまでも情報提供だけでございます。
それから,最後になんですけれど,この協力者会議の中でいろんな話がなされて,これから先,いろんな方向性が位置付けられていくんじゃないかなというふうに思うんですけれど,教育そのものを考えたときに,今まで学校教育が果たしてきた役割というのは非常に大きいと私自身は感じておりますし,そういうつもりでうちのスタッフも取り組んでいるわけですけれど,例えば,今はいろんな選択肢がありまして,先ほどの高校のような場合もありますし,フリースクールの場合もありますし,適応指導教室でやっている場合もあるんですけれど,兵庫県内を見ましても,そういった相談機関だとか,いろんなところへ行っている中身ですね。それから,フリースクールを見ていても,中身的にはほとんど学校と変わらないことばかりじゃないかなと,僕は思うんです。例えば,カリキュラムが多少変わったり,自由性があったりとか,そういったことはあるんですが,そう思うと,私は,学校というものを中心に考えて,というのは,先ほど校長先生もおっしゃいましたが,それも1つやなと思うのは,子どもに合わせて学校が変わるというふうな視点だとか,観点だとか,そういったこともこれからは必要になってくるんじゃないかな。特に子どもさんの状況とか様子が変わっている状況の,そういうふうなことをどれだけ学校のほうが理解して子どものニーズに合ったようなものにしていくかというふうなことが大事になるんじゃないかなというふうに考えております。
ちょっと長くなりましたけど,以上です。
○ | ありがとうございました。具体的な活動の内容,成果,課題,あるいは県のネットワークづくりにも触れて,詳細にお話しいただきました。若干,時間が厳しくなってきましたので,少し焦点化して,御質問,御発言いただければと思います。 |
○ | 体験活動ということよりも,むしろサポートセンター,ネットワークのセンターというふうな感じがすごくしたんですが,スタッフのことでちょっとお聞きしたいんですが,常勤という形で書いているのはいわゆる正規職員なのか否かということですね。他に2つあります。年間予算はどれぐらいなのか。話しにくいかもしれませんけれども,教えていただければと思うんです。 申しわけありませんが,もう1点。いわゆる研修という形で不登校対応教員が60名いるのですが,兵庫県下の場合,いわゆる不登校対応教員は,何をやっているのかということをちょっと教えていただければ。その2点,よろしくお願いします。 |
【片山氏】 常勤,非常勤はおっしゃるとおりです。常勤は正規の職員,非常勤は平均しまして週30時間ぐらいです。
それから,何でしたっけね。
○ | 年間予算は。 |
【片山氏】 年間予算は,1年間に6,800万円ぐらいかな。と思っています。
○ | 人件費は当然入っているんですか。 |
【片山氏】 入ってない。維持費です。
それから,不登校担当。学校のほうで平均10時間ぐらいやないかなというふうに思っております。時々,もっとたくさん持っている先生も中には,学校によりけりなんですけど,あるみたいなんですが,平均はそれぐらいだというふうに聞いておりまして,例えば,別室に登校してきた子の対応だとか,それから,担任にかわってというよりも,一緒にも含めてですが,家庭訪問に行ったりとか,校内研修のほうでコーディネーター役をしたりとか,その学級,学級にいる子どもさんにその都度そういう対応をしておられるというふうには聞いているんですけれど。
○ | 簡単に質問させていだたきます。レジュメを見ますと,4泊5日いうことで保護者も含めての参加ということになっているんですが,大阪や何かでもこういうことをやっているんですが,児童生徒だけ対象ということなんです。ここにこだわっておられるといいますか,こだわっているとしたら,それはどういう意味なのかなということをお聞きしたいなと思います。 |
【片山氏】 親御さんですね。先ほどちょっと言いましたが,緊張もあるんですけれど,悩んでおられるという親御さんが非常に多いような気がします。それと,親子関係がなかなか難しいような状況の親御さんもありますし,気分転換,発散,相談等々を含めて,親御さんの気持ちが少しでも前向きになるようなことが1つ,先ほどちょっと言いましたが,子どもが前を向いて行くのに大事なことやないかなというふうなことが一番大きいというふうに思います。
例えば,こういう場合が多いんですね。3世代で,一般的に,すべてじゃないんですけれど,お父さんは仕事,仕事,仕事と。お母さんが一生懸命かかわっておられる。おじいちゃん,おばあちゃんから,おまえがというふうに言われて,困っておられる,悩んでおられるというふうな場合が比較的多いような気がします。そういった中で,どこかでサポートしてあげる場所がないというふうなことですね。先ほど言いましたように,親御さんに大きいのは,子どもさんの様子を見られて,それで変わっていかれるというふうなことが多いので,一緒にいるということは,活動をすべて一緒にしなくても,非常に大事じゃないかなというふうに考えております。
