初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議
2002/05/10議事録初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第4回)議事要旨 |
1.日 時 | 平成14年5月10日(金) 10:00〜12:00 |
2.場 所 | 虎ノ門パストラル「けやき」 |
(検討会議委員) | 坂元委員,清水委員,赤堀委員,小澤委員,川角委員,阪田委員,中邑委員,堀田委員 |
(専門委員) | 今泉専門委員,小泉専門委員, 高野専門委員,成田(歌)専門委員,成田(雅)専門委員 |
(文部科学省) | 加茂川大臣官房審議官,小畔初等中等教育局参事官,樋口情報教育調査官,繻エ学習情報政策課長,中村教科調査官ほか関係官 |
(オブザーバー) | 総務省情報通信政策局情報通信利用促進課,総務省情報通信政策局情報通信政策課,経済産業省商務情報政策局情報処理振興課,(社)教科書協会,(社)日本教育工学振興会,(財)日本視聴覚教育協会,(社)日本教材備品協会,(財)コンピュータ教育開発センター,(財)学習ソフトウェア情報研究センター |
(1) | 「教育用ネットワーク環境の在り方」についての意見聴取 |
「教育用ネットワーク環境の在り方」について、三鷹市教育委員会大島指導主事(通信・放送機構主任研究員)より、配付資料に基づき説明があった。 |
○ | 三鷹市教委に来た平成8年に、当時としては最先端の上り下り10MbpsのCATVが学校に引かれたことが始まり。
その中で一番最初に行ったのは、インターネットを利用した不登校対策であった。三鷹では不登校の子どもに直接貸し出し、家庭と教育委員会が直接やりとりをした。この成果として、ある程度の振幅をもちながら若干下がり気味になってるが、これは学校指導員やスクールカウンセラーの全校配置などの様々な取組の中で、家庭から一歩も出ない子のために多様な選択肢を持ったといえる。 次に、学校図書館にすべてインターネットを引き、司書を配置した。これは劇的で授業で利用するよりもよっぽどマッチングがよく、このことから図書館を情報化することと、司書を配置することはいかに大事かということを示しており、今では図書館にステージがついていて、総合的な学習などで子どもたちが成果を発表する場として使用されるなど、従来の図書館とはずいぶん変わり、インターネット化した非常な力だったと思う。 昨年では、学校と家庭をVPNで結び、学校が家庭に対しどのようなサービスができるかを中心に行った。家庭で学校のことが見えることになり、授業のライブ中継をしたり、あるいはコンテンツを流したりしている。今年度からは学校週5日制の対策として、自ら学ぶ力をつけることを意図し、ドリル型のコンテンツを配信しており、家庭でも学力の補充ができるのではないかと思っている。 平成10年からの学校インターネット1.2.3、これは総務省と文部科学省と通信・放送機構の連携事業とあるが、全国3,200校あまりが1.5Mbpsから10Mbpsという高速回線で、100余りの地域ネットワークセンターを介し中央ネットワークセンターにつながれ、巨大なLANで結ばれている。その中央ネットワークセンターが三鷹に置かれ、コンテンツを全国に配信している。インターネットにつながればいいと思っていた時代に、ネットワークセンターが大事だということを全国に知らしめたのは革新的で、この成果かと思っている。また、三鷹市では、その中でモバイルの教育利用や無線LANの教育利用等もあわせて研究をしている。 高速インターネットが全国に張り巡らされたことにより、VODの動画配信が可能となったことが一番大きい。しかし、大体500kbps以上の高画質の動画は、1.5Mbpsぐらいだと、VODでは3台ぐらい立ち上げると基本的にいっぱいになるが、教室には今40台以上のコンピュータがあるので、受け側では基本的に必要な端末すべてを可能にするマルチキャストを行っている。 流通コンテンツの変遷について、ダウンロード型が一般的であった平成11年当時、学校インターネットでは既にHDDベースのネットワーク提供型である。その中で一番大きかったのは総合的な学習のものだが、その時間にはネットワークで提供されたものを見るだけというスタイルではないのか、あまり利用されなくなってきた。問い合わせが多いのは、学習履歴を中心とした教科で利用するドリル型コンテンツである。授業にターゲットをあてないコンテンツがどの程度必要かに関わるが、やはり日常の授業で使えるもののニーズが非常に高いと思う。これは単純なドリルではなく学習履歴でもあるので、すべての子どもの名前を入れる必要があるが、ある問題を解くことができた、できないを含め、それにかかった時間等を学習履歴として登録し、その子の到達度を測定し、その到達度に対して考え得る最適な問題を配信するシステムをつくり込んでいるところである。 また、全部作りこんでワンパッケージになっているコンテンツは以外に使われず、やりとりの成果がそのままコンテンツになっていくグループウェア型コンテンツが結構使われつつある。内容は担当する先生が決める形でそれぞれの学校が集まって、グループウェアを介して調査したものをそこに貼り付け、コンテンツ化されていくものが主流になりつつあると思う。 次は情報機器利用で学校等で起こるトラブルだが、今までは単純にインターネットと学校を結んだスタンドアローン型であったので、そのときには教育委員会にあまり上がってこなかったが、ネットワークに接続する際に一括管理している地域ネットワークセンターを持つようになり、トラブルが必ず上がるようになってきた。現在起こっているトラブルは、高校生のチャット荒らし等である。それから、CDやDVDの違法コピー。また、子どもはメールアドレスのパスワードを簡単に教えてしまうケースがあり、ウィルスメールを送られたりするケースがある。 著作権侵害に関しては、情報モラルと同時に、もっと絞って著作権というものを教えなければいけないといわれる。小学校のHPにドラえもんを貼ったりするケースが出ている。先生が気がつかないとそのままそれが世の中に現れていくことになる。また、個人情報の流出については、パソコンが盗まれて、個人情報がそのまま流出してしまったこともある。学校は個人情報の宝庫なので、個人情報がいつ何どき流出するかわからないことが懸念されている。 それから、ダイヤルQ2の問題。サイトを見ていて知らないうちにダイヤルQ2につながり、課金されてしまったというケースがあった。各学校でフレッツではなくISDN以下のものでつながっていた場合は、全部教育委員会に課金されることになる。 それから出会い系サイトの問題が日常的となっていることや、携帯電話への過度な依存や犯罪行為への利用の問題がある。また、インターネットオークションで買ったけれども物がこないという問題も起こっており、消費者教育できちんとやらなければならないことかもしれないと思った。 これに対し、保護者のモラルの問題もある。三鷹市では学校と家庭を直接結んでおり、フィルタリングをきちんとかけて、変なところに飛ばないことを推奨して家庭に流したが、家庭から猛反発をもらい、家庭のニーズというのは多様ということがわかった。 それから、ネットにおける匿名性。チャット荒らしをする子どもは自分でやったことがわからないと思っていることが問題で、実は全部わかっているのだがISPが客の情報を明かさないことから、自分がやったことが決して明らかにならないと思っている。しかし、学校インターネット環境下ではそれが全部わかり、すべて指導するので、同じ学校から2度起こったことはない。やった後どう指導できるかが教育として非常に大事な視点。 次にネットワークについてだが、行政側はインターネット等は引くが、校内ネットワークに関して何ら措置をしないというところが多く、自分たちでネットワークを引くことになり、そうすると、簡易なプロキシサーバでDHCPという動的にアドレスを動かすタイプで、インターネットをただ見るだけになるという学校が非常に多いのではと思う。三鷹市の場合、プライベートを振り各学校のアドレス体系を全部そろえた。DHCPではプロキシから先しか登録されていないのでどの端末から出たかわからないが、プライベートを振ったことによりチャット荒らし等のトラブルが起こった場合に、何時何分にどの端末を使った子どもまでわかることになった。学校のネットワークはかなり大事だと思う。 学校インターネットに限らず先進的なネットワークをとった場合の課題ということになるが、学校インターネットの環境下では、コンテンツをつくることも、ライブ配信をすることも、すべての子どもにメールアドレスを付与することなど、やる気になればほとんど何でもできることになるが、有効に学校で活用されるにはまだ至ってないものもある。それは、教育委員会の研修がまだまだスタンドアローンであるから、コンピュータを使え、ホームページはつくれるようにはなったが、それをネットワークに上げたりということができない。今の進んだネットワークに対する教員側の研修にかなり課題を残している思う。 子どものモラルが、いい部分、悪い部分も含めて一緒に進んでいる。情報モラルのことがきちんと、現在の学習指導要領で明確に位置付けされているが、小学校には今のところ明示されていないと思う。この辺のことをどう学校に位置付けるか、大きな課題であると思っている。 最後になるが、私どもが今度行うe-Schoolでは、地域丸ごと30Mbps以上のスピードが出る802.11Gの無線LANを介して学校とのアクセスを可能にする。したがって、学校が学校としての情報を配信するだけではなく、市として社会教育の立場からもさまざまな情報発信ができることになる。学校を中継点として家庭にまでさまざまなことをやろうと考えているというところである。小学校4教科、中学校5教科の教科ドリルを家庭でもできるようにする。それで、わからない場合は、1人でやっていてもわかるようにならないので、そこにマンパワーがどうかかわるのかということを地域ぐるみで考えなければならない。 |
○ | こういう恵まれた環境を生かすためには学校における人的な組織が大事だと思うが、例えば、学校図書館において、司書教諭と司書がどういうふうに協力しているかなどに関して伺いたい。
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○ | 司書教諭は授業をもっているので、三鷹の場合は司書を中心にやっている。司書は、基本的に司書教諭の資格を持っていることとコンピュータができること、それから読み聞かせができることをもって審査し独自に採用している。このようなマンパワーはお金がかかり、教育予算がどんどん膨らんでいく。よりよい教育をするにはよりお金が必要になるのが現状。
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○ | 自治体の経済力によって多少差があるが、セキュリティの問題等を含めて、学校独自よりは自治体も含めてネットワーク環境下になければいけないということで、自治体型のネットワークセンターを持ちたいという動きが全国に起こっており、現実に幾つもの市や区でそれを立ち上げたところがある。自治体の中に学校が入ってネットワーク化されるというのが通常のパターンだと思う。
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○ | 学校インターネットの中でのセッションはできるが、高校レベルになると、海外とのセッションが必要になってくるが、メール等のやりとりは可能ではあるが、例えばテレビ会議等が、この先学校インターネットの授業でどういうふうに扱われていくか疑問となっている。
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○ | DHCPでもプライベートでもHTTPに変えてしまえばLANtoLANでもそれ以外でもテレビ会議をやりながらホームページに書き込むようなことはできる。
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○ | 関連した機能を教育情報ナショナルセンターで開発中なので、これを先に紹介したい。
最初にコンテンツについて、ニーズを調査した結果で見ると、みんなが共有するというものと、もう一つは先生が毎日の授業で使いたい単体的な素材というニーズの2つが高かった。 そういう形から、ナショナルセンターでは、おもに地域間交流、リアルタイムの交流ももちろんあるが、リアルタイムでない交流を支援しその成果を上げていく仕組みづくりをしている。 それから、国際交流については、日本語は当然、英語、フランス語、ドイツ語、中国語、これに関して同じ言葉が、どの言語になっても出るようにしており、すべて千五、六百の学習用語を吹き込んである。それに発生した音声をつなげれば、コミュニケーションがとれる。 また、歴史に関しても、地域の歴史学習をしたときに、自分のところで学習したものについて、世界史と日本史と年代別にぴったり並んだ形でディスプレーする形をとっているので、世界の歴史の中で、自分たちの地域の歴史がどういう状況になっているか、あるいは2つの地域の学習であれば、それぞれの地域で学んだことを2列に並べて、あるいは日本全体の歴史を並べて見ることになる。 指導案のことも重要に考えている。指導案について、イラストを入れるなどプロがつくったようなきれいな形にフォーマットされ、みんなで共有する形の仕組みをつくっている。 また、有害情報、不適切情報についても真剣に取り組んでおり、発達段階で異なる不適切情報と明らかにカットしなければならない有害情報とを分けて対応するツールを考える予定である。 ネットワークのあり方については、ヘルプデスクの問題やフィルタリングの問題から考えると、すべてナショナルセンターでというのは不可能なので、各地域にお願いすることになる。そのもとになるものをナショナルセンターがつくっていくことを考えており、ヘルプデスクの内容についても検討しているところである。 コンテンツの提供について、企業がつくられた優秀なものであってもナショナルセンターとしてうまく提供する仕組みを現在開発中である。 |
○ | 講義の際に、その場で現実にインターネットがつながるかどうかもわからないし、まして大きなファイルだったら時間がかかってしまい、限られた時間の中で、講義をやろうと思ったら、とても恐ろしくてそんな冒険はしにくいと感じた。ブロードバンド化の対応には、まだ時間がかかるのではないかと思い、自分で使う教材を、インターネット、教育センター、NICERからとりよせ、CD−ROMかダウンロードしノートパソコンに蓄えてプロジェクターで映して使うのが、楽な気持ちで使える最初の姿ではないかと感じる。
また、授業時数が減る中、限られた時間という中で、先生方はどうやって教えていくかというのに必死になっている。そのためのIT活用のモデルというのは、最初はやっぱり教材提示型でいいと思う。日常的なもの、少し凝ったもの、もっとコラボレーティブなものへのステップ的に幾つかのプロトタイプをここで提示することが必要ではないかとの印象を持っている。 |
○ | まず地道な実験観察が大切で、それがなくて、インターネットで情報をかき集めることは、理科教育から外れてしまう。
ただし、実験観察をしていく中で、コンピュータネットワークを使ったほうが、明らかにいいことがたくさんあり、例えば大量のデータが集まってくるような実験は、これまで家に持ち帰って、データを分析し、レポートを書いていた。しかし、コンピュータの中にデータを入れていけば、そこで分析・考察しながら実験が進められる。それから、例えば高校の場合、半日ぐらいやってデータが6個ぐらいしかとれないミリカンの実験など、何千も集めるような実験は高校の授業は成立しない。しかし、これを日本中、世界中で行い、共有することで、ある法則性を見つけ出したり、素電荷を見つけ出したりというようなことはできると思う。 一生懸命やっている先生には、切実に必要だと思っていることが必ずあると思う。その幾つかについてはコンピュータネットワークによって解決されることは、少なからずあると思っている。 そこで力を入れているのが動画の小さなファイルである。地学実習で仮想の地層を調べるが、実際に行って地層を調べてみると相当違っているケースがある。実際に調べているところを動画ファイルとして撮っておけば、生徒たちは必要に応じてそれを見て、自分たちで勉強することもできる。幾つかの動画をせいぜい2、3分、デジタルで配信されれば、非常に都合がいいと思う。 生徒に1,500台のコンピュータを配った学校があり、授業の最初に、「きょうの学習のちょっと手前ぐらいまでを、まず君たちやってごらん」と、5分間、小テストを行っている。小テストの採点は大変だが、その採点がコンピュータ上で上がり、それを見て、先生が今日の水準はこのぐらいだと判断し、その日の授業の構築を調整するということだった。これは相当先生側に力がないとできないが原理的には可能。 |
○ | 学生に課題を出すときも、ホームページ上にリンクを張っておいて、そこから探して、結果はネットワークに持ってくるような提出の形をやっているが、ネットワークにたくさんのコンテンツがあるので、みんなにCDで配らなくていいという意味で、ものすごく助かっている。ネットワーク上に教師が使えるコンテンツがたくさんあるというのは、非常に望ましいことだと思っている。
数年後のブロードバンド環境下の授業で、コンテンツを使って授業をやるという活用のイメージを多くの先生方は持っていないと思うので、自分の外の情報を自分の授業に組み込んで流れを作っていくという授業のイメージをたくさん提供するというのが課題ではないかと思う。 インターネットを活用した共同学習の研究をやっており、デジタルカメラで撮ったものが、ネットワークに上がって、そのライブ感がものすごく効くのではないかと感じている。 子どもたちにとって、役に立つ学習課題は何なのかということだと思うと、その課題が他の教科の内容に関係するなど、子どもの目線で広がっていくような学習課題を見つけることが大事で、それは先ほどの活用イメージと関係のある話で、私どもはコンテンツの整備と、ネットワークの整備と同時に、授業モデルも提示していかないといけないと思っている。 |
○ | いろいろな自動車会社が、子ども向けの楽しいホームページをつくっているので、その動画を活用し、その動画にそれが自動車だとわからないような映像をわざといっぱい入れ、グループでいろいろと調べながら、子どもたちがセッションして、刺激し合う授業を行った。自分がやった結果が、すぐにみんなから反応が出てくるから子どもは喜び、ビデオ一本を見せて先生が説明しても、子どもにとっては余り生き生きした授業にならないのかと思った。
先生方が使いやすい動画は教科の先生方が一番知っていると思うが、いろいろなものを見る中で自分にあった授業を思いつくのではないか。例えば、現在、歴史の映像がたくさん入っている素材があるが、それを社会科の先生が見たら、すぐにアイデアが出てくるのではないかと思った。ある程度のクオリティのいい細かい映像を学校サーバにダウンロードし、学校間がネットワークで一応LANでつながり、社会科の先生が自分の教室にノートパソコンで、サーバから引っ張ってくる形ができたらいいと思った。 黒板やチョークなど他の備品にそれほど差がないが、ハード、ソフト、ネットワークの環境が同じ自治体の中でさえ非常に差がある。セキュリティの問題でも、ネットワークの中にひどい情報が入ってくることも起こり得ると思うので、学校を守るという意味での、もっと統一されたセキュリティのシステムがあったらいい。 |
○ | 1年生の総合的な学習に入る前のスキル学習ということで、毎日コンピュータの扱い方等について、短い時間で取り扱っているが、昨年度は5月でここまでできなかったものが、今年度の生徒は昨年度よりも上がっていると感じた。
安全に管理するというハード的なものもあるが、ソフト的な認識の部分で、各学校でコンピュータ利用上のガイドラインをつくると言っても、どのレベルまでつくっていいのかがわからないという先生方も多いと思う。これは、インターネットを活用すると同時に出てくる問題だと思うので最初の段階で提示できると非常にいいのではないのかと感じた。 |
○ | 4〜5年前から経産省や総務省で、テキスト情報も画像情報も含めた学校を対象とした有害情報のフィルタリングのナショナルプロジェクトがあった。その後、技術的な側面、運用上の側面、教育研究への適用の側面で情報を共有していく必要があるのではないか。
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○ | 自県の場合、ガイドラインについては、先進的に取り組んでいる学校はすでにガイドラインを策定しているので、それらを参考にCD−ROMにまとめて1つの参考例として、各学校に配布するという形で進めている。
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○ | フィルタリングをかける最低の単位は、基本的には学校単位でフィルタリングができると一番いいと思うが、そうでない場合には、地域ネットワークセンタークラスが限界だと思う。それより上で全部かけることは、とても大変であると思う。
また、フィルタリングは校種によっても違ってくる。小学校の先生はトラブルが起きないため、フィルタリングはかけないほうがいいという先生が多いが、中学校以上になると、静かにしているから何を見ているかと思ったら、ほとんどそっちの世界を見ていたりするなど、中学校は厳しくする傾向にあると思う。 ところが、e-commerce系になってくると、中学校の場合、うっかり買ってしまうと困るので閉めてしまう。ところが、高校になると「それをやらなきゃ授業にならない」と逆となる。 校種によっても全部違うので、三鷹市がやったのは、まず閉めることだった。それから、何をあけるかという作業に、三鷹市レベルで1年かかっている。各先生方からの情報を全部入れ、このサイトだけはあけてほしいというものは、1つずつあけていくと、1年ぐらいで、大きなトラブルが大体なくなり、授業で支障のないようなレベルとなる。また、授業のやり方によって、いけないものを見せる授業というのも、結果としてあり得ることではあるので、そのときだけあけてくれとか、そういうことはよくあった。 要するに行政の責任として見せないようにするようなシステムをつくるということは非常に大事なことで、責任の問題だと思うが、モラルとしてどうするかという教育の問題はこれとは対にある。 |
○ | 情報のモラルというのは著作権を含めて議論される方がいるが、私はきっちり分けている。著作権法は法律なので、守らなければならない。それを知らないという人が多過ぎる。知っていても、このぐらいはいいだろうという拡大解釈していることがある。ガイドラインというのは、非常に必要だと思う。
著作権以外にも、情報社会で守らなければいけない規則として、個人情報保護の問題があると思う。その点は、ぜひきっちりした形で提言をした方がいいと思う。 また、情報モラルの問題で、フィルタリングをかければ済むということではなく、心の問題が重要であると思う。欧米ではAUP(アクセプタブル・ユース・ポリシーズ)で、子どもが親等と契約条件みたいなものにサインして、インターネットやコンピュータを使うことになっている。例えばカナダの小学校では、インターネットを使うのは5年からなのだが、入った段階から毎年1回、繰り返しサインして、学校でインターネットを使った場合には、学校はモニターすることをわからせる。ポルノのようなものにアプローチしたら、場合によると停学にさせたりする。サインにより、学校での約束事を契約することになり、日本においても少し検討してた方がいいと思う。 フィルタリングについては、アメリカで去年ぐらいの話だが、すべての学校にフィルタリングをつけるという法律をつくるという動きがあったが、教育関係者はすごく反対をした。フィルタリングで子どもを守れるはずがなく、子どもの心の教育をしなくてはいけないという、大きな議論があった。 アメリカのフィルタリングは、カテゴライズされており、例えば反社会性について、高校生が学ぶといったときに、そのサイトが出ないと学習にならないという場合があるので、その場合には、反社会性のものを、この時間からこの時間だけ、フィルタリングをあけるというシステムである。その時間だけあけて、先生の監督下でそれを示しながら授業を行っている。アメリカはグローバリゼーションの一環として、このことを世界標準にするという動きがあるが、これはアメリカの子どもを守るためのフィルタリングであり、それを国際標準だからというので、日本に導入することに関しては、反対である。 教育情報ナショナルセンターでも、サイトに置くのは、子どもに教育的に絶対大丈夫というものに限っており、現在、有害的なものと不適切ということを分けるシステムの基礎をつくっている。いずれ検索システムと絡んだ形のフィルタリングをつくる予定にしている。 |
○ | 既存のフィルタリングソフトやポリシーが企業のために作られたものである。企業レベルでは、フィルタリング、さらにはセキュリティポリシーがかなり確立されているにもかかわらず、なぜ教育の面で確立されていないのか考えたところ、1つわかったことは、児童生徒はお客さんであるが、従業員は客ではないため機械的にリスクマネジメントすることから、ある結論が出されるが、教育の現場では、教育するという観点から、単純にすべてのものを一律にやってはいけないとか、こうすべきであるということができない。これは国の施策としてまとめてもらわなければいけないのではないかと思っている。
最高責任者としての校長や教育委員会の研修や周知が必要であると思われ、ボトムアップでやっても結局できないかと思うので、できればトップダウンという形で研修を行い、セキュリティポリシーやガイドラインについて統一したものを考えた方かいいと思っている。 |
○ | インターネットを活用する光と影のうち、影を気にするあまり、インターネットを引くのをやめるような、非常に大まかな部分で動いている事例がある。例えば、学校に通学する途中に交通事故が起こる可能性があるわけで、そのために安全教育や人の配置や保護者の手を借りて、子どもたちを守っているわけで、影の部分は体制の問題である。光までも奪われないよう、公教育は特に、安全なネットワークを敷設することを重視すべきだと思う。
また、安全具合と閉め具合の程度が学習活動をややもすると束縛しすぎてしまうこともあるので、運用レベルで考えなければならないところはあるが、例示として、こんなふうにするとこんな弊害があるとか、こんなふうに守っているいい例がある等ということを、国レベルで示さないと、自治体に対する周知徹底にならない、地方交付税を使って入れようとするときに、非常に中途半端な形で入ってしまい、それが活用を促進しない方向に向いてしまっているところが残念である。 現場の教師の中にフィルタリングは要らないと言う人もいるが、これは、社会的責任の問題としては考えてなくて、個々に意見を言っているだけの面がある。教育委員会がポリシーをもって例示をきちんと示さなければいけないと思う。地方分権なので、難しいかもしれないが、教育という観点においては、ポリシーを見せることが重要なことだと思う。 |
○ | 完全なネットワークは多分つくられないと思うが、そもそも、例えばセキュリティポリシーそのものやモラルについても現場の先生方にほとんど育っていない。そういう環境の中で生活をしていないから当然だと思うが、ある種の研修が必要だと思う。ただ、どこかに1カ所に集めて、少し研修しただけで育つわけがないので、いろいろな研修が必要だと思う。その中で必要なのが、先輩の先生が新しく来た先生たちを育てていくような環境。ITを活用した先進的な研修に対して、徒弟制は対極にあるような気がするが、決してそんなことはなく、必要ではないかと考えている。
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○ | 操作やその他のスキルは経験に比例するが、モラルや倫理観は比例しない。むしろ無相関、あるいはマイナスである。情報モラルのための教育をやっていかなくてはならないと思う。
既に小学校等で総合的学習の時間を使って、情報モラルについて、ディベート授業を行って、大変効果を上げている学校が現実にあり、学校教育でしっかりやるべきだと考えている。 |
○ | 一般的に北米や北欧はe-leaningが進んでいる。デンマークでは、ITの先生にいろいろな免許状を出している。また、ジュニアPC免状として、小中の生徒にまで免許状を出している。使い方、先生の能力、子どもの能力を高める上で、ネットワークを上手に使うことは非常に大事だと思っている。 |
(初等中等教育局参事官)