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初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議

2002/04/25議事録
初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第3回)議事要旨

初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第3回)議事要旨

1.日時 平成14年4月25日(木)14:00〜17:00
2.場所 グランドヒル市ヶ谷「白樺(西)」
3.出席者
(検討会議委員)   坂元委員,清水委員,赤堀委員,小澤委員,川角委員,永野委員,中邑委員,堀田委員,松田委員
(専門委員) 青柳専門委員,浅見専門委員,今泉専門委員,小泉専門委員,高野専門委員,成田(歌)専門委員,成田(雅)専門委員
(文部科学省) 中村教科調査官ほか関係官
(オブザーバー) 総務省情報通信政策局情報通信利用促進課,経済産業省商務情報政策局情報処理振興課,(社)教科書協会,(社)日本教育工学振興会,(財)日本視聴覚教育協会,(社)日本教材備品協会,(財)コンピュータ教育開発センター,(財)学習ソフトウェア情報研究センター
4.議事内容
(1)「各教科におけるITの活用」について各教科の研究者からの意見聴取
1理科(大阪教育大学教育学部家野助教授)
(説明)
  まず、スタンドアロンとしての使い方で、理科としての有効な使い方は、1点目は教材を提示するツール、2点目は観察・実験用のツール、3点目は子どもたちの学習内容の発表用のツールとして使うことである。
  教材を提示するツールについては、理科の場合、時間的或いは空間的なスケールの関係上、直接観察ができないような事物現象や、イメージの世界を現象として扱うことになる。そういうときに教材提示用のツールとして使うという方法で効果が上がっている。例えば、見えない現象を可視化するツールとして結晶構造の可視化により、学習の中で、実際に自分の頭の仲に分子の結合、切れていくイメージを描くことができる。
  観察、実験用のツールは測定やグラフ化という問題を肩代わりさせるツールとして非常に有効だと考えている。理科の授業の中心である実験、観察は、実験操作の難しさ等から、その結果をうまくつかめないと、子どもたちは次のステップへ進めない。アメリカでは温度の測定器のついたコンピュータを使っていて、子どもたちは、細かい作業をすることなく結果として受け取ることができる。
  理科はグループの活動が多い。これまでは黒板等を用いてグループで理解したこと、わかったことをクラスの中で相互に交換し合っているが、子どもたちがHTML形式のファイルをつくる中で、視覚的にいいものができるとともに、子どもたちが自分たちのわかったことをもう一度表現するという活動を通して理解のとらえ返しというものが可能になる。
  教室内のネットワークにより、教材や資料の共有が可能になるほか、自らの学習活動の経過、学習成果の交換、交流が容易になる。また、校内のデータベースの利用により、前の学年がやっていたことが蓄積され、調べるときの資料として使える。さらに、理科の資料やデータは、各学校で分散して持つにはもったいないものがあり、重要な意味を持つ画像がアクセス可能なサーバに置かれることも考えられる。
  また、留意しなければならない問題として、何でもIT機器を使えばいいというわけではなく、使うための必然性が要る。理科の場合、非常に有効な場合もあるし、子どもたちが真剣に物を考えて先へ進もうとしていくときに、結果がすぐに出てしまうツールは使わないほうがいいということもある。
  それから、子どもたち同士で問題になるような発言などの記述が起きないようにする情報交換上の留意点とフィルターの配慮がある。
  ITの活用の拡大とその課題について、1点目は、学習者のスキルをどういうふうに高めていくのかが課題。子どもたちのIT機器の活用のスキルを発達段階に応じて高めていくような流れも想定する必要があると思う。
  2点目は、同じように指導者のスキルの問題である。IT機器の持つ能力の多様性を知り、授業にどう使えるかを判断し、授業の組み立てにいかに導入するかという能力が必要。
  3点目は、ネットワーク管理の問題となる。一番の問題なのは、ネットワークの利用についての知識をもつ先生があまりおらず、ハード的な機器の構成と、それをどう運用するのかというソフトの運営とか、全く初めての先生方にとっては非常に敷居が高かったようだ。

