● | それでは,定刻になりましたので,本日,第3回の不登校問題に関する調査研究協力者会議を始めさせていただきたいと思います。
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○ | それでは,よろしくお願いいたします。これから,第3回不登校問題に関する調査研究協力者会議を開催いたします。
なお,本日は,斎藤環委員さん,それから山上美弘委員さんが御都合によって御欠席ということでございます。
なお,斎藤環委員さんからは,前回の検討内容に関係する不登校の増加要因等についての御意見を書面でいただいております。本日,机上配付させていただいておりますので,御参考にしていただければと思います。
また,本日の会議におきましても,報道関係の方の傍聴を許可するということになっておりますので,御承知おきください。
本日の議事進行についててございますが,最初に事務局から未然防止の観点からの取組,それから不登校児童生徒への対応の在り方について御説明いただきまして,その後,学校で実際に児童生徒への指導に当たっている先生方お2人においでいただいておりますので,先生方から各学校における取組等についてのヒアリングを行いたいと思います。
ちょっと御紹介させていただきます。お立ちいただいて,お顔だけ見せていただけますでしょうか。まず,岡山市立清輝小学校の校長先生でいらっしゃいます岡ア明宏先生でございます。続いて,前になられるわけですが,東伯町立東伯中学校の校長先生でいらっしゃいます竹田伸一先生でございます。後ほどよろしくお願いいたします。
その後,このお二方からのお話を踏まえまして,学校における対応として,未然防止対策やきめ細かい対応の在り方,それから具体的には,初期段階でのアセスメントや登校に向けた働き掛けの在り方,発達段階に応じた対応等について積極的に御意見をいただきまして,議論を深めたいと思います。これまでの2回同様,ぜひ委員の方から,それからまた,後の協議の中ではお2人の先生方にも加わっていただきまして,内容のある会議になりますようによろしくお願いしたいと思います。
事務局のほうから,本日の資料等につきまして確認をお願いいたします。
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● | それでは,封筒の中の資料でございますが,資料1が議事次第,資料2が第2回,前回の会議議事録の案でございます。それから,資料3,こちらは本日いらしていただいております小学校及び中学校からヒアリングのためにいただきました資料でございます。それから,資料4は学校の取組の基本的な在り方についてということで,平成4年の登校拒否問題への対応についての通知を配付させていただいております。資料5は,学習指導要領につきましての資料です。それから,資料6,これは未然防止の観点からの取組について,まとめたものでございます。資料7,こちらは体験活動の実施状況について。資料8は児童生徒の社会性を育む生徒指導プログラム開発についての資料でございます。資料9でございますが,これは不登校児童生徒への対応の在り方についてまとめた資料でございます。申し訳ございませんが,別に資料9−2の都道府県の指導資料の追加で,21ページから25ページの分を配付させていただいております。それから,資料10,こちらは学校の対応の在り方に関する不登校経験者の意見。資料11は不登校児童生徒への指導結果の状況。資料12は構造改革特区について。資料13は研究開発学校についてです。それから,最後が資料14,「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」指定校についての資料でございます。
それから,封筒の資料とは別に,今回の学校の対応というテーマに関連いたしまして,特別活動など新学習指導要領の趣旨を踏まえた議論が予想されましたので,御参考に新学習指導要領のパンフレットを配付させていただいております。また,菅原委員より,「すこやかネットまつばら」という資料をいただいておりまして,こちらも配付させていただいております。
なお,前2回の会議の資料につきましては,こちらの青い厚いファイルのほうにとじさせていただいておりますので,御参考にしていただければと思います。
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○ | ありがとうございました。ただいま御説明の配付資料につきまして,御質問ございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
続きまして,第2回の会議議事録の取り扱いにつきまして,これも事務局のほうからお願いいたします。
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● | 本日配付しております資料2の第2回会議議事録案につきましては,前回と同様に皆様のほうで各自目を通していただきまして,御意見ございましたら10月25日までに事務局までお知らせいただくようお願いいたします。また,事務局のほうで修正させていただきまして,ホームページで公開することとしたいと思います。
なお,第1回目の議事録につきましては,近々,文部科学省のホームページに掲載させていただき,また委員の皆様には郵送させていただく予定でございますので,よろしくお願いいたします。
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○ | では,ヒアリングあるいは協議に先立ちまして,事務局のほうから,政府の構造改革特区の動向について御報告をいただくということで,尾崎課長さんからでよろしゅうございましょうか。よろしくお願いいたします。
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● | 失礼いたします。話題としては,ちょっと飛び入りのような話題ですので,手短に御紹介,御報告させていただきたいと思いますが,報道等で既に御案内かもしれません。構造改革特区にかかわります不登校対策のお話でございます。資料12をご覧いただければと思います。こちらは私どものほうで簡単に不登校関連の構造改革特区の動きをまとめたものでございます。
まず,1番に書いてございますけれども,構造改革特区構想自体は,教育分野に限らず,非常に幅広いテーマを扱っているわけでございますけれども,今年度に入りまして,政府全体の経済財政諮問会議ですとか総合規制改革会議等で議論されてきた経緯がございます。7月にこの構想を一本化するために,内閣官房に構造改革特区推進室という事務局が設けられました。申し訳ありません,ちょっとタイプミスがございます。また,全大臣を構成員としまして,つまり閣僚レベルの内閣総理大臣を本部長とする構造改革特区推進本部というものが設置されております。ここが検討推進の母体になっており,特区は政府全体の課題となっているわけでございます。
2番でございますけれども,目的としては,これまで常識的に考えられてきた規制というものは全国一律だという考え方を捨てて,地方の特性に応じて様々な規制の在り方があり得るという発想の転換をしようではないかということで,地方公共団体の発意を受けて,特例が導入できるかどうかということを検討の上,特区を設けるというスタンスに転じようということでございます。ただし,次の段落にございますけれども,その際,従来の財政措置には頼らない,地方公共団体の自発性を最大限生かすということが基本的なスタンスとされているところでございます。
これに関しまして,小泉総理のほうから,第1回の特区推進本部の御指示がございまして,今,申し上げましたように,各省それぞれできないという理由を検討するのではなくて,実践するためにはどうすればいいかという前向きの方向で検討するようにという,とりわけ具体的な指示がございまして,各省,そのようなスタンスで検討している状況でございます。
資料の3番でございますけれども,不登校に関連して自治体から出てきているテーマの中で,大きく2つございます。(1)にございますように,不登校児童生徒を対象とした新しいタイプの小中学校の設置を考えたいという八王子市の案。それから,(2)ITを活用した学習活動,学習の実施に取り組みたいという岐阜県の案。不登校に関連した特区としては,この2つの自治体からの案というふうに私ども承知しております。
これについての基本的な考え方を4番に整理いたしておりますけれども,文部科学省といたしましては,基本的な考え方としては,地方公共団体や民間の創意工夫をなるべく前向きに受けとめる。その上で,その環境整備等,特例措置をちゃんと検討していく。それから,緊急性が高い政策課題にちゃんと対応していくということを一応のスタンスといたしまして,具体的には次の〇でございますけれども,特区において,不登校対策に資すると判断される場合に,地方公共団体又は学校法人が,不登校児童生徒を対象とした学校を設置し,その学校において学習指導要領によらない弾力的な教育課程の編成を可能とする方向で考えていこうと。その際に,一部の学習活動について,学校外の組織が実施する学習活動,想定でございますけれども,例えばフリースクールですとかNPO団体等が主催する体験活動に参加する場合ですとか,あるいは民間事業者が提供するインターネットによる学習プログラムですとか,こういったものを学校の教育活動の一部として取り入れることも検討するというスタンスでございます。
それから,次でございますが,特区において,公立ではなくて,私立の小中学校を設置することを目的として学校法人を設置する場合に,一応,学校法人を通じて,土地建物の自己所有というものが原則になっているわけでございますけれども,不登校児童生徒を対象とする学校の場合には,その校地・校舎の自己所有要件というものを緩和する方向で考えようということでございます。これによりまして,NPOなど,比較的財力の乏しい団体の学校法人設立を容易にする方向で検討しようということを考えているわけでございます。
また,その他といたしまして,不登校に限らない部分もございますが,教育課程の研究に関連いたしまして,従来ありました研究開発学校制度,これにつきましては資料13にまとめておりますけれども,こういう研究開発学校制度のもとに,これまでの研究開発学校制度とは別に,構造改革特区研究開発制度というものを新たに創設しようと。この特区におきましては,従来,研究開発学校には3年という認定期間があるわけでございますけれども,この構造改革特区の研究開発制度ということでは,その認定期間を設けないと。設けずに弾力的な教育課程の編成を可能とすることを考えていこうという基本的な考え方でいるわけでございます。
ただし,これは今の基本的な考え方でございますけれども,文部科学省といたしまして,例えば八王子市,それから岐阜県,それぞれ直接の具体的な構想をまだ伺っている段階ではございませんので,実際に伺っていった段階で,そのうちどれがこういう制度として緩和の対象になり得るのかということは,今後の検討をしていかなければいけないという状況でございます。
それとまた,くどいようでございますけれども,あくまで自治体の特区の発案として来るものをどう受けとめるかというスタンスでございますので,本会議で御検討いただいております,まさに13万9,000人,全国の子どもたちのためにどういうふうな対策を考えようかというものとは,ある意味では一線を画する話であろうと理解しておるところでございます。
それから,最後でございますが,現在の状況・今後の予定といたしまして,次のページから付けてございますけれども,10月11日に構造改革特区の基本的な制度,それから具体的な特例措置,今後のスケジュール等を内容とする構造改革特区推進のためのプログラムというものが,閣僚レベルの構造改革特区推進本部において決定されております。これを受けまして,もうすぐ開会されるでありましょう今後の臨時国会で,構造改革特区のための通則法案という法案が提出される見込みでございます。これが成立いたしますと,それによって施行日が設定されまして,法律以外の事項も大体歩調をそろえて検討していくことになるということでございますが,最後に書いてございますとおり,まだ施行時期が未定でございます。そういう意味で,具体的な自治体の発案にどういうタイムスケジュールでこたえていくかということも,これはまだ確定的な判断ができない状況でございます。
なお,次のページから,今申し上げました構造改革推進のためのプログラム本体が付けてございます。御説明は,重複いたしますので,大部分は省略させていただきますが,この中に一番最後の1枚に別表1というものが付けてございます。これは各省,一般論として規制の緩和を検討するということになっております特例措置が,このような別表の形で整理されているものです。必ずしも不登校対策に限定したものではございませんけれども,不登校に関連したものを抜粋してございます。ただいま御説明申し上げました,例えば八王子市は,この表で申し上げますと,803にございます不登校児童生徒を対象とした新しいタイプの学校の設置による,教育課程の弾力化ということに当たるのではないか。この場合に,右のほうに書いてございますけれども,基本的に考えられる前提条件といたしまして,不登校児童生徒のみを対象とすること,不登校児童生徒に対して教育上の適切な配慮がなされていることという基本的な前提はまず必要であろうと,私どもはまず考えてございます。
それから,岐阜県が想定されているのは805,引きこもり状態にある不登校児童生徒を対象として,IT等を活用した学習活動の可能化ということでございますが,これにつきましても,右にございますように,特区内部に居住する引きこもり状態にある児童生徒のみを対象とすること。通学すべき学校への復帰を前提とすること。対象とする児童生徒の基準をあらかじめ定めておくとともに,対面による指導等が適切に行われることといった基本的な前提が必要なのではないかと考えているところでございます。
なお,具体的な構想をまだ聴取しておりませんので,わかりませんが,伺うお話によりましては,その上に記しておりますような803ですとか,あるいは先ほどちょっと御説明しました特区の研究開発制度,802ですとか,そういったものも範疇に入れて考えなければいけないテーマが出て来るかもしれないという状況でございます。そういう意味で,まだ詰まり切ったわけではございませんけれども,今後また必要に応じまして,この会議の席で状況の変化に応じまして,御報告,御説明させていただきたいと思っております。
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○ | ありがとうございました。お聞きのとおり,特区につきましては,まだ政府としていわゆる特区法の検討をしている段階でございまして,本日,この会議において議論するということではございません。今後,適宜,事務局から御報告いただきまして,本会議においても,その動向を見守るとともに,また委員の皆様から,関連した御質問あるいは御意見をいただきまして,これについては,ぜひ別途事務局のほうにお寄せいただきまして,また事務局のほうでお考えいただいて,場合によってはこのテーブルに乗せるということも将来あるかもしれませんけれども,そんなことで進めさせていただこうと思っております。よろしくお願いいたします。
では,今回のテーマに関連しまして,事務局のほうであらかじめ用意してもらっております資料につきまして,簡単に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
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● | それでは,事務局のほうからは,資料4番以降,御用意させていただいておりますものに沿いまして,御説明を概略させていただきたいと存じます。
資料4は,登校拒否問題への対応についてという平成4年の通知でございますが,これにつきましては既に概略御紹介,過去したかと存じますので,簡単に触れたいと思いますが,ここにございますとおり,冒頭,基本的な視点といたしまして,登校拒否はどの児童生徒にも起こりうるものであるという視点に立ってとらえていくということをはじめとする5つの視点というものが示されております。
本日の御審議に最もかかわり深いところになりますのは,こういった視点に加えまして,次の2番の学校における取組の充実ということでございます。これにつきましては,「心の居場所」としての役割を学校は果たしていこうという大きな目標のもとに,いくつかの留意点というものがこの通知の中で示されております。
次のページの(2)におきましては,登校拒否の予防的対応という観点から,6つの柱。1つには,個に応じた指導ということ。2つには,児童生徒の自主性,主体性,たくましく生きる力を養うということ。さらに,3点目としまして,集団生活に適応する力。そのために,学級活動等を工夫するということ。さらに,4点目としまして,発達段階に応じた適切な進路指導。5点目として,教育相談の充実。6点目として,開かれた学校,家庭や地域との協力ということが,この中で示されておるところでございます。
その他,(3)におきましては,教職員の理解,意識啓発,指導力向上,そういった点についての指摘が通知の中でなされているところでございます。
こういった通知に沿いまして,平成4年度以来,様々な学校における取組の充実が図られてまいったわけでございますけれども,次の資料5にございますとおり,そういった学校の予防的対応や取組の充実を図る上で,大きな核となっておりますのが,この学習指導要領の改訂実施ということになろうかと存じます。資料5は,その学習指導要領に関しましての基礎的なものを取りまとめた資料でございますが,まずこの指導要領改訂に先立ちまして,その方向性を示したものが平成10年7月の教育課程審議会答申でございます。
めくっていただきますと,まず教育課程の基準の改善の方針という冒頭の部分で,基本的な考え方というものが示されております。子どもたちの成長への願いと学校への期待ということで,まず教育というものはそもそもどういうものかということで,自我を形成,自らの個性を伸長・開花する,そういう子どもたちの発達を扶ける営みであるということを規定した上で,学校,家庭,地域が連携してそれぞれが十分機能を発揮していこうということが強調されておるところでございます。まさに,ここは指導要領の教育課程の改訂にとどまらず,学校週五日制を完全実施していこうと,そういった全体の趣旨をここで言っておるわけでございます。
その上で,そういった三者の,学校,家庭,地域のバランスのとれた教育,あるいは体験活動と有機的な関連を図っていくということなどが強調された上で,学校としましては,第4段落にございますとおり,子どもたちの発達の状況を踏まえて,組織的・計画的・継続的な教育を行っていくという特質があることが触れられる状況でございます。
その上で,この下のほうの段落でございますが,教育課程の基準,いかにあるべきかという前提として,学校がどういう環境を備えていくことが大事かということが触れられているところでございます。この中では,学校は子どもたちにとって伸び伸びと過ごせる楽しい場でなければならない。それは,興味・関心,じっくり取り組めるゆとりがなくてはならないということ。さらには,そういった基盤として,子どもたちの好ましい人間,あるいは教師との信頼関係の確立,学級の雰囲気,そういった点について強調されておるところでございます。
次のページにおきましては,そういった趣旨に加えまして,小・中・高,それぞれの学校段階の役割の基本というものについて触れられておるところでございます。こうした非常に抽象的ではございますが,学校に向けての期待というものが前提にあった上で,具体的な教育課程の改訂というものが審議会答申でも示され,指導要領改訂に至ったということでございますが,次に資料の5−2というもので,新しい学習指導要領の主なポイントということで,1枚にまとめられた資料がございます。
この冒頭にございますが,改善の基本的視点ということで,完全週五日制あるいは「ゆとり」「特色ある教育」「生きる力」の育成といったことを大きな目標とする4つの視点というものが示されておるところでございます。この中の冒頭にございますのが,前回の御審議でも御紹介いたしましたように,子どもたちの現在の状況というものを踏まえて豊かな人間性や社会性といったものを養っていくということが,まず最初の柱としてございます。その他,ここにございますような柱のもとに,具体的な改善が図られたということで,詳しくはパンフレットあるいは資料等をご覧いただければと思いますが,授業時数縮減,教育内容の厳選,ゆとりをつくり出していく。さらには,学校の創意工夫ができる「総合的な学習の時間」を創設する等々の様々な改訂がこの際なされたということでございます。
続いて,5−3でございますが,これは新しい学習指導要領の総則におきます全体の教科,道徳と2つを通じました総則,第1章における,特に生徒指導にかかわり深いと思われるところに関しまして抜粋したものでございます。小・中それぞれございますけれども,ここにアンダーラインを引いた箇所が,従来の指導要領との改訂の箇所ということでございます。大体ご覧おきいただければ御理解いただけるかと存じますが,特に生徒指導に直接言葉として触れておりますのが,第1章第5の2番,(3)ということで,下のほうにございますが,小学校の場合ですと,日ごろからの学級経営の充実を図り,教師と児童の信頼関係及び児童相互の好ましい人間関係を育てるとともに児童理解を深め,生徒指導の充実を図るということが挙げられております。
また,その次の(4)におきましては,様々な,自らの将来について考えたりする機会を設けるということ。
さらに,(5)におきましては,個に応じた指導の充実ということが具体的に提示されるということがございます。
めくっていただきますと,中学校の指導要領でございますが,大体背景の趣旨,ねらいの方向性は同様でございますが,ただいまの生徒指導の充実に関する(3)を見てみますと,ここにおきましては,信頼関係ということのみならず,「生徒理解を深め」という言葉が新たに強調されておるということがございます。
また,(5)という新しく挿入されたところにおきましては,生徒が学校や学級での生活によりよく適応するということ,あるいはガイダンス機能の充実といった点が新たに強調されているという変更点がございます。
続いて,めくっていただきますと,指導要領改訂の特別活動に関する改訂ポイントというものが1枚ございます。当然ながら,教育活動はそれぞれの国語,算数等の教科,道徳,特別活動,それから総合的な学習の時間という4つから構成されるわけで,全体を通じて学校を魅力あるものにしていかなければならないということは当然でございますが,特に今回,徳育,社会性育成等々の関連から,重要な分野・領域としまして特別活動の改訂について,ここで御紹介するものでございます。
改訂の基本方針とありますように,これは教育課程審議会から抜いたものでございますが,この中にあるとおり,好ましい人間関係の醸成,そういった社会性の育成ということがかなり力点を置いて方針となっておる。さらに,体験活動のいろいろな充実を図っていこうということが改訂の基本方針になっているということでございます。
具体的な改訂内容につきましては,3 改訂事項の例とありますところを御参照いただければと思いますが,いろいろな社会の一員としての自覚を深めさせるとか,あるいは自発的な,自主的な活動を充実させる。ボランティア活動を充実する。あるいは,学級・学校生活への適応,あるいは希望や目標を持たせる等々,そういった観点からのいろいろな具体的な改訂がなされたということでございます。
続きまして,5−5でございますが,心の問題という観点からいたしますと,特活と同様に重要な役割を持っております道徳に関する改訂ポイントでございます。これに関しまして,大きな方向性としましては,やはりこちらでも体験活動等を生かした心に響く道徳教育の実施,あるいは家庭や地域の協力による道徳教育,あるいは未来へ向けて自らが課題に取り組み,共に考える道徳教育といった大きな改訂基本方針というものの柱が示されております。
その上でいろいろな改訂事項がございますが,下のほうの3番にございますように,例えばボランティア活動や自然体験,そういったものに生かしていこうということが,この中でも力点が置かれた改訂になっているわけでございます。
めくっていただきますと,御参考に道徳の指導内容としましては,小学校,中学校を通じまして,主として自分自身に関するもの,2番として,主として他の人とのかかわりに関すること,3として,主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること,4として,主として集団や社会とのかかわりに関すること,大きなそういう4つの柱のもとに,様々な内容を指導していくということが道徳の中で目指されているということで,今回,1つのトピックになります社会性の育成ということも,当然ながら,道徳の中で非常に大きな役割を,比重を持っているということでございます。
続きまして,資料6をご覧いただきたいと存じます。そういった新しい指導要領のもとで様々な学校の教育活動がなされていく中で,どのように未然防止を具体的に取組としてやっていくかということでございますが,この資料6番の1番の基本的な在り方,これは先ほど御紹介した通知のものを抜粋したものでございます。それを踏まえながら,どのように実践していくかということでございますが,ただいま御紹介した特別活動をはじめとする実践の例として,考えられること,今まで出されていること,あるいはこれからもっと力を入れてしっかりやっていくことが期待される事柄につきまして,若干の例示というものをこの中で出させていただいているところでございます。
学級活動につきましては,やはりまず適応という観点から,年度当初,学校・学級生活をつくるいろいろな話し合い活動あるいは集団活動というものをもっと深めていくということ。あるいは,友だちとの新しい出会いといったものをきちんとつくっていくような活動を深めていくといったような事柄が例えば考えられるということでございます。
あるいは,児童会,生徒会活動,クラブ活動に関しましても,今まで以上に子どもたちのいろいろな自主的な企画や実施ということを大事にしていく活動。あるいは,様々な活動のある中で,子どもたちが楽しさというものを実感できるようないろいろな活動を企画・実施していく,そういったようなこと。
あるいは,生徒指導の観点では,例示の一番最後にございますとおり,例えば校則などを含め,規則とか規律とか,そういったものを主体的に考えさせるような取組,そういったもの等も,こういった活動の中で考えられるであろうということでございます。
それから,めくっていただきますと,学校行事でございますが,いろいろな体験活動の充実ということが,指導要領改訂全体を貫く重要なポイントでございますけれども,実際の体験活動をやっていく時間というときに,学校行事というのは非常に大切な役割を持つわけでございますが,その中でいろいろなボランティア活動や地域や施設,高齢者あるいは幼児,そういったものとの交流活動を深めていく。あるいは,様々な行事を魅力あるものにしていく。あるいは,学芸的行事などをはじめとしまして,いろいろな学習活動,それぞれの教科や,新しくできた総合学習の時間等での学習と連携したいろいろな行事の実践等々が考えられる。さらに,不登校問題での小・中学校の連携という観点からすれば,学校間の連携を重視したいろいろな行事の実践ということも期待されると考えられる点であろうかということでございます。
特別活動は,そういったものを中心にあるわけでございますが,その他,今回できた新しい時間として「総合的な学習の時間」というものも,当然それぞれの学校の直面している課題に応じて有効に活用していくことが期待されるということで,ここにいろいろな課題学習,児童生徒の興味・関心の学習,あるいはそれぞれの地域・学校の特色に応じた課題の学習等々,例示しておるところでございます。
そういったいろいろな学習活動を支える指導体制あるいは家庭・地域との連携に関して,(3)の中で触れておりますが,いろいろな個々の児童の不登校等,留意すべき児童生徒に関する校内チームをきちんとつくっていく。あるいは,加配教員というものを有効に活用した校内組織体制をつくっていく,研修を充実する,学校間の連携を深める等々,様々な取組というものが考えられるだろうということでございます。
こういった活動を学校週五日制実施の中で,いろいろと行事をはじめとして,精選とか見直す必要も一方であるわけでございますが,そうした中で,質の高い活動をいかにやっていくかということが今まで以上に大事になってくるということでございます。
その他,この資料で3ページ以降は,不登校をはじめとする課題解決のための参考となる資料として,これは山形県教育委員会がおつくりになった指導の例でございますけれども,学校経営改善実践事例ということで,いろいろな魅力ある活動をやっていこうという指導資料の事例をここで御紹介させていただきます。今,触れました,いろいろな学校行事を深めていくアプローチや,あるいはきめ細かな目配りをした学級経営,あるいは学年ゆとりの日というものを使って,生徒会活動を活性化させようという例,あるいは学校内,校内のチームをつくって不登校予防を図っていく例,あるいは地域との連携,地域を巻き込んで生活リズムの改善というものや,交流を持つという事例,そういったもの等をこの中で御紹介させていただいております。
続きまして,資料7でございますが,先ほど来の御説明の中で,体験活動ということにつきまして重要になってきているということを申し上げたわけでございますが,実際にどの程度,それぞれの学校で体験活動が実施されておるかというものにつきまして,平成6年度に実施いたしました特別活動における実施状況の調査,これは全国悉皆で,小学5年生,中高2年生を対象にして実施したものでございます。ここにありますような時間数で年間実施されておるということがございます。
また,さらに新しいものとしては,12年度に,これは抽出調査でございますが,いろいろ自然体験をはじめとする活動に小・中・高校がどのように取り組まれておるのかということ。これは,それぞれ小学校は6年間,中高は3年間にわたって実施される活動の総単位時間ということでございますけれども,ここに挙げられておりますような時間数によって実施されているということでございます。
数量的には,ここにあるような数字がございますが,こういった実態を踏まえまして,前回御説明申し上げたような,いろいろな社会性育成の社会的な要請の高まりということを踏まえまして,より一層体験活動を充実・強化していくということで,昨年,平成13年に学校教育法が改正されまして,体験活動の充実・促進を図っていくということが新たに規定されたと。あわせて,社会教育法も改正されて,全体を通じて体験活動をやっていこうということが制度改正でなされたわけでございます。
それを受けまして,次の2ページ以降は,そういった法改正等を受けまして,新しい指導要領のもとでどのように体験活動を図っていくかということで,国のほうで先般,「体験活動事例集」というものを作成したところでございます。その概要について,ここで御紹介している資料でございますけれども,この事例集につきましては,小・中・高43校を紹介しております。その中では,いろいろな体験活動の基本的な考え方とあわせて事例を紹介しているわけでございますが,3ページにありますとおり,基本的な考え方として,いろいろな体験活動の意義というものを強調いたしております。
何点かございますが,不登校問題にかかわり深いものとしまして,子どもたちの興味・関心・意欲を高めるということ。あるいは,いろいろな自己との出会い,成就感,自尊感情の獲得,社会性の育成といったことが体験活動の意義として,この資料の中でも確認しているところでございます。
具体的な事例の中のさらにいくつかの例ということで,4ページから5ページにかけまして,社会奉仕体験活動,自然体験活動,農業体験,職場体験,伝統文化関係あるいは交流活動,事例集の中に掲載されております6つの例をここで紹介しております。
さらに,続きまして6ページから7ページにかけまして,これはそれぞれの自治体,県教育委員会における自主的な体験活動の推進に向けた取組の事例を御紹介したものでございます。兵庫県,石川県,富山県の3県を御紹介しておりますが,これらいずれも県内の公立中学校の2年生全員を対象として,一定時間,3日間ないし5日間の期間を設定して,何らかの体験活動を全県挙げて実施していこうという授業でございます。
特に,この兵庫県の「トライやる・ウィーク」というものに関しましては,6ページの下にございますとおり,不登校問題にかかわりましては,不登校の生徒の約半数が「トライやる・ウィーク」にもきちんと参加した。その上で,さらに約4割の生徒が登校率の上昇が見られる。そういった意味で,不登校問題への未然防止ないしは解決というものに資する成果というものが報告を受けておるということでございます。
続きまして,8ページから9ページにかけましては,先般,夏に公表されました中教審の青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等に関する方針というものの概要でございます。詳しくは,ご覧いただければと存じます。
続きまして,資料8でございますけれども,こちらは国立教育政策研究所の生徒指導研究センターにおきまして,社会性育成のためのプログラムの研究開発,現在進めておるものでございまして,その概略を御紹介する資料でございます。これにつきましては,また詳しくは,本日の討議の中で委員の先生方の御要望がございましたら,生徒指導研究センターの担当者が出席しておりますので,詳しい御説明をさしあげたいと存じます。
続きまして,資料9でございますが,資料8についてまで申し上げた御説明は,主としては不登校が生ずる前の未然防止ということにかかわる事柄を強調して御説明したわけでございますが,資料9に関しましては,実際に不登校というものが生じた後の,いわば事後的な対応の在り方に対する資料でございます。
まず,資料9−1におきまして,国の答申あるいは指導資料等の抜粋を付けてございますが,こういう不登校問題,不登校が生じた場合について,そういう子どもたちにどういうふうに接していくか,働き掛けていくかという基本的なスタンスについて書いた部分を切り抜いたものがございます。ここにございますとおり,平成4年の報告書におきましては,いろいろな,例えば登校の働き掛けというものが場合によってはプレッシャーになって,問題をかえって悪化させてしまうことを指摘した上で,自立をいかに促すかということが大事であることが強調されています。
さらに,中教審の2つの答申がございますけれども,この中でも,元の仲間や生活に戻ることのみにこだわるのではなくて,時間をかけて取り組んでいこうということ。あるいは,不登校というものを,そもそも心の成長の助走期ということでとらえて,個性を伸ばし,成長していくかという視点で対処していこうということが,この中で指摘されておることでございます。
こういった基本的な考え方にのっとりながら,次のページ以降で文部省が平成9年に作成いたしました生徒指導資料の抜粋を添付しているところでございます。ただいまのような答申等の考え方を受けて,具体的な対応の仕方というものを記述しておるわけでございますが,ここにございますとおり,登校拒否のタイプ別の特徴というのを示した上で,いろいろなタイプ別に応じた登校への働き掛けの在り方というものについて,この中で触れられておるところでございます。
特に,この資料の中では,4ページで,登校への働き掛けの留意点ということが挙げられておりまして,基本的にはいろいろなタイプがある中で,情緒的混乱型での登校への働き掛けは避けるべきである。一方で,無気力型,遊び・非行型では,適時・適度の働き掛けが有効であるということが,4ページの のところで触れられておるところでございます。特に,そういったすくみというような反応が出た場合には,慎重にしなければいけないということが書かれているところであります。
そういったことを踏まえまして,この4ページの中ほどでございますが,総括として,そういう登校への働き掛けというのは,常にプラスとマイナスの両面があり得るということ。さらには,そういう働き掛けのよしあしをどう考えるかについては,児童生徒自身がどう感じ,どう受け止めたかということが大事であるということが,ここで総括されているところでございます。
さらに,いろいろなタイプ分けの効用について,この中では触れられております。タイプ分けというものは,完全なものではない。あるいは,いくつかのタイプをあわせ持っているという認識が大事であるということ。あるいは,そういうタイプを決めたことで,一方的に対応の在り方を決め付けるラベル貼りになってはいけないということも触れられているところでございます。
続いて,9−2でございますが,各県の指導資料ということでございますが,文部省の様々なそういった方向性を踏まえまして,さらに具体的ないろいろきめ細かい対応をそれぞれの自治体でも創意工夫していただいておるということで,ここでは北海道,秋田,岡山,鳥取,金沢市,5つの指導資料についていくつか御紹介しておるものでございます。詳しくは,ご覧いただければと存じますけれども,めくっていただきますと,1ページ目からは北海道でございますが,いろいろな不登校への指導援助の在り方,早期発見・早期対応に始まる,様々な一連の流れの中で留意すべき点というものについてまとめてあるという資料でございます。
この中で,例えば登校刺激という問題に関しましては,3ページにおきまして,再登校の機運が熟してきたと思われるときは,与える必要がある。あるいは,いろいろな留意点をそれに関連して触れておるということでございます。
さらに,5ページ以降は,秋田県の研究紀要からの例でございます。こちらは,いろいろなタイプ分類というのはあり得るわけでございますが,秋田県の教育センターのとりました分類というのは,ここにございます。分離不安型,次に良い子息切れ型,次に甘え依存型,無気力型,学校生活に起因する型,神経症等を伴う型,発達・学力遅滞等を伴う型といったものが,それぞれ1枚ずつ,5ページから11ページにかけてでございますが,そういったタイプごとに,どういう状態や症状,あるいは対応を図っていくかということが取りまとめられている資料でございます。
さらに,12ページからは,岡山県の資料でございますが,いろいろな留意点あるいはタイプの在り方について触れております。この12ページにおきましては,ワンポイントアドバイスに登校刺激ということが特に強調されておりまして,すくみ反応というのはどういうものか,あるいは登校刺激を与えていい場合と控えたほうがよい場合ということについて,きめ細かい助言を試みるという例でございます。
13ページにおきましては,いろいろな不登校のタイプごとに見た対応,前期,中期,後期という形で,タイミング別にいろいろな留意点をまとめたという資料でございます。
続きまして,16ページからは鳥取県の事例でございますが,これにつきましても,登校への働き掛けについて,先ほどの例と同じように,登校への促しというものをしてよい状態と,それを控えたほうがいいと思われる状態。それを促す場合におきましても,それを具体的な段階的なステップを設定していこう,行動目標というのを考えていこうということをアドバイスしている資料でございます。
同じく,鳥取県,17ページでございますが,こちらにつきましては,不登校のタイプというよりは,主たる背景ごとに対応の在り方を整理した資料でございます。
また,18ページは,これは不登校の状態とプロセスを,大きくは苦悩・葛藤期から始まる5段階に分けて,プロセスごとの支援の在り方というのを整理した資料ということでございます。
続きまして,19ページからは金沢市のセンターがまとめられた研究紀要でございますが,これもやはり学識者の方の整理をもとにマニュアル化を図っており,予知・早期段階ごとの対応の例,あるいは次のページは,こちらは予知・早期というよりは,本格的に不登校という状態になってからの段階別のマニュアル,苦悶期から始まる8段階に整理した例がこれでございます。
また,補足資料として,カバーから外れておりますけれども,同じく金沢市では,年間不登校対応マニュアルということで,年間を通じてどのような働き掛けを一連の教育活動の中で組み込んでいくかということを,年間の計画という形でのマニュアルというものを作成を試みているところでございます。また,同じく,その中ではいろいろな中学校ごとの対策,校務分掌をどういうふうに設定していくかということや,あるいはいろいろな学校行事等,その中でどう活動に組み込んでいくかということを年間計画の形でサンプルを示した例。さらには,きめ細かい対応という意味で,個々の子どもたちの状態像というものを,不登校対策用紙という形で整理している記入例,24ページ以降でございますが,そういったものを具体的な学校への参考例として示しておるものがございます。
続いて,資料9の最後の紙1枚でございますが,教育委員会が担当指導主事のアンケート調査の中で寄せられている,不登校への促し方に関する意見の例を紹介しております。
続いて,資料10でございますが,これは前回までも御紹介している追跡調査報告の中で,不登校を経験した当事者の方たちがどうであるかということについて整理したものでございます。詳しくはご覧いただければと思いますが,基本的には様々な思いがある。いわば働き掛けをしてほしいという思いと,そっとしておいてほしいという,様々アンビバレンツな感情,複雑矛盾した感情がいろいろ錯綜しているのが子どもたちの状況であるということで,いろいろな生の声というものをこの中で紹介しているものでございます。
さらに,資料11でございますが,これは数量的なものでございますが,学校側から見て,指導結果がどのように成果が上がっているのかどうなのかということについて,数値で示したものでございます。また,詳しくは参考のデータをご覧いただければと存じます。
なお,最後の資料13,14は,研究開発校等,現在やっておりますいろいろな創意工夫を文部科学省として,先導的に研究していただいた授業・制度の事例というものを御紹介しております。こういった制度の中でも,不登校をはじめとする生徒指導問題関係を研究していただいている事例というものが含まれているということで,こちらも御参照いただければということでございます。
本日,お越しの岡山県の小・中学校につきましても,こちらの資料14にあります実践研究の指定をお願いしておるということがございます。
以上,事務局からの御説明でございました。よろしくお願いします。
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○ | ありがとうございました。かなり多岐にわたる内容の資料の説明でございました。これにつきましては,本日のヒアリングの後での協議のところで,あるいは次回以後も,この内容に触れて,また御質問や御意見等をいただきながら,ぜひまた生かしていくということで御理解を賜ればと思っております。
なお,今日は,生徒指導あるいは特別活動,それから先ほどお話のあった生徒指導研究センターの研究開発にもかかわっておられます総括研究官と生徒指導調査官にも,この会に加わっていただいております。後にヒアリングをいただいた後の協議の中に加わっていただこうと思っておりますが,お2人の方からこの時点で何か補足の説明みたいなことはございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
では,ヒアリングのほうに移りたいと思います。
議論に先立ちまして,本日お招きしております,先ほどごあいさついただきましたお2人の校長先生からお話をお1人15分程度でお伺いした上で,その後,質疑応答の時間をおよそ5分設け,あとはフリーディスカッションで協議したいと思っております。
なお,竹田先生がお帰りの時間等もございまして,4時30分ごろの御退席を予定させていただいてよろしゅうございましょうか。でございますので,御質問等がございますときには,そんなことも頭にちょっと置いていただいて御発言をまた後ほどいただければと思います。
では,岡ア先生,よろしくお願いいたします。
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【 | 岡ア氏】 資料3のヒアリング関係資料の中に,本校の資料を入れていただいておりますので,ちょっと資料の概要を見てやってください。最初3枚が,今日これからお話しします大まかなプロットでございます。4枚目,5枚目が学校要覧のコピーを入れさせていただいております。そこから後に,右上のほうに別紙1,もう1枚めくっていただくと別紙2,地域連携に関する資料でございます。これが3枚ございます。それから,3枚めくっていただきまして,別紙3,これが最近の6年間の本校の取組の概要を年次ごとに分けて書き出したものでございます。もう1枚めくっていただきまして,別紙4「九九の勇者」〜2年生〜というのがございますが,学力保障の面で取り組んでいる具体を紹介している一部でございます。それが,下のほうにページが打ってあると思うんですが,12枚入っていると思います。そして,そこからめくっていただいて,別紙5というのがまた違ったページが打ってあるのが入っております。これは,同じく基礎学力の向上を目指したものですが,九九以外の面での内容を入れております。今日の説明の中では,時間が限られておりますので,レジュメのほうをもとにさせていただいて,またお帰りになって見ていただけたらと思っております。
それでは,1枚目のレジュメのほうにお戻りください。まず,本校の概要なんですが,立地位置は岡山市のほぼ中心部,市内電車の終点もあります。戦前は,2,030人という児童数もあったんですが,今はドーナツ化の現象で140名あまりという小規模校になっています。普通学級が6,障害児学級2の8学級です。ただ,職員のほうは加配教員をたくさんいただいています。かつて不登校も多かったり,問題行動も多かったりということ,また同和教育のほうを熱心にしていたという経緯もございます。
それでは,別紙1を具体的に見てやってください。長期欠席児童数の推移を示している表が学校要覧の後のページに入っております。長期欠席というので教育委員会に報告した数でございます。括弧の中は50日以上なんですが,ご覧のように平成7年度,8年度,9年度,病気を入れると20名近くの長期欠席がございました。児童数は250人程度から徐々に減ってはきているんですが,今日御紹介したい平成11年度,そこからかなりの動きをしたんですが,その前の平成10年度には,怠学・問題行動等による不登校10名,内9名は50日以上。それから,心理的な面での不登校もおりました。合計11名という数が出ていたわけなんですが,現在,特に昨年度におきましては,心理的な情緒不安定による不登校が1名という状況にかなり改善することができています。中でも,長期欠席の中の保護者の無理解,家庭の無理解に当たるところが,最近は特に減ってきているのが特徴じゃないかと思います。こういうようになりました経緯を,この後具体例を示しながら御紹介したいと思います。
それでは,またレジュメの1ページ目にお戻りください。これからお話しします大きなくくりとしまして,1つ目は,不登校の児童,長期欠席の児童及びその保護者に対して,どういうかかわりをしたかという面を1つ目の柱。2つ目に,不登校・長期欠席を生まない学校運営という面をお話ししたいと思います。
まず1つ目の,3の(1)に当てはまりますが,不登校児童・長期欠席児童に対して,平成10年度までは,はっきり言いまして学校の教職員が教育委員会等との連携を取りながら頑張ってきたつもりです。ただ,なかなか減りませんでした。そこで,平成11年度より,学校の中だけで対応するのではなくて,地域の方と一緒に取り組んでいこうと,そういう立場をとりまして,ちょうど学区の民生児童委員会の方とのパイプもかなりできておりましたので,民生委員会の会長さんのほうからも,我々にできることはないかというお言葉もいただきました。
それを機会に,それまで学区の民生児童委員会の月1回の定例会には校長が出ていたんですが,それに加えまして児童福祉部会というのをつくっていただきました。この児童福祉部会におきまして,長期欠席の児童,不登校の児童,その家庭等へのかかわりを学校のほうから具体的な事例を紹介し,また家庭環境等も守秘義務という立場の中で,お互い守秘義務があるという立場で紹介を細かくできるだけさせていただいて,民生委員,主任児童委員さんに可能な範囲での協力をお願いしたというのが平成11年度からです。
この児童福祉部会の構成ですが,民生委員会の三役といいましょうか,会長さん,副会長さん,女性幹事の方に加えて,主任児童委員さんが2名,本校の学区の場合,いらっしゃいます。そして,こちらのほうで相談に乗ってほしい児童の居住地の担当民生委員さん等に委員として出ていただきました。最初,学期1回程度という構想もあったんですが,実際は平成11年度は六,七回,学校へ来ていただいたり,別の場所で会議を持っていただきました。そして,実際の対応は,民生委員さん,児童委員さん,主任児童委員さんが昼夜問わず家庭訪問等をしていただいて,保護者への対応をしていただきました。その結果,家庭の無理解による長期欠席は,平成11年度内に著しく減ってきています。それから,怠学とか問題行動による不登校も,かなり11年度から減らすことができるようになりました。
ただ,極端に激しい場合,学区の方だけでの対応は難しいという事例もおりました。そういう事例に関しましては,レジュメの1ページの下のほうに書いておりますが,中学校区で地域支援機関連携(ネットワーク)というのをつくっていただきまして,県の児童相談所,市の教育委員会あるいは警察署等の方も交えた会を定期的につくっていただいて,特に支援の要る子へのサポート体制をとっていただきました。これも平成11年度からスタートしています。そういう外部の方の御協力を得ながら,学校に来にくい子どもの支援をしていただいております。
結果的には,昨年度までで,一応この児童福祉部会,開店休業という形になりました。それは,先ほど言いましたが,保護者の無理解等による長期欠席がなくなってきたこと,不登校の子は中にはいますが,情緒不安定による不登校で,県立の児童相談所,市の教育相談室のほうでお世話になっていますので,そちらの専門機関のほうとの連携を大切にして,民生委員会さんのほうは見守っていただいているのが現状でございます。
次に,2つ目の柱としまして,不登校を生まない学校づくりといいましょうか,学校生活の活性化を求めてしましたことをレジュメの2ページから書いております。具体は,先ほどお示ししました資料のほうをまた見てやってください。いくつか,ABCで分けております。1つ目は,落ちこぼれをつくらない,表現は悪いですが,基礎学力の定着という面から,かなり新しい取組をしてみました。本校は,かつて同和地区と呼ばれた地区がございましたので,その学習会がありました。平成10年度に一応その学習会は終了しておりますが,それまで学習会でしていたことを,今度は学校の中でやっていこう,全員の子どもを対象に進めていこうということで,平成11年度,新しい試みと示しておりますが,何項か現在まで取り組んでいます。
1つは,授業の中に体験をどんどん取り入れていこうという姿勢。
それから,2つ目に,補充学習を高学年を中心に進めていこう,11年度からしています。12年度から,九九の勇者,先ほど資料で紹介しておりますが,これが2年生の児童に対しまして,担任の指導に加えて,専科の教員,そのほか職員室におる教職員等,すべてが子どもたちの九九を聞いてやりながら,一定のレベルに達したら合格のサインを入れていく。各段をマスターしたら,真の九九の勇者になるというような仕組みなんですが,2学期,今年も間もなく始めます。今年が3年目に当たりますが,過去2年間,2年生に全員九九をマスターさせることができました。
それから,その次の進まない授業といいますのは,高学年を中心なんですが,算数科の授業を中心にしまして,この時間は教科書は前には進まないと。できるだけ定着を目指して復習を中心にしていく。その中で,教師は1人ではなくて,その時間にその学級に行ける教師,できるだけ多く集まって個別指導に当たろう。現在,3人集まれるようなときに,この進まない授業というのを展開しています。
それから,漢字・計算大会。十数年前から進めている会なんですが,年間7,8回しています。これを子どもたちの単に覚える学習というのでなくて,興味・関心を呼びながら継続的にできるというものに,これも後の資料にも載せております。工夫しているつもりです。
以上が基礎学力の定着をできるだけ多くの子どもにという願いで進めていることです。
それから,Bとしまして,喜んで登校する学校行事・活動の工夫という面。そこに示しておりますが,大きな特徴としましては,平成11年度から5年生に4泊5日の自然体験活動を国立吉備少年自然の家でスタートしました。本年度から,瀬戸内海の渋川というところで3泊4日に1日減らしましたが,継続しております。子どもたちは,5年生になったらこれに行けるというのを非常に楽しみにして,総合的な学習の一部としておりますので,1学期から2学期になりますときも,不登校だった子どももこの活動を目当てに登校してくるという姿もかなり見られていました。
活動のほうで,あと中学校区での連携の交流活動をたくさん増やしています。中学校のほうから出前授業に来ていただいたり,生徒会のほうが小学校の活動に参加したり,小学校から出向いたり。また,中学校区には2つ小学校がありますが,お互いの交流も昨年度からかなり進めております。
1枚めくってください。それから,学区の人との連携という面で,平成10年度あたりから学校を花いっぱいにしようという運動を地域に人と一緒に進めております。昨年度は,県のコンクールでも入選いたしました。現在も,地域の方がひっきりなしに学校に来てくださって,応援してくださっています。
最後,Cのところで,その他児童の支援のためにというので,何項か年度を追って示しておりますが,最近は学校評価を全保護者に求めたり,それから学校評議員制も今年から進めています。多くの学校が進めていると思います。
たくさんのことを一気にお話ししましたが,結びとしまして書いているところを見てやってください。3点書いております。
学校独自の取組では,不登校や長期欠席児童の対応は極めて難しい。関係諸機関との連携があってこそ,解決できるんじゃないかと思っています。中でも,学区の民生児童委員会さんとの信頼関係の上に立った連携プレーというのが,この場合,非常に大きな成果を得られたと思っています。特に,怠学・問題行動傾向の不登校,それから保護者の無理解による長期欠席等への効果は非常にあったと思っています。
2つ目に,学校におきましては,昨年度までこうしていたから,本年度もこれでいいだろうという,単なる継続というのがかなり見られるんですが,本校の場合,単なる継続は停滞であるとの立場で,どの部分かは工夫して取り組んでいこうという職員の姿勢ができています。そういうことで,子どもたちにとって楽しい居場所となる学校づくり,これからも進めていきたいと思っています。
3つ目に,地域との関係でございますが,本校の場合,先ほど御紹介もありました,新しいタイプの学校運営の1校にさせていただいています,地域連携の面でそれを進めてさせておりますが,中学校区の保育園,幼稚園,小・中学校が連携をとって当たることで,保護者の教育力,地域の教育力も上がり,不登校等の面へもいい影響があるんじゃないかと思っています。
ただ,本年度も不登校の児童,1名出ています。そして,予備軍としまして2名がおりますが,その3名とも転入してきた子どもです。そして,その中の2名は,中学校に不登校の兄,姉がいる兄弟でございます。もう1名は,家庭の事情で他校から避難してきた子と,かなり重荷を背負っている子どもが今,不登校になっています。どういう方法をとって,それを解消してやればいいのか悩んでおります。御助言いただけたらと思っております。
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○ | ありがとうございました。また,協議の中でいろいろお話もお伺いしたり,質問を出させていただきますが,特に今の中でここというところで御質問をお持ちの委員の方はいらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
では,竹田先生,引き続いてよろしくお願いいたします。
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【 | 竹田氏】 日本地図の空白地帯から来ました鳥取県の竹田と申します。今の岡山の先生の一番最後に簡単な資料を付けておりますので,そちらのほうはほとんど触れませんので,後で読んでいただければいいと思いますが,勝手にしゃべらせていただきます。
それまで32年間,中学校の教員として勤めておりました平成7年に,突然,山の奥の小さな120人,1学年が20人程度の,しかし,とてもすばらしい小学校の校長に命じられまして赴任いたしました。平成7年,当時の文部省の道徳教育の研究指定校3カ年の分を受けて研究している学校だったんですが,その道徳教育を基本的な柱として,あらゆる学校教育がとてもきめ細かく,丁寧に,家族的な雰囲気の中で展開されている。日本の教育の学校の原点ではないかと私はびっくりしたんですが,こんなすばらしい学校が身近なところにあったんかという具合に思ったほどだったんですが。
そういう学校の卒業生が地元の中学校に進学した中1のときに,入った早々に不登校になりまして,はて,これはどうしたことだろうと。あんなにきめ細かく,丁寧に,大事に大事に育てた子どもが,入った途端に不登校傾向になるというのはどうしたことだろうというので,思い悩み始めたわけです。そのときは,幸い,五,六年の担任がまだ在任しておりましたので,その先生か家庭や本人のほうに出向いて,かなり力を入れて,比較的短時間のうちに回復したんですが,そういう思いを持っておりましたところが,平成10年に突然,また中学校の校長になれということで呼び戻されまして,500人規模の,学校名が出ている学校なんですが,私の家がこの学校のすぐ近くにあるわけです。つまり,町内の在住者であるわけです。
かねてから,この中学校の悪いうわさ,ちまたのうわさが尾ひれがついて,盛んに耳に入ってきておりました。当時,大きな問題になっておりましたバタフライナイフを任意提出させたら100丁集まったとか,とんでもない話が出ていて,春にぼやがあれば,また中学生がたばこ吸って投げたに違いないとか,いろいろな校内暴力のうわさであるとか,悪いほうのうわさばかり耳に入ってきておりましたが,私は過去32年間中学校におりましたので,そういううわさは10分の1か100分の1に聞いておけばいいと,家族の者にも言っておったんですが,着任してみますと,4月の入学式のすぐ次の日から,意欲に燃え,期待と希望に胸を膨らませて入学しているはずの1年生が,遅刻はするわ,休むわ,3年生や2年生とほとんど変わらない傾向を示すわけです。
これは,何かそこの小学校と中学校のわたりの段階に大きな問題があるんじゃないかという具合に思いまして,いろいろ見てみますと,中学校の体質の古さ,新しい教育観に向けての取組がどんどんなされている中で,当時35人ぐらい教職員がおったんですが,頑張っている者もおるんですが,頑張らないものも半分ぐらいおるというような状況で,つまり不統一であったわけです。
それで,校長ですから,学校の中をいろいろ見て,学習指導の様子を見たり,部活動の様子を見たり,昼の掃除を見たりしますね。そうすると,例えば学習指導を見て回りますと,相変わらず講義形式一点張りの授業をして学習指導している者もおりますし,子どもが道具を忘れてきているのに,それを全然無視したまま,どんどん自分で勝手に学習指導を進めて,隣の近所の子どもも道具を見せるとか,全然かかわらない。だから,そういう子どもはうつ伏せになって寝てるわけです。教育委員会の方が見学・訪問で来られたり,県教委の方が来られたときでさえ寝ていると。先生も指摘しないという現状がありまして,これじゃだめだと。
これは,単に不登校だけの問題じゃなくて,学校教育全体の立て直しという観点から,この問題を総合的に取り組まないと,この学校の不登校はなくならないという具合に思いましたので,4月はそういう具合に見て回って,自分なりの感触を得て,大ざっぱなあらすじ,私,そのとき現在であと3年しか残りがありませんでしたので,私の勝負はこの3年間の1,000日あまりだと。だけれども,真っ先に何をしないといけないか。
私は,それまで32年間勤めていた半分以上が教育困難校という学校の勤務ばかりだったもので,どうすればいいかという自分なりに思っていたものがあったものですから,信念もあったものですから,子どもの問題はほとんどの場合が大人の問題だと。子どもが勝手にこんな現状になるわけない。これは,例えばこの学校で言うと,教師の問題だと。だから,子どもたちがいろいろな問題行動をしたり,不登校になったり,その年度にはいじめの問題もありましたし,その前年度には差別事件もあったわけです。そんないろいろな現象は,これはすべてこの中学校の教育が子どもたちにとって魅力がない。大事にされているとか,わかるとか,楽しいとか,認められているとか,そういう思いが全然わいてこない。だから,明日,また楽しみにして学校に来ようという意欲につながらない教育が展開されているからに違いないと思いまして,普通,校長先生が新任で来ますと,早々に施政方針演説をして,今年度の教育方針はこういう具合にと出されるんだろうと思いますが,私は1カ月間思案しまして,5月の中ごろになって,この学校,5月の中に大運動会があるものですから,秋の運動会じゃなくて,その運動会が済むのを待って,ですから6月に近くなってから,その資料の中のどこかに書いてありますが,基本的な理念は,温かくて思いやりのある学校,それから基本方針は,わかる,大切にされる,思いやりがあるとか,信頼に足る先生がいるとか,友だちがいるとか,そういうものを目指そうとか,努力目標としてはこういうことをしようというのを初めて出しました。
それから,もう1つは,不登校に対する意識,これは我々に対する鋭い指摘であると,追求の声であると,泣き叫ぶ声であると把握して,全校一致して緊急重要課題として取り組まなくてはならないという意味のことを施政方針として提示しました。
それから,一方,そういう学校ですので,保護者のほうの不信感というのがものすごいものがありまして。といいますのが,ほとんど正確な情報が,いろいろな行事の協力とか,いろいろなことは要請しても,肝心の学校の内情とか状況について,正確な,プライバシーが守られる範囲の情報提供がなされていない。だから,保護者や地域の人の間には疑心暗鬼が生まれて,ありもしないようなうわさが尾ひれをついて流れていく。うわさが勝手に流れて,それがまた拡大していくという悪の循環がなされていたと思うんですが,これを何とかして学校のほうに目を向けてもらって,今度来た校長はやる気満々だと。この校長を信頼していけば大丈夫だというような信頼感も得なくてはなりませんので,4月15日ごろから校長便りという自分勝手な便りをつくることにしまして,最終的には35号まで出したんですが,そこに学校の教育方針やら,こういう状況だということを毎月,月の半ばごろには書いて,保護者用にわかりやすくかみ砕いて書きまして,啓発活動を行いました。
一方,子どものほうの自信を回復させねばなりませんので,とにかく悪いほうには目をつぶると。それで,いいところだけに焦点を当てて,これを取り上げて大きくほめていって自信を回復させるという方策をとりました。例えば,ぼや騒ぎがあったんですが,登校途中の女生徒が3人ほどかかわって通報したり,ホースをセットするのを手伝ったりしたということがあったんですが,これをほめてやらねばならないと思いまして,消防署の署長さんのところに行って,頼むからこれを表彰してやってくださいと。つきましては,これを,田舎ですので,町報という毎月発行される広報紙がありますが,それに大々的に写真を入れてもらったり,大きな字で書いてもらって,町民の意識をとにかく好ましいほうに転換するというほうの努力もしました。
幸い,5月中ごろにありました大運動会がまあまあ大成功になったり,引き続いてありましたスポーツ関係の大会でたくさん優勝したり,あるいは7月の初めには,先ほどありました5日間の社会体験活動があるんですが,その中で35か40カ所の事業所に行って,四,五人グループで体験学習をするんですが,そういうのの評判が割合よかったりして,ちょうどタイミングよく,いろいろなことが条件がよかったので。それから,夏休みには,PTAとか教育委員会とか,いろいろなところの取組が重なって,だんだん徐々に問題行動も減ったりしていくという過程を歩むんですが。
そのときに,平成10年度はまだ小規模校の出身者のことについては,着任したばかりで,私が自分の考えでするという段階ではありませんでしたので,平成11年度に向けての取組を徐々に構想を固めておりました。この学校は4つの小学校から来るんですが,150,160,170ぐらいの生徒が来るんですが,一番奥の小さい学校の生徒は,25名ぐらいだったのがだんだん目に見えて減りまして,私が着任したころは1年生に入って来るのが10名ぐらいだったと思うんです。それまでは,5クラスの学年学級でしたので,5で割りまして2名ずつという分散をとっていたんですが,これでは前に小学校におりました経験から言うと,この子たちは非常に寂しい思いをするんだろうという具合で,まとめて5人ずつに2クラスに入れたほうが,お互い頼り合っていいんじゃないかという考えを持っておったんです。そうしたら,その小学校からも軌を一にして,こういう具合にしてもらえないだろうかという提案もありまして,これなら実現しましょうというんで,11年度からはそういう具合にしたわけです。
それから,小学校が当時,鳥取県では,女先生の比率が60%から65%ぐらいだったと思うんですが,中学校はちょうどその逆の数字になるわけですけれども,新1年生の担任が,当時,私どものほうでは旧3年団がそのままおりてきて,新1年生を担任するというローテーションが機械的に,事務的な手続のこともあったりしてなされていたんですが,この間まで3年生のかなり完成した子どもたちを担任しておった者が,新1年生,小学校の7年生と言ってもいいような小さいのを相手にして,中学校にまだなれていないような子どもを,過去の思いが吹っ切れずに朝から晩までしかり散らす教員もおるわけです。1つの組から3人も4人も学校に来なくなるというクラスも出まして,これはだめだと思っていたものですから,男女の教員の比率を小学校にできるだけ近付ける,あるいはベテランの先生をできるだけ配置して,新1年生が心に思い悩むようなことがないように,不安や恐怖心を抱くことがないようにという対策もしました。
それから,中学校に入学したはなは,非常に子どもたち,通うのだけでも大変なプレッシャーであるのに,非常にバリアが多くて,不安や恐怖心を植え付けるような,皆さんのところではどうか知りませんが,私どものほうではまだ応援団というものがありまして,非常にしごくわけです。1週間ぐらい,新1年生を特にしごくわけです。そういうのは非常に恐怖心になるだろうと。一番燃えて,意欲を持って入った1年生がすぐ休むというのは,そういうものがいろいろマイナスのほうに作用しているんじゃないかということで,もうこれもやめと。
10年度の後半から,構成的グループエンカウンターという手法を取り入れて,来年度のかかりはやろうと腹を決めていましたので,不登校担当教員は優秀なサポーターに育てなきゃいけませんし,このグループエンカウンターのほうは,優秀な核となる教員を育成しなくてはなりませんので,2,3の教員をピックアップして,茨城県のほうやら岡山県のほうやらに,先進地に構成的グループエンカウンターの手法やら理論を勉強に行かせまして,3学期の後半ぐらいから暇を見付けて職員研修で取り組みました。
それで,新年度になったら,初めてなので,とにかくいくつかいただいてきた手法の中の1つだけやろうという具合にして取り組んだんです。それで,学級づくりの期間を1週間から10日設定しまして,その間はほかのものは一切入れない。診断テストであるとか健康診断であるとか,先ほど言いました応援団の練習というものは全部やめよう。学級の担任と子どもたちがお互いに相互理解して,好ましい人間関係が築いていかれるように,そこに集中しようということで取り組みました。
次年度からは,2種目やろうと。今は年間にきちんと配置しまして,たくさんのテクニック,手法の種類を取り入れておりますが,取り組みました当座はそういうようなことでやりました。
最終的には,平成10年度は39名,不登校を県教委に報告したんですが,500人程度の規模ですので7.5くらいの出現率だと思いますが,鳥取県が日本でワースト1の県であるのに,その中でも飛び抜けておまえの学校は悪いということで,県の教育長さんにえらいしかられたりした覚えがありますが。平成10年度はそういうような取組や構想を練っていた段階でした。
町会議員の方へ理解を深めていただいたり,町長やら,あるいは県教育委員会関係,教育長,教育委員,ありとあらゆる機会や場所を利用して,このままではこの町はつぶれると。この子たちが社会の中堅として活躍するべき45歳ぐらいから40歳ぐらいのときは,もうつぶれるという具合に,いろいろ危機意識を高める脅かしみたいなことも再々言ったりして。
それから,その39名の中の9名ぐらいが,先ほど言いました一番奥の一番小さい学校の卒業生なんです。率から言うと,非常に高い出現率になるわけですが,その地域で臨時の地域住民の総決起集会というのを開いて,この地域は非常に水面上は平和な平穏な地域なんですが,水面下は非常に過去の封建的な家族主義が残っている。男女共同参画社会が云々される世の中に,教育はお母ちゃんの仕事であって,お父ちゃんは家でビール飲んでテレビ見とるということじゃだめだということをわかるように話して,お父さんにどんどん出させにゃいけん。そのためには,おじいさんやおばあさんの協力も要るということをどんどん話して,あるいはその9名のその地域の不登校の中の6名ぐらいは,生活指導上の,つまり怠学の子どもに成長するわけです。
田舎ですので,屋敷も大きいし,家も大きいし,屋敷の中にいろいろな棟があるわけです。門長屋とか離れとか納屋とか母屋とか。両親がいるときは学校に行くふりして出て,両親がほとんど共稼ぎで働いていますので,出勤した後にまた家に舞い戻って,おじいさんやおばあさんに見付からんところで寝とるとか。そのうちに一番たまりやすい場所を根城にして,そこに集まってはたばこ吸ったり,いろいろなポルノビデオを見たりという生活を繰り返すようになるわけです。そこのおじいさんがたまたまたばこを吸うのを目撃されたとするならば,1週間ぐらい思い悩んでから学校のほうに電話をかけてこられるという状況があるわけです。何と,ここで,ここの地域の子がたばこを吸うんですが,どうにかしてもらえんでしょうかということを,タイミングがずれてから言ってこられるという傾向がありまして,農村部の封建的な地域のしがらみがあるので,現場でそこでみんな顔見知りで指摘できないという実情があるんだと思いますが,それじゃだめだと。見たら,その場で指導してくださいということを言ったり,臨時の集会で声を大にして叫んだり,そういう地域の教育力を取り戻していく取組をしたり,何のかんのして,その年はそういう具合で終わったんですが。
11年度,そのような取組を,構想を持っていた取組をやり始めて,見ておりますと,最終的には20人に減ったわけです。新1年生が13人から7名だか9名に減りまして,3年目は新1年生はゼロになったんですが,着実に効果を上げて。
私,平成12年度末で退職したんですが,平成12年度の2学期ごろ,夏休みころから生徒指導主事のほうが生徒指導上の月例報告というのがございます,県教委に報告する。これがゼロですとか,あるいは不登校担当の教員が毎日チェックしておりますので,校長先生,今日は遅刻者が1けたでしたとか,欠席者が1けたでしたという報告の回数が増えてきまして,ああ,よかったな。いろいろな無理も言ったり,トップダウンで強権を発揮したこともあったけども,よかったのかなと思ったりしましたが,大きな問題としては,その卒業した後のアフターケアがなかなかできませんし,貧弱な田舎ですので,この子たちの進路の方向が選択肢が非常に少ないわけです。夜間の定時制に行くか,通信制を受けるか。夜間の定時制に行くにしても,1時間近く乗り物に乗っていかなきゃいけないとか,非常にハンディがありまして。当座は張り切って行きますが,必ず夏休みごろから頓挫してしまうわけで,そういういろいろな悩みが相変わらず続いております。
それから,もう1つは,家庭の中に入り込める限度というのがありまして,これがなかなか垣根が破れないということがあります。
それから,もう1つは,先ほど岡山の先生からもありましたが,今年まだ何人か不登校がおりますが,何名かの子は,親がこの不景気の影響で会社が倒産して,Uターンしてふるさとに帰ってきたとか,あるいは広域なリストラで,広域人事で帰ってきたということが多いわけです。それで,子どもたちは不納得なままで転校しているわけです。今の世の中ですから,パソコンがあったり,メールがあったりしますので,あっちの学校の生徒と仲がいい人は,しょっちゅうコミュニケーションを取っているわけですので,なかなか吹っ切れないということがありまして,なかなか転勤したり,Uターンしたりしてきた子どもで不登校になった子どもの立ち直りの指導といいますか,支援といいますか,これが田舎の者にとっては悩みが大きいわけです。
以上,原稿を無視したままでしゃべりましたが,細かいところは読んでやっていただいたり,また質疑の中でやっていただければありがたいと思います。以上で終わりにします。どうも失礼しました。
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○ | ありがとうございました。それぞれにいろいろな御示唆を与えてくれる,あるいは考えさせられる問題を含んだ御発表をいただいたように思います。
まずは,少し質疑を交わした上で協議に入りたいと思いますが,もう少しここを詳しくというようなことで,委員の方々からいかがでしょうか。
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○ | 岡ア先生にお伺いしますが,資料でいただきました2ページの(2)魅力ある楽しい学校を目指しての14の通知表の改訂というのがございますが,ここをもう少し詳しくお伺いできればと思います。
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【 | 岡ア氏】 それでは,通知表の改訂について御紹介させていただきます。本年度から絶対評価の立場になった指導要領等をご存じだと思いますが,小学校の通知表のほうも学校自体で決めるものですが,立場は絶対評価のほうに,今年おそらく多くの学校はなっていると思います。
本校の特徴は,特に基礎学力の面で算数科の苦手な児童が多いという現状がございました。そこで,算数科の観点の中で,今までですと4項目ぐらい,一般的に関心・態度とか技能というので分かれていた通知表の観点だったんですが,学年ごとに指導内容を単元ごとぐらいの数に増やしまして,単元ごとの学習成果を通知表で算数科においては伝えると,そういう形のものに今年からしてみました。ほかの教科は,スペースの関係で,従来の形を踏襲しております。
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○ | 清輝小学校の先生にお伺いしたいんですが,資料の2ページ目の魅力ある楽しい学校を目指してというところの12,進まない授業というところで,高学年を中心にできるだけ多くの教員で習熟別というふうに書かれておりまして。ここのところは,加配教員を入れて教員3人で授業したり,それから習熟度別で授業をするというふうに先ほどお話を聞いたんですが,習熟度別というのは学校のクラス運営の中で非常に大きな問題だろうと思うんですね。これができれば,ほんとに子どもたちも勉強しやすいし。しかし,問題としては,習熟度別にするところに,保護者からのクレーム等々もあったり,それを選択制にしたらいいのかというところもいろいろ問題があると思うんですが,その辺のところを1つ。
それから,もう1つ,私もたくさんの先生方とかかわっている中で,加配教員がたくさんいると,その加配教員のために時間割を,その先生方を中心に組まなきゃならない。そうすると,一般の教師のその時間がめちゃくちゃになってしまって,これがまたとても大変なんだと。ですから,プラス面とマイナス面があるんだけれども,そういう点に関してはいかがでございましょうか。2点お願いします。
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【 | 岡ア氏】 まず最初の,進まない授業での習熟度別の場面でございますが,2タイプ実施しています。保護者と本人の了解がとれた場合は,別室での授業も何回かしております。これは,進まない授業といいますのが,月に二,三回ぐらいの回数ですので,常時じゃないということで,別室での授業もしています。
それから,保護者の了解,本人の了解が難しい場合,同じ教室の中で課題別といいましょうか,3人の教員が円陣のようなものを組んで,ここまでできていた子はこのグループというような形のスタイルなんですが,同じ教室の中でしている姿もございます。2タイプです。今後は,別室が増える方向で保護者へも呼びかけていこうと思っています。これは,進まない授業に限らず,ほかの算数科の授業でも,別のカリキュラムで別室でできるようになれば,より効果が上がるんじゃないかと思っています。
それから,専科教員,加配教員の対応なんですが,本年度の場合,児童生徒支援加配が1名,それから生徒指導充実の加配が2名,それから新しい学校運営の研究をさせていただいておりますので,研究加配が1名,県費のほうからいただいております。それに加えて,岡山市のほうから,生徒指導員として授業を10時間程度までしていいという教員もいます。それで,今,言いました教員は,単独で授業をするコマは極力減らしています。担任が授業している中にTTとして入って,場面によるとT1で主に授業を進めるという形を多くとっていますから,時間割の調整は比較的楽で,学級での複数教員による指導の時間が今,半数ぐらいとれておると思います。算数科では,7割以上,複数教員による指導をしております。
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○ | 大変よくわかりました。ありがとうございました。加配教員がこれだけの人数が先生のところにはいるわけですよね。普通の学校も同じように,こうした加配教員が派遣されるかということに関しては,いかがでございましょうか。特別に先生のところだけ加配教員がたくさんいるとか,加配教員がいなかったら,今の授業ができないこともありますよね。その辺に関してはいかがでございましょうか。
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【 | 岡ア氏】 教育委員会の者じゃございませんので,私の学校としましては,できるだけ現状を維持してほしいと,教育委員会の方にもお願いしているところなんですが。実際,来年度は減ると思います。ただ,今まで3コマできていたところを2コマでもいいから,専科教員はほとんどの学校にいると思います。それから,スクールパートナーとかスクールアドバイザーというような制度も今,進んでおりますので,複数でその教室にいて指導ができると,学習支援ということになると思うんですが,そういう体制はとれるんじゃないかと思っています。
それから,今,中学校区で取り組んでいる方向の1つとして,学区の人をコミュニティサポーターという名前で今,呼んでいるんですが,学習支援にも参加してもらえないだろうかと,そういう構想も今,持っています。
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○ | やはり岡ア先生のほうに御質問なんですが,PTAのほうの取組というのが,この中からどうしても読み取れない。なおかつ,家庭の無理解が減っていった裏側には,民生児童委員さんの働きがあったおかげであるという記述があったんですが,そこにかかわってきたPTAの役割について,実際にはどういう働き掛けがあったのか,どういう活動をしてきたのかということを御指導いただければありがたいなと思いまして。
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【 | 岡ア氏】 確かにPTAという言葉は,この要綱に一言も入っていないと思います。していないわけじゃないんですけど,PTAも地域の人の一部という立場をとらせていただいております。
それから,PTA独自のかかわりとしまして,今5年生に1人,不登校の子がおりますが,その子が4年生のときに学級のPTAの方が個人懇談の後,何とか協力しようということで,その不登校の家族に対しての支援体制をとろうという活動もしてくださった事例もあります。そのグループは,今5年生になっても1クラスのまま上がっておりますので,定期的に楽しい会をつくって,それに招待したりという具体的な計らいをしてくださっています。
それから,不登校,長期欠席につきましては,PTAの会長,副会長等,本部役員のほうには,現状を民生委員会さんに伝えると同じように,伝えてはいます。ただ,我が子がそれに対応する場合もありますので,そのあたり,活発な動きにまでは行っていないのが現状の状態です。
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○ | ちょっと今のことと関連するので,竹田先生にもちょっと私からお尋ねしたいのは,PTAあるいは保護者会とか,特に中学校の場合は,中学校区を中心にする健全育成の地域の会みたいなものが組織されていることが多いんですが,そんなものと,特に先ほどのお話の中の地域での地域ぐるみの取組のお話がありましたけれども,それに何か関係があるのかどうか,そんなところをちょっとお聞かせいただければありがたいです。
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【 | 竹田氏】 中学校のPTAは,中に専門部として育成部という名前のものがあって,生徒指導に非常に強くかかわっている専門部があるんですが,先ほどおっしゃいましたように,あまり強くかかわられると,隣近所の子どもがたくさんいますので,興味だけで,特にプライバシーにかかわるような問題まで話すと漏れて,かえって家庭や家族から反発を食らって,貝のように閉ざされてしまうという傾向があると思います。
それで,私は許される範囲で,ごくほんの首脳陣の役員には情報を話したり,それから非常に極端な,常識で考えられないような問題行動があって,警察に逮捕されたというときには,もう地域社会の中でうわさになっておりますので,これを正しいほうにしなくてはならないという思いもあって,極端な場合にははっきり言いますが,ほとんど差しさわりのない程度です。
それから,東伯町に青少年育成協議会という団体がありますが,これは各種団体の共同体でして,別に独自の行事をしたりというようなものでは,うちの場合はありませんので,またそこで出て話したりすると,もっともっとうわさがうわさを呼んで,えらいことになるということがありますので,これはほとんどかかわっていただいておりません。
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【 | 岡ア氏】 ちょっと補足させてください。PTAのほうの子どもの不登校への対応というのは直接的ではないんですが,不登校を生まない楽しい学校づくり,地域づくりというので,おそらくどこの地域でも補導協議会というのがありまして,中学校区でそれをまとめてしております。その活動で,地域の子どもから老人までが一緒に集える楽しい活動というのを最近していただいたので,それにPTAが非常に積極的に関与してくださっています。
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○ | 岡ア先生のほうに2点お聞きしたいと思います。地域との連携で非常に重要なことだと思うんですが,加配教員が不登校に対する直接の援助は何かなさったのか否か。特に,生徒指導員が2名いるんですが,例えばその2名が訪問とか,働き掛けをなさったか否か。
それと,これはプライバシーの問題がありますので,どこまで言えるかわかりません,慎重に言っていただければと思うんですが,民生児童委員が何を家庭訪問の中で,指導・助言等と言っているんですが,何を具体的にやったのかということを教えていただければと思います。
あわせて竹田先生のほうに,校長のリーダーシップということで非常に感銘を受けたんですが,竹田先生のお話の中で出ていなかった内容でぜひお聞きしたいなと思ったのが,カウンセラーとの連携ということで,2人の担当者についてです。昨年度の全入室者が3,000名を超えた,この辺のところをもう少し具体的に教えていただければと思います。
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【 | 岡ア氏】 加配教員の不登校児への対応なんですが,本校の場合,加配教員が副担任という形で各学年に所属しています。そこで,不登校の児童,長期欠席の傾向の児童の朝の家庭訪問は,副担任をしている加配教員のほうが朝,主に出向いています。それから,放課後の家庭訪問は,担任等,複数で出向いて心を和ませたりという活動をしております。
それから,民生委員さんの協力なんですが,事例,あまり具体的な例は難しい面がございますが,これまでの保護者の無理解,都市に住んでいて,夜のお勤めの保護者の方も非常に今,増えています。そうしますと,朝,一般的な親としての養育が低学年のときからできにくい。朝,例えば起きるのが子どものほうが早い。食事も朝は抜きで来る。洗濯もなかなかできにくいという家庭がだんだんと不登校に陥っていく事例も多々ございました。そういう御家庭に対しては,地元の民生委員さん,担当の児童委員さんが家庭訪問の中で人間関係をつくりながら,今,頑張っていないとというような立場での助言をしてくださっているようです。そういうことがありましたり。
それから,社会のルールと言いましょうか,福祉面での決まりで生活保護家庭制度というのがございますが,そういう情報を知られないがために,生活苦に陥っておられた家庭等もございました。そういう場合は,こういう制度があるんだよというのを教えてくださり,その手続もしてくださって,経済的な余裕が,余裕というところまで行かないと思うんですが,学校に安心して子どもを来させる状況になったというのもございます。
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【 | 竹田氏】 私は,今,卒業しました学校の心の教室相談員というのをしているんですが,きのう現在で私の部屋だけの入室者が1,400何ぼだったと思いますが,今年もまた3,000人近くいくんじゃないかと思います。ただ,これは全部カウンセリング活動じゃありませんでして,昼休みに遊びに来る子どもも全部,とにかく入室者を大ざっぱに数えての数ですので,そういう深刻なのはごく一部なんですが。3つ,相談室があります。それで,担当は私ともう一人,教諭がしております,いわゆるカウンセラーと言われている不登校担当教員と2人で3つの部屋を担当しているんですが。
基本原則として,子どもやあるいは保護者をカウンセリングしてきたことは,外に漏らさない,他に漏らさないで,心に秘めてプライバシーを守っていくというのが大原則だと思うんですが,私が勤めていましたときにも,今も自分もやっていますが,事によったら学級担任にもこっそり話し,あるいは校長先生にもこっそり話し,信用・信頼を打ち崩さないように,極めて内密のうちに,そういうテクニックも使わないと,全くカウンセラーの胸の中で,そのテクニックだけでやっていては,なかなか打開できないというのが現実にあります。
私が勤めていましたときには,問題点の1つによく挙げられますように,教職員のカウンセリング技術の研修というのが大きなネックになっている場合も多いので,私はその不登校担当教員を西や東,毎月定期的に,保護者がカウンセリングに行っているクリニックの先生であるとか,あるいは私たちのほうでは鳥取大学の医学部の心理学のほうの専門の先生であるとか,あるいは鳥取市にありますケースセンターにおられます専門の先生であるとかに定期的に派遣しまして,テクニックの研修を受けさせたり,あるいはその保護者がどういうカウンセリングをしているのかというのを内密のうちに持って帰らせて,こっそり私も把握している,そういう腹芸みたいなものもないと,原則どおりではなかなからちが明かないと言いますか,突破口が見付けられない場合もありますので,そういうテクニックも使っております。
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○ | 竹田先生にお伺いしたいんですが,大変興味あるお話だったんですが,とりわけ私,大変興味を抱かせていただいたのは,先生,町内の在住で校長になられたということ。いろいろな対策を進めていく場合に,地域との連携だとか,そういう方策は立てられるんですが,ともすれば学校がその地域の資源を活用するという形で,校内の問題を処理する,あるいは対処していくという方策あるいは姿勢が私は非常に強いように思うんです。
先生が先ほどいろいろ御説明の中に,地域の人たちに対して,保護者を含めて,その地域のところへ出かけていって,このままじゃ地域はだめになるんだよというお言葉を発せられた。これは,先生が町内であるからこそ出てきた言葉であるかもしれないし,あるいは子ども一人一人を通じながら,その子ども一人一人と,それから町,地域に向かっての向き合いの姿勢の中から私,出てきた言葉だろうと思っております。
先ほど先生が,やはり問題は,最初着任されたときに,大人の問題であって,その大人というのは,とりもなおさず教師の問題。教師がそういう姿勢,いわゆる教育に対する向き合い方といいますか,あるいは子どもたちに対する向き合い,それから学校づくりというものに対する姿勢,こういうレベルでとらまえるべき問題とともに,そこにもう1つ,地域への教員のコミットメントが非常に大事じゃなかろうかと思っております。そういう方策で教員の方々を何か御指導なさったり,あるいはそういう方策で何か先生の体験を話しながら,子どもたちへの姿勢といいますか,そういうものと地域への姿勢を教員の中からつくり出していったという御体験がおありでしたら御紹介いただきたいし。
それが,ともすれば,最近,地域が空洞化していると言っていますけれども,地域は確かに空洞化しているんですが,教員のほうも地域社会に対する空洞化の非常に大きな促進作用を果たしているような気もいたします。ともすれば,非常に地域と離れちゃって,月給をもらいにだけ学校に通っちゃって,すっと帰っちゃう,こういう教員もないではない。そういう全体の状況の中で,やはりいろいろ学校をよくする,あるいは地域をよくするという場合には,教員の地域への姿勢というものが私は非常に重要じゃなかろうかと思っておりますが,その辺,何か御意見ございましたら御披露していただきたいと思います。
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【 | 竹田氏】 先生がおっしゃる,全くそのとおりでございまして,よく教職員の地域住民化という言葉が言われますが,私は実は平成4,5,6はこの学校の教頭をしておりまして,退職された校長先生のところに仕えていたんですが,3年間,小学校に出て帰ってきましたら,教職員が35名ぐらいずっとおったんですが,30名ぐらい,その3年間の間に転勤してしまっておりまして,卒業生を含めて,がらがら自分をよく理解してくださるはずの先生が転勤してしまった。だから,十何名ぐらいずつ,講師さんも含めたりしますと転勤しておられる。
ああ,これなんだなと。中学校が地域から遊離し,子どもたちの心から離れ,保護者から離れた,これだなということがありまして,それまでよく中学校で大会に備えて部活動,部活動で,土曜日,日曜日,祝祭日にやったりしておったんですが,例えばお祭りのときであるとか,小さい地域の運動会とか部落の運動会のときには出させて,そっちが優先だと。部活動は急がんでもいいからというのに切り替えたりしたこともありますし,諸行事,同和部落がありますので,そこの学習会とか地域の行事にはローテーションで出たりするんですけれども,自主的に出たりすることがないとか,そういう反省すべき点がありましたので,そこを口を酸っぱくするように話して。限度がありまして,難しいんですが,よう突破せなんでしたが,そういう心づもりでおりました。
私,ちょっと退出させていただく時間が来ましたので,最後に余分なことを言いますが,私はピグマリオン効果というのをものすごく信奉しておりまして,絶対よくなると。この子もこの学校も,だれも必ずよくなると。ただ,15年かかってきた子どもは3年や1年じゃよくならないと,15年かかりますよ,お母さんということを言いまして,すべてにわたって,私はこの信念で生きてきておりますので,そんなことも常日ごろから説いて聞かせたりしたことも覚えています。何だか抽象的なお答えで申し訳ないですけれども。
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○ | 竹田先生は,御都合の時間が来てしまいましたので,ここで退席されますので,我々,感謝の気持ちを込めて拍手でお送りしたいと思います。ほんとに貴重な話,ありがとうございました。(拍手)
では,話し合いを続けさせていただきます。岡ア先生,申し訳ありませんが,もうしばらく御一緒にいていただいて,また御発言をお願いしたいと思います。では,予定の時間もだいぶ迫ってきておりますので,御質問にあわせて,御感想,御意見も交えての御発言をいただければと思いますが,いかがでしょうか。
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【 | 国立教育政策研究所総括研究官】 この小学校の段階で,これだけ不登校を減らされて,この子どもたちが中学校に行ったときにどんな感じになるのかなというところ,その辺をお聞かせいただければ。
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【 | 岡ア氏】 中学校,本校から行きますのが約4分の1で,もう1校のほうが本校の3倍の規模がある学校でございます。現在,本校ともう1校の学校のほうでも不登校をかなり抱えておりまして,中学校で一気に解決というところまでは行ってないようなんですが,従来に比べて減っているのは事実でございます。ただ,まだ教室の中での授業が参加しにくくて,廊下,保健室,図書館等で学習したり,過ごしている児童がいるのも現状のようでございます。ただ,数年前に比べて落ち着いていますね。指導課の先生も納得のようでございますので。
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○ | お伺いいたします。この清輝小学校の取組というのは,岡山市内のほかの小学校ではいかがなものなんでしょうか。清輝小学校独自の取組ということでしょうか。これが1点目です。
あと,1点ございます。児童民生委員や中学校区でのネットワークを構築されているわけですが,そのコーディネートといいますか,その主体はどこでお進めになっているかということについてお聞かせいただければと思います。
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【 | 岡ア氏】 本校以外に民生委員会さんとの連携をしている学校は,最近増えています。ただ,平成11年度にしたのは,本校がスタートだったようです。先日も,市の全体の民生委員会の会があったんですが,お聞きしてみますと,数校,民生委員会の連携で不登校等が,あるいは問題行動が減ってきているというのもお話ありました。
それから,ネットワークのほうですが,これも平成11年度の途中から始まったんですが,そのリードしてくださったのは元小学校長で,現在,子どもの人権専門委員でしたか,かつて人権オンブズマンと呼ばれていた,法務局で子どもたちの健全育成に努力しておられる方なんですが,その先生のリードがありまして,これだけ学区で,学校のほうで困っているんだったら,もっと組織を広げてやっていこうという呼びかけをしてくださって,児童相談所,法務局,警察署,教育委員会等の組織がその年にできました。
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○ | ありがとうございました。ということは,いわゆる行政主導,またはその支援があって,そういうネットワークを構築したということではなくて,当初は学校独自の取組で,また中学校区では,地域の方の発意によってそういうものがなされたということでよろしいわけでしょうか。
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【 | 岡ア氏】 先ほど言いました方は,学区の方ではないんですが,我々の大先輩で非常に学校のほうへもよく足を運んでくださっていた方です。その方のリードで発足しました。その後は,今度,教育委員会さんのほうも,こういう組織がよそでもできたらいいというので広めてくださっているのが,今現状だと思います。
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○ | 大変すばらしい取組で,たくさんの不登校の子どもたちが戻って来たということは,感動して聞きました。
先ほど御質問もあったんですが,児童委員さん,民生委員さんたちが,怠学,非行傾向の子どもたちと対峙していくにはかなりエネルギーが必要だと思います。この方々の年齢構成,また具体的にこういう家庭訪問をしたときに,単独でお行きになったのか,時間はどういうときにおいでになるのか。それから,人間関係をつくられたというお話があるんですが,保護者との人間関係をどう構築されていったのかというのが,時間も短いですから,具体的にお話を伺えればと思います。
それから,もう1点ですが,他の相談機関,また適応指導教室との連携はなかったのかどうかということもちょっとお伺いしたいと思いますが,よろしくお願いします。
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【 | 岡ア氏】 民生委員さんと対象児童の家庭との人間関係づくりなんですが,最初はこれも2通りあります。もともと地元に住んでいらっしゃる御家庭の場合は,民生委員さんに言うと,ああ,あの家だねと。あのお母さん,よく知ってるから,いつでも行くよというようにスムーズに,もう人間関係がある程度できた上でかかわってくださる例もございます。
ただ,今はマンション等,新しく学区外から転居してこられた方も多いですので,その場合は,最初は学校の職員,私が行った場合もありますし,担任が付き添った場合もありますが,最初はあそこの家庭なんだというので,家庭の紹介程度を学校のほうがして,あと,民生委員さんが手のあいているとき,時間がとれるときに,昼でも夜でも,また対象の保護者の方が家におられるときに,行ってお話をしてくださっています。ただ,学校のほうからも,こういう方に相談されるといいですよということを,その保護者のほうには前もって伝えるようにはしています。今度,民生委員さんのほうが行かれるから,困っていることは何でも相談してみなさいという言いかけは,学校のほうからしています。
それから,民生委員さんの年齢構成ですが,多くの方は50代以上,60代の方が一番多いです。主任児童委員さんは50代です。
それで,訪問のときは1人ではなくて,必ず2人で行くというように民生委員会さんのほうも話をしてくださっています。よろしいでしょうか。
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○ | ありがとうございました。流れはこのままで続けていただくわけでありますが,ここで出席の委員の方々にお許しがもしいただけるならば,今日のテーマは学校における取組ということで,できることならばお2人の校長先生方のお話をもとにしながら,その中から得られるものを少し焦点化をさせたり,あるいはその中で一般化できるようなものがどんなことがあるかということにも触れて,御発言いただければなと思っております。
少し時間が押してきているので,もしお許しいただければ,当初は5時の予定でありましたけれども,10分程度,少し話し合いを延ばさせいただいて,話を詰めさせていただくことができればありがたいということと,それから今日の御発表は,主として怠けのほうの怠学傾向があるお子さん,あるいは非行傾向のあるお子さんについて,小学校のお立場からは学校運営を中心にした,あるいは地域の方々との連携を中心にした,大変貴重な実践をお話しいただきましたし,竹田先生からは,どちらかというと学校のいわば隠れたカリキュラムに当たるんでしょうか。そうした面に着目し,あるいは地域における要因に着目した貴重な御発表をいただきました。
少し時間を延長した分も含めて,心に問題を抱えている心因的な,あるいは神経症を伴うような形での不登校に苦しむお子さんもおられるわけでありまして,そうしたお子さんに対してどういう働き掛けが学校としてあるのかということにも,少し話題も触れながら,残りの時間を触れさせていただければありがたいなというので,まず10分ぐらいの時間の延長というのは,それぞれ御都合がおありでしょうけれども,よろしゅうございましょうか。では,そんなことで,続いて話し合いを進めさせていただきたいと思います。
御質問も交えて,あるいは離れて御意見等について,特に先ほど事務局のほうから御説明いただきました資料9の中には,これまでの対応であるとか,資料9−3には,登校の促し方に関する教育委員会の意見等も出されていまして,ここの辺がそれぞれ様々な意見が出されるところであり,それから,これから我々が今後に向かって話し合いをまとめるときに,1つの重要点になるのかなと思われますので,こんなことにも触れて御発言いただければありがたいと思います。ちょっと流れにさお差すような形になって申し訳ありませんでした。続けさせていただきます。どうぞ自由に御発言いただきたいと思います。
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【 | 文部科学省生徒指導調査官】 今のお話にも関係してなんですが,特別活動というのが先ほどから御紹介いただいた資料の中に数多く出てきました。特別活動の中での体験が人間関係をつくる,そういう意味で,人間関係の中で不登校を乗り越えていくという意義もあるわけですけれども,逆にそうした人間関係を結べないという傾向もあります。
それがよくあらわれているのが,実は今日の資料7のところにあります。資料7の6ページに兵庫県で中学2年生全員がやっているトライやる・ウィークの評価に関する表が載っております。例えば,平成13年に中学2年生359校の5万3,590人の兵庫県の中学生が参加したわけですけれども,そのうち1年生のときに不登校の生徒が1,166名。その1,166名の子どもたちで,この体験に参加できたのはどれだけかというと,531名で,45%が参加できた。55%は,やはりできなかった子どもがいる。じゃあ,45%の子どもたちの中で,実施後1カ月,2カ月において回復できた子どもの数が示されている。ですから,体験を通して回復できるようなタイプの子どももいれば,逆にそうでなかった子どももいるし,逆にこの体験を通して人間関係に傷付いた子もいたかもしれません。
これは,中学2年生ですから,これから3年生になって入試のことが出てくる。いろいろな悩みが出てくる中で,さらに精神的な問題で不登校に陥ってくる子も増えてくる。そういう意味で,特別活動の持つ力も,人間関係の形成力もありながら,一方,それに対処できない事例もある。ですから,体験だけやれば全部が解消するとは思っていただきたくないと思います。また,そうじゃないケースも,例えば学力が十分でない子については,小学校のお話にもあったように,学力を保障すること,学ぶことのおもしろさを知ることが,むしろ学校復帰につながるケースもあったりします。様々なケースがあるのではないかということで,教えていただければと思います。
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○ | 今の話のとおりでありまして,不登校の問題は,単純にこういう働き掛けがこの問題の克服に相対で言えば効果的であるということは言えるかもしれないけれども,それをもって解決策と言い切れない部分が非常に大きいですね。そこが非常にこの問題の難しいところでありまして,今の御発言も,まさにそのことについての御発言であったかと思いますが。
私,岡ア先生にちょっと教えていただきたかったのは,結局,今日の御発表の中で大きく改善されておられますね。不登校を起こしている子どもたちが登校ができるように促す形になっていますが,その大きい御発表があったような中で,おそらくは怠学あるいは非行傾向が強いんだけれども,そのことと,心の問題とも非常にかかわりのあるお子さんもきっとおられたんじゃないかと思いますが,そうした面での何かの御配慮ということが,学校でのお取組の中にもしありましたら教えていただきたいんですが。
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【 | 岡ア氏】 非常に難しい課題ですね。不登校傾向,長欠の子どもだった中で,学力不振によることが一番大きいなと想定できる子,中学年からその傾向に多く入っていました。そういう子どもに対しては,個別指導等で,いくらかほかの子どもと同レベルに近い状況にできた場合は,学校に再登校できた子が非常にたくさんおります。
また,本校,今,不登校が少なくなっているのは,今まで中学年で不登校,長欠になっていたのが非常に数年前まで多かったんですが,なるのを防ぐことができているんじゃないかと思っています。これは,低学年のときからの学力保障の影響が一番じゃないかと思っています。
ただ,現在も先ほどちょっと言いましたが,精神的・情緒不安定の面からの不登校の子に対しましては,学校も対応をどうすればいいのかが,最後の決断ができにくいのです。昨日もその保護者と話をしておりまして,市の教育相談室で1回詳しく,お母さんと子どもと両方行って,相談してもらいましょうという言葉をかけているのが現状なんです。学校のほう,職員がおればおるほど,こうしたらいい,こうしたらいいというアイデアは出るんですけれども,決めかねるのが現状ですね。
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○ | ありがとうございました。委員の方々の中には,この問題に深くかかわっておられる方,あるいは専門的にかかわっておられる方もいらっしゃいますので,御発言がありましたら少し今の難しさの部分について,御発言いただければありがたいんですが。
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○ | 神経症的な感じのお子さんたちに対する対応策については,情緒的混乱等も含めて,やはり非常に配慮しながら適切な対応,また専門機関との連携というのが必要になってくると思います。
ただ,学校のサイドとしては,最初に竹田さんのほうからでしたか,出たアセスメント。いわゆる簡単な感じでも結構なんですけれども,この子はどういうタイプかというところを見きわめる力が必要になってくるのかなと思います。そうした子に対しては,無理強いしない。ある程度きちっと専門的な対応をしながら,ある程度時間をかけながら対応していくということは言えるかなと思います。そうかといって,その子に対するいわゆる学力の保障,それから社会性の問題。先ほど生徒指導調査官のほうから指摘があったように,私もほんと同意見なんです。様々な体験活動があり,様々な中身があったとしても,日常的な相談活動なり,それからまた,どこかのきずなをしっかりつくっておかなければ,専門機関なり,場合によっては学区の中にいる先生がある程度献身的な形でのカウンセラーとしての役割をしていく人も含めて。そういう形がなければ,またどこかで大きな挫折があったり,ちょっとしたところで崩れてしまうことが事例が非常に多いというのが現状だと思います。
ですから,兵庫県のトライやる・ウィークの場合も,ある程度具体的なつながりを持ちながら誘っていったり,それからまた,フォローをうまくやりながらかかわっていたり,それが具体的に再登校につながってみたり,または別室登校につながっていくんじゃないかと思います。
別件のことですが,お2人の校長先生のお話を聞いて,私はいくつかにまとめられると思うんですが,管理職のリーダーシップがすごく大事なんだなという気がしました。それから,地域との連携ということも言われているかなという気がいたしましたし,あと,やはりマンパワーの問題。竹田先生のほうからの話でも,不登校対応教員が相談室にきちっと張りついている状況がお話にありましたし,岡ア先生のほうからでも,具体的に朝の訪問ができるような副担任制度を小学校段階でつくれる加配教員,そういうのがお2つの学校の活動を支えていたんじゃないかという気がいたします。
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○ | 今日,ちょっと遅刻してきましたので,前半の部分のお話がよくわからないんですが,もしかしたら既に議論になった点かもしれませんので,お許しいただけると助かるんですけれども。
最初,岡ア先生にまずお聞きしたかったというか,確認したかったんですが,この訪問指導というのがすごく関心がありまして,先生方による家庭訪問,それから民生児童委員さんによる家庭訪問が随分と効果が上がったのかなという気がしますし。その背景には,たぶん,今もちょっと議論になりましたが,この学校に多かった不登校のタイプというか,それが家庭に問題が若干あったりとか,あるいは先ほど出ました経済的な問題とか生活保護とか,その辺のケアが必要なタイプとか怠学とか,そういったタイプだったので,民生委員さんの力が随分と現実的に発揮できたのかなという気はします。
ただ,そのときに,もしかしたら説明があったかもしれないんですが,これは質問なんですけれども,民生委員さんの訪問の後,学校とその民生委員さんがどういうふうに連携されたのかなというのが1つお聞きしたい点です。というのは,割と専門家に任せたら安心というふうになって,学校側が安心しちゃうケースも結構あると思うんですね。だから,その後の対応,連携というのは具体的にどうだったのかというのが1点御質問です。
それと,ちょっと一般化にはならないかもしれないんですが,私がかかわっているところでは,メンタルフレンドというので,特に怠学とか家庭の問題というよりは,先ほど出ています心の問題,子どもたちの神経症的な部分とか,引きこもっている子どもたちに最初の入り口をつくるというので,学生ボランティアとかが家庭訪問するというシステムが随分できてきたかなと思うんですが,ここではそれがどうだったのかなということと。
それから,これは意見なんですが,そういったメンタルフレンドのことをいろいろ調べてみますと,効果は随分上がっていると思います。元気がなかった子どもたちが,少し人に心を開くようになってきたとか,社会の風を少し受けられるようになったとか,そういった変化,効果は随分上がっているんですが,その一方で,次にもう少し人間関係を広げるという段階には,やはりそのメンタルフレンドが中心になって適応指導教室に引っ張ってくれるとか,次に進むステップが必要になることもあるかなというのと。
それから,もう1点は,メンタルフレンドは家庭訪問しますので,その学生なりボランティアなりが家庭の問題を抱えて帰ってきて悩んでしまうこともありますので,そういった訪問指導員あるいはそういうメンタルフレンド的な学生へのケア,フォローというか,サポートもしっかり同時平行にやっていかないと,ちゃんとした効果が得られにくいかもしれないという点を感じています。それは意見です。
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○ | 今,実践を聞かせていただきまして,何点か共感させていただいたと言いますか,また,私どもがやっていることが逆に励まされたという感想を持って聞かせていただいたわけでございます。特に,先ほどからのお話にもありますように,地域の教育力をどのように再構築していくかという視点で,今日パンフレットもお配りもしたわけでございますが,本市におきましても,町会からPTAまで幅広い地域の関係機関を網羅いたしまして,7つの中学校区で地域教育協議会といったものを立ち上げ,子供たちと大人との出会いを増やしていこうといった様々な取組に現在チャレンジしているところでございます。また,その中で,学校もボランティアとして一定の役割を果たしているわけでございます。
また,不登校の児童生徒の皆さん方にもこういった取組の情報を積極的に提供しているところでございます。
次に,先ほどの職業体験学習等の話もございましたように,私ども不登校という課題の克服について,学校間のネットワークづくりをどのように進めていくかといった中で考えていかなければならないなと思っているところでございます。段差の克服といったことが,不登校に関する大きな教育課題になっているわけでございます。本市といたしましても,特に幼小連携,幼中連携,それから小小連携,小中連携ということを大きなポイントにいたしまして,1つは体験的な交流活動の推進に努めております。中幼でいいますと保育実習体験であるとか,小学校と幼稚園におきましては生活科の交流であるとか,小中でよくやられておりますのは,先ほどの話にもございました,出前授業であるとか。小学校の子どもたちが中学校のフィールドで授業を体験するとか,交流活動に取り組んでいるわけでございます。また,中学校区の幼小中の教師間の交流も重要な課題でございます。
何とか風穴をあけたいということで,こういった段差の問題ともかかわりまして,子どもの交流だけではなしに,例えば,教科担任制を小学校の高学年に導入していく中で,小中の教師が交流を図っていく。また,中学校区の小中学校で合同の授業研究に取り組む中で交流に努めているわけでございます。
最後に,今日の議論には十分なっておらないわけでございますが,学校そのものにどう魅力を持たせるのかという問題でございます。先ほどの地域との連携という観点からしますと,地域にしっかり開かなければならない。逆に,保護者の皆さんからいいますと,この学校は私らの誇りやと。子どもからいいますと,「この学校は私らの誇りや」ということ。「この学校に通うのが楽しい。」ということ。先生方も「この学校を宝にしたい。」ということ。つまり,学校にどのように誇りをつくっているのかといった意味での「学校の特色化」といいますか,そういう事も大切なマクロの要因になるのではないかと思うわけでございます。
そういった意味で,学校の役割も,ネットワーク,またチームワーク,そのことを組織するようなコーディネートの役割もまた求められるのではないかと感じるところでございます。私ども,逆に教育委員会と学校の立場でいいますと,ある意味で私どもも学校現場とのネットワーク型の対応も一層求められるというふうに認識しているところでございます。
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○ | 岡ア先生にお願いいたします。
まず,学校の魅力づくりというのは,ある意味では集団の凝集性を高めるということで,そういう意味では,学校行事の役割,特別活動の果たす役割というのは大きいものがあろうかと思うわけですが,先生の学校で実践なさった学校行事。学校行事というのは,学級活動は時数は教育課程に位置付けられておりますが,学校の総授業時数の中から差し引いた分ということで,これは工面しなければならないわけです。行事を前面に出せば出すほど,どうしても教科の授業を削ってしまう部分もあるわけですが,ざっくばらんなところ,先生はその辺のところをどのようにお考え,どのように実施されたのかという部分がまず1点でございます。
2点目としまして,先ほど来話題になりました心因性のお子さん方ですが,当然当該のお子さん,そして保護者の方々,いろいろ御苦労なさっている,また悩んでいる,苦しんでいるというわけでございますが,私ども,そういったときに相談機関との連携をお勧めするんですけれども,相談機関に門戸をたたいても,もう手いっぱいですよという返事がどうしても返ってきてしまう事例が多い。いわゆる関係機関との連携というのが,今の段階では虚しい響きに近い部分もないわけではないということで,岡山市などはそれはどういう状況だったのか,またはこの委員の中にも関係している先生方,おいでなわけですが,それぞれの相談機関,または機関としては,そういう実態があるのかないのか,そんなふうなことについてお聞かせいただければと思っております。
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【 | 岡ア氏】 先ほどの民生委員さんと学校との連携の御質問がございましたので,民生委員さんが訪問してくださるのは,学校が授業している時間が割と多いんです。そうすると,学校の職員がおるときですので,行かれた場合は必ず学校に寄ってくださって,その都度,報告してくださいます。それから,学校が動いた情報も,私なり生徒指導担当のほうから該当の民生委員さんには,その都度連絡を取り合うというのを1つの約束事にしています。よろしいでしょうか。
それから,子どもが喜ぶ行事にしようと思うと,ほんとに時間がかかる。先ほども4泊5日の山の学習とか,今年から3泊4日の海の学習をしておりますが,それはちょうど総合的な学習との関連で,全部の時間じゃございませんが,半数以上は総合的な学習のコマとして,それは位置付けています。ただ,そうするために,今年は6月に海で3泊4日したんですが,5月になって,ずっとそれのための問題解決,課題づくりの時間をとっていきまして,その1コマとして3泊4日の中の10時間程度に入れております。
それから,ほかの行事の充実につきましては,児童会活動の時間もありますが,本校の総合的な学習の一部に学級の独自性が発揮できる時間というのを入れまして,そこで学校行事,学級の行事等,相談する時間もそこで使っていいことにしているのが現状でございます。時間のほうは,無理な面も含まれていると思います。国語,算数等の時間をできるだけ減らさないようにはしているつもりなんですが。
それから,心因性の児童に対しての関係機関との連携なんですが,岡山県の場合も県の中央児童相談所等は,予約しますと早くて半月後,長い場合は1カ月後に面接をどうぞということもよくございます。ところが,岡山市の教育相談室のほうは,割と担当の方がはっきりしておりまして,小学校の場合,1週間程度,前もって言っておけば,ほぼしていただけるのが現状で,非常にありがたく思っています。しかも,本校でスクールパートナーをしていただいておった方が今,相談員で教育相談室にもおられますので,そのあたりの連携は非常にしやすいのができております。
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○ | 大変問題点の実情に触れるお話,ありがとうございました。そろそろ結びの方向に行こうかと思いますが。
先ほど,教員の地域に対するかかわりの重要性ということを御指摘いただきましたが,今日の話を通じて,何かほかにお気づきのようなことがありましたら,よろしゅうございますか。
では,そろそろまとめに移らせていただこうと思いますが。お2人の校長先生方からのほんとに貴重なお話がありまして,特にお2人の実践例がそれぞれかなりの不登校を起こしておられるお子さん方が目覚ましい改善を示した。そのことに向けての実践体験でありまして,そのことについて,また委員の方々から適切な御発言がありまして。
まず1つは,やはりこれはもう当然のことでありますけれども,こうした取組における管理職のリーダーシップがまずは重要であると。それから,先生方のお力,特に地域とのかかわり,あるいは地域への働き掛け,それからネットワークという場合に,学校間のネットワークもありましょうし,また地域あるいは家庭との連携もありましょうが,特にこの不登校の問題の場合には,先ほど岡ア先生からお話がありましたように,問題によっては,そのことがかえって事態をこじらす場合もあり得るわけでありまして,どういう形でネットワークを機能させるかということが重要であるけれども,非常に心配りが大事という貴重なお話もされ,またそれも確認もされたかと思うわけであります。
いずれにしましても,我々が今ここで協議しておりますのは,一人一人の児童生徒が人間形成していく場合に,何が重要であり,何がなされなくてはいけないのかということを協議しているわけでありまして,今日のヒアリングあるいは様々な御意見あるいは事例の御発表を通して,学校における未然防止あるいは事後の対応の在り方について,1つの示唆が得られたかと思います。
それを少し整理させていただきますと,何といっても学校としては魅力ある学校をつくるということが重要であって,その中では,生きる力を実現することを目指して,改訂された新学習指導要領の趣旨のもとで,例えば学級活動であるとかあるいは学校行事等の特別活動あるいは体験活動,様々な教育活動の展開がやはり重要な意味を持っているということが1つ確認され,そのことを支える,不登校を生まない学校運営ということが校長先生の御発表の中から確認されまして。
特に,その中で非常に微妙な部分に触れられましたのは,周囲からの登校への働き掛けが常によい結果をもたらすとは限らない面があると。その点を十分配慮した上での,まず先生方あるいは関係者が十分認識した上での,効果的な取組ということを考える必要があるだろうということが,1つ重要な確認だったかと思います。
それから,特に登校を促すということに関しましては,まずは学校自身が魅力ある学校に取り組むことが大事であり,そして子どもの立場から言うと,子どもの教育環境あるいは生活環境の改善に取り組むわけでありますけれども,それが登校への促しということだけを強調するものではなくて,子どもたちがまずはその中で自分が生きるということを見直していく,あるいは何らかの人間関係であるとか,あるいは悩みを抱えている,そうした子どもたちが触れ合いを通して,あるいは社会との接点,社会とのつながりを通して立ち上がっていく,そうしたことを考えていくことが必要であろうということで,今日の御意見を通して,さらに次回での話し合いを深めていきながら,我々としては冒頭のこの会議で確認しましたように,これまで何回か不登校に対する有効な方策ということが出され,そして行政においても,各学校においても,様々な取組がなされている。にもかかわらず,この不登校の問題が抜本的な解決に至らない。そのことに向かっての我々の協力者会議での提言に結び付けていくということでありますので,ぜひ,今日特に多くの資料を配付していただきまして,御説明いただきましたけれども,これに十分我々,今日は目を通したり,これについての論議も深められませんでしたので,今日はそれぞれ持ち帰って,もう一度これを見直して,次回以降の話し合いに生かしたいと思っております。そんなことで,よろしくお願いしたいと思います。
次回の会議では,学校における対応の第2回目としまして,教育相談体制,特にスクールカウンセラーの関連,それから保健室等の教室以外の居場所の在り方について議論を進めたいと考えております。その際に,スクールカウンセラーのお立場から,伊藤委員,また養護教員のお立場から松野委員,それぞれからヒアリングをさせていただきまして,それに基づいて,また本日のような話し合いを深めたらいかがかと思いますが,いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
申し訳ございませんが,予定の時間を少し超過して今,話し合いを進めているわけでありますが,ここでぜひ御発言したい委員さんがいらっしゃいましたら。よろしゅうございましょうか。
それでは,本日はこのあたりで結びとさせていただきます。
では,次回以降の日程等につきまして,事務局のほうから御説明をお願いいたします。
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● | 次回の会議は,10月29日火曜日10時から,今度は午前中でございますが,10時から,場所のほうは一応,本日と同じ場所を予定しております。なお,会議終了後でございますが,お時間がある委員の方々には簡単な昼食を用意させていただきたいと考えております。
それから,本日の資料でございますが,今,主査のほうからちょっとお話いただきましたように,若干資料が多うございまして,時間がなかったところもあるかと思いますが,封筒の部分をお持ち帰りいただきまして,また逆にお机の上に配付させていただいております青いファイルのほうはそのまま置いていっていただきまして,過去の資料でございますので,と考えております。よろしくお願いいたします。
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○ | ありがとうございました。では,本日はこれで閉会とさせていただきます。 |