○ どうも斎藤でございます。なかなか出られませんで失礼いたしましたが,できるだけ今後参加させていただきます。よろしくお願いします。
○ ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
では,本日は,前回に引き続きまして学校における対応としまして,1つは教員の指導体制,もう1つが養護教諭やスクールカウンセラーなど教育相談体制の充実に関して,更に家庭訪問の在り方など学校と家庭との連携,こうした点を中心にして御議論をいただきたいと思っております。
前回同様,お2人の委員さんにはこちちのほうにお座りいただいておりますが,ヒアリングをいただいた上で議論ということになりますけれども,議事の順としましては,最初に,養護教諭のお立場として松野委員さんから,それから次に,スクールカウンセラーについてのお立場から伊藤委員さんから,それぞれヒアリングを行いまして,それから,質疑応答の後に事務局から配付資料の説明をいただき,こうしたことを踏まえた上で闊達な議論をお願いしたいと思います。
この問題は明確になってきたのが平成4年の委員会からとしますと,それから考えましてもかなりいろいろな議論を重ねておりまして,その間,指導資料等も作成されていることでありますので,特にその中で,今日の議論の中では,既にもう言われているけれども,ここでぜひ再確認が必要であるという重点事項を確かめることと,それから,やはりこの点が少し弱いじゃないかとか,こういう点が新しい事態を考えた場合に重要だというようなことを,少し焦点化をして議論が進められればと考えておりますので,そんなことでよろしくお願いをしたいと思います。
なお,お手元に,そんなこともございまして,本日御議論をお願いしたい点につきまして資料を配付させていただいておりますので,御参考にしていただければと思います。
それでは,まず,事務局のほうから本日の資料等につきまして確認をお願いいたします。
● お手元の資料1をご覧いただきまして,本日の事務局からの配付資料は資料1から資料8となっております。大変恐縮ですが,各自御確認の上,足りない場合は事務局のほうにお知らせいただくようお願いいたします。
それから,資料1から8のほかに,御参考のための資料といたしまして別途4つの資料を配付させていただいております。1つが,養護教諭の在り方に関連しまして,昨年3月に財団法人日本学校保健会から出されました教員用のパンフレット「健康相談活動の進め方」というものを御参考に冊子をお配りしております。2つ目は,こちらの会議でも2回目の議論で俎上に上がりましたLDですとかADHDに関連しまして,先日,文部科学省の協力者会議のほうから中間報告が出ましたので,そちらを御参考に配付させていただいております。3つ目といたしまして,スクールカウンセラーに関連しまして,相馬委員のほうから御提供いただきました資料をお配りしております。それから最後に,御参考に,中央教育審議会で示されました教育振興基本計画の中間報告案の抜粋と関連の新聞記事について配付させていただいております。
以上でございます。
○ ありがとうございました。資料に関して,あるいはただいまの御説明に対して何か御質問はございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
それでは,これからヒアリングに移りたいと思います。前回のような形でお1人につきましてお話を15分ほどお伺いをした上で,まずは,それぞれの御発表に関して5分程度質疑をし,その後,事務局からの配付資料についての御説明をいただいた上で,ただいまのことについて,また協議を深めていきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
では,松野委員さんからよろしくお願いいたします。
【松野委員】 おはようございます。よろしくお願いいたします。
それでは,資料が手元にいっているかと思いますので,それにのっとった格好でお話をさせていただければと思います。一応保健室という場所と養護教諭というこの2つの組み合わせの中で,子どもたちへのいろいろな対応の状況等をお話をしながら,不登校あるいは不登校への前段階であります保健室登校と,そこら辺のところを中心にお話しさせていただきたいと思います。
まず1つは,養護教諭の役割と保健室の機能ということでそこに挙げさせていただきました。これらについては皆様もう既にお目を通されていることと思いますし,既に御理解いただいているものだとは思っておりますが,何せ養護教諭,保健室というイメージは,どうしても学校の中でもまだまだ,子どもたちが具合が悪くなって来た,あるいはけがをした,そういうときに処置してくれる人という範囲で考えられているという部分もあり,全国的な様子をお聞きしますとございます。そこで一応私たち養護教諭あるいは保健室というものは,今はこういう考えのもとで執務をさせていただいているというあたりのところをもう1度御確認いただければということで,ここにあえて挙げさせていただきました。
保健室というのは,そこに書いておきましたけれども,私たち養護教諭の間では子どもたちを限定して保健室に入れる,入れないということは一切しないというスタンスでずっと執務をしてまいりました。ですから,場合によっては保健室は甘やかしている場所だとか,ここ10年ぐらい前からはそういうふうに見られていたということもありましたが,今はあくまでも教育の場ということで,子どもたちの心と体というものにかかわっていますし,研修等においてもこうした考えが出ています。ですから多くの養護教諭はそういうつもりで執務に当たっております。保健室はいつでもだれでも体を通した訴えができる場所というところ,それから,教室にはない安らぎの空間があり,いつでも養護教諭がいるんだということ,それから,けがや病気の手当で額に手を当ててみたりとか,あるいはおなかをさすってみたりとか,そういうことが自然の中でできる,スキンシップができるという部分で,子どもたちにとっては,それは心の安らぎあるいは安定感につながっているということも重々,私たち養護教諭の中では認識をきちっと持ちながらやっております。ということで,養護教諭の役割と保健室の機能というあたりのところをもう1度御理解いただけたらと思います。
それから,不登校と養護教諭という2番目のところでございますが,資料として「生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の施策について」というのをいただいておりましたが,そこの中から抜粋させていただきました。2枚目にそれが多分付いていると思うんですが,その中の「指導の結果登校するようになった児童生徒」に特に効果のあった学校の措置という部分なんですが,これを見ますと,不登校への指導結果の状況という部分の中で,「学校内での指導の改善工夫」という欄では,4の「養護教諭が専門的に指導にあたった」,それから,10番の「保健室等特別の場所に登校させて指導にあたった」ということで,養護教諭あるいは保健室にかかわる内容での効果がかなり大きいととらえております。特に中学校においては,1枚目の資料に入れておきましたが,かなりの効果が出ているとみております。
少々時間の経過があって残念なんですが,平成8年度の全国養護教諭連絡協議会の調査で,「児童生徒の心の健康に関する調査報告」によりますと保健室以外の部屋に登校している児童生徒のいる学校は,小学校6.9%,中学校35.4%,高等学校8.3%という結果が出ています。さらには,このように保健室以外の部屋に登校している子どもたちのいる学校において,子どもたちと養護教諭のかかわりの有無については,あると答えている学校が,小学校61.5%,中学校68.8%,高等学校63.9%といずれも6割以上の学校で養護教諭がかかわっておりますし,特に中学校は高い数値が出ております。保健室登校はじめ別室登校も加え不登校への歯止めであり,教室復帰へのステップとなっていると思っております。ここで,保健室登校にふれさせていただきます。保健室はただ単に子どもたちを甘やかしているだけという先ほど申しました声も一昔ありましたが,しかし,今は教育の場として保健室を位置付けておりますので,レジュメの(2)にありますような保健室の教育的意義という部分を,私たち自身がよくこれをかみ砕きながら日常の執務に当たっているところでございます。と同時に,他の教職員の方々も今ではこういうことをきちっと理解してくれて,保健室との連携ということをなさってきている学校が多くなっていると思っております。
お手元に「保健室利用状況に関する調査報告書」というのが14年9月に日本学校保健会から出ておりますが,これの16ページをご覧いただけますでしょうか。これは調査時点において保健室登校している児童生徒がいる学校の割合ということで調査したものなのですが,増加の傾向であり,特に中学校は著しく多くなっています。
先ほどの平成8年度の全国養護教諭連絡協議会での調査でも保健室登校の項目があり,お手元の保健会での8年度の数値と比べてみたのですが,多少の数値の差が見られるのですが,このことは対象校の違いから出たものであり傾向的には同じであり、中学校が多くなっております。それから,13年度の結果を保健室利用状況調査の中で見ていただけれはわかるんですが,やはり中学校の増加がかなり大きいということがわかっていただけるかと思います。
いつでもだれでもどんな理由ででも入れる保健室であって,いつも養護教諭がいて,ゆっくり話のできる空間と医学的な事柄に対応できる設備と,スキンシップが自然な形でできて,心に安定感を持たせることが可能という養護教諭の役割,特質そして保健室の機能を有効に活用する中で保健室などの教室以外の学校内の場所に踏み入れて来れるという意欲を私たち養護教諭はまず大事にしていく必要があるし大事にしてかかわっています。
そういう現状からしますと,やはり今,養護教諭はどの学校においても頼りにされておりますし,そして実際かかわりを持っている子どもたちや保護者がたくさんおります。こうした状況の中で養護教諭は1人配置がまだまだ多く,子どもたちが次のステップを踏み出すために校内,校外との連携をどう作り出すか,また子どもたち及び保護者に対しての対応など考えたり動いたりすることがままならぬ状況であることも現実です。そこで,4つ目に,「さらに子どものニーズにこたえるための課題」ということで,養護教諭の複数配置ということを入れておきました。これにつきましては,利用状況の35ページを見ていただけますでしょうか。1校1日当たりの保健室平均利用者数というのが出ているんですが,これを見ますと8年がすごく多かったのに比べて13年が少なくなっているんじゃないか,保健室利用はどんどん減っているんじゃないかと思われがちなんですが,続きまして84ページを見ていただきたいと思います。要するに,児童生徒への平均の対応時間というのはどんどん増えてきているという現状がございます。ですから,今,養護教諭は1人のところが多く,1人の生徒に対応している時,別の子どもが保健室をのぞいていて,あっ,誰かいるということでそのまま戻ってしまうのですが,教室に戻れればいいのですが,そのままおうちに帰ってしまい次の日から学校に来なくなってしまっているという子どもたちが結構いて,あのときにお話を聞いていたらこんなことにはならなかったかもしれない等と研究会等で数多く聞かれます。
年々子どもたち1人に対しての対応時間というものはどんどん増えていまして,それは,子どもたちの話の内容がかなり複雑化していることや,次から次と話が尽きなかったり,逆に心の中が見えない状況で本人もどうすればよいのかわからなぬままにいるなど対応時間も長くならざるを得ない状況はほとんどです。しかし言いたいことを言い出すとその後はびっくりするほど何事もないかのように過ごしている子どももいます。ですから私たち養護教諭は子どもたちの言い分はきちんと聞いてあげるという大切さを身をもって感じているのです。しかし,このような明るい結末ばかりではありません。往々にして子どもたちは社会の環境に左右されやすく,子どもたちを理解するのに1つのことではかりきれないことが多いことも現実です。子どもたちをわかるにはどうしても研修の積み重ねが必要です。養護教諭の中には,休日を利用してわざわざ地方から東京に研修に出かけている人も数多くおります。官制研修で基本的な研修ではないだろうかと思える初任者研修や10年研修も養護教諭には法律の壁が厚く悲しい思いをしていおります。
保健室の環境整備について触れさせていただきたいと思います。今,新しく建て替えているような学校の保健室は,保健室の隣に相談室を設けたりとか,行き来が中からできるような状況で建て替えられているところが多いんですが,昔ながらの学校ですと,どうしても保健室の中でコーナーをつくりながら,今,子どもたちは保健室登校なんかをやっていましても,他の生徒と会うのがすごく嫌なんです。人と接触することを最初はすごく拒みます。ですから,例えば私であれば私とその子だけというところから入っていくんです。だんだんそれを外に向けて教育相談係の先生,あるいは担任の先生,副担の先生というような中で体制としてそういう体制をつくりながら外に向けさせていくわけですが,なかなか思うように保健室という場所が使えないという状況でございます。どうしても囲ってしまって,ほかの子どもたちに対応することがまたどんどん出てきてしまいますので,その子どもに対してはそこの囲いの中におく時間がすごく長くならざるを得ないのです。複数配置というあたりのところをきちっとしていただきながら,子どもたちを早目早目の対応の中で早期に教室に復帰できるようにさせたいものだなということも考えておりますし,それから,もう1つは,いまだに校内の中でも電話も使えない,もちろん校外にも電話を使えない,そういうようなことがあって,プライバシーとの関係で,職員室の真ん中でいろいろ電話をするのはどうもはばかる部分がございます。そういう施設・設備というものもなかなか思うようにいっておりません。その施設・設備についても,この報告書の中に,保健室利用状況に関する報告書の中に,今年度初めて入れてみました。その中で電話等の部分も内線だけ,あるいは内線さえもないというところの学校もございます。
そういう中で,例えばスクールカウンセラーさんとの連携の在り方等につきましても,なかなか保健室を出られない。スクールカウンセラーのほうが時間で学校の出入りをしている関係があって,保健室にまでもなかなか足を運んでいただけないぐらい子どもたちとのかかわりがあるとか,そういうときに次の日にはその子どもをスクールカウンセラーさんが見ていただけない場合に,どうしても養護教諭に回ってくるということがあって,連携をとることの必要性が大きいし,子どものことを考えても必要なことだと思っております。スクールカウンセラーの5年間の配置による調査研究の時期には,ものすごくそういう話がございました。
養護教諭のほうでも,直接スクールカウンセラーさんのほうに積極的に行きたいんですが,お互いに生徒に阻まれてしまうことが多いので,たまたま自分が空いても,相談室ではスクールカウンセラーさんは別な相談をやっているとか,そういう時間的な食い違いも十分にありまして,なかなか思うようにいかないというのが現状でございます。多分今,配置されております学校でもその部分は変わらない状態で,養護教諭のほうではそう思っております。どうしても1週間のうち2日あるいは3日という期限の中で,スクールカウンセラーさんがいらっしゃった後の来ない日の日々の部分をどう対応していくか。それから,それは担任であり副担でありということも考えられるんですが,そことの連携さえもなかなかうまくいかないということが多いようです。
一応各学校,今,小・中・高とも,学校の中ではこういう指導体制をきちっと連携し合おうということで,校内組織というのがどんどんつくられてはいるんですが,なかなかこれもまた授業との関係があり,空き時間を見つけてというようなことで,なかなか難しいのが現状です。時間割の中で打合せ・検討等がきちんとできるような保証が必要ではないだろうかと考えます。こうしたことは分かりきっているのですがなかなかできないところが各学校まかせをいう状況から来るものも大きく占めていると考えられますので,時間の確保と体制としての形の見えるようなものとして提示されれば,校内に限らず校外との連携もとれていくことの方が多いのではないかと思います。
それから,養護教諭は外部との連携につきましては,結構それぞれ学校でドクターとの連携はしっかりとなされる状況にあると思います。学校医をはじめとして,あるいは学校医からのさらにまたいろいろな手立てをしていただくというようなこともあって,そこから直接手立てをしていただいた先生との連携というようなこともございまして,これにつきましては,思春期の時点でのいろいろな精神病的なものへのつながりというものを十分頭に入れながら,子どもたちの様子等については討議をしながらやっているというのが今の現状でございます。
以上でございます。
○ ありがとうございました。
また後に論議をするところでまた御質問を出していただくわけですが,この時点で御質問,委員の方々からいかがでしょうか。
大変御苦労されている様子あるいは問題点もお話しいただきましたが,先生,非常に難しいことですけれども,一般的に多くの学校に共通する課題としては,先生のお立場から,学校における不登校問題の対応ということで,今お話しされた中でも特に強く課題意識を持っておられるのはどういうことなんでしょうか。
【松野委員】 一番課題としては,校内の教職員の中の共通理解というんでしょうか,どうしても保健室で扱うことが悪いということではなくて,ある程度の状況に達したときに担任とか副担もかかわるようになるわけですけれども,その時点でもう,ああ,大丈夫だというふうにとってしまって,一気に普通の子たちのレベルのところまでの要求をしてしまうということが結構ございます。ですから,ああ,先生たちはこういうことはわかっているだろうと思っての話をしても,なかなかできない,そういう点では教職員のカウンセリングマインドという言葉が大分飛び交った時期もあったんですけれども,今ではすっかりなくなってしまったようにさえ感じるぐらい,先生たち,自分のポリシーというものを表面に出してくるというあたりが一番課題なのではないでしょうか。一挙にまた,せっかく1段,2段上ったものがまたどんと下まで落ちてしまうというような,結局,そこのところで次にまた保健室にすべて負担がかかってくるというようなことが今,多分一番課題ではないかと私は思っております。
○ ありがとうございました。
今のお話の中の特に教職員の意識の問題とか,あるいは指導体制の問題については,後ほどまた論議を深めていきたいと思っておりますので,ありがとうございました。
では,続きまして,伊藤委員さんのほうからよろしくお願いいたします。
【伊藤委員】 よろしくお願いいたします。資料をレジュメを1枚用意させていただきました。今回は不登校に特に限定したという話ではないんですが,スクールカウンセラー事業のこれまでの内容,それから,主に私自身が中学校現場にもかかわっておりますので,そういった経験からお話しさせてもらえたらと思っております。スクールカウンセラーの事業は,詳しい資料は用意していただきましたけれども,平成7年に始まりました。154校というわずかな校数で始まったんですが,現在4,400校程度の学校に派遣されているという状況です。平成17年度ぐらいには公立の全中学校に配置するという予定だというふうに聞いております。地域によってはもう来年度に全中学校に派遣したいという動きも出ておりますし,もしかしたら全国的に早まるところもあるかもしれません。全体にはそういう状況です。
勤務の形態としては,週に1回,あるいは2日に分ける場合も若干ありますが,週に8時間という時間ですので,そんなに多くありません。私の場合は1日朝から夕方まで詰めていくという形で勤務しております。スクールカウンセラーの仕事なんですが,レジュメの1番目に書きましたけれども,多岐にわたります。これにつきましては,スクールカウンセラーによってその考え方とかあるいはその力とか,あるいは学校の現状によっても違います。子どものニーズによっても随分変わりますので,一般的にこういうことが行われているという共通項を紹介をいたします。
1つ目は,子どもとか保護者の相談。これは一番メインになるし,想像しやすいかなと思うんですが,子どもたちの悩みを聞くという役割です。ただ,子どもはいつも来ているわけではありません。授業時間中は教室に戻します。それが原則ですので,多くは休み時間,特に昼休みと放課後に限定して相談を受ける場合が多いです。ただ,不登校とかで学校に来れないけれども,相談室にだけ来るという生徒には,授業時間を相談時間に当てることもあります。
悩みの多くは友人関係ですね。「健康な悩み」が大半を占めるといってもいいかと思いますけれども,深刻な悩み,大変重大な悩みももちろんあるんですが,半分あるいはそれ以上,6割程度はごくごく健康な,普通の子がいつでも悩むような相談が多いです。友人づき合いに関する悩みとか,それから,部活での先輩との関係とか親との関係とか,そういったところがわりと多く聞かれる内容かと思います。それに加えまして,保護者の相談が結構ニーズが高いかなと思うんですが,特に不登校の子どもを抱える親御さんはたくさん来られます。子どもは来ないんだけれども,親だけ相談したいというところで来られるお母さん方,まあ,お父さんはあまり来られないんですけれども,保護者の方が来られます。
当初はすごく混乱して不安が高い保護者の方が時間をかけて話すことによって,だんだん落ちついていかれて,それが子どもに間接的な効果を持つということは随分あると思います。ただ,子ども,保護者ともに継続して密にかかわらないと難しいケースもございます。症状が重い場合はそうなんですが,そういったケースはスクールカウンセラーが学校で抱えるのは危険な場合もありますので,そういうケースには,後から申しますが,外部機関につなぐという役割も重要になってきます。
あと,2番目,教師対象のコンサルテーションです。カウンセリングとは若干違いまして,先生方の個人的な悩みを聞く場合もあるんですが,ほとんどは生徒さんのことを一緒に考えるというスタンスでの相談が多いです。これを我々はコンサルテーションと呼びます。この子についてどう対応しようかとか,あの保護者とどうかかわったらいいかという形での相談が多くございます。その場合,今御発表いただきました養護教諭の先生との相談も随分と比重は高いかなと思います。
あと,残りの2つは相談業務ではないんですが,結構ニーズが高い仕事でして,1つ目は,教員研修とか講演会を企画したりとか運営するという役割です。これはあんまり表向きには出てこないんですけれども,案外,学校側からは要請が多いものです。といいますのは,スクールカウンセラーが常時いるわけではないんです。先ほどのお話にもありましたが,残る時間はほとんど先生方が対応していただかないといけませんので,その先生方にカウンセリング的な理解のしかたとか,あるいは話の聞き方とか,そういったところを身につけていただけると,我々よりもずっと効果があるんじゃないかということもありまして,そういった研修会とか講演会を企画し,そういうお話をします。あるいは事例検討会ということで,子どものケースについて深く考えていくという,どう対応しようかというところまで検討するような会を持つこともあります。
あと,もう1つが,外部機関とのコーディネーター役割です。主に病院,特に最近,精神科のドクターの先生と連携しないといけないケースが随分増えましたので病院,それから教育センターの相談室,虐待等の問題につきましては児童相談所,そういった専門機関としっかり手を組まないといけません。場合によっては警察の少年課も重要な連携相手です。そういったところに紹介して終わりではなくて,紹介するまでの紹介の仕方,本人とか保護者に紹介して,そこまでつなぐという役割と,あと,つながってからのフォローとして,学校から学校の事情をお話ししたりとか,現在の子どもとか保護者の様子をお聞きしたりとか,そういったつなぎ役が随分と必要とされているなと感じます。そういうところから考えますと,「待ちのカウンセラー」というイメージとは実際には全然違いまして,それこそスニーカー的な靴を履かないと1日学校では動きにくいというぐらい結構走り回っていたりすることもあります。ただ,先ほど御紹介がありましたようになかなか時間が限られておりますので,十分な連携がとれている学校もあれば,まだまだ不十分な学校もあるというところで,実態はさまざまだと思います。
今,仕事の概略をお話ししましたが,では,そういった事業に対して実際,先生方あるいはそれを使われた保護者の方はどういった評価をくださっているのかということで,これは数年前に,スクールカウンセラーの全国的な世話係をしていますワーキンググループ,学校臨床心理士ワーキンググループというのがありまして,そこに私も属しておりましたので,その調査に実際かかわりました。その調査の結果,大まかなところを今日御紹介させてもらえたらと思います。
OHPを使わせてもらいます。ここに配置校と未配置校とありますが,どういうことかと申しますと,この調査はスクールカウンセラーを実際に使ったことがある先生方に調査したいというのが最初の目的でした。しかし,実際,配置された学校の意見だけだと,もしかしたら上からの調査だからちょっといいように言っておこうという過大評価の場合もあるんじゃないかということもありまして,実際配置されていない学校,こちらは実際の評価というよりかは予測に近いんですけれども,それと比べたものです。最初は活動内容に関してどれぐらい期待しているかという期待度です。こちらに点数が挙がっていますけれども,3点満点,1点から3点の幅で分布しているんですけれども,一見しておわかりいただけますように配置校の先生方のほうが,全体的に期待が高いということ,それから特に保護者へのカウンセリング,子どもへのカウンセリング,教師へのコンサルテーション,この3つの相談活動に期待が高まっているということです。さらには,研修についても随分とニーズは高いということがうかがえます。
続きまして,では,実際の評価はどうなのかということなんですが,こちらに挙げました3つが効果,プラスの評価です。教師援助になった,子どもとか親の援助になった,それから,専門的な,つまり専門知識が随分貢献になったという,3つのプラス評価です。ただ,マイナス面も聞いたほうがいいということで,指導とのジレンマ,例えば生活指導と考えが対立したとか,あるいは教師の考え方,教師との葛藤があったとか,あるいは時間的に利用がこんな少なくては利用できないとか,そういったマイナス面も聞いてみました。これも配置校と未配置校を比べていますが,全般的に見て,マイナスよりかはプラスのほうが若干高めに出ているということと,実際使っていただいた先生方の評価がいずれも,そんなに大きく差はありませんが,高めであったということがうかがえます。ただ,利用上の制約に関する得点は結構高いんです。これは,週に1回8時間程度ではなかなか十分に活用できないといった,そういった時間的な問題に対する意見を含んでいます。
今と若干違った角度から満足感を検討したのが次の結果です。今度は内容をこのような4つで見てみますと,これも先ほどと同じく配置校のほうが満足度が高くて,特に面接とかコンサルテーションといった相談業務に対する満足感が高いということがうかがえます。まだまだコーディネーター的なつなぎ役割というのが学校現場では認知されにくいし,実際の満足度も低めということが言えると思います。
では,次にどれぐらい活用されているかなんですが,相談活動の活発さを見ました。相談が盛んに行われているか,コミュニケーションは盛んに行われているか,あるいはごく一部の子ども,生徒としか相談ができていないかというのを各学校に聞きましたところ,こういう分布です。これはまず生徒についてです。<相談が盛ん>というのは4分の1程度,それより若干少なめで,<ごく一部しか相談に来ない>という学校も当時はありました。残り半数程度は,相談とまでは行かないけれども,<ふだんの雑談とかコミュニケーションは随分ととれている>という結果でした。
では,それが教師相手ではどうかといいますと,教師のほうはあまり盛んではありませんで,<相談が盛ん>という学校は10%程度でした。今はもう少し広がっているかなと思いますが,それに対して<ごく一部>という学校が2割少しありますので,この調査をしました当時は,まだまだ先生方の活用というか,利用頻度はそんなに多くなかったという現状です。
実は私も,全部の先生と1回はお話ししたいと思って学校に行くんですが,時間の関係とか,そういうこともあってすべての先生方と均等にお話しするということは難しいかなというのが実感です。それから,先ほど話題に出ました養護教諭の先生との連携なんですが,これは一般の先生方とは若干違いまして,<緊密に連携できている>というふうに答えてくださった養護教諭の先生が45%程度,それと同じく<わりと連携をとれている>という先生方が同じく5割弱です。<ほとんどない>という学校も,残念ながら1割程度ありました。ただ,実感としては,養護教諭の先生は一番の連携相手かと思いますので,そこの連携をどのようにするのかというのが大変重要になってくると思います。
学校現場との連携の仕方との関係なんですが,スクールカウンセラー配置の当初,疑問視されたのが,スクールカウンセラーは守秘義務を持っているから学校には情報を全くくれないんじゃないか,そういった不安が随分ありました。カウンセラー側からも「どこまで秘密を共有できるか」という不安が実は最初はあったんですが,入ってみると,学校現場の中で先生方と一緒に秘密を守らないとうまくいかないし,こちらから報告しないと先生方からもらえる情報ももらえないということもありますので,最近ではスクールカウンセラーからどんどん話すという傾向には随分なってきているかなと思います。この分析は,<スクールカウンセラーからそういう相談内容を話してくれた>,<聞いたら話してくれた>,これは消極的な話し方なんですが,<聞いても教えてくれなかった>,それぞれの群に分けまして,そういった学校の先生方が相談業務にどれぐらい満足度を持っていらっしゃるかを見ましたところ,満足度がこのように下がっております。やはりスクールカウンセラーから情報を開示していくほうが,先生方の満足度も高いということがここから明らかに出てきました。
それと同じような分析なんですが,積極的開示,これは<言わなくてもカウンセラー側から話してくれた>という学校の先生方,消極的開示は,<聞いたら話してくれた>というちょっと消極的な開示のスクールカウンセラーの場合なんですが,先ほどの4つのポイントに絞って満足度を調べましたところ,やはりカウンセラーから積極的に話すということが先生方の満足度を全領域において高めるということがうかがえます。その辺からもやはりスクールカウンセラーも狭い意味で秘密を守るのではなくて,個人のプライバシーについて最大限配慮しつつ,なるべく学校と情報交換をする必要性というのがうかがえました。
あと,これも重要なデータなんですが,では,先生方はスクールカウンセラーに何を望むのかという希望をお聞きしました。こちらが選択肢なんですが,下から行きますが,<臨床心理士である>,これは資格の問題ではないんですが,臨床心理という専門性を持っている人であること,<それ以外の心理職であること>,<教職についていること>,<現職の教師であること>,<学校現場に経験を持っていること>,つまり学校を知っているということですね。<年齢>,あまり若過ぎると相談しにくいということもありましたので,年齢の要素がどれぐらいきくのか,それから,<病院での経験がある>という,これらの条件を挙げまして,どれが必要ですかというのを複数回答で聞きました。ですから,すべて挙げている人もいれば,1つに限っている人もいるんですけれども,配置校,未配置校ともに9割前後の先生方が,臨床という専門性を求めてくださっていることがわかりました。ただ,それだけではなくて,教師でなくていいんだけれども,学校現場の経験は知ってほしい,これが7割前後です。つまり教師とは違った専門性を持っていてほしいけれども,学校のことを知らないと困る。つまり学校現場の経験というか,学校のことも理解してもらいながら,かつ専門性を生かしてもらいたいということがこのデータから読み取れるのではないかと思います。
あと,補足として保護者のニーズを簡単に聞きました。これは同じく配置校の保護者,スクールカウンセラーに相談したことがある保護者に尋ねた簡単な調査なんですけれども,ここの下に挙げました不登校,いじめ,非行,学習に至るまでの内容に関してどういった期待を持っていらっしゃるか。小・中・高,校種別に聞いております。学校差は若干ありますが,いずれの場合も不登校に対する期待が随分と高いということがうかがえました。
実際にどういった相談内容が行われているのかといいますと,今のとほぼ同じような偏りで,やはり不登校の相談が随分と多いということです。小学校はそれ以外の子どもの問題行動の相談もあるのですが,中学校では断トツで不登校の相談内容が多かったです。では,それらにどういう満足度を保護者の方は持っていらっしゃるかということなんですが,これはこういう横並びになりました。これは,得点は1点から4点に分布していますので,ほとんど上のほうに(高得点方向に)固まっているという状況です。これは統計的にはほとんど差はありません。どれが一番強いということはなくて,全体的に相談を受けてくださった方の満足度が高いということです。ただ,学習に対しては若干低いんです。やはり学習に対しては,先生方に対する信頼感も随分とあって,スクールカウンセラーよりかは先生に相談するという意見もあるんじゃないかと思います。
そこまでがデータです。あと,少しだけまとめをさせてもらって終わります。
今,お話ししましたのは2番目のところです。概略だけそこに書いていますが,最後です。乱暴な書き方もしておりますけれども,今のデータで補っておいていただけたらと思っております。あと,現場から。現場に入っての感じなんですが,子どもたち,相談に来る,つまり言語化できる状態まで来ない子どもたちも随分います。相談に来る前に行動化してしまったりとか,体に出してしまったりという子どもたちも多くて,例えば問題行動あるいは暴力,そういった行動に走る子どもたちもおります。そういった問題に対応するためには,カウンセラーとしてだけではなくて,教師との連携が随分と必要となりますし,さらには家庭としっかり手を組まないといけないなと感じるところです。
あと,教師,先生方が疲れていらっしゃる。これは学校に入って一番痛感するところなんですが,特に今,学校内のいろいろな改革が同時に進んでいるということもありまして,学校自体が混乱している。先生方がとても多忙で,なかなか十分に時間をかけて子どもたちの話を聞くというところまでやりたくてもできない現状もあったりします。さらには個人的な問題で疲れていらっしゃる先生も多いなと思います。そういった先生方へのケアというのもスクールカウンセラーの仕事に入ってくるかなと感じます。あと,親御さんの中で子育てについて迷っていらっしゃる方が随分いらっしゃいます。子育て不安を持っていらっしゃる方,あるいは子どもにどう対応しようか,子どものことがわからない,そういった悩みも多いですから,そういった保護者へのかかわり,ケアというのも必要になってきています。
あと,先ほども言いましたが,学校そのものが随分といろいろなことで動揺しております。大きな事件が1つあると学校全体がぐらぐらとしてしまって,皆さんが冷静さを失うということもあったりします。そういったときにはカウンセラーとしては何ができるかというと,ほんとうにわずかなことしかできませんけれども,学校組織全体にかかわるという必要が出てくる場合もあります。生徒指導体制をどうするかとか,事例検討会をつくって全体で把握するとか,あるいは管理職の先生方の動き方について,こちらから見てこうしていただきたいなというところを注文させていただく場合もあります。そういった学校全体へのかかわり方のスキルというか,そういう力は今後もより努力してつけていかないといけないと痛感するところです。
それから,「内部性と外部性」と書きましたが,これは学校にかかわるときのスタンスとして,仲間意識を持つと同時に,やはり学校とは違う専門性を持つことが,ともに必要であるということです。当初は外部性の重要性を随分力説されましたけれども,中に入ってみますと,学校の一員であるという意識がないとなかなかうまく仕事はできません。学校教育を一緒にやっているという意識がないと,やはりはみ出してしまったりとか,浮き上がってしまうということが多くございますので,そういった意識,両方の意識を持つことが必要かなと思っております。
最後に,不登校についてかかわってのジレンマなんですが,不登校にかかわってどれぐらい成果が上がったか。よくそういうことを我々に調査として向けられることもあるんですが,なかなか数値にあらわれないものだということも実感します。何人学校に戻ったかですべてはかれるものではなくて,例えばスクールカウンセラーが入ったことによって不登校が一時的に増えるという場合もあるんです。それまで無理無理で学校へ行っていた子が,スクールカウンセラーとのかかわりの中で自分を見詰め直す時間を確保でき,一時的に学校から離れて,そしてまた戻っていくということも多いんです。そういうこともありますので,数値だけで把握できないところをどういうふうにお伝えしていけばいいのかということがあります。
それと,やはり学校側,特に先生方との意見がすれ違うことも実は長くやっていますとありまして,いつもいつも協調路線で行けるわけではなく,その対立を乗り越えてやっていかないといけない場合もありますので,学校とどうやってうまく仲間に入りつつ,でも,大事なところはしっかり主張していってという位置付けの問題,自分自身の位置付けの問題というのも難しいなと思うことがあります。
それと,不登校に関しては,反面では学校に行くだけがすべてじゃないという気持ちも,カウンセラーとしては感じることもあります。また,学校復帰が最終目的ではないというケースもあるんですが,学校の一員としてスクールカウンセラーとして会っていますと,学校復帰というのを一番大きな目標として掲げなければならないこともあり,それが重要な場合も多いんです。そういったときに自分の中でジレンマがあったりとか,どのように学校と折り合いをつけるかとか,そういったところで悩むところも多いのです。実際,スクールカウンセラーの仕事もまだまだ試行段階というか,確定的にこういう状況ですと言えない試行錯誤の段階ですので,今日はその辺の揺れているところをお話しさせていただきました。長くなりまして申し訳ございませんでした。
○ ありがとうございました。
この時点で御質問はございますでしょうか。
では,次に,本日の議題に関連して事務局から,配付いただいている資料について簡単に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
● それでは,事務局のほうからは,資料3以降の資料につきまして御説明したいと存じます。事前にお送りしておりますし,時間の関係上ごくかいつまんで御紹介させていただきたいと存じます。
資料3に関しましては,「学校の指導体制の確立について」という表題でございますが,こちらは事前にお送りいたしました生徒指導資料の平成9年に文部科学省が作成いたしました「登校拒否問題への取組について」というものの関係部分の,これはごく柱立てを抜粋したものでございます。指導体制の確立,また校長のリーダーシップをはじめとする指導体制の確立の問題,学級担任の役割,教職員の研修,そういった柱立てについてあるわけでございますが,事前に内容はお送りしたとおりでございまして,本日の御議論につきましては主査からお話がございましたとおり,こういった中で提言されている指摘事項について,新たに追加すべき点やあるいは取り入れられてはいますけれども,十分今後徹底をさらに図るべき点,そういったものを中心に御議論を賜れればと考えております。
続きまして,資料4でございますが,こちらは先ほど松野委員のほうからの御指摘にもございましたとおり保健室登校あるいは保健室にかかわる主要な答申等について抜粋したものでございます。平成9年の保健体育審議会答申あるいは平成10年の中教審答申,さらに同じく平成9年の生徒指導資料の関係部分の抜粋を2ページから6ページにかけまして添付いたしております。これらの中で養護教諭のヘルスカウンセリングの重要な役割等について指摘がなされているところでございます。この資料の後ろのほうには,養護教諭の配置状況あるいは教育相談室の整備状況,国のほうのデータを御参考に添付をいたしておりますので,御参照いただければと思います。
続いて,資料5でございますが,スクールカウンセラーに関しましての資料でございます。めくっていただきますと1ページに,文部科学省の進めておりますスクールカウンセラーの事業に関しましての大枠について概要を1枚にまとめたものでございます。趣旨等,ここにあるとおり教育相談体制の充実ということになるわけでございますが,平成15年度予算におきましては約40億円計上しているということで,来年度さらに7,000校への配置ということを目指しているということでございます。職務内容は,先ほど御紹介がありましたとおり児童生徒へのカウンセリング,教職員への助言・援助,保護者に対する助言・援助等が柱となっており,カウンセラーの要件に関しましては臨床心理士をはじめ精神科医,大学教授,その他量的な確保を図るという,一種そういう経過的な意味もございまして,スクールカウンセラーに準ずる者というものの配置を認めているということでございます。
めくっていただきますと,カウンセラーの配置状況の推移でございますが,国として事業を起こしましたのは平成7年度でございまして,この当時の派遣校が,小・中・高合わせて154校ということでございますが,13年度の実績で見ますと4,400校というふうに順次拡張している。来年度の概算要求は先ほど申し上げましたとおりでございますが,最終的に平成17年度の公立中学校を中心に配置を進め,まず公立中学校についての全校配置を当面目標として目指して拡充を図っているということでございます。
続く3ページは,カウンセラーの構成でございますが,一番下にございますとおり,こういった形でスクールカウンセラーの実員としては2,083人の方を13年度としてはお願いをしているということでございます。
続いて,4ページでございますが,相談内容につきまして先ほど伊藤先生のほうからもお話がございましたが,幾つかの県からの報告が上がっている相談件数の内訳,相談内容あるいは相談対象というものを見たものでございます。県ごとによって調査のとり方が違っておりますので,数字の細かい点は相違はございますけれども,ここにございますとおり児童生徒本人直接のカウンセリング以外に,先ほどお話がありましたとおり教員あるいは相談員,養護教諭,そういった方々へのコンサルテーションというものに相当の比重が置かれているということがうかがえようかと存じます。
相談内容につきましても,いろいろな種類がございますが,不登校というものが相当の比重を占めているということが見てとれるのではないかと存じます。
それから,5ページ目以降でございますが,スクールカウンセラー配置の効果の問題でございます。私どもこういった配置の事業を進める中で,教育委員会あるいは学校関係者のほうからその成果等につきましては報告を求め,その情報を収集しているところでございますが,ここに大まかな効果の概要として学校全体,児童生徒に対するもの,教員・保護者,あるいは外部連携等に関して,ごく概括的なものをここに書いておりますけれども,総じて学校の教育相談体制の充実というものについて寄与している,そういった意味での全体的な評価は高いものと受けとめております。
なかなか数量的な数値化が難しいという御指摘がございましたが,ここにございます不登校,暴力行為,いじめに関する問題行動調査との関係で,私ども配置校における発生状況等あるいは全国状況等の変化というものについて比較をしているわけでございますが,ここにございますとおりおおむね不登校あるいは暴力行為につきましては,そういった発生を抑止する,あるいは減少するというマクロで見た場合の数字が今のところ出ているということでございます。
一方で,いじめの発生件数に関しましては,むしろスクールカウンセラー配置校における発生のほうが,全体として抑止なり減少というものに寄与していないという数字が出ておりますが,これはある意味でいじめの早期発見という点に関しまして,カウンセラーの方々が相談を受ける中でより高い認知度を示しているということも影響しているのではないかと推測をしているところでございます。
続きまして,6ページから8ページに関しましては,この1枚目にあります効果の概要に関しまして,より詳しく具体的な効果例というものを報告書の中から抜粋したものでございます。さまざまな学校全体から見た効果あるいは先ほどお話がありましたように専門性や外部性という観点からの評価,そういったものを整理しているものでございます。
続いて,9ページでございますが,逆にもう一方で指摘されております課題というものにつきまして,こちらも教育委員会あるいはカウンセラー配置校からの報告などに基づきまして幾つかの例を掲げたというものでございます。これも配置校の状況によってさまざまでございますが,あくまで例ということでございますが,運用上の課題としましては,スクールカウンセラーそのものに関して,先ほどのお話にもございましたような学校そのものに対する理解が必ずしも十分ではないのではないか,あるいは非行傾向の対応が必ずしも効果的でないのではないかという指摘がございます。一方の教職員に関しましては,管理職の理解が足りないとか,これも御指摘がございましたカウンセリングマインドが十分身についていないのではないか,あるいはカウンセラーに任せきりにしてしまうのではないか等の事例が報告を受けております。また,教職員との連携に関しましては,これもお話がありました情報の連携,情報面の共有化をどうするか,あるいは指導方針をどうするか,こういった点で課題も指摘をされております。
めくっていただきますと,今のは運用上の課題でございますが,大きくはそういったシステムなり制度上にかかわる問題としましては,先ほど東京都は近く,全校配置という可能性もあるかもしれないというお話がございましたけれども,全国的に見ますと,かなりこういった有資格者が不足したり地域偏在がございますので,人材をいかに量的に確保していくか,あるいは資質の面での維持向上を図っていくか,あるいは現在,中学校を中心に配置を進めております派遣対象の在り方をどう考えるか,あるいは時間数の問題、勤務形態をどう考えるか等々の大きな制度上の課題があろうかと考えております。
続いて,11ページ以降につきましては,カウンセラーが実際に関与した事例というものを中学校,小学校,高校,それぞれについて11事例御紹介しております。ここに子ども,親それぞれの働きかけのほかに,これも先ほどお話がございましたが,研修会や講演会等での活用事例というものも含めて御紹介をしているものでございます。
続きまして,資料6でございますが,外部性,外部の人材を学校教育の教育相談のために活用するという意味におきましては,このスクールカウンセラー制度が大きなかなめになっているわけでございますが,このほかにも臨床心理士等の専門家以外に身近な地域の人材というものを学校において配置をする,そうした中で専門家とは別の観点から気軽に相談に乗る,ストレスを和らげるという観点で,心の教室相談員の配置というのを一方で国のほうでは実施しております。現在,来年の要求額ベースで申しますと3,600校の配置を目指すということでございますけれども,スクールカウンセラー配置校以外については,こういった相談員の配置というものも一方で事業として進めているということで,御参考の資料でございます。
それから,資料7でございますが,こちらも学校の指導体制の強化ということとあわせて,家庭にどう働きかけるべきか,家庭との連携をどう図るべきかということに関しまして,こちらも平成9年の文部省の生徒指導資料の中から項目を,教師等の基本姿勢,信頼関係,連携の在り方等についての,柱だけでございますけれども,御紹介させていただいているところでございます。冒頭申し上げましたようにこういった資料の足りない点なり,あるいはより充実すべき点についてまた御議論を賜れればと思っております。
その他,机上配付で事務局のほうからしている資料が若干ございますけれども,「特別支援教育の在り方について」という中間まとめがございますが,こちらは今月公表された中間まとめということで,今後,年度内を目途に最終報告をしていく方向でさらに詰めていくというふうに私ども聞いているところでございますが,詳しくはご覧をいただければと思いますけれども,巻末の50ページから52ページにかけまして概要が掲載されております。
こちらの50ページにおきまして,ごく基本的な考え方としまして,従来の特殊教育の対象だけでなく,点線枠囲いでございますけれども,LD,ADHD,高機能自閉症を含めて大きく広くとらえて特別支援教育というものを進めていこうという基本の考え方が示されております。そうした中でいろいろな具体的な提言がなされているということでございまして,早期段階でいかに見立てをしていくかという問題,あるいは個別の教育支援計画といういものをつくっていこう,そういった事柄等,不登校対策を考えていく上でも示唆に富む内容が含まれているのではないかということでございます。また,いろいろな実態把握という意味に関しましては,今回の発表におきましてLD,ADHD,高機能自閉症,こういった子どもたちが通常の学校に在籍する割合というものが推計がなされておりますけれども,小・中学校段階で通常学級在籍者の6%程度ということが示されておりまして,そういった対応が緊急かつ重要な課題ということで,御報告が出ているところでございます。
最後でございますが,こちらも机上配付で,「教育振興基本計画に盛り込むべき施策の基本的な方向」と題する紙が2枚物がございます。教育振興基本計画に関しましては,昨年11月以来,中教審に諮問をいたしまして,現在,審議が進められているということで,それに関しまして,去る10月24日の審議会の部会における資料内容がここにあるとおりでございますが,これに関して若干,報道がなされておりますので,御参考に配付をしているものでございます。この中で枠囲いの最初の○ということで,いじめ,暴力行為の「5年間で半減」を目指す,あるいは不登校等の大幅な減少を目指すというわかりやすい政策目標の事例としてこういったものが示されており,これに関する報道がなされているということでございます。
今御説明申し上げましたとおり,あくまで中教審の審議の過程でございますので,最終的にこういった国がつくります基本計画というものでどういう扱いになるかについては,まだ申し上げる段階ではないかと思いますけれども,基本的にはこういったものが盛り込まれる趣旨背景としましては,これらの問題解決に向けて行政としてしっかりと取り組んでいくという構えなり姿勢を示そう,そういう趣旨のものであるというふうに私どもは受けとめ理解をしているところでございます。いずれにいたしましても,こういった目標をどういう形で規定するかということは別といたしまして,学校段階それぞれでの実効ある具体的な取組をどういうふうに進めていくかということが最も大事なことであるというふうに考えておりますので,本調査研究会におきましても,引き続きそうした観点からの御検討をお願いしたいと存じます。折を見て,またこういった審議会等の動向につきましては,事務局から御報告を差し上げたいと存じます。
以上でございます。
○ ありがとうございました。
ただいまの説明について御質問はよろしゅうございましょうか。
では,これまでの説明を踏まえまして,学校における対応について御意見をいただきたいと思います。ここでお手元に論点メモ(案)となっておりますが,お出しいただけますでしょうか。冒頭申し上げましたように今,お2人の委員さんからのお話,それから,ただいま配付していただきました資料等も踏まえまして,これから論議を進めていくわけでありますが,大きくそこにありますように,上の2つが不登校の問題を抱えている児童生徒に対して教員の意識の問題,あるいはその2つ目の○のところの指導体制あるいは管理職の役割の問題,これが論点の1つになろうかなと思います。
それから,その次が,主として松野委員さんが先ほどお話しになりましたことにかかわって,教室以外の学校における居場所の役割と課題,あるいは養護教諭の方あるいは教職員との連携に関する問題,これが1つのまとまり,論点になろうかと思います。
その次が,伊藤委員さんから先ほど御指摘のありました内容を中心としまして,スクールカウンセラーをはじめとする学校外の専門家の方々の役割あるいは教職員との連携,そこにかかわっての問題,こうしたことが1つの論点になろうかと思います。
それから,この今の4つともかかわってくるわけでありますけれども,最後に,教職員,スクールカウンセラーあるいは本人や家庭への働きかけ,そこにおける連携の問題,こうしたことが1つの論点になる。できますれば,今のような論点を追いながら突っ込んだ議論になるようにぜひ御協力をお願いしたいと思います。特にこれまでの平成4年の通知や,あるいはお手元の先ほど御説明がありました資料3から7まで配付されている,これまでの提言されている事項を踏まえまして,そこの中で今まで言われているけれども,やはりここで再び強調してきちんと押さえるべきこと,あるいは新たに追加すべきこと,そうしたことについて御意見を賜ればと思っております。重点的な議論にしたいと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。
なお,本日も,生徒指導研究センターのほうから総括研究官,生徒指導調査官に出席していただいていますので,ぜひ議論に加わっていただいて御発言をいただければと思っています。よろしくお願いいたします。
では,どなたからでも御発言をお願いしたいと思います。まずは口火として,お2人の先ほどの委員の方々は,先ほどのところでは御質問の時間が十分でなかったので,ここでまずお話の内容あるいは御提示いただいた資料についての御質問はいかがでしょうか。
○ それでは,口火という意味合いでお尋ねさせていただきたいんですが,先ほど松野委員のほうから,いろいろな校内の連携上の養護教諭の役割というものがお話しになられました。それから,伊藤委員のほうからは,外部性というか,役割の中での外部等の役割というものをお話しなさいました。私もこういう学校あるいは地域あるいは家庭との連携というのはしばしば言われてきたんですが,その実効性がなかなかうまくあらわれない。それは松野委員がおっしゃったようにコーディネーター的な役割あるいはつなぎ的な役割,我々社会学的に申しますとリンケージ役割というんですけれども,このリンケージ役割をどこに担わせるか,どういう形でそれを埋め込むかというこの具体性がないままに地域,学校,社会という連携を唱えても,なかなかうまくいかないんです。それを学校の中からどう働きかけるかということが非常に重要な役割だろうと思うんです。先ほど松野委員の御発言を聞いていましても,リンケージ役割と同時に,それぞれが例えば養護教諭が担うべき外部に対しての役割というか,働きかけというか,あるいはそれにリンケージされてくる機関,外部機関があると思うんですが,先ほど内部のほうの連携は非常に強調され,その問題点,課題として認識されておられるんですが,養護教諭が例えば地域の保健婦の活動との連携だとか,あるいは今この議題の中では少しそれたところというか,今日は校内体制が非常に中心になっておりますので,どうしても校内に向けていろいろな指導体制がどうあるべきかとか。そうしますと,学校に来ているあるいはそこに非常に近く親和性を持っている子どもたちが対象になっています。この不登校というのは,わりに学校に親和性を持たない子どもあるいは引きこもっている子どもたち,どうにも学校からアプローチできない子どもたち,こういう子どもたちもございます。こういう子どもたちへのアプローチも含めて,そういう外部性をどうやって今の養護教諭の場合は確保していく方策があるのかどうか,どんなことを課題としてお考えになられるのか,そのあたりをお聞かせいただければと思います。
【松野委員】 実際,養護教諭は不登校ということの限定をしますと,学校に来ないというあたりのところから,直接のアタックというのはほとんどないんじゃないかということがまず1つございます。いくらかでも学校に足を向けていただくための努力ということは,多分担任を通して,副担を通して,あるいはスクールカウンセラーの先生がいらっしゃるところはスクールカウンセラーの先生を通して,あるいは保護者との連携ができる場合だけは,担任を通して保護者に学校に来ていただいたり,あるいは出向いたりという格好で保護者のところからその先をつけていくということはあるんです。実際,現にどうやっているかということになると,保護者との連携の中から生まれてくるというものはやはりありまして,日常の生活を聞いたときに,どうしようかなといういろいろな状況を保護者から言われる場合がございます。それを一たん学校へ持ち帰って校内の体制の中でいろいろお話し合いをして,例えば1度ドクターの診察を受けたほうがいいんじゃないかとか,あるいは教育相談という格好で教育センターなどの施設にお母さんなりお父さんなりという,本人が出向かないのであれば,そこだけでもいいから行ったほうがいいんじゃないかとか,いろいろな策が出てくるわけですけれども,そういう中でやる分につきましては,大体学校は最初のところは教育センターの相談的なところ,それから,保健所でもやっております。それから,教育委員会でも相談体制というのができております。そういうところはやはりフルに活用しているという状況です。もう1つは,学校医さんを結構,養護教諭の場合は頼りにいたしまして,学校医さんのほうからいろいろなところの専門の部分にアタックしていただくという二次的な部分というものも十分に活用していると思います。
○ ありがとうございました。
○ 私も養護の先生や保健室の先生とお話をさせていただく機会がありまして,その中から幾つか問題点を感じているところがありますのでお願いします。
まず,男子と女子が保健室に一緒にいるということは非常に抵抗を感じる,両方がです。例えば女子の場合は,その発達段階の問題等のこともありますし,それから,男の子は女子がいるとそこに行けないというケースがあったりしているんです。そういったときに相談室等,別な部屋をということになるわけですが,ほかの先生方がどこまでかかわってくるかということもありますが,その辺はどういうふうにされているのかということです。
それから,先ほど電話の件がありましたが,設備・施設で内線もない,外部に電話もできないという状況がほんとうなのかということです。これがもしできていないとするならば,学校で不登校の対策に取り組む以前の問題ではないかと思うんです。そうしたら,それは早急にそういった問題を解決していくということをすべきではないかなと思います。
それから,先ほど質問にもありましたが,保護者との連携ということなんですが,保健室の相談に行くとか,養護の先生に当然保護者が相談に来ると思うんですが,スクールカウンセラーの先生とうまく連携をとれて,その先生と保護者が相談をするということができたとしても,線が1本なんです。保護者というのは,私だけがこういった不登校で悩んでいるのではないかという不安感,孤独感というものがすごく強いんだと思うんです。そうしたら,そこでスクールカウンセラーの先生もしくは保健室の先生方が中心になって,そうした親御さんを集めて,そして,そこの中で悩みをみんなで分かち合うという姿勢をとったり,あるいはセミナーのようなものを学校の中でつくっていく。学校に反目している親たちも非常に多いと思いますので,あるいは学校に来ることができないという状況であれば,親御さんたちも参加できない方たちも多いかと思いますが,そうしたら外部のどこかでやるとか,そういった活動がされているのかどうかということです。
それから,保健室,学校に来ている子どもたちは,かなり初期的な状況であったり,まだ軽度であったり回復期であったりすると思うんです。ほんとうに大変なのは,先ほどのお話もありましたが,内にこもったり外部に出られなかったり,あるいは多少出るにしても重度というか,状況としては重い状態の子どもたちをどうするかという,その辺のところは保健室あるいはカウンセラーの先生たちがどういうふうに対応しているかということをお聞きしたいと思います。
【松野委員】 全国的な見地からお話しできればよろしいんですが,このぐらい具体的になりますと,なかなかどこの学校でもということではないと思いますので,一番まず身近な私のところから1つの例としてお話をさせていただきたいと思います。男子女子の分かれ方につきましては,大体これはどこの学校でもそうなんですが,ベッドを置いているところにつきましては男子と女子を分けて,大体は今,1人ずつのきちっとカーテンでベッドを区切った状態で,まるっきりプライバシーを守れるようにしているという設備はほとんどどこでもやっていると思います。
それから,中学校,高校になりますと,例えばこっちから半分は男子だけとか,こっちから半分は女子だけというふうに決めているところもございます。実際,子どもたち自身は,うちの学校も男女共学なんですが,男子がいるから云々とか,女子がいるから云々というような傾向は今の子どもたちにはないような気もいたしますが,ただ,お話の中身につきましては……。
○ まあ,高校だと思いますので,中学生の非常にナイーブな子どもたちは,私たちはそういう話をたくさん聞いておりますので。
【松野委員】 中学校などは,もっと成長過程の中の部分として多分それがあるんだろうと思います。養護教諭は中学校などで一番心がけているのは個人的なことです。例えば中学生であっても,いろいろな体のことから入ってくる問題とか,そういうものにつきましては,ほんとうに時間的なものをきちっととって,場所をきちっと決めてというふうに多分対応しているんじゃないかなと思っておりますし,それによってトラブル云々という話はいずれ聞いてはおりません。ただ子どもがどう受け取るかという部分については,すみません,私,中学校の部分についてはそこら辺の調査等がございませんので,今ここではっきりお答えはできないのですが,いずれ今後のところでどこかでそのお話をお答えできるように,いろいろお聞きしてみたいと思っております。
それから,電話の件なんですが,これはほんとうに校内だけの電話というのは,まあ,全部ではないんですが,まずほとんどあるんです。これは状況調査を見ていただければわかるんですが,電話等の部分につきましても書いていると思います。30ページにございます。電話の部分がそこに出ておりますが,問題は校内よりも校外とのいろいろな,例えば保護者との話し合いだとか,病院とかあるいは教育センターだとか教育委員会だとか,そういう生徒のいろいろなことをお話しできる部分がなかなかできないという設備しかないという学校がやはりあります。よく我々同士でもいろいろな連絡をとるために電話をするんですが,「では,呼びに行ってきますのでお待ちください」というぐらいの学校が結構ございまして,時間的なロスというのも結構ございます。これは現実でございます。
○ 緊急に対応しなければならないこともたくさんあるんじゃないかと思うんです。そんなときに,それでは教職員室まで走っていかなければならない状態だとすれば,もう真っ先に取り組まなければならない問題だと思います。
【松野委員】 はい,そういうことが常々言われておりまして,今回この保健室利用状況に関する調査にあえてこの分を入れました。今後この部分につきましては,保健室経営というもっと大きいところで論議された1つの報告書が出る予定で,今,それをいろいろやっているところでございます。
それから,保護者との話なんですが,保護者はやはり自分のところだけというふうに思っていまして,今,隣近所でいろいろな話し合いをしながら,知恵をお互い授け合うということの触れ合いがないということもあります。これは私の学校なんですが,保護者を対象のセミナーを開いております。保護者がいつも来れるようにということで大体年2回やっているんですが,土曜日の午後あるいは日曜日というわざわざその日程を組みまして,各保護者に案内文を出しまして,その場でいろいろお話し合いをしているんですが,うちは1,000人規模の学校ですが,大体5,60人ぐらい集まってこられまして,あまりにも多くて大変だということで,1回目のときにはそのぐらいの予定をこちらでは感じていなかったのですが,どうにもならなくてその1回目は今後に向けてという部分でやったんですが,2回目からは,たまたまうちの学校も調査研究の部分でスクールカウンセラーの先生方2人配置された時期がございました。いまだにその先生方にはお世話になっているんですが,その先生方も一緒に入っていただきながら,いろいろな角度からお話し合いができるようにグループワークという格好でやったり,あるいは最後は全体的にどういうお話し合いが出たかというまとめをしたりということでやっております。
これにつきましては,中学校などでもそういうことをやっているという学校は多々あると私どものほうではとらえております。あとは,初期対応の部分ということで,大体は学校の中での指導体制というか,不登校あるいは心に問題を持つ子どもをどういうふうに立ち直らせていくか,教室復帰させていくかということを目的に関係者の組織をつくっているわけですが,そこの中でだれがどういうことをしていくかという役割を決めながら,ほとんどの学校がそれに立ち向かっているんじゃないかと思います。ただ,中学校あたりのところでは,生徒指導という範疇の中で相談みたいなこともやっている部分があって,なかなか生徒指導というイメージからしますと,何か悪いことをしたときの部分というイメージを持つ生徒たちもあったりということもあって,思うように生徒たちの理解が得られない,生徒指導と相談関係は分かれていったほうがいいんじゃないかという養護教諭の間ではそういう話も出ております。
あとはよろしいでしょうか。
○ ありがとうございました。
○ 先生のほうは何か。
【伊藤委員】 関連するところで,後半2つの御質問がありました。やはり親の会なんですが,これは大変必要かと思います。不登校のお子さんを抱えて,家の中だけだとすごくつらくて不安でということがありますので,そういった不登校を抱える親御さんに集まっていただいてサポートグループあるいはピアサポートという取組が行われています。我々がカウンセリングするというのではなくて,親御さん同士が不安を語り合って,ある程度解消されていく,情報交換してそこでいやされていくという効果もありますので,そういうのをやっていらっしゃる学校もあります。全校ではありませんが,ニーズに合わせて行われているかと思います。
あとは,初期ではなく重い引きこもりの子どもたちへのケアは難しいです。やはりスクールカウンセラーといっても残念ながら「学校の人間」という色が強いですので,なかなか学校まで子どもたちは来てくれない場合が多いです。そういうときの第1のステップとしては,まず親御さんに来ていただいて,母親面接をすることによって,次第にお母さんが変わってくださる。すると,そのうち子どもも何か行ってみようかなというふうに来てくれる場合もありますし,そこまで行かないけれども,親御さんの対応が変わって,だんだんと子どもの状態も緩和されていくというケースもあります。
それとか,学校には来れないけれども,教育センターとか児童相談所には行けるというケースは,外部機関につなげる形でフォローしていくことが大切です。あと,カウンセラーというのは大人ですので,子どもたちからすると敬遠対象になっております。そこで,年が近い大学生あたりのボランティアをメンタルフレンドとして子どもの家庭に派遣しまして,そのメンタルフレンドとの連携の中で,カウンセラーは親面接をして,メンタルフレンドは子どもの家庭訪問して,両者が手を組みながらやっていった,それでうまくいったケースもございますので,今後はそういう多様なかかわりが必要かなと思います。
○ ありがとうございました。今の中で1つ整理をしたいのは,今,伊藤委員さんのほうからお話があったピアサポートあるいはサポートシステムあるいはメンタルフレンドというようなこともございましたけれども,要するに,本人あるいは家庭あるいは学校における指導対応をサポートする多様な支援体制,あるいはそこで配慮すべきことは何なのかということを,これは今日の中で言うと,後半のところで少し論議を深めていきたいなと思っておりますので,ぜひまたそこで積極的な活発な御意見を賜りたいと思います。
まず,初めのほうのところで保健室を中心にしてでありましたけれども,施設・設備の問題が出されたことと,緊急に対応するようなときに,施設・設備の問題とかかかわって,施設・設備だけではなくて,今度はシステムの問題としては連携体制ということも指摘されたように思うんです。この辺について,これはそういう面もあるというふうに認識されるべきなのか,いや,これは今まで十分に論議されていなかったけれども,非常に重要な問題であるというふうに一般化してとらえるのか,まずこの辺から少し論議を深めたいと思います。
さまざまな角度から,ここには御出席の委員さん方はそれぞれのお立場をお持ちですので,その立場から御発言いただけますでしょうか。いかがでしょう。お立場からはどんなふうにお考えでしょうか。
○ 学校施設にかかわって……。
○ あるいは施設・設備の状況と,そういうことを機能させる連携体制あるいは教師の体制,そうしたことについていかがでしょうか。
○ 本市におきましては,中学校においてそれぞれの名称を付けまして,いわゆる教育相談室をすべての中学校に位置付けているわけでございます。実際この活用につきましては,今,国の力をお借りしております心の教室相談員の皆さん方がここを拠点に活動しておられる,また,スクールカウンセラーの皆さん方がここを活用しておられるということが基本になっております。特に細かいことで言いますと,ソファーを置いたり,観葉植物を置いたり,本を置いたり,ある意味で教室以上の学習環境の整備にも努めているところでございます。このような整備につきましては,子どもたちがぶらっと相談に来るといった形にも対応できるように努めたわけでございます。また,工夫をしてチラシとかをつくりまして,いつでも相談室に来てくださいといった形で定期的なニュースも発行している学校もございます。今後につきましても,大規模改築とのかかわりの中で小学校にも順次配置していくということで,かなり有効な子どものための空間になっているということでございます。さらに,職員室,それから保健室,教育相談室のネットワークということも大切な子どものためのつながりになってくるということでございます。また,教育相談室に情報機器等も配置する中で,いろいろな情報を子どもたちが自分で選んで対応していくということもトータルバランスとしてのネットワークのかなめに位置付くのではないかと認識しております。
次に,これは意見も含めましての少し質問でございます。本市におきましても国のスクールカウンセラー活用事業プラス市独自ですべての小・中学校にスクールカウンセラーを,月1回配置しているわけでございます。年々保護者の相談も増えてきているのが現状であります。先ほどのいろいろなネットワークによるサポートの中で児童生徒の相談もあるわけでございます。しかし,主体は学校で,教員がどのような対応をするかということが基本でございます。そこで特にお聞きしたいことの1つは,いわゆるカウンセラーの方々がいろいろな子どもの悩み,保護者の悩み等々,どのように効果的に学校と教員にフィードバックしていくのかといったことが,一番,ある意味での課題ではないかなと思うわけでございます。効果的なフィードバックにつきまして御指摘があれば勉強させていただきたいことが1つでございます。
と同時に,その時の私ども自己反省しなければならないのは,学校の閉鎖性でございます。特に教員の閉鎖性ということもよく言われるわけでございます。その点につきましても課題等あればお教えいただきたいと思うわけでございます。特に本市といたしましても,教室外の居場所づくりやスクールカウンセラーの配置,また相談員の配置とあわせまして,学校へのフィードバック機能も高めてまいりたい,かように考えているところでございますので,1つよろしくお願いしたいと思います。以上でございます。
【国立教育政策研究所総括研究官】 私は立場上,未然防止の話のほうが私のほうでは専門なんですが,ただ,未然防止であれ,事後対応であれ,必ず必要だろうという共通しているということは,まさにここで先ほどから繰り返されているような学校の中での協力体制,指導体制ということです。その点に関して現実にどの程度かということで言うと,私は非常にこれがまだお粗末な状況だろうなという気がするんです。これは後で松野委員,伊藤委員のほうからも率直な御感想をいただければと思うんですが,現実に,例えば不登校の子どもがいて,そのとき多分その学級担任も御相談に行かれると思うんです。ところが,そのときに同じ学年の他の教員が一緒に行くということがあるか。これは小学校単級のところも多いので,なかなか小学校だけだと話は別なんですけれども,例えば中学校であれば,大体学年で引き受けることが多いんですが,そういう形になるかどうか。まず普通,不登校の子どもを抱えた学級担任というのは,前年度の学級担任との相談ということもほとんどしないことが多くて,どちらかというと,養護教諭に話をするときも,ほかの先生には内緒でという雰囲気で多分スクールカウンセラーにも接することが多いだろう。
それからまた,中学校などで言うと実際は教科担任ですから,学年全体で責任を持つという形になるはずなんですが,現実には小学校と違って,生徒指導の担当者が学級担任ではなく独立していることも多いものですから,そうすると,ややもすると学年の責任というよりは生徒指導担当者の責任という格好で動くことが少なくないだろう。実際そういうことの中で,せいぜい熱心な学級担任が一生懸命になって,そうやって養護教諭とか家庭と連携をとっていくんだけれども,実際は,ほんとうに笑い話のような話ですが,これでやっとの思いで子どもが学校に登校する気になった。ところが,ほかの子どもが一緒に来るときには来れないものだから,ちょっと時間がおくれて行った。そうしたら,校門のあたりをたまたま監視していた先生が「おまえ,今ごろ何しに来たんや」という,その一言でもう帰ったというような話も聞きますけれども,例えば不登校の子どもが今,自分の学校の何年何組のだれが不登校なのか,あるいは自分のせめて学年,中学校の場合で言うなら学年の中でだれがそうなのかということの理解,あるいはその子どもに今どんな対応を例えば養護教諭やスクールカウンセラーがしているのか,あるいはその子どもが実は今日来る可能性があるからということを,例えば職員会なんかで話題にしているところがどれぐらいあるか。実はそのあたりの部分のことを抜きにして,例えば不登校委員会があるから指導体制がある,協力できているというレベルの話では意味がないんじゃないかなという気がするんですが,その辺,松野委員あたりの御経験の中でその実態みたいなものをお話しいただければと思うんですが。
○ まず,委員さん方から関連する発言をずっといただきまして,お2人の委員さんには少し流れを変えまして一番最後のところで,多分もう時間が迫っているので短く,委員の方々のお話を伺った上でのことでまたお話を伺いたいと思いますので,しばらくは委員の方々からお願いいたします。
○ スクールカウンセラーが活用できる校内体制ということでやはり考えていかなければいけないんじゃないかと思います。学校教諭の中で,確かに先ほどいろいろなお話があったんですが,それ以外にも学校教員の中でもまた養護教員,また,いわゆる管理職の先生方でもいろいろな形で研修,自分から積極的にしている方もたくさんいます。今日事務局のほうにお願いいたしまして,私,臨床心理士以外の認定資格概要みたいな形で配らせていただいたんですが,例えば学校教育相談学会というところがありまして,そこのところでは学校の先生方,いわゆる教育相談担当の先生方が積極的に参加して,いろいろな形で活躍していますし,校内連携でも非常にうまく進めています。そのほかに日本カウンセリング学会のほうでは認定カウンセラー,これも5,000名くらいの会員で,教職員が非常に多く入っております。養護教諭ももちろん入っておりますし,管理職の先生方も入っております。ですから,一般論ではなかなか言えないのではないかと思うんですが,学校間の格差みたいなのがどうしてもあるんじゃないかと思います。やはりそういった面では,スクールカウンセラーが活用できる校内体制ということで考えると,教師との連携というのが一番大事だと思いますし,その窓口になる人,その役割の人がよく知っていなければなかなか難しいのではないかということをぜひ伊藤委員にお聞きしたいと思います。
もう1点ですが,私が知っている限りの中では,ある中学校なんですが,スクールカウンセラーがいるときは部屋をあけているんですが,ほかは鍵をかけている状態。それで相談室と言うところもあることはあります。そういう意味ではスクールカウンセラーが効果的であるならば,きちんと常勤化ないしは毎日いるという体制も考えていくべきではないかと思います。これはいわゆる自治体では,埼玉県のほうで県財政の中でさわやか相談員という形で,また千葉県市川市ではライフカウンセラーという形で,子どもたちとの相談活動にきちっと応じるような体制を,何とか毎日カウンセラーがいるような形で進めております。そういうところでは,さわやか相談員関係に関係したものとしては当然電話も設置しましたし,予算もかけまして1教室分をきちっと間仕切りしまして相談スペースもつくったという形でしております。そういう子どもたちを大事にするような形,そういうものも考えていくならば,伊藤委員はどのようにお考えですか。常勤化ということについてどう思うかということをぜひお聞きしたいなと思っております。
あわせて,これは事務局のほうにお尋ねしたいんですが,例えば今後の特別支援教育の在り方,先ほど話が出たんですが,不登校の子どもたちに対して,例えばこういう特別支援教育というのは受けることができるのか否か,その点についてぜひ教えていただければありがたいなと思っております。
以上でございます。
○ 今の事務局の点だけは今ここでお答えいただきましょうか。
【特別支援教育課】 特別支援教育課でございます。不登校のようなお子さんが特別支援教育を受けるかというお問い合わせでございますけれども,基本的には障害のあるお子さんへの特別な支援ということを中心に考えておりますのでは,直接はノーでございます。ただし,2,3回前のこの会議でも話題になりましたが,LD,ADHD,あるいは高機能自閉症のお子さんが不登校,いじめとか,ほかでもそうなんですが,あわせて持つ場合も十分考えられますので,その場合はもちろん特別支援教育のほうでカバーしているということでよいかと思います。
以上ですが,よろしいでしょうか。
○ ありがとうございました。
○ ありがとうございました。
○ 不登校の子どもが増えています。平成4年に文部省初等中等教育局通知として「登校拒否問題への対応について」が公にされていますが、その中に「登校拒否はどの児童生徒にも起こりうるものである」という視点に立って,この問題をとらえていく必要があると述べられています。さらに「学校が‘心の居場所’としての役割を果たすこと」など,学校における取組の方向が挙げられています。その中に,「登校拒否となる何らかの前兆や症状を見逃さないよう常日頃から児童生徒の様子や変化をみていくことが大切であり,変化に気づいたときは速やかに適切な対応をとること」と指導の留意点が述べられています。現在は,当時に比べると不登校の子どもがかなり増加していますので、さらに具体的な対応が必要なのではないかと思われます。
担任の先生は自分のクラスの子どもたちを大切に思い,休んだ子どもの家を放課後に訪問するなど一生懸命努力しています。しかし,熱心さのあまり,客観的な視点から判断して適切な対応をとることができにくい面もあります。そこで,校内に学級担任の先生をサポートする体制を作る必要があります。学校を休みがちである,学習に集中できない,学級への適応が良くないなど,何らかの面でつまずきかけている子どもを早期に見出して,早いうちから援助していくようなシステムを作るのです。校内教育相談委員会など名称は何でもいいのですが、管理職者やスクールカウンセラーなども入って,月1回程度定期的に委員会を開き、各クラスで気になっている子どもについて話し合いを行っていきます。そして,一人一人についてどのような手立てを取ったらよいかを考えて実行してみるのです。そのような努力をしても改善しないときには,教育センターや児童相談所など外部の専門機関に支援をお願いすることになります。校内に,そのようなシステムを作っていくことが重要だと考えているのです。そのような委員会にはスクールカウンセラーなど外部の専門家に入っていただき,一緒になって考えていくことが大切です。定期的に継続して開いていくことによって,子どもたちが不適応状態に陥る前にサポートすることが可能になるのではないかと思われます。
このようなチームでのアプローチをとると,担任の先生は幅広い視点から子どもを捉えることができますので,気持ちが楽になり気負わずに子どもの援助にあたることができます。それは子どもたちのためにもなります。このように校内にチームを作り,担任を支援していくことが効果的なのではないかと思い提案してみました。
以上です。
○ 先ほど伊藤委員のほうから,ピアサポートとかメンタルフレンドの学生さんが一定の効果を上げているという話をいただいたんですけれども,多分このメンタルフレンドの学生さんというのは教育学部とか心理を専攻している人とか,そういう方面になると思うんですが,実は私どもでは不登校の経験者を相談員にしているんです。これが大変効果があります。今,全国に約300人,元不登校生が相談員として活躍しています。当然,相談内容が自分の経験に合わない場合もあり,その人たちに最低20時間,一番多い人は64時間という研修をした上で相談に乗ってもらうという活動をしているんです。相談にのる場合は,専門のカウンセラーとペアを組んでという形にしています。それでないと経験だけではできないことですし,これはメンタルフレンドも同じです。私どもに経験のないメンタルフレンドもがたくさんいます。ところが,十分相談に乗るという状況ではない。要するに友達にはなりますよということで一定の効果はあるんですけれども,それ以上がなかなかうまくいかないということで,必ず2,3の人たちのペアで相談に乗っていただく。これを例えば,スクールカウンセラーはいろいろ資格の問題があって難しいかもしれないんですけれども,心の教室相談員のような形で一部でも活用ができないか。それから,私どもが募集をしても300人以上も集まるわけですから,例えば文部科学省として,不登校経験のある人は手伝ってくださいよという声をかければ,ものすごい数の人たちが参加してくれるんじゃないか。「なぜボランティアに参加しましたか」と聞くと,自分に自信を持ちたいから不登校を,マイナスでなくプラスに変えたいからということで,相談に乗った元不登校生は大変喜んでいます。ですから,そういう点で,例えば森田先生が5年後の調査をおやりになって大勢の方々をよくご存じだろうと思うんです。そういう調査がもっと生かせるような体制ができると,この相談員不足というのはかなり解消されるんじゃないかなということで,御提案をさせていただきます。
○ ありがとうございました。特に今の不登校を起こした経験の方たちが相談あるいは対応の輪の中に入るという御提言は,私は非常に新鮮に承りました。関連して何か御発言はございますでしょうか。
○ まず,スクールカウンセラーの配置の問題でございますが,私ども関心があります大きな問題の1つは,小学校6年から中学校に入った時点で不登校の数が増えるといったことでございます。そういった対応策の1つに,市独自で配置しておりますカウンセラーにつきましては中学校区に巡回していただくということで,中学校区の中学校と小学校に回っていただいて必要なカウンセリングをお願いしているわけでございます。また,相談をお願いする中で,段差という視点での把握ということもお願いしているわけでございます。そういった点で何か示唆になるようなことがございましたらよろしくお願いします。
それから,もう1つ,開かれた学校づくりの中で不登校児童生徒を位置付けていかねばならないといった中で,学校の先生方へのフィードバックといったことで教えていただきたいとお願いしたわけでございますが,また,地域にいかにこういった問題をフィードバックしていくのかということで,スクールカウンセラーの活用というか,期待度というものが高まっていくといったことを感じているわけでございます。そういった点からつきましても,示唆していただけるようなことがありましたらお願いしたいなと思います。
以上でございます。
○ 連携の前に,先ほど不登校経験者の参加ということがありましたけれども,これに関連して,どなたか,事務局の方かわかる方に伺いたいんですが,ヒアリングの今回の対象に当事者もしくは経験者の方は含まれているんでしょうか。それから,含まれる可能性は今後あるんでしょうか,先にこの答えをいただきたいんですけれども。今後のヒアリングの対象に。
● 今後のスケジュールといたしましては,資料8に今後の審議予定ということで,現在,学校の中の体制を中心にまだ御議論をいただいている段階なんですけれども,学校外における支援の在り方ということで次回,それからその次,11月になりますけれども,そこで適応指導教室あるいは訪問指導,民間施設等というところで,学校外の施設とのかかわりということはヒアリングの対象として考えております。詳細についてはまだはっきりしておりませんが。また、現在のところ資料として整理ができておりますのは,不登校の経験者の皆さんの経験談という意味では,初回,第2回と各委員の間で議論になりましたけれども,森田先生のほうにおまとめをいただいたフォローアップの調査を,個々の基礎資料という形で今,位置付けております。まだはっきりはいたしておりませんけれども,現在はそういうふうに考えております。
○ ほかの委員の方のところにも来ているかと思うんですが,某フリースクールの団体から,この会議の在り方についての意見,要望書みたいなものが届いていると思います。当事者が意見表明をしたいというせっかくの機会ですから,近々,経験談もいいと思うんですけれども,直接こういうふうに仕組みなり制度なり,自分たちの意見を反映してくれというものがあるのであれば,そういったものも取り込むのはむしろ手っ取り早い方法ではないかと考えたわけです。
スクールカウンセラーのことについてもそうなんですけれども,いただいた資料をざっと見た限りでは,導入の効果の評価について,教員の意見と保護者の意見というのは論文として拝見いたしましたけれども,利用した当事者がどうだったか,生徒がどう感じたかみたいなことについてのフィードバックが,アンケートでも何でもいいんですが,当事者に対する調査が見当たらなかったんです。これがなされていないのか,あるいは私が見落としているのかわかりませんけれども,なされていないとすれば,それは残念な感じもいたしますので,その辺の成果,先ほどおっしゃったように確かに不登校数が減ったから成果があったとか,なかったとか,そういう雑な評価は私も賛成ではありませんが,ただ,そういう結果も知りたい気はするんです。端的に導入したら減ったのか,増えたのかという,これはわかりやすい結果として,もちろんそれはじかに受けとめないというこちらの感性も大事ですけれども,そういうことを考えたということがあります。
それから,もう1点だけ,主にスクールカウンセラーの支援の在り方について伺いたいんですけれども,カウンセリングというのは基本的に治療関係もしくは擬似的な治療関係みたいなものもつくっていく中で変化を起こしていくというふうに私は理解しているんですけれども,学校の中でのスクールカウンセラーの限界というのは,要するに来なくなっちゃったらおしまい,もしくは卒業してしまったらそこで関係が切れざるを得ないという限界がどうしてもあると思います。これは小児・精神科でも児童相談所でもあることですけれども,ただ,そういう中で非常に有意義な関係ができてしまった場合に,そのつながり,次のまだカウンセリングの途上なんだけれども,どこかに紹介するとか,つながりとか,そういった形はきちんとなされているのかどうか,私は非常に不安を感じますので,その辺を伺いたいと思いました。
以上です。
○ 今の点について御発言は。
それでは,委員の方,特に今,直接学校にかかわっておられる委員の方々からの御発言もほんとうは伺おうと思っていたんですが,時間が大分窮屈になってしまいましたので,今御発言した方々は次回にぜひその御意見を生かしていただくということで,ここでは松野委員さん,伊藤委員さんの順に,今の委員の方々から伺った内容を踏まえて短くお話をいただく。それから,伊藤委員さんには,今のようなことにも触れて少しお話をいただきましてというふうに思っております。
では,松野委員からお願いいたします。
【松野委員】 それでは,私のところでわかる限りの範囲のことでお話をさせていただきたいと思います。確かに不登校の生徒が1人クラスにいるということは,そのクラスの担任はかなりの力を注がなければならない。さらに残されている30何人あるいは40人近くの生徒たちのこともやらなければならないということもありまして,大体今,学校ではほとんど学年団という組織を1つ大きな枠の中に持っていると思います。1年生なら1年生の学年団,2年生なら2年生の学年団,これは中学校,高校とも同じような格好でできているかと思います。そういう中でいろいろな部分を他人をサポートできる状態にしているとは思うんですが,問題はここからの部分で,その学年団のところでは,いろいろなことを細かくいろいろな学年会があったりとか何かでお話をするんですが,それ以外の学年団への理解というものが少々薄れている部分というのも確かにあると思います。
ですから,先ほど笑い話ではないけれどもということでお話があったように,その生徒に対して要らぬ言葉を出してみたりということが出てくる。今は,大体どこの学校でも,職員会議でも結構こういう子どもたちのことを,職員間のプライバシーを守るという守秘義務との関連をきちっと持たせながらやってきているところが多いと思います。それは養護教諭の部分でも,保健室でのいろいろな出来事の部分については,なかなか個人的なことをという部分はあるんですが,それは養護教諭の判断のところで,これは担任に絶対教えておかなければならない,入れておかなければならない,あるいは管理職に報告しておかなければならないというようなことをきちっとわきまえながら,その後で報告した段階で次をどうするかということを考えながらやっているというのが現実だろうと思います。ただ,教職員の中には,やはり個人的な資質の部分というのは当然あるわけで,いくらそれを言ったとしても聞いていない方もいらっしゃったりとか,あるいは,いや,そんなことはないというふうに自分で勝手に思い込んでという部分で子どもたちへの要らぬ言葉を発したり,あるいは怒鳴ってみたりとかということはどうしても避けられない部分としてございます。それについては,いろいろなところでまた一つ一つ解決していくような方法をとっているんじゃないかと思います。
それから,担任がかわるごとに子どもたちのクラス編成が変わっていくというようなことがあって,大体岩手県の場合には,小・中学校ともつなげるカードみたいなものをつくっているところが多いです。ですから,子どものいろいろなことを書いてあって,注意しなければならないこと,あるいは今まで話し合われてきた内容,そういうものを担任のところできちっとつなげるカードというカードの中に書いて,次の自分が担任でなかったり,あるいは大体持ち上がりというような場合には,その子はその担任のところに行くようにするんですが,転勤等もございますので,そういう場合にはつなげるカードを大事に使っているというのが現状でございます。
以上でございます。
【伊藤委員】 随分たくさんの御意見をちょうだいしましたので,うまくまとまるか自信がないんですが,やはり校内の連携体制ということが重要なポイントかなと思いました。含み込んでお答えしたいと思いますが,スクールカウンセラーをうまく活用するためにどうしたらいいのか,校内の体制をどうするかというのは我々にとってもすごく大事な問題です。本音のところで申しますと,学校側の受け入れ体制がすごく良好な場合,一番働きやすいのです。先生方がすごく理解してくださって,スクールカウンセラーをどう活用したらいいかというノウハウを持っていらっしゃって,かつ活用の仕方を理解されている場合はものすごくスムーズです。それともう1つは窓口の先生です。学校によっては養護教諭の先生あるいは教頭先生がなってくださる場合もあります。相談係の先生がしてくださる場合もありますが,そういった先生がうまくつなぎ役を果たしてくださって,私と子どもをつないでくださったりとか,保護者の面接のスケジュールを組んでくださったりとか,そういうアレンジをしてくださると,ほんとうにこちらはすっと入っていけます。そういった学校側への「スクールカウンセラーの使い方」というような情報もどんどん提供を,我々からも発信しないといけませんし,ぜひとも文科省のほうからもしていただけるとありがたいなと思っているところです。
ただ,先生方の中には,スクールカウンセラーって一体何なんだということからわからない場合も多いんです。今は随分浸透しましたが,派遣当初は全く何を任せていいかわからないということがありました。私は配置されると最初の時間,最初の日にイメージ合わせをするんです。我々スクールカウンセラーは何ができるか,何がしたいか,これならできますというところをお話しさせてもらっています。そして,学校側からはその学校の状況とか,学校としてこれをしてもらいたいとか,こういう生徒がいるのでこういうふうにかかわってほしいとかということを聞かせていただいて,お互いの共通理解を図るということに随分時間を使います。それをしますと,スタートは結構スムーズかなと思います。その中で窓口が決まってくることもあれば,あるいは活用委員会というのをつくってくださって,それがうまく機能する場合もあります。ただ,御指摘いただいたように,委員会はあるけれども,形骸無実というか,中身はないということもありまして,つくれば終わりではないんです。私の場合は,委員会がなくても個別に先生方と対応してうまくいったということもあります。ですから,委員会をつくれば終わりではなくて,そういう組織が大きくても小さくてもいいから学校内にできているとありがたいなと思います。
あと,常勤化についても御質問がありました。学校の状況によっても違うと思いますが,問題がたくさん起こっている大変な学校の場合は常勤化のニーズが高いです。またカウンセラーとしても,1週間後に行ったら随分状況が変わって,どこから手をつけていいかわからないとか,その流れを把握するだけでも1日かかりそうな場合があったりして,週1というのはほんとうに無力だなと感じることも多いです。ですから,そういう意味では常勤化してほしいという声はありますし,我々からもそれを望みたいところではあるんですが,ただ,実際の面で人の問題とかお金の問題とか,いろいろなこともあるのかもしれませんし,先生方からの一部の声では,教員と全く一緒の勤務形態になってはどうなのかという不安の声も若干聞きますので,そういったこともクリアした上で,学校のニーズに合わせて派遣してもらえる体制がとれると随分と理想的だと思いますが,なかなか乗り越えるハードルは高いと思います。
あと,メンタルフレンドについてもご意見がありました。先ほど不登校経験者を派遣することの効果,私もそれはすごく痛感しますし,経験者同士わかり合えるところは大きいと思いますから,同じ経験を持っている者同士が出会うだけでも,すごく癒しの効果はあると思います。それを認識する一方で,やはり経験者の方が自分の問題を乗り越えているかどうかがすごく大きくて,不登校の渦中にまだいるような,そういう悩みを半分抱えたままで人の相談に当たると自分が巻き込まれて,子どもの方に影響を与えてしまうということもあります。そういう点で,先ほど言われた研修を60時間もされるとか,あるいは専門家とペアを組んでという,そういったシステムがないと実際には難しいかなと思います。ただ,最近は心理を勉強したいとか教員になりたいという学生はたくさんいますから,そういった若い力を利用させてもらって,ただ,そのときにサポート体制をしっかりとるということをしながら行うと随分いい制度になるかなと思います。
あと,小・中との連携ですけれども,小学校と中学校,私も自分が行っています学校は中学校ですけれども,近隣の小学校の相談を受けることもありますし,その中学校に進学してくる幾つかの小学校の問題というのは人ごとではないですし,その学校と手をつながないとやっていけない場合が多いんです。というのは,中学校で起こってくる問題の多くは,小学校で既に何らかの兆候がある場合がありますので,そういったことで小学校の話もしっかり聞くということは大事かなと思います。
あと,地域については,地域へのフィードバックをあまり活発ではなかったのですが,青少年委員さんとかあるいは民生委員とかと連絡会を持ちまして,年に1,2回,そういった地域の方たちに集まっていただいて情報交換したりとか,学校の実態や要望を発信するということはございます。
あと,アンケートの件で御質問がありました。当事者へのアンケートは,今回持ってきました資料にはありません。実際は,私の指導した院生が1度調査しましたが,実際難しいんです。対象をどう拾うか。スクールカウンセラーに相談したことがある,かつ調査に協力してくれるとなるとバイアスが相当かかります。効果がなかったという意見をほんとうにうまく取り出せるかというのは大変疑問が多いことでもありますし,母体をどこまで,母数をどこまで広げるかという問題もあって実際にはなかなか難しいんです。しかし,やはり当事者の声を聞くというのも,この期に及んではすごく大事かなと思いますし,それに合わせて対応を考える必要もあると思います。
あと,最後の質問ですが,治療関係についてです。学校では治療関係はなかなか守りにくくて,枠のない中で相談業務をしないといけないという大変つらいことがあります。普通の相談機関では時間をきっちりとって,場所もしっかり確保して,その中で守られた中で相談を行うということが普通なんですが,学校はそういう枠が全くありません。時間もばらばらですし,相談しているときに突然侵入者があったり,校内放送で邪魔されたりもありますし,電話が鳴ったりとかしますので,実際には枠がない中でいかに耐えながら相談をするかという力をつけないといけないというのが実態です。それが第1点です。もう1ついただいた質問は卒業後のフォローです。これもすごく大きくて,例えば中学校不登校だったら全日制にも定時制にも進学しますが,その後が気になるんです。気になる場合とか,あるいはその当事者が必要とする場合は,卒業後も拒否はしませんので,例えば本人が訪問してくれたりとか,あるいは親御さんが引き続いて来られるというケースはあります。ただ,そこは中心的な課題として統一されていないところですので,今後考えていきたいなと思います。
ありがとうございました。
○ ありがとうございました。
ここでぜひ発言をしたいという委員さんはいらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございましょうか。ありがとうございました。
今日は学校における対応ということで,松野委員さん,伊藤委員さんには大変貴重なお話を伺いまして,ありがとうございました。そこで確認されましたことは,これまで既に指導資料等が示されていまして,こうしたことは学校においては重要だということがこれまで言われてきたわけでありますけれども,例えば的確な実態把握に基づき一体になってきめ細かな対応をすることが重要だということは,おそらく学校の関係者,あるいは不登校の問題に関係する関係者は十分理解しているつもりでありますけれども,しかし,1つ翻って考えてみると,今日の議論の中で確認されましたことは,例えば的確な実態把握をし,校内で共通に把握をして対応するというようなことについても不十分じゃないかという厳しい指摘がございました。また,一体になってきめ細かな対応をするということ自体についても,例えば松野委員さんのお話の中から議論が出されましたように,施設・設備の問題,あるいはこれを支える体制,こうしたこと1つとってもまだまだ問題があるということが確認をされました。特に今日大きく取り上げられましたのは,教師の意識にかかわりまして,教員の閉鎖性とかあるいは学校の閉鎖性をどう克服するかということが,この不登校の問題にかかわって非常に大きい問題である。事態の把握あるいは共通認識,あるいは各担当が必ずしも一体になって当たるという体制ができていないのではないかということが御指摘されたように思います。
伊藤委員さんからは,今度はスクールカウンセラー事業に関する現状と課題ということの御発表の中で,やはりピアサポートとかサポートシステムあるいはメンタルフレンドというような多様な支援体制がつくられることが大事であり,その支援体制の中では,スクールカウンセラーが十分に機能するサポートシステムをどう確立するかということが,今日の話の中で非常に重要な点として押さえられたように思います。
そのサポートシステムを構築する上でさらに整理をするならば,1つは,そのサポートシステムが,学校の機能が生かされる,そういう体制であるということ。それから,今お話ししたようなスクールカウンセラーあるいは外部あるいは専門の方々との連携が十分に機能する,そういうシステムの確立,そして,これを確立する上では,やはり校長のリーダーシップが十分に発揮されて,そして,校内の指導体制の確立に結びつくサポートシステムである,こうしたことが重要だということが今日確認されたように思います。
特にそうしたことが機能することによって不登校の未然防止,あるいは現実に今,不登校に陥っている本人について言いますと,そのケースに応じて本人や家庭に効果的に働きかけることができるサポートシステムであると同時に,当然その根底にあるのは学校の指導体制でありますので,教師の意識の変革あるいはそうしたサポートシステムと,あるいはスクールカウンセラーの方々が機能するような学校指導体制を確立することが非常に重要でありまして,この点に関連しまして,我々はやはり,もう1度申し上げますと,これまで言われてきたことをもう1度実態,特に今,深刻な実態があるわけでございますので,その実態から見直していって,我々のこの会議としては,今後その改善に向けての現実的な提言につながるようなことの論議を深めていくことが重要であるということが確認されたかと思います。
今日は学校における対応ということで協議を深めましたが,次回につきましては学校外における対応,今日の問題に出てきたことを引きずる形になりますが,学校外における対応としまして,学校外で不登校児童生徒を受け入れ,相談指導に当たっている適応指導教室について,その在り方や課題等について御論議をいただく,こういう予定でございます。
その際,ヒアリングを実施することとしておりますけれども,次回の会議まで若干時間もありますので,具体的なヒアリングの対象につきましては,私と事務局のほうで適切に相談をさせていただきまして,後日,皆様に御相談,御連絡をさせていただくということで取り運びたいと思っておりますが,そういう運びでよろしゅうございましょうか。
ありがとうございました。
本日も活発な御論議をいただきまして,残念ながらこの司会が不手際であるために,まだまだ御意見をいただきたい,あるいは御意見をお持ちの方もいらっしゃったわけでありますが,ぜひそれは,次回は学校外における対応が中心でございますけれども,今日の問題ともかかわりますので,また次回以降,活発な御意見をちょうだいしたいと思っております。
予定の時間となりましたので,本日はこのあたりまでとさせていただきます。
次回以降の日程等につきまして,事務局のほうから御説明をお願いいたします。
● 次回会議でございますが,11月19日火曜日10時から,場所は文部科学省の別館の11階の大会議室を予定しております。旧郵政省の建物でございますが,また別途,地図等を御案内いたしたいと思います。
○ ありがとうございました。では,本日はこれで閉会とさせていただきます。委員の皆様,どうもありがとうございました。
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