(質疑)
  学会として、コンピュータネットワーク等の使い方や教材の提示等の調査結果を持っているか。

  多分ないと思う。

2音楽(東京都文京区立第十中学校滝浦教諭)
(説明)
  歌唱の面については、中・高校の場合、生徒が自主的に曲を合わせる以前の楽譜を覚える譜読みの段階でパソコンを使っているケースがあるが、歌唱にPCを使う先生はわずかしかあがっていない。次に器楽だが、中高はほとんど使われておらず、辛うじて小学校の先生が器楽合奏をするときに、各パート別に演奏データをつくって、子どもに練習させてから、最後にコンピュータなしで合わせるという事例があがっている。鑑賞については、マルチメディアソフトが増えてきており、十数点位は授業で使えるソフトがある。
  音楽で従来の指導法に伍して教育効果を上げられるのは創作で、全事例の8割から9割を占める。音符と音が一体化しており、創作の授業が苦手でも、パソコンがある程度操作できると、指導が比較的易しく、楽譜への子どもの苦手意識を取払うことができる。
  また、最近、特に増えているのが、世界の民族音楽とか、日本の地方の民謡とか、いろいろなジャンルにわたる音楽などをインターネットを活用した調べ学習である。
  問題点としては、一つ目に音楽科教師に対する実技研修の機会が少な過ぎること。エクセル、ワード等の研修は多いが、音楽科に必要な音楽ソフトの研修が少ない。しかし、PCを使って授業をしている先生は点在しており、うまく組織的に実技研修の拡大を図り、定着を図るかがこれからの課題。
  二つ目に、音楽教育を指導する中で、まず指導主事の先生がきちんと教えられる立場にいなければならず、音楽科の指導主事の実技研修を強化する必要がある。
  三つ目にPCを使って授業をしている先生方を都道府県で把握し、その者を核に指導主事とタイアップして、ある意味で半強制的に実技研修を行うべきだと感じる。そうすることにより、コンピュータが立派な音楽の教材になり得るだというところを分かってもらえるのはないかと思う。
  中にはトラブルに対して対処できないからPCを使った授業をしたくないという先生も要るので、そこもあわせた実技研修の拡大により、そういう人たちが指導していけば、すそ野は広まっていくのではないか。また、時間数が減少する中、ITのほうまで手の回らない先生もいるため、今までの指導に伍して役立つポイントを絞らなければならない。
  先生方が心動かされるのは、ITを使った授業を見て学習効果が上がっており、子どもたちも生き生きしているというところにあるので、そういった授業を多く公開することが有意義で、その場合の、校長会を含めた行政側のバックアップが必要。
  また、PCだけでなく、スピーカーやMIDI音源といった周辺機器が必要であるとともに、RGBコンバーターなどを通じて音楽室にある大型テレビの活用も有効。

