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初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議

2002/05/27議事録
初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第5回)議事要旨

初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第5回)議事要旨

1.日  時 平成14年5月27日(月) 10:00〜12:00

2.場  所 虎ノ門パストラル「しらかば」

3. 出席者
(検討会議委員)   坂元委員、清水委員、小澤委員、阪田委員、永野委員、堀田委員、松田委員
(専門委員) 今泉専門委員、小泉専門委員、中村専門委員、成田(歌)専門委員、成田(雅)専門委員、降矢専門委員
(文部科学省) 加茂川大臣官房審議官、小畔初等中等教育局参事官、樋口情報教育調査官、中村教科調査官ほか関係官
(オブザーバー) 総務省情報通信政策局情報通信利用促進課、総務省情報通信政策局情報通信政策課、経済産業省商務情報政策局情報処理振興課、(社)教科書協会、(社)日本教育工学振興会、(財)日本視聴覚教育協会、(社)日本教材備品協会、(財)コンピュータ教育開発センター、(財)学習ソフトウェア情報研究センター

4. 議事内容

(1) 教育の情報化を支援する体制等について、岐阜県教育委員会渡辺情報処理研修室長より、配付資料に基づき説明があった。

  21世紀岐阜県型情報教育推進プロジェクトについて
  平成12年4月から、中教審答申、新学習指導要領の内容、バーチャル・エージェンシーの提言などの国の動きや考え方を踏まえ、岐阜県らしさをどういうふうに現場で具現化していくかという構想を練り始めた。
  平成12年度においては、「学校とは何か」という議論から掘り起こし、「文化の伝承の場」、あるいは「文化を創っていく場」と位置づけした。学校は、もともと情報が創られ伝えられる情報の交差点であり、ポータルサイト的な意味を持つのではないか、そのときにITがどんな意味を持つのか、というところから議論を積み重ねた。
  岐阜県としての目指す方向は、最終的には、ITによって「学習内容を豊かにすること」、「学習方法を多様にすること」、「共生の心を育てること」の3つのスローガンを上げている。これは、ともに学んでいく場や人と人のかかわりで学んでいく場をつくり上げていこうとするものである。
  もう一方で、岐阜県の教育改革の大きな幾つかの柱のひとつとして、「岐阜県学園」構想というものがある。これは、県内の小・中・高等学校、あるいは幼稚園から大学までのさまざまな教育資源を共有し、仮想的に県内のすべての学校を1つの学園に見立てるという発想に立ち、県内で学んでいるすべての子どもたちが1つの学校の児童生徒であるとする構想である。
  その中に2つの柱があり、その1つが人材を共有することである。これは、総合教育センターに、それぞれの分野に長けている先生方をリストアップして、小学校、中学校、高等学校からリクエストがあれば派遣をし、そこで直に子どもたちに教えるというものである。もう一方の柱は、学校のネットワーク化を図ることにより、その中で情報を共有していこうとするものである。
  県立学校内のネットワーク化(校内LAN)については、今の技術と予算の面の両方の最適値をとり、できるだけいいものをつくるということを考えた。まず、骨組み部分がギガビットイーサネットの光(ファイバー)にして、末端部分は100Baseで繋ぐことを基準とした。
  次にエルネット(教育情報衛星通信ネットワークシステム)について、岐阜県においては、パラボラとチューナをすべての県立学校が持っており、また県内の公民館等全部で百十数カ所が受信可能な状況にあるので、これを校内LANに組み込み、各学校においてパラボラで受信したものを校内のネットワークに流すことができるようした。例えば、中央で行われる教員の研修などは、先生方が職員室の自分の目の前のパソコンで見ることができるという状況となっている。
  続いて、学校間のネットワークについては、岐阜県内の学校をできる限りすべて繋いでいくという構想で動いており、まず今年度は、行政的な区分けとして県立学校をネットワーク化した。現在、県立学校は、ほとんどが1.5Mbpsでつながっている。今年度中に県全体のネットワークである岐阜情報スーパーハイウェイにより、ギガレベルで県内の施設約300カ所以上が接続されるので、それを利用することにより、全ての県立学校85校間もギガで接続されることになる。
