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初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議

2002/06/21議事録
初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第6回)議事要旨

初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第6回)議事要旨


1. 日  時    平成14年6月21日(金)17:30〜19:30

2. 場  所    アルカディア市ヶ谷「大雪」

3. 出席者
(検討会議委員) 坂元委員、清水委員、赤堀委員、大野委員、小澤委員、阪田委員、永野委員、堀田委員
(専門委員) 青柳専門委員、今泉専門委員、小幡専門委員、小泉専門委員、高野専門委員、成田(歌)専門委員、成田(雅)専門委員
(文部科学省) 小畔初等中等教育局参事官、樋口情報教育調査官ほか関係官
(オブザーバー) 総務省情報通信政策局情報通信利用促進課、経済産業省商務情報政策局情報処理振興課、(社)教科書協会、
(社)日本教育工学振興会、(財)日本視聴覚教育協会、
(社)日本教材備品協会、(財)コンピュータ教育開発センター、
(財)学習ソフトウェア情報研究センター

4. 議事内容
(1)「学校におけるIT活用状況実地調査」についての報告


  この調査は、全国5県を5月から6月にかけて、本会議の委員と事務官の計2人でそれぞれ1泊2日程度で実地調査を行った。それぞれの調査地において、教育センター、小・中・高等学校、特殊教育諸学校の3校から4校について調査を行った。
  具体的には、学校と教育センターの関係者と話をし、ITの活用状況やITの活用を学校の中で進めていくための課題や効果等、どのような認識を持っているかについて率直な意見を伺うという趣旨の調査であった。この関係上、具体の学校名については伏した形で公表するものである。



  まずA県だが、IT活用に関しては非常に進んでいるということもなく、停滞しているというほどでもない印象を持った。IT活用を進めるための方策として、ネットワーク、コンピュータの充実のみならず、液晶プロジェクタ、スクリーンといった機器の充実や教育用コンテンツの充実、またコンピュータ担当の専任の教職員の配属の点が各学校共通して挙げられていた。
  この県の場合には、県や市の教育用イントラネットが学校に入っているため、インターネット上のWebページを自由に見ることができない場合もあり、また、家に帰ってから、イントラネットにアクセスしようと思っても、今度はアクセスできないので、県や市の教育研修センターでつくっている教材にアクセスできないという問題が共通して出ている。
  また、「e−Learning創造事業」が今年の5月から始まっており、これは教育コンテンツをつくり、それを利用したことに対する評価の報告などを全てWebに出そうというものである。これは、各教科5人程度からなる教師のチームにより、一から議論を始めて、コンテンツをつくり上げた後、それを授業で使用し、さらに評価することを考えているようである。
  これは、教育用コンテンツの作成が主な目的というより、先生が他の先生方と交流することにより、ITの利用を促進する意図があるようだ。
  この事業は、教育用コンテンツをつくるだけとか、情報化を進める核になる先生を研修するだけの単体のものではなく、それらを全部組み合わせて進めていく事業なので、今後、注目していきたいと思う。



  B県の場合には、IT活用がスムーズに進んでいる地域では、県の事業としての情報加配教員が置かれている。ある町の場合、小・中学校が9校あるが、加配の先生がこの9校の教育情報化コーディネータという役割も担っている。
  小学校では、校内LANにネットワークケーブルを引き込み、職員室でも使えるようにしている他、ファイルサーバにより校務の文書が共有できるようになっている。また、その中には、ファイルサーバを全員が使わないと、校務がうまく進まないような一歩進んだ仕掛けをつくっている学校もあった。
  校舎を新しくした学校では、このタイミングで校内全部にネットワークを引くなど、計画的な情報化の推進を実施しており、今後のモデルにみなされると思った。
  また今後の課題として、10校位に1人の加配教員がいると、IT活用が進むのではないかという感想が聞かれた。
  中学校では、情報教育担当の先生と話をした際、情報モラルの指導に関するよい教材がないこと、また教育用コンテンツが足りないという声が聞かれた。
  もっと情報教育担当の先生が、時間や気持ちの余裕があれば、良い教材があるということがわかると思った。
  高等学校では、校長先生が電子メールなどのITを非常に活用しているのだが、学校全体を見ると、一部の先生しか使っていない状態であった。その解消法として、例えば、ファイル共有の仕組みを作り、それを使わないと校務が成り立たないような仕掛けを作らないと進んでいかないのかなと感じた。



  C県だが、中心市内の中学校が非常に進んでいると思った。ここでは市の方針として、市の情報教育担当者が強い主導権を握っていると感じた。ここの場合はグループウェアを生徒用、先生用にそれぞれ導入して、グループウェアの企業の担当者がスクールサポーターという名前で、各学校を巡回し、その学校で「ほかの学校ではこうしていますよ」、「こういうような情報がありますよ」という情報提供をしており、企業が情報化を進めていく人材として動いている1つの例かと思った。
  高等学校の場合には、情報教育担当の先生が異動してしまうと、その学校のネットワークシステムについて、分かる人がいなくなってしまうために、その先生が異動できない状態になっているようだった。このようになると、学校や先生にとって幸せでない状況になるので、組織的な方法として、例えば県や国の加配教員を教育情報化コーディネータとして、複数校に1人位ずつ付けるとか、企業のスクールサポーターを付けるとか、何らかの方法をとらないといけないと感じた。



  D県では、例えば、「A中学校」の場合、狭いコンピュータ室に41台のコンピュータが詰め込まれ、子どもが身動きしにくい状態の中、ディスプレーが高く、先生が見えにくい状況となっていた。また、そこで行っている技術・家庭科の学習内容が、文字に飾りをつけてレイアウトしているようなワープロ作業で、これは、小学校4年生位で行う内容かなと思った。この地区の小学校にはコンピュータがまだないので、自宅で経験している子どもは別として、操作経験値は極めて低いと思った。
  また、情報教育として活用している授業というと、大体「技術」を見せてくれるということも、実態を表しているのかなという気がした。
  教師に、ITを活用した生徒の様子を聞くと、「ゲーム感覚なので授業が楽しそうだ」とか、「作品をつくるから成就感がある」という答えがかえってくる。このことは、新しい道具が珍しくて動機づけになっているという段階を超えておらず、それを疑っていないという状況でもある。
  教員研修については、やはりIT講習会の域を出ていないと思った。特に中学校では成績処理では使っており、あとは授業での活用への移行となるわけだが、これについて重視している感触や意識がないという感じがした。
  教育委員会は、整備が遅れていることについて、数字上、自覚はあり、「財政難だ」ということを何十回も言っていたが、情報化のビジョンがなく、予算獲得も大変なため、どんどん遅れていくのかなという感触を受けた。これは、かなり危機的状況だと思った。



  E県では、例えば、「B中学校」の場合、中学校の技術科の授業を見学した。その際、ヤフーの検索の仕方を教えていたが、これは小学校の高学年位で教える内容かと思った。また、コンピュータそのものが未整備の状況のため、生徒のコンピュータ操作経験値は極めて低いと思った。
  またCATVで高速のインターネットが入っていたが、職員室には入っていないようだった。
  情報化に対する教師の意識の点だが、コンピュータを使う価値が理解できない人が多かった。



  今回、調査したD県とE県の結論を3つの観点から言うと、1つ目は整備の遅れが意識の遅れを生んで悪循環に陥っていること、2つ目は教員研修について大きく見直す必要があること、3つ目は、情報が行き渡っていないことなどが見られた。
  まとめとして、整備の遅れは意識の遅れを生み、悪循環に陥ると思った。予算がないと情報機器の整備が遅れ、中途半端な整備となり、活用しにくくなる。また、いい実践を見たことがないので、実践が出てこなく、利用イメージがわかず、そのことにより使われなくなる。使わないものには予算がつかず、整備が一層遅れ、意識も遅れていくというサイクルになるかと思った。
  教員研修の件だが、やはりIT講習会にとどまっているのは、指導する側、研修を仕切る側のいずれも授業活用のイメージが育っていないからだと思う。CD−ROMに入れても、ビデオに入れても、たぶん見ないので、例えば、垂れ流し型で、エルネットでいい授業をどんどん放映することにより、いつもいい授業が流れているようなプッシュ型の授業事例サービスみたいなものがあってもいいのかなと思った。今までの経験では、学校の先生は、授業を見るのが一番ピンとくるという気がするので、教育センターで、コンピュータがガチガチに並ぶ非日常空間の中で操作研修をしてもどうかという感じがしている。
  また、各学校の実践事例をNICERに吸い上げる仕組みをつくれないか。全国の教師から、よく使われるページを提供した学校のステイタスがあがるようなムードがつくれないか。
  IT講習会のような研修が全く要らないわけではなく、このような中身の研修を限られた時間で行うのは無駄が多いと思った。教師が身に付けなければならないコンピュータ・スキルのチェックリストをつくり、それを自己評価するような仕掛けができないかと思った。評価機能が生じると効率も上がるだろうと思った。できればコンピュータ・スキルに限らずに、教育の情報化にかかわる教師のスキルまで幅を持たせられるといいと思った。
  旧態依然とした研修を払拭し、情報化については授業研究や、事例を見てのディスカッション研修、各学校のプランを提出させ評価し合う研修、インターネット活用の授業モデルを作成させる研修など、積極的に授業で使うイメージを持たせるような研修に変えていくようなプロモーションが必要だと思った。
  そこで、例えば文部科学省がつくったコンテンツ一覧がもっとあちこちで知らしめられるとか、これを使って研修会をするのを1つは入れなさいという指導をするとか、そういうことをやってもいいのではないかと思った。とにかく情報が届いていないというのを感じがした。
  現場教師の中には、教育の情報化に積極的に取組みたい教師も少なからず存在しており、文部 科学省の政策を教育委員会に正確に理解してもらうことは続けなければならないが、一方で国の 政策をもっと直接的に学校現場に届ける方法を考え、すべての教師が意識するように仕向けたい と思った。
  例えば、イメージビデオやCMを作るとか、みんなに行き届くようなことができないものかと 感じた。
  学校・自治体の整備状況をWebから参照し、ほかの地区の状況を比較し、自分の学校・地域の状況を自覚できるのはいいことだと思った。イギリスなどでは文科省に当たるところが、学力達成度をWebで検索できるようにしている。日本で学力達成度を検索できるようにするのは難しいと思うが、整備状況や活用状況をある程度公開していくことを積極的にやってもいいのではないかと思った。

(質  疑)


  この地域の学校を調査した理由は何か。選択された学校が1つの平均的な学校なのか。



  これが平均的な実態だと示すような材料でもなく、全国的にバラツキがないような形で、特に進んでいるわけでもなく、また遅れているわけでもない、平均的な県を5県を選ばせていただいた。また市町村については、整備状況などを把握した上で、整備状況のいいところと悪いところを勘案した上で選んだ。具体の学校については、各教育委員会に選んでもらった。



  A県の「e−Learning創造事業」のようなことは、ほかの県ではないか。



  D県は、地元のテレビ局が多くの教育用映像をつくっており、現在、その映像をアナログからデジタル化へ変換して、授業に使えるようにすることに取り組んでいた。



  C県は、地域教材のコンテンツとして、動画入りのものをつくっており、これはWebでも見れるようになっているほか、さらにCD−ROMにもなっている。
  また、小学校の先生方が委員に入って、学校の授業に試しに使ってみて、それを改善するという方法をとっている。



  加配の先生や専任のリーダーを使っているところはあるか。



  B県の進んでいる町では、うまく動いているようで、先生方が学校の中で上手に推進しており、なおかつその町の情報化もリードしている。また、毎月、その学校に町内9校の先生方が集まって、情報交換をしている。今度は、掲示板やメーリングリストを使って情報交換しようという動きとなっていた。



  いろいろな資料が学校に入ってくるはずだが、直接来るのもあるし、教育委員会からまとめてくるものもあると思うが、それが現場に届いているのか。



  一般的に、現場の先生と話していると、「きていない」というのはよく聞く。



  まず、学校に届くと、視聴覚担当の教師が個人的に持つか、戸棚に入れておくかに分かれると思う。



  緊急雇用対策は、私の市でも3名ぐらいあり、入札で決まっている。コンピュータ教室のインストラクターのような人や、工房で働いた人、企業を退職して教育にかかわりたいと思っている人を雇い、各学級4時間程度勤務してもらった。
  しかし、せっかく、お絵描きとか、ワープロをその方から学んでも、実際の授業では、インターネットで調べる活動が多く、授業に生かしていない状態が多いと思った。



  私の市の場合、各校のリーダーが集まり、研修用CD−ROMを活用して、リーダー同士でどういう授業をつくるか、授業プランを考える半日程度の研修があった。
  ただ、その研修に、例えば理科の先生が参加し、その様子を自分の学校に戻って他の教科の先生に紹介しても説得力がないと思った。しかし、日常の学校現場では他の先生の実践を見る時間もほとんどないに等しい中、実際に見る機会が少しでも得られることは、現場の先生にITが授業で使えることが分かってもらえるのではないかと思った。
  雇用対策は、各学校で使い方が様々であり、学校のホームページづくりに活用した学校もあるし、回数が少ないながら授業に入った学校もあった。また、授業でサポートしてほしい時間帯にいないこともあるので、時間割を合わせることもできず、苦労されている先生もいた。
  別の市では、雇用対策による外部人材の方に、全市の中学校のホームページを一斉に立ち上げるという作業に大きくかかわってもらい、素晴らしいホームページが全校一斉に立ち上がったという話を聞いた。



  高校の立場からですが、私の県の場合、CD−ROMの研修教材を活用した研修があり、そこでは、CD−ROMの操作についての指導はあるのだが、その指導の内容がCD−ROMを見てくださいというものであり、形ばかりになっている気がした。
  雇用対策におけるITコーディネータについては、極めて学校に任されていて、学校が「要りません」と言えばそれっきりとなる。「要ります」というところは、積極的に利用している学校はそれなりに効果を上げてはいるが、情報教育に対する学校の構え方が、基本的に与えられても、それを利用する素地がないのが現状であり、雇用対策という性格もあるが、的外れな時期に的外れなお手当てがきたという感じも否めないと思った。



  E県の高等学校では、高速回線を全部引くという事業を行っており、教室にはノートパソコンが入っていた。



  年に3回雇用対策で外部の人材に来てもらっているが、何をやってもらうかは、学校独自で決めることから、機械のメンテナンス、校内研修でのソフトの使い方、ホームページのつくり方などの研修の講師など様々である。また授業でどう使ったらいいかというところまでは、答えていただけない方が派遣されている。



  割と進んでいない地域では、例えばフィルタリングをどうすればいいかということが課題になっており、今は地元のプロバイダーにつないでいるので、一切かかっていない状態であり、その結果、放課後は子どもに使わせることができなくなっている。このことから、余計にインターネットは怖いという感触がもち、安全な環境が実現されていないという感触があった。



  B県の例だと、非常に進んでいる町立小学校では、加配の先生がいることもあって、放課後、積極的に使っていた。中学校の方はどちらかというとうまく進んでいない方だと思った。

(2)これまでの会議の意見の整理


  ITを広める意味で、活用していない先生方にどう使ってもらうか考えた時、教員の机の上に1台ずつ置くことが効果が高いという意見があり、本校では今年、職員室の教員の机の上に1台ずつ置くことになった。私の隣の先生は、コンピュータにほとんど触ったことのない先生がいるが、そのコンピュータにより、空き時間にインターネットで検索してたりしている。それで、使っていると、自然とこの動かし方はどうするのかという話になってくる。自分が触らないと、結局、興味がわいてこないので、この形が一番効果が高いのかとなと思った。
  本校は、三鷹のサーバにつながっているので、フィルタリングはそこでかかっている。各教室と特別教室にも1台ずつ置いてあり、休み時間など、自由に使える状況にはなっている。パソコン室は、技術、総合の時間等で占められており、ほかの教科が入れない状況となっている。できれば、教室に1台、教員の机の上に1台確保されると、広まると思うので、そのための予算が立てられればいいと思った。



  コンピュータ室ではないところに、コンピュータがどれだけあるかが、これからの多様な活用と、先生方へのイメージの喚起になるかと思った。



  コンピュータを買い与えれば使うようになるかというと、そうでない部分もあるような気がする。主体的という部分がすごく大事だと思う。やるなら国や都道府県が買って与える方策よりは、例えば教師がコンピュータを買うことに対して何%の補助を出すような、本人が買いたいと思うことを優先するような方法がいいような気がする。



  海外では似たような制度があり、そのコンピュータは備品ではなく私物となっている。



  ただし、学校で買った場合、学校の使い方を守るという制約をつくことから、それでは自分のものにならないと思う。私物のものとして備えていくという方法がいいと思う。



  ハードの整備ももちろん重要だと思うが、結局、慣れてない先生が、コンピュータの使い方を子どもに教えることは、すごく不安なであり、提示装置として簡単に使えるというような研修が行われていくことがいいと思った。
  例えば、ある県の場合、デジカメの使い方という研修ではなくて、デジカメを子どもたちが持ったら、どういう授業が考えられるかという、授業モデルを考えるという研修があった。結局、ハウツーではなくて、ファットツーという研修に、移行が進みつつある。教員採用試験においても、ワード、エクセルを使えることが必要最低条件とする動きもあるようだ。
  ITと教科教育が融合した形の研修が各自治体で取組まれていかないと、難しいのではないかと思う。
  その研修では、本当に簡単な使い方だけでいいと思う。ノートとプロジェクタがつながっている環境で、ハードディスクに入っている静止画を4〜5枚を授業の山場に見せるということからでいいと思う。



  授業まるまる1時間コンピュータを使うのはなく、授業の中のここだけに使うというやり方に移行していく方がいいかと思う。
  コンピュータを使うと、授業時数が少なくなったことに対し、とても有効だという部分も示していく必要があるかと思う。ただし、コンピュータ室ではなく、普通教室でコンピュータが使える状況でないと、子どもたちの学力向上に寄与できるのか疑問という部分もある。
  それから、コンピュータの加配によりTTを行う際、コンピュータを主に教えるというスキル的な部分の先生が「従」、教科指導の先生の「主」の主従を取り違えると、大変な間違いになるのでそのことも頭に置きながら推進していくことが必要かと思う。



  この報告書がどこにどのように使われていくのかが最大のポイントになるかと思う。
  この報告書は、政策的につなげるだけではなく、教員、教育委員会あるいは地方の行政当局への理解という意味合いを持たせる可能性もある。その二極を持った報告書と位置づけるならば、その在り方が必然的に変わってくると思う。
  この報告書を「1.各教科等におけるITの効果的な活用」「2.ITの活用のメリットを生かすための視点」「3.ITの活用を広めるための視点」「4.ITの活用を定着させる環境づくり」の4つの視点で考えたとき、2つ目の「生かすための視点」でメリットを書いて、3つ目の「広めるため」となってくると、かなり具体的なものとなるかと思う。そして、4つ目の「定着させる環境づくり」では、さらにそれを具体的にどうすればいいかという感じかと思う。
  つまり、4つの柱は均等ではなくて、「1」「2」がPR的なもの、「3」「4」が政策的なものと位置付けるか。あるいは、4つの柱は違った視点なので、それぞれの柱でメリットや現状があって、それに対しての提言めいたものをするのか、少し議論しておいたほうがいいかと思う。
  最後に、提言となると、国として、どのようにして欲しいとか、予算を獲得するという意味合いもあるし、また、教員研修を具体的にどうやっていくか、地方に任せる部分はどうなるかということも必要かと思う。



  今後の議論において、教員、学校、教育委員会のそれぞれのノウハウを共有して情報を発信する部分が非常に大事かと思う。
  その1つの例として、教員研修の在り方について、様々なところで様々な先生方が議論しており、そういった情報やノウハウを現場レベルでうまく循環していくことが大事かと思う.
  そう考えたときに、これからITを推進していく上で、こういう視点をそれぞれの方々が持っていなければならないということが1つあるかと思う。
  報告書のまとめ方で、国はこうする、教育委員会はこうすると分けて書くと、国と教育委員会が距離をおいてしまうことになる。



  この報告書の中に、文教政策そのものの流れや世界の流れなども入れるかどうかなど、いろいろと検討することがあるかと思う。



  1つ目は、子どもたちがITを活用することの重要性みたいなことも、「初等中等教育におけるITの活用の推進」という言葉の中に入ってくると思うが、それを「教科におけるITの活用」という形に入れてしまうことでいいかという議論をしてほしいと思う。今の例では、その部分があまり強調されてなくて、割と教師のほうからの面だけが強調されているので、項目をもう1個立てるか、その中で2つに割るかして扱うことが考えられると思う。特に将来の能力観のようなことをきちんと位置づけ、その必要性と効果についても議論すべきだろうという気がしている。
  2つ目は、この中に入れるべきかどうかわからないが、例えば、地方での取組みについて、向こう3年ぐらいはこういう体制を考えてくださいとか、その後はこうしていってくださいとか、地方の役割を少しモデル化した方がいいのではないかという気がしている。
  また、ITへの取組みに関する各地方の成功例やそのビジョンがあるのだったら、そのモデルをどうやって縦にうまくつないでいくか。しかも、それぞれの地域の自主性を生かしてやっているモデルも提案しないと、ITの活用はいろいろな意味で広がっていかないという気がしている。
  3つ目は、一所懸命やっている人たちの中には、燃え尽き状態になっている人が結構いる。それをうまくエンカレッジしていくような仕組みができていない。どうも新しいことを一所懸命やっている人が、自分の今の仕事にプラスアルファの仕事となり、その過労からストレスになっている部分がある。そういう問題は、世の中の仕組みが変わっていくときに大事な問題であり、無視できないと思う。



  学校ではコンピュータのできる先生が、校務的な処理、教務的な処理と一人一人の教科の指導の処理を混在して行っている状況になっている。指導できる先生が校務処理も一緒に引き受けているという状況であり、そのため仕事の負荷が大きくかかってきている。



  地方の役割のモデルについてだが、市町村の体制が非常によくできていたり、学校の校長先生のリーダーシップがしっかりできていたりするところは、校内リーダーによる研修がうまく機能している。このことから、市町村のモデルとして、いい例を取り出して紹介していくことは必要かと思った。



  ある学校では、校長先生のビジョンにより、学校のネットワーク化、校内の成績処理・文書管理など、3つの分掌に分け、同じ人が担当しないような体制を整えており、これは成功している例だと思った。



  今までの報告を聞いてみると、とりあえず、成績をつけるとか、学級日誌をつけるとか、校務処理に活用することが、まず最初のステップではないだろうかと思った。自分の校務に活用するため、必要なスキルを身に付けてもらって、使ってくださいということになるかと思った。
  次のステップで、いよいよ授業で使うことになるかと思う。はじめは、総合的学習の時間や特別活動における進路指導に活用することが考えられる。これは教務との連携において、使いやすいのかと思った。こういうこともどこかで触れてもいいのではないかと思った。
  そして、いよいよ普通教室の教科におけるITの活用となる。そのためには、実践事例があり、プロジェクタ等のIT環境が整備されていることなどの条件が必要となるかと思った。
  IT活用のためのステップを順次整備し、それをサポートしていくというスタイルがいいかとい思った。



  コンピュータ、ネットワークの整備状況が職員室の場合にはどの学校もあまり変わらないが、一部の先生だけがファイル共有して校務で使っているのと、全員が使っているのとでは、差が出てくるかと思った。
  その違いは、例えば学校のリーダーの先生が、校務の処理をするときにネットワークを使わないとうまく動かないような仕掛けをつくり、その仕掛けを外すタスクを、全員がやらなければならないと提示し、それを校長先生がオーソライズする。そのようにすることによって、一部の先生だけしか使っていなかったのが、全員が使うようになる。
  校務のほうはまだいいとして、次に授業の中で使うというのは、さらにギャップが大きくなるかと思った。コンピュータ教室は空きが非常に少ないという状況があるので、普通教室において、例えば、液晶プロジェクタ、スクリーンで提示する方法が考えられるが、ある学校では液晶プロジェクタを持っていくのはいいが、スクリーンも持っていくのは大変だといったり、両方とも持っていくのは大変だという学校もある.
  教員研修で、ある県の教育センターの高等学校の5年目を対象したものだが、そこではコンピュータを使った具体の指導の仕方について教えている。教科の研修のところで、そういうものを1コマ入れるなど、研修に位置づけることがギャップを乗り越える1つの具体策かと思った。



  校務がワンステップで、次が授業というのは、違うような気もする。



  現場の感想としては、コンピュータが使える先生は、校務処理的な仕事がどんどんくるようになり、それをこなしながら、なおかつ、授業で活用している。そのようなことも、コンピュータを使う教員と、あまり使わない教員との差が広がっていく1つの原因かというような気がする。
  研修の件だが、校内リーダーによる研修がうまくいくためには、校内の条件がそろっていないと難しいかと思った。結局、リーダーは育つが、リーダーでない教員までおりていかないというのが現状だと思う。



  研修を行う立場からだが、教科の中でどうITを使うかということを常に頭に置き、研修に来ている先生方の向こうに子どもがいるような研修をやっていかなくてはならないと思っている。



  最後に、大学入試センター試験において、「情報科」を盛り込むかどうか議論となっているが、そのことについてどう思うか。



  基本的に大きく2つに分かれるかと思う。1つは、情報という教科の行く末を見る限りは、やはり入れてもらうべきだろうという意見。これは大勢かと思う。その一方で、センター試験に入ることによって、従来の情報処理や情報技術のような、ある種機械的な部分で答えが出てしまうような展開となり、「情報科」を新設する趣旨がそがれてしまうのではないかという意見がある。
  この14年度は、15年度からどのような授業を展開しようかという準備段階にあるにもかかわらず、今後の行く末を左右するような話題が出ており、現場では、実際にセンター試験に入った場合にどういう形でやるのか、逆に入らなくなった場合は、今後、情報という教科を大学側がどう見ていくのか、知りたいというのが切実な悩みである。



  数年後のことであり、今から準備しなければならないので、決めなくてはならない時期だと思う。
  本日は、全体の構成にかかわる有益な意見をたくさんいただいた。例えば、子どもの視点をどう報告書に取り入れるか。また、作業委員会で作成しているガイドブックとの関連がどうするかということもある。それから、ターゲットやタイムスケジュール、モデルまで書き込むのかということである。
  次回は、報告書をまとめるに当たっての方向性まで踏まえた審議をしたいと思う。

(3)今後の日程について
  7月中旬、審議をまとめる上での整理を行う旨、事務局から連絡。


5.閉  会

(了)


(初等中等教育局参事官)

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