(質疑)
  コンピュータを使った作曲コンクールなどはあるが、そのような活動は少ないのか。

  コンピュータや音楽ソフトが好きな先生だけで、一般の先生方にはなかなか浸透していない。授業時数の関係で往々にして選択に流れるケースが最近増えている。

  研修を強制的に、半強制的にしたら効果が上がるだろうと思うが、現場のほうの抵抗感は今はなくなってきているのか

  少なくとも、以前よりは少なくなってきている。

  授業効果があるときの指導案を見ても、現場の先生はわからないのか。

  少なくとも、書面とか画像だけではなく来ていただかないとわからないと思う。

  本物の楽器ではなくMIDI音源を使った鑑賞は効果が上がると考えているか。

  生演奏には当然かなわない。ただし、コンピュータでなければつくり出せない音がある。創作の場合に、既成の概念にとらわれない音づくりに新鮮味が非常にある。

3数学(東京理科大学理学部澤田教授、清水助教授)
(説明)
  算数・数学科においては、調べ学習に統計ソフトウェアを使用するなど、算数・数学のためにITを活用する立場と、情報Bのような内容を数学科でやるというITの活用や情報教育のための数学・算数教育という立場がある。
  算数・数学科の場合、教師が使う場合と児童・生徒が使う場合に分けられると思う。特に算数・数学科の中では、数学ツールと言われる数学教育のソフトウエアがたくさんつくられ、最近では、例えば「数学博物館」と言われるサイトや生徒同士が問題を共同で解き合うようなプログラム、さらに、数学コンクールのウェブバージョンなどオフスクールで算数・数学を行う形でのITの活用など期待できる活用効果としては大きいものがあり、児童・生徒がウェブ上で活用できるようになっている。
  これから算数・数学においてITを活用する際の課題として、まず第1に教師が使うことにおいて、容易にアクセスできるようなデータベース等のIT環境の課題や、さらに教師が授業準備のためにどれだけITを活用できるかという点があると思う。
  もう一つは、児童・生徒が使うことにおいて、活用を容易にするためのハイパーメディア、ソフトウエアが求められる。また今のところ、小学校低学年向けは、教科書会社作成のものを除いてはあまり広く使われているものはないので、もっとゼネラル的な様々な場面で使えるような算数・数学用ソフト、また、ビジュアル化等でコンピュータ表現に強力な道具としての算数・数学用ソフトなりIT環境の整備が課題で、学会としても、研究者、教師のテーマとして取り上げていきたいと思う。
  アメリカのNCTM(全米数学教師協議会)が出している学校数学のための指導のスタンダードの中には、既にテクノロジースタンダードが設けられており、算数・数学の中で、テクノロジーやITがどのように使われていくかということに関しても指針が出されており、このような点もこれからは参考にして進めていきたいと考えている。

(質疑)
  算数・数学の領域において、学校現場に入っているソフトはどういうもの多いのか。また、今後はツールに置き換わっていくのか。

  算数・数学の専門の先生がよい活用例として出すのは、数学の理解や考え方を身に付けたり、発展させたりするものだと思う。基礎・基本を身に付けるような繰り返し学習をさせるソフトは、単に技能をやるのではなく楽しみながら技能や知識を習熟させるようなソフトがかなり出ており、実際に市販ベースで出ており使用されている。それは決して軽視されるべきものではないが、授業として集団でやることが望ましいかということになると、これから先生方が臨機応変に進められていくことになるのではないか。

  数学ツールにはグラフ電卓とか関数ソフトなどがあり、グラフをかけるようになった子どもが様々なグラフをかいて、例えばY=2X2+AのところのAを変化させるときにグラフがどういうふうに変化するか、定数項が増えるとグラフが上に行くとか、Xの項の係数が変わるとグラフの開きが変わっていくとか、そういう形を発見的に理解していくためのツールとして数学ツールというのが使われている。これにより、今まで演繹的な学習が中心であったとすれば、実験・観察型、帰納的な学習を取り入れる時に重要な道具となってくる。

  アメリカのISTEは、生徒用、教師用それぞれに全教科に関してのテクノロジースタンダードを作っており、情報教育の立場から見た各教科における情報の活用のあり方を示しているが、NCTMのスタンダードは、数学の学習のために〃テクノロジーが活用されるべきかについて決めており、さらに、ウェブ上でよい授業や良い活用をビデオやJavaで紹介して授業で使えるような形の普及活動も行われている。

  現在、多くの算数・数学の先生方が魅力的と感じているITの活用というのは、いわゆる追体験型、シミュレーション等である。それは、今まで論理性を前面に打ち出したり、法則や定理を最初に出してから、例題で解いていくという授業から離れて、具体例から入って、理解して、それから定理、法則に至るような流れが指導法としてすごく魅力に感じるせいもあると思う。論理や体系性に関するITの活用もあると思うが、それが情報教育等の基礎的な力になっていく側面が強いと思う。特に小中の段階でいえば、ツールとして使うのが適当だと思う。

  総合的な学習の時間などで、統計的なものがほかの教科とかかわったときに数学の力が生きたり、数学的なアプローチをやるという例がある。また、数学史に関して調べるということは、ペーパーメディアで十分な教材もなく、様々な形で活用されている。さらに、数学の社会的価値等を学ぶ中で、例えば、ビルのエレベーターがとまる階を調べてみると、現実社会で数学の目から見て教材になりえたりする。もう一つは、問題を解いてみようというサイトがたくさんある。例えば、問題を出してその解答を求めて、皆で交換するというものもある。