  市町村については、それぞれ市町村ごとに地域イントラネットをつくり、そこに接続する方向で動いている。それができていない地域の学校については、1.5Mbps程度で単独に繋いでいくことになる。最終的に16年度には特別な事情がない限り、どの学校においてもネットワークの接続が可能になる状況はかなりでき上がると考えている。
  校内LANや学校間のネットワーク化は、12・13年度のハード面の中心的な事業であった。ここで大切にしたことは、どこの学校に行っても同じ環境にすることが、先生方の負担の軽減につながるという考え方である。現在、このネットワークの拠点となるデータセンター機能を構築中であり、これにより「どこどこの学校のどの校舎の何階にあるスイッチング・ハブがどうなっているか」などが全部リモートで監視できることになる。先生方が「困った」と言って電話をかけてくれば、こちら側でもその状況がわかることになり、これは先生方に安心感を与えることになると考える。
  続いて、ソフト面の整備についてだが、教育用コンテンツについては、授業で必要なときにいつでもどこでもだれでもが使えるよう、資料を持っている先生方に教材や資料の共有化を持ちかけている。また委託した業者による作成、市販物の購入等、様々な方法で開発・収集し、共有化を図っている。
  コンテンツを収集する上で、やはり組織を持たないと集まらないのではないかという危惧から、コンテンツ開発協議会を13年度に立ち上げ、16年度までの予定で今動いている。教育用コンテンツ開発協議会の中に各教科部会を設け、現場の先生方6名と指導主事で構成し、コンテンツの開発・収集に当たっている。そこで開発収集できたコンテンツを学校間ネットワークのデータセンターに蓄積し、みんなで使っていくという流れをつくった。
  開発・収集されたコンテンツには、岐阜県らしさ、あるいは地域的な情報をもとにしたものが比較的多く集まってきている。また、生徒が作った画像も取り込んだりしている。
  この教育用コンテンツ開発教科部会においては、コンピュータに堪能な先生ばかりでなく、そうでない先生もわざと入ってもらった。その中で、「あなたは授業で何をやりたいか」と議論していき、最終的に、今の授業と先生方が思い描いている理想的な授業の間のギャップは何であり、その課題は何かをはっきりさせた。そして、その幾つかの課題の中でITで解決できるものとできないものがあるのは当然であり、ITで解決できるものがあれば、その方法は何か、という話し合いを続けた。それを各教科ごとに行ったので、実際に何をつくるかが決まるまで、3〜4カ月の時間がかかった。このように、先生方がとことん自分の教科におけるIT活用を考え、それを実際に授業に使いながら修正を加え、開発・収集をしようとしたことが非常に大事なことだと感じた。
  次に、教員研修体制の充実と支援体制づくりについてであるが、当県では情報教育関連講座を多数展開している。また、教育用コンテンツの開発においては、開発とそれを授業で使ってみることを連動させようという考え方で動いていて、その成果や課題を研修講座にもフィードバックするようにしている。また、各学校の情報教育担当者への体系的研修講座の提供もしており、情報教育担当者への支援体制、研修体制を強化させた。
  組織的な支援体制づくりとしては、ネットワーク拠点であるデータセンターを組織として位置づけることも実施した。つまり、データセンターの組織強化と技術支援・活用支援体制の整備である。データセンターには8名のスタッフとともに、SEが常駐するという形で、小・中・高等学校のどこからの問い合わせに対してもソリューションを提供しているところである。また、SEを学校へ派遣し、先生方へ直接支援をする事業も積極的に実施しているところである。
  最後に今後の展開と課題として7点をあげると、1番目は、岐阜県内には小・中・高等学校で700校あるが、この700校に100台ずつクライアントがあったら一体どうなるのか、その巨大なネットワークの階層構造やセキュリティ確保をどうするのかが課題となっている。2番目として、パソコンの整備だが、普通教室に2台相当ということについては県立学校では整備を完了したので、プラスアルファとしてどうするのかということの検討に入っている。3番目として、コンテンツの開発収集と共有化。4番目は、先生方のリテラシーの向上と意識改革。5番目として、学校の仕組み自体の見直し。6番目は、コンテンツの開発とともに学習内容と方法の研究の必要性。7番目として、保護者の皆さん、地域の皆さんの理解の必要性であり、さらなる広報活動をしなくてはいけないと考えている。

(質  疑)
  学校と家庭との関係についてのこれからの展開と、成績管理の仕組みの共有化がされているのかについて。

  県としては、学校と家庭・地域との連携について、先進的に行っているモデル校での問題点や成果等をアナウンスしていこうというスタンス。岐阜県のある学校では、パソコンを家庭で持ち、インターネット接続するということを入学時に積極的に勧めている学校もある。そこでは、例えば、学級日誌は全部ウェブ化して家庭から見られる状況にあったり、学校からの連絡も電子化している。もちろん、インターネット接続してない家庭には文書とあわせる二重構造をとっている。
  ネットワークの管理の問題について、成績管理等の個人情報と教育の情報が混在しないようにすることは非常に大事だと思う。成績管理については、共有化から切り離すこととしており、VLANを切るなど、それぞれの学校で個々の対応をとっている。基本的な考え方としては、教育関係の情報と管理の情報は別にすることをお願いしている。

  教育用コンテンツの開発・収集等に関して、今後各県センターと連携が考えられるのかどうか。また、教育用コンテンツを作成しても、それを利用してもらうには、その活用に関する研修等が必要になるかと思うが、その点について、どう思うか。

  コンテンツの収集については、数の多さよりも、岐阜県らしさというか、地元へ目を向けたものを求めている。実際に先生方が非常に苦しみながらつくり、それを授業で使って、改良していくことによって、自分の教科そのものを見直していくという波及効果が生まれてくる。
  県を超えて、あるいは全国レベルで共有できるものはどんどん使わせていただきたいと思っている。それから、コンテンツを先生方の授業でどう使うかという研修を既に開講しているところである。その研修では、コンテンツ開発をした担当者や指導主事にも入ってもらい、実際に受講者に使ってもらい、意見を聞きながら研修を行っているところである。

  教育情報ナショナルセンターで、各県で開発・収集されている教育用コンテンツをうまく連携して、お互いに共有する世界を考えているが、そういう連携という観点から教育情報ナショナルセンターにどんなことを望みたいか尋ねたい。
  また、全国化の共有を考えたときの必要とされる条件について、どのように考えるか尋ねたい。
  それから、有料のコンテンツの利用も非常に重要だと思うが、そのときにセンター単位で購入してみんなで利用できる仕組みがいいのか、あるいは学校単位で買うことがいいのか、意見を伺いたい。

  ナショナルセンターについては、私たちも期待をしているところである。岐阜県で今組織的な開発・収集をしているが、その際、一番知りたいことは、それぞれの県で一体何をやっているかということであり、そういった情報が集約されている場所があることが望ましいと思う。
  それから、県の共有の条件だが、コンテンツそれぞれに条件が異なっている。例えば、先生方が独自に開発され、どこで使ってもいいと許諾を得ているものについては、インターネットでオープンにし、全国どこでも使っていい状況にする。それとは逆に、業者に委託して作ってもらったもの、あるいは業者が持っているものを買い取ったものなどは、著作権の問題でイントラネット内でしか使えないようになっている。また、センターの購入がいいのか、学校単位で買ったほうがいいのか、あるいは分散化がいいのか、大変難しい問題である。例えば、将来的にギガビットイーサネットで接続されればセンターに置くことを考えているが、そうでないようなところは、それを分散化した形でハードディスクに入れて提供することも考えている。

  「岐阜県学園」のような構想のグランド・デザインをした方々は、どういう立場の方々で、予算規模等をどういう形で決めたのか、また、その下にサブの部隊が動いていたのかどうか。