○ | 3つばかり聞かせていただきたいと思います。適応指導教室等の研修も含めて活動されていると思うんですが,例えば,兵庫県の情勢は余りわからないんですが,適応指導教室自体,非常に小さいところが多いだろうと思うんですね。そういったところはなかなかキャンプ等の活動ができないと思います。そういったものを含めまして,先生のところで集中的に各適応指導教室からの参加を募ってキャンプを張られるのか。また,仮にそれをやっておられるんでしたら,その活動の中で担当者と子どもたちの人間関係にかなり配慮が必要になってくると思います。そうすると各適応指導教室のスタッフも同伴しなくては難しい問題も出てくる。そういった問題をちょっとお話ししていただければと思います。 それから,キャンプ中というのは,かなり健康度が高い子が参加できるだろうと思うんですが,子ども同士のトラブルは起きないのか。また,あえてそれを起こさないようにしているのか。私ども適応指導教室というのは,子ども同士のトラブルというのは非常に大切に考えて,起きた段階でどうフォローしていくかというのを考えてやっているわけですが,その点はどうなのか。 それから,極めて簡単なことなんですが,バスがあるということですので,常勤の運転手の方がいて,いつも使える状況なのか。必要なときだけ来ていただくような,非常勤という形をとっているのか。 以上,3点を教えていただきたいと思います。 |
【片山氏】 適応指導教室のほうからは,例えば,尼崎市の適応指導教室,伊丹市の適応指導教室等々,年間計画の中で各市教委ごと,何とか町というふうな小さい適応指導教室もまとまって来ることが結構あります。全部じゃないですけれど。ただ,予算等に限りがあるので,4泊5日全部しないで,2泊3日だとか,そういった形で来られる場合があります。同伴は必ず適応指導教室の先生が一緒に来られます。それにお母さん方もついて来られる場合もあります。適応指導教室で来られる場合には,どちらかというたら保護者の参加よりも教室の指導者の先生の参加のほうが多いです。
そのときの子ども同士の人間関係なんですが,適応指導教室そのもの,そのときだけじゃなしに,今週なんかも11人,12人ぐらい来ているわけなんですが,子ども同士の人間関係のトラブルは発生します。先ほど委員さんがおっしゃったように,私のところもその都度,その都度,子どもさんにかかわっていくようにしております。そんな極端なことは起こらないんですけれど,例えば,泊まる部屋を変えてほしいとか,話をしにくいからとかですね。そういうときには,私のところのスタッフが話に乗るのと,大学生のボランティアの方にお願いして,上手に接着剤役になっていただくようなこともやっております。それが嫌で帰る子も中にはいますけれど,それはとめないんですけれど,それでも何とか頑張っていようかなというふうで4泊5日こなして帰る子どもさんのほうが多いような気がします。
それから,バスの運転手さんなんですが,非常勤です。同じように週30時間です。ですから,1日中出かけるときは長い勤務になるので,出かけないときには早く帰ってもらうとかいうふうな,勤務の時間を割って,出かけるときにいていただくように,そういうふうに配慮しています。
○ | ありがとうございました。4泊5日というのは短いのかと,実は私は思ったりするんです。私どもは悪戦苦闘の毎日で,毎日,夜11時まで子どもたちと闘っていて,闘っているというのはおかしいんですが,やっていて,なかなか難しい問題だったりするんですが,4泊5日で各適応指導教室から来る子どもたちを受け入れていくということなんですが,その後のフォローとかというのは,例えば,センターと適応指導教室のネットワークというようなことをきちっとやっているのかどうかとか,期間が短いのではないかなというところをちょっとお聞きしたいということと,人件費抜きで6,800万円というのは,嫌味ではないんですが,ほんとうにうらやましいなというのが実感でございます。 |
【片山氏】 震災がありましたので,一度は吹っ飛んだんです。平成8年4月にオープンする予定が全部,一たんゼロになりました。それまでに準備を立ち上げておりましたので。というふうな流れはあるんですけれど,そんなことはいいんですけれど,4泊5日が長いのか短いのかということについては,一番最初に言いましたが,私たちも手探り状態でした。部屋も一応3人部屋なんかにしているんですが,それもよく質問が出るんですが,3人部屋は何か根拠があるのかというふうなことは何もございません。特別ないんですが,今の段階でうちのスタッフで評価しているのは,結果的に4泊5日がよかったんやないかなと。というのは,月曜日,火曜日ではちょっと短過ぎるし,金曜日ぐらいまでいると,もうちょっとおりたいなという感じで,また来ようかということでまた来てもらえるわけですね。当然,すべてが1回来たからといって簡単に学校に戻っていくわけじゃございませんので,私のところに3回,4回,5回と繰り返して来るリピーターが結構多いんですね。リピーターが繰り返して来てくれる中で少しずつ少しずつ前向きになっていくという経過がありますので,ちょうどいい加減かなという気がしております。話をしたいなとか,友達ができたし,先生と別れるのは云々というふうなこともよくあるんですが,また来たらええやないかとか,また違う友達づくりに来たらいいじゃないかというふうなことで帰すことにしております。
それから,適応指導教室のことを先ほど言いましたが,実は,申し込みは適応指導教室からよりも親御さん個人からの申し込みのほうがはるかに多いんです。
それから,適応指導教室で言いましたら,連絡協議会というのを年に2回,全部,私のところの施設に集まってもらいまして,そこの指導者,担当者等に研修会をやっています。1回は,私のところを知ってもらう意味で,全部うちに集まってもらっております。もう1回は交通の便が悪いので神戸市内でやるようにしているんですけれど,2回。そのときも,いろんな講師さんを招いたり,分科会みたいなことをしたりしてやっております。
○ | 貴重な情報提供をしていただきまして,ありがとうございました。 今日はもう1つ話題が予定されておりますので,この辺で次の,不登校児童生徒の支援のためのITの活用についての議論に移らせていただこうと思います。 事務局から先ほど資料提供等ございましたが,補足の説明等はよろしゅうございますか。 では,早速,議論に入りたいと思います。先ほどの資料の中に松原市の教育委員会の資料等もございましたので,そのことに関して御質問があれば,お答えいただければありがたいと思います。 どなたからでも,御発言いただけますでしょうか。 お願いいたします。 |
○ | お話がございましたので,少しだけ補足をさせていただきたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。 「心の窓にアクセス」事業でございますが,これは今年度立ち上げたものでございます。目的は,情報機器を活用いたしまして,ひきこもり傾向にある児童生徒の家庭と養護教諭とか,適応指導教室の指導者であるとか,担任とか,友達とか,インターネットでつなぎまして,心の交流を図ることを通して学校復帰を促そうということでございます。 また,適応指導教室にも入らない子どもたち,そして,学級で部分登校さえも実情として対応し切れない子どもたちは,結果として家庭に放置された状態にあるわけであります。そういった状況にある子どもたちに対し,何とかかかわりを持ちたいということで,市長部局とセットで取り組んだということも目的の一つでございます。システムにつきましては,情報機器につきましては無償貸与する,また,通信費につきましても,各家庭にかかった分だけ全額補助をするといった対応でございます。特に情報機器の活用ということに着目いたしましたのは,情報を豊富に提供できるということと同時に,音楽や動画添付つきの多彩な表現手段で子どもたちに発信が可能だということ,また,対象児童生徒が一方的に情報を遮断することもできるし,相手の声や表情等,反応を気にせずに情報収集,もしくは発信できるといった,こういった機器の特性を生かしまして,1回やってみようかということで始めたわけでございます。最初は,1人も発信がないんじゃないかなということで大変不安になったわけでございますが,現在,小学生が3名,中学生が11名,計14名の交流がございます。 主にひきこもりがちな児童生徒が対象の対応でございますので,そういった視点から言いますと,適応指導教室にも入所しない,関係機関で継続的に対応していない子どもたちの,現在およそ,小学生で言いますと30%,中学生で言いますと20%弱がこういった形で機器を活用して交流しているということでございます。ひとまずでございますが,小学生1名が学校復帰,また,中学生1名が部分登校を可能にしたという状況が生まれているわけでございます。お手元の資料に個々のケースが書かれているわけでございます。また,適応指導教室の友達との交流の中で,適応指導教室に入所したといった子どもたちも生まれつつあるわけでございます。取組につきましては,バーチャルな体験でございますので,それを実体験まで高めていくという総合的な指導の中で位置付けることが大切であると認識しているところでございます。部分的な学校復帰を果たした子どもたちの担任等に聞いてみますと,長期欠席の場合は担任もかわる。したがって,担任やけども一切かかわれないといった状況の中で,こういうきっかけが会話をスムーズに生んでいくといったことも聞かれるところでございます。何につきましても,今後はこういった子どもたちの学習支援等も含めたプログラムといったことも含めて対応をしなければならないというふうに思っているところでございます。何につきましても始めたばかりで,自前でやるといいますか,何の情報提供もなしにやっているところでございますので,またいろいろ御指導いただければありがたいなということで,今日は資料提供をさせていただいたということでございます。 以上でございます。 |
○ | ありがとうございました。 限られた時間の中ですので,ただいまの御説明に対する御質問,あるいは,それぞれのお立場で情報をお持ちの方は情報の紹介,御意見等も交えて,どなたからでも御発言願いたいと思います。 私のほうから1つだけ。ちょっと教えていただきたいんですが,今,お取組についてお話を伺いましたが,1つ焦点化させるとして,こうしたITの活用についての取組として,松原市の取組を通して,今後に向けて,こういうことが可能性としてこのITの活用については重要じゃないかというようなことであるとか,あるいはそのことに関連する,特に課題意識というようなことがおありでしたら,ちょっとお教えいただければありがたいんですが。 |
○ | まず課題意識からでございますが,こういったメールの交換が学校復帰を目指す取組のすべてではございません。あくまでもひきこもり傾向にある子どもたちに対する教員や友だちの直接的な働きかけを促す1つの有効な手段であるということでございます。そういった点についてどのようなノウハウを今後蓄積していくかということが1つでございます。1つの例といたしましても,先生の日常,ふだんの粘り強い訪問活動等も含めた指導と相まって学校復帰を果たしたということが実情でございますので,学校復帰を目指す総合的な指導の中に今後学習支援も含めてどう活かしていくかといったことが1つでございます。 2つ目は,これは無償で通信費全額補助という形でやっておりますのは,市長部局が全面的に支援をしていただけるといった中でしかできないといいますか,委員会だけの予算では決してできませんので,そういった点での今後のこの事業の継続をどう図っていくのかといった,お金の要ることでございますので,機器,通信費につきましてはこういった点も課題だなというふうに思っております。 以上でございます。 |
○ | 今のお話の中にも関連してくることだと思うんですが,実際に対応されているパソコンの台数等,何台ぐらい用意があるのか,現在どの程度貸し出されているのかということ。あと,特定のところにだけしかアクセスできないというような形でこの説明の中に書かれているように見受けたんですが,一般のホームページ等に対するアクセスはどういう方法で実現できるようになっているのかというのをお教えいただけないでしょうか。 |
○ | まず,アクセスの問題でございますが,こういった事業の趣旨に必要なメール交換しかできないような仕組みをセットしましてお渡しするということでございます。過去,大阪でもこういったことをやった実例があるわけでございますが,そういった規制をせずにそのまま渡したといった中で,いわゆる有害情報の問題等も起こったと伺っているところでございます。 それから,機器につきましては,今現在,17台貸し出ししているということでございます。中学校を卒業すれば返してもらうということでございますが,必要に応じて機器の整備等を行うといった対応に努めております。 また,通信費につきましては,各家庭に対する全額補助といった形で対応しているところでございます。 以上でございます。 |
○ | ありがとうございます。東京でも三鷹市とかがそういう貸し出しをしてやっているというのを聞いたことがあるんですが,今回,具体的なお話を伺えてよかったなと思います。 この資料を見せていただく限りでは,適応指導教室に来たけれどもなかなか来れない子へアクセスしてだんだん直接対応に結び付けていくという成果もあると思いますし,ひきこもっている子たちへの窓口になるということもあると思いましたが,1つ気になった点として,メールというのは即時対応が可能で,手紙とかよりも随分時間的に子どもたちにとったら手ごたえがあるというツールだと思うんですが,その反面で,危機対応と言ったらいいんですかね。例えば,夜中に死にたくなったとかっていう形でメールを送ってきて,すぐに返事が返ってきたらいいけれども,夜ですから,次の朝になるとか,昼になるとかというときに,子どもたちのケアはどうなのかなというところで,もし何かこれまでにそういうことがあれば,あるいは,こういうふうに予防しているとか,対応を考えているということがあれば,お教えいただけたらと思います。 |
○ | 今後整理していかなければならないんですが,現在かかわっておられる養護教諭とか担任の先生は,家にもパソコンを持っておられるということで,特にひきこもり傾向にある子どもたちは夜型でございますので,家へ帰ってゆっくりメールチェックをするといった中で,実際の交流は夜,先生方にやっていただいているということでございます。現在,メール交換をしている子どもたちにつきましては,そこまでの情報提供はいただいていないということが実情でございます。 もう1点は,この夏に,ひきこもり傾向の子どもたちに対して,先生方が家庭訪問をしまして,このパンフレットを保護者に説明して手渡する中で,じゃあ受けますということで,親が許可するといった形で取り組んでいます。また,このパンフレットも実は,適応指導教室の子どもたちが僕らがつくった原稿をチェックしてくれました。要はこのパンフレットをそういうすべてのひきこもり傾向の子どもたちが見たときに心が傷付けば意味がありませんので,何回か適応指導教室の子にチェックしていただいた文になっております。 以上でございます。 |
○ | ありがとうございました。学校,あるいは関係機関等に関係を持つことのできない子どもさん,あるいはひきこもりの状態にある子どもさんにとっては,今のお話のようにITの活用というようなことは非常に意味がある有効な手段である。しかしながら,まだ十分課題が解明されていない面がありまして,ITの活用の内容についても,例えば学習に関する内容などについてはどういうふうな活用があるのかなんていうようなことについてはまだ十分な研究がなされていないという現状にあるのかなというふうに思います。今後引き続き,そのために必要な支援体制,あるいは留意事項等について研究を続けていくということが今のお話から確認されたのかなというふうに思います。 それから,今日の内容について,最初にさかのぼりますと,まず,不登校という場合に,我々,義務教育段階を頭に置くことが多いわけでありますけれども,考えてみますと,小中学校時の不登校の問題を克服できないでいる生徒さん,あるいは高校に入って不登校を起こすというような生徒もいるわけでありまして,その問題については不登校の中卒後の諸課題の1つとして認識する必要があるじゃないか。それから,委員さんの御意見の中にもありましたように,これは高等学校での取組であると同時に,そこから得られる,今日の御発表の中には小中学校でも十分考えなくてはならない問題がありまして,これは片山副所長さんからの御発表の中にも御指摘がありましたけれども,例えば,一人一人の子どものニーズを受けとめる指導体制が大事じゃないかという御発言であるとか,あるいは天井先生からのお話の中にあった,社会に自立できる力を育てる多様な取組が重要であるというような御指摘については,ひとり高等学校だけの問題ではなくて,小中学校における問題としても非常に重要な御指摘をいただいたのかなというふうに思います。と同時に,自立に向けた様々な体験や就職,または再び学習することができるような,広い意味での進路の問題についてもこれから考えていかなくてはなりませんし,それから,御質問の中に出ましたけれども,高校における入試選抜の配慮の在り方についても議論がされましたけれども,こうしたことについても今後,取組について充実を図っていくことが大事だということが今日の話し合いの中で確認されたというふうに思っています。 それから,不登校児童生徒を支援するための体験活動の重要性については,このところ何回かのこの会議の中でずっと,ある共通している御指摘があったかなというふうに思いますが,様々なお立場でそれぞれ様々な取組がなされていて,そして,その中で成果を上げておられると同時にそこに課題もあるわけで,こうしたことを交流していくと同時に幅広いネットワークを組んでいって,ほんとうに一人一人のお子さんに対してきめ細かな配慮がなされていく,そうした官民連携してのネットワーク等が重要であるということのお話が今日もまた確認をされたかなというふうに思っております。 そうしたことを受けて,いよいよこの会議もそろそろまとめの時期に入っていくわけでありますが,今後の予定についてでありますけれども,年内の会議は本日が最後となります。これまでの議論等を踏まえまして,私と事務局で相談をさせていただきまして,年明けの最初の会議には,ここまでに出されてきた議論を「これまでの意見の整理」という形で提示をさせていただくということで予定をしているわけでございます。そんなことも踏まえて,次回の日程等について事務局から御説明をお願いしたいと思います。 |
● | 資料7で配付させていただいておりますが,前回も御紹介させていただきましたので詳細は割愛させていただきますが,次回は1月14日(火)の午前10時から,同じくこのフロラシオン青山にてお願いしたいと思います。 ちょっと別の連絡事項になって恐縮ですが,間もなく,今年の夏に一部速報を公表しております,平成13年度の児童生徒の暴力行為,あるいは不登校,いじめ等の状況につきましての調査結果の確定値を公表させていただく予定でございますので,各委員の先生方の御自宅のほうに送付させていただきたいと思っております。 |
○ | ありがとうございました。 今日も,ほんとうに御苦労が伝わってくる御報告を,お話を伺いまして,我々も大変大きな示唆を得ることができました。貴重な御発表をいただきましたお二人に改めて感謝を申し上げたいと思います。 (拍 手)
|
○ | ほんとうにありがとうございました。 では,何か緊急にここで御発言のある方はいらっしゃいましょうか。よろしゅうございましょうか。 では,予定の時刻となりましたので,本日はここまでにさせていただきたいと思います。 委員の皆様方,どうもありがとうございました。 |
● | どうもありがとうございました。本日も昼食を用意しておりますので,お時間のある先生方はお残りいただければと思います。 |
−−− 了 −−−
(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)