  図形とか、計算ソフトとかによって数学的な考え方が伸びたとか、計算力が伸びたことはあると思うが、そういうデータとしての調査結果が学会として何か出ているのか。

  本当はそのようなデータがあって、その裏づけでいろいろ考えればいいのだが、まだ数が多くない。これからの問題として考えなければならないと思っている。

4国語(春日部市立緑中学校堀口教諭)
(説明)
  国語の中では、コンピュータを発表の道具として使う場合が非常に多いと思う。国語においては相手というのが非常に大切になる。例えば、すごく小さい子どもなのか、友達なのか、親なのか、それとも年輩の方、お年寄りの方、それによって全く同じ内容のものでも書き方が全く変わってくる。そこで、コンピュータでどこの人とでも交流ができることを生かし、小学校と交流を組み、中学生の書いたものを小学生が理解できるか、きちんとした構成にのっとって書くことができるかを、ホームページをつくったり、感想をメールで交換したりし、伝え合う力を身につけさせることに取り組んだ。
  生徒の名前が載ってしまうことがいけないというようなことがあり、結局はフロッピーで送って開いてもらい、交流をするという形となったが、子どもたちは、伝える相手がいて、小学生だということを意識して作っていった。
  送って返事が返ってくることは非常にうれしいもので、伝わったときの喜びは、コンピュータがあったからできたものでもある。フロッピーという形でしたが、非常に大きな効果があったと思う。
  また、紙芝居を作って地域の子どもに読もうということにも取組んだ。英語の本を読んで日本語に訳す形で知らないものを選んだり、自分の言葉で意味をつけていく形などをとり、最終的にはデジタルカメラで撮って、ホームページのような形をつくった。

(質疑)
  今回の教科書では、コミュニケーション能力が前面に出てきたような感じがしており、ショウ・アンド・テルやディスカッションできる力とか、メディアを使うときにコミュニケーションするための言語能力はすごく重要だと思う。国語科において、メディアを取り込んで鍛える場をうまくつくるという実践についてどう考えるのか。

  テレビ会議のようなことは、日本国語教育学会では提案がされており、テレビ会議を多くの学校が取り入れていくと予想される。

  古典のソフトで、押せば音楽が出てきて十二単を着た者がでてくるものもあるが、コンピュータで一番いいものといえば、やはり基礎・基本の徹底のために補充的なもの。例えば、ワークシートのようなものがあって、生徒がコンピュータ室に行って自分の苦手なところがすぐ取り出せて、問題を解き、そこに解答があるものが考えられる。
  また、普段、目にできないような過去のものが映像として出てくることは魅力的。文章ではわからないものが映像で出てくることが必要と思う。

  国語の時数が減ったところを、例えば、発表方法、図書の利用の仕方、あとは本の活用の仕方、情報収集の仕方というものを国語の方から離して、総合の方へ入れる形で行っている。