  「岐阜県学園」構想は、岐阜県教育委員会の教育改革の柱立ての1つとして、打ち出したものであり、教育委員会内での議論の積み重ねにより、コンセプトを決めたものである。
  また、ハード・ソフトをどうするか、それを授業にどう活かすのかという、情報化に特化した部分については、私どものスタッフで立案し、それを教育委員会の上のほうに上げていく流れである。もう一つは、岐阜県全体のIT戦略が平成12年度から動いており、岐阜県全体をIT化するコンセプトのもと、情報スーパーハイウェイを使って5つのネットをつくっていこうという方向で動くこととなった。5つのネットとは、県民生活がネットワークにより安全になる「安全ネット」、健康・医療・福祉といった面で安心できる「安心ネット」、各種生活サービスあるいは交通で便利になる「便利ネット」、自然・生活・文化、環境等が快適になる「快適ネット」、そして教育・学習あるいは産業が活性化する「活力ネット」のことであり、この5つのコンセプトのもと、岐阜県全体のIT戦略が動いている。

(2) 教育の情報化を支援する体制等についての討議

  エルネットにおける教員研修は、衛星で流すことが前提なので、著作権処理が完全に済んでいる状態である。このことにより、今までの研修プログラムをうまく蓄積して、後から見られる仕組みができればいいなと思っている。また、先生方の講演も許可の上、オンディマンドを目指した形の番組をつくって流せる仕組みができればいいと思っている。

  今年の2月に大学間のネットワークで教科情報についての教員研修のシンポジウムを行い、そのときに岐阜大学と岐阜のセンターの間をISDNでつなぎ、エルネットに乗せるという、2つの日本の教育の大きなシステムがつながる画期的なことが起ったが、この時の岐阜県の反応等、尋ねたい。

  大学と連携したものをエルネットで流す、情報の提供については、比較的熱心に行っている。それから、講師の講演については、ライブで流したり、あるいは収録して後で見られるよう、大事なコンテンツの1つだという認識で蓄積するよう動いている。

  今、残念ながらNHKの番組等の教習番組をそのまま研修に使うことはできない状況である。政策的に考えれば、使えるようにしていくことは1つの方法で、いろいろなチャンネルを使って研修が行えるようにしていく必要がある。講演以外の方法で新しい方向等を知るようなチャンスは、テレビの映像、ビデオ、エルネットの映像等をどんどん活用していくのが1つの方法だと思う。
  もう1つは、先生方がタスクを持っていないと、講演や研修しても効果がないと思う。先生方が何のために研修を受けているのかということを強く自覚してもらう必要があると思う。そのときに気になるのは、情報教育や教育の情報化の研修の内容が、いつも新しいものばかりに向いているような感じがする。それはおもしろいとは思うが、逆に学校の授業に自信を持ってやっている方にとっては、かえってそれが奇異に見えるのではないかと思う。
  例えば、普通の授業にある意味で満足している先生方に、高価なシステムで授業を展開しても、それがあまり教育的に意味がないように感じたら逆効果になる。研修の軸の中に、学習内容を豊かにする、方法を多様にする、共生の心を育てる上で、ITがこう使えるいうメッセージが必要なのではないかと思う。先生方がそれに同意しない限りは、いくら研修をしても自分とは違う世界にあるというふうに思っているのではないかと思う。ITがさりげなく使われていて、普通の授業よりもうまくいっているような例を見せていくことが効果的だと思う。

  研修においては、タスクを与えて、学校に帰ったら2枚にまとめて先生方に配るとか、教育委員会に提出するようにすると一生懸命聞くようになるかと思う。それは保護者に対する責任でもあると思う。学校の中で無料でできて、特に評価されるわけでもなく、何もしなくても済んでしまうということは、自費でパソコンスクールに行って練習する保護者との間に感覚のズレが生じていると思う。やはり、タスクを与えて、それができたか、できないかをきちんとする。それが子どもに還元され、地域に還元されることになる。あの先生はどこどこの研修に行って、その成果でこういうふうになってたということをアカウントするような仕組みをきちんとすることが、責任として大事だと思う。

  研修所に集まって研修をすると、最新の環境で全部やらせてくれて、こういうこともできるのかと目が覚めるところがあるが、いざ現場に戻ると、「うちのシステムでは使えない」と情報主任に言われることがある。出前研修という言葉もあったが、これを考えるとき、現場のシステムを見てもらって、どこまでできるか考えた上で研修されると、もっと現場に結びつく研修になるのではないか。

  今年千葉県では全公立学校にネットワークを引き、教室にもLANも全部引き、170数校全部に入ることになった。その結果、ネットワークの運用にSEとコーディネーターを全部回してしまったところ、市町村から、去年までやっていた出前講座がないことに対し、かなりおしかりを受けた。学校の環境にあわせSEの方々に手取り足取りやってもらう作業が研修では一番いいと感じている。

  現在、経験10年目以下の先生方はコンピュータに対する抵抗感はほとんどないが、授業設計の中で、コンピュータをどういうふうに活用するかということがわからない先生方が結構多い。
  特に40代以降の先生は、コンピュータに完全にアレルギーを持っている人も多い。子どもたちがコンピュータ室で何かトラブルを起こしたらどうしようという不安で一歩を踏み込めない人たちと、やっぱりコンピュータもやらせたいし必要だと思うが、いざ機械の前で子どもにどうやって教えるかということがわからない人たちがいる。そこで、情報教育担当者が授業を持たずに専任でいれば、見通しを持った授業計画が立てられることにくわえ、TTにより、コンピュータに慣れていない先生のサポートしてもらうことができる。また、授業でコンピュータを使った効果等を文章で残すことはできない多忙な先生のかわりに、いろいろな授業の指導案が集められ、提供したりできると思う。

  昨年度、ナショナルセンターのホームページを県センターの研修に取り入れたら、大変好評で、各学校の校内研修においても取り入れているようだった。そういう教育情報をこれからも積極的に研修の中に取り入れていって、どんどん活用を図ることも1つの支援かと思っている。

  操作のことは本屋に行けば売っているが、授業でどう使うかというのは、本がないかといえばあるが、あまり身近でない。そのときに、手にとれる参照資料がないというのが問題だと思う。それで、とにかくたくさんの授業で活用するときのヒントになるものがたまっていて、それが参照可能になっているというのは非常に望ましい形であり、進めていかなくてはならないと思う。これはタスクを持った教員から見れば、そういう情報がないというのは致命的だろうと思う。
  もう1つは、今度は役に立つ蓄え方というのはどういうものかというのが1つ大きな問題だと思う。指導案の形式でためられているものが本当に参考になるのかというと非常に微妙で、指導案を読んでも、わからない部分が結構あり、典型的なコンテンツを典型的に使っているワンショットの授業シーンを1分ぐらいの動画で提供するなど、学習場面を編集したものが一番伝わるという気がしている。
  これからはコンテンツを開発する時代から、コンテンツの活用例を蓄積する時代になっていくが、具体的に何をためていけばいいかというところは、注意が必要であると思っている。

  結局は、教員個々に端末が持てるような環境がない限り、自ら研修会に足を運ぶ必要もあるし、あるいはコンテンツをとる場合もCD−ROMとかセンターに行く必要がある。もう少しネットワークも高度に発達した暁には、教員個々が端末が持てる環境にならなくてはいけないと思う。
  それともう一つは、データセンター等を各自治体で完備するなり、国で完備するなりして、その両方が今後整備されないと、共有化という意味合いにならないと思う。

  教育情報ナショナルセンターでは、特にJAPETから今まで出されたものに関して、ナショナルセンターから皆さんに使ってもらえるような形で提供できる方向で検討している。ナショナルセンターでは、先生用、生徒用、一般的な生涯学習も含めて、体系的に情報を収集して提供していく仕組みをとっている。すべてナショナルセンターのサーバーに置くということを考えているのではなく、それぞれのサーバーに置かれているものがナショナルセンターからうまく引き出せる仕組みとなっている。現在、広く散らばっている情報をナショナルセンターから全て連携できるという形をシステム的に構築しているところであり、8月末の完成を目指している。そうなれば本来目的とする他の国のナショナルセンター的になってくるというふうに考えている。

  せっかく作った出来のよいコンテンツが現場に伝わっていないと思う。その1つの解決方法として、コンテンツをCD−ROM化し、研修の中にどんどん組み入れていく必要があると思う。
  今までつくるほうにコストをかけていたが、どんどん新しいもの新しいものに行くよりは、やはり今までつくったものを広めていくほうに戦略を移したほうがいいと思う。少なくともこれまでつくられてきたコンテンツを、実際に教員の前で説明したり、実際にやってもらったりするような政策に結びつけていく必要があると思う。その具体的な研修は、国でやる必要はなく、各都道府県でやればいいと思うが、そういう活動までフォローしないと、なかなか使い方が伝わっていかないと感じる。

  出前研修は、学校のハード的なものに対してジャストフィットする研修を受けられるという点では、コンピュータに対して抵抗感を持っている人たちにとって、ものすごくいいと思っている。
  また、同じコンテンツを使っても、授業設計でどこの部分でどのように使うかによって、子どもたちへの効果に差が出てくると思う。同じコンテンツを使った幾つかの授業例を集め、こういう場面ではこんな効果があった、こういう使い方をすると残念ながらあまり効果は見られなかった、プラス・マイナス両面を含めて、研修の場面で提示することも、1つの方法なのではないかと思う。

  市町村レベルであまり情報化が進んでないところを見ていくと、ビジョンをつくり、それを推進するような人がうまく位置づいていないと感じている。情報化に関するコーディネーターというか、推進役になる人をつけていくことが必要なのかと思っている。専任でつけるのもいいが、地域の情報化を引っ張っていくような人を委嘱する形の支援の仕方というのがあるのかとも思う。

  1人の専門的な情報教育堪能な先生が来るというのは悪くはないが、その先生にどうしても頼ってしまうということになる。むしろ、ボランティアが一緒になって先生たちと知恵を絞っているほうが、支援体制としては、いいのかなという感じを持っている。

  学校現場の1つ1つに対する支援の形は多様でないといけないと思う。SEもボランティアも、校内のリーダーの育成も大事だと思う。また、各教育委員会レベルに教育情報推進コーディネーターを置くことも大事だと思う。
  私が知っている事例では、例えば徳島県のある郡には、教諭籍だが、1人そういう方がおり、郡内のいろいろ学校を順番に見て回っている。基本的にはメーリングリストで先生たちの質問に答えたり、リモートで見られないところは行ったりしているが、実際に行くことが実践交流になっている。学校の中というのは、1人の担任の先生がほかの先生の授業を見る機会なんていうことは皆無に等しいし、また研究授業があっても年に数回のことであり、そう考えると、実践のちょっとしたことをうまく人から聞けるような機能があればいいと思っている。
  各教育委員会で教育の情報化のために、例えばハードウエア、ソフトウエアを整備しても、うまく使うための活用に結びつくための事例をうまく見せるような仕組みにまで、なかなか頭が回らないという状況がある。こういう場合に、コーディネーターの存在によりうまくいくという気がするので、学校横断的に機能するボストが配置されればいいと思う。

  情報化の政策は、英語教育に似てるように思った。英語の場合は、AETを学校に入れることによって、子どもたちが直接ネイティブの声を聞くことにより英語に親しむという効果はかなり出ているのではないかと思う。授業における教師とは別の形で、ITをうまく教育に活用していく人材を入れていくということが大事だと思った。教育と情報のことがわかっている人をAETのような形で横に組み込んでいく必要があると思う。
  それから、ネットワークを技術的に支援することと、授業の中でITをうまく活用して授業を生かすことを一緒にすると話が難しくなると思う。技術的なことは企業に向けられているため、SE派遣等でサポートしているが、授業を機能させるためには、また別の人材が必要だと思っている。

  小中学校においても、情報の蓄積、体系化の専門家の人がいると効果が高くなると思う。

  国民が税金を払って、それが公的な資金として行政の施策に反映されるが、この公的資金的なもの  をボランティアに活用するというようなことも、検討したらおもしろいのではないかと思う。

(3) 今後の日程について
  6月下旬、学校におけるIT活用状況実地調査の報告とこれまでの議論の論点の整理を行う旨事務局から連絡。

5.閉  会

(了)


(初等中等教育局参事官)

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