  国語の中では発表で伝え合うところで一番使われると思う。

5社会(大田区立出雲中学校峯岸校長)
(説明)
  社会科の学習内容は、地球の表面的な事象、日本史を中心とした通史、現実の社会的事象など、大変幅広く、また、非常に体験しにくい事象が学習の対象であり、子どもにとっては難しい内容となっており、こういった事柄を少しでも子どもに体験的に、そして実感に近い形で学習させていくためにどういう工夫ができるかということが現実に一番求められていると考える。その意味で、映像資料や、コンピュータによって取り出せる生の資料が子どもの学習を非常に助ける大きな意味を持っていると考える。
  ただ一方、社会科の学習としては、そのような体験的な学習とか、調べ学習を支えるために基本的な知識は徹底して教えていかなければならないとも考えている。
  社会科の指導におけるITの活用の効果については、体験しづらいものが身近なものとして捉えることができる。また、文献資料による調べ学習では調べる範囲も限られ、蔵書が手に入る早い者勝ちであったものが、インターネット等の導入により、どの子でも同じように資料が手に入るようになった。これはある意味では、指導要領の目指す目標に、どの子でも到達させることができると考えることができると思う。
  例えば、地理の地域の規模に応じた調査として自分の住んでいる都道府県と他の都道府県2つぐらいを挙げる学習の中で、最初に教員が手作りでパワーポイントで東京のあらましを紹介し、これを参考に子どもたちは自分の好きな都道府県の調査に取りかからさせるという授業で、コンピュータが1人1台ある中で、非常に幅広く資料を収集していた。そして、それぞれの子どもは一つしか調査しないが、最終局面の発表会によって、三十数の都道府県について学習でき、自分の調べ学習以外のこともわかった。
  こういった授業を展開する場合の留意点については、CD-ROMの価格が非常に高く、また、PCのバージョンアップ等、買うだけでない継続的な財政措置が必要だと思う。
  教科指導におけるIT活用を広め定着するための課題や工夫については教員に習熟する機会を与えるということに尽きると思う。ただ、教員室のPCは増えているが公費で措置されているのは非常に少ないと聞いており、習熟以前の問題がある。
  また、コンピュータ室は古く、教室型の配置であり、一人当たりの机の面積も小さいので、学習をそこでするという環境ではない。したがって、コンピュータを現在進めている校内LANによってほかの場所へ幅広く接続できるように端末を増やすことが、調べ学習等を進めていく上で必要。
  また、これまで社会科の学習では学校図書館を非常に多く活用していたが、学校図書館には、基本的にはコンピュータが入っていない。学校図書館に10台程度入っていれば効果は非常に違うと思う。
  地方交付税措置は、いったん交付されると基準どおり配置されるか全く分からない状況にあり、補助金措置を検討していただければと思う。さらに、教員がコンピュータに非常に習熟していないという状況を考えると、専任のスタッフの配置が必要であると思う。
  研究会でも2年ほど前に分科会を設けて発表していただいたが、こういった発表の場を多く設けていきたいと考えている。

(質疑)
  慣れていない先生にコンピュータ室に連れて行って取り組ませるのは非常に敷居が高いかと思われるが、一方で、大きい掛け図を持ってきて、黒板に地図を広げながら指導しており、もしプロジェクター等で、ノートパソコンにより地図を映すことができれば、国名の変更に対応でき、また地図の上に、温度とか、いろいろなものを重ねて映し出せるとかできる。

  その場に応じた資料づくりなどの授業は見られるし、資料更新という意味では、この機械の持つ意味というのは非常に大きなものがある。

  ハード面の整備については、コンピュータ室に行かなければ使えないという状況がある。特に新年度に入って、総合的な学習の時間や選択教科が増えてくると、コンピュータ室が去年まではがらがらだったのが、今年はラッシュという状況が見られる。

  情報化社会で収集しようと思うと、多分、社会の先生が一番タッチしやすいと思う。その反面で、現場のスキルの点で心もとないというところがあるということだが、TTや互いの共同という形で、うまくできるのではないかと前々から思っている。

  政府の構造改革事業の一環で緊急雇用対策があって、半年単位で非常勤職員を各学校で雇用できるという制度があり、IT支援の施策を入れているという例が最近増えていると聞いている。PCはやってみて分かるという部分が多いと思うので、そのときに誰かそばにいて、疑問に対しすぐに答えがでることでも非常に助かる。

  率先されている方を見ると、確かに社会科としての実績を積まれている方であることは確か。また、黒板とチョークの講義では居眠りしている子どもがいるような学校で先生がPCを使い始める形が増えてきている。教師に習熟の機会を与えてほしいし、できればコンピュータ1台を教員に与えてほしいと思う。

6英語(都立墨田川高等学校小出教諭)
(説明)
  ITは語学学習にかなり役に立つと思う。かつては既成のマスメディア等でなければ情報発信ができなかったが、簡単にホームページ等がつくれ、情報発信が学生でも可能になった。しかし、何かを発信するにはそれなりの中身を調べる必要があり、今はインターネットの検索エンジンや専門家のリンク集を利用すると、簡単に欲しい情報が手に入り、調べ学習等に利用できる。さらに、それをデータベース化すればみんながその情報を共有できる。
  今までの授業では、習ったことを単に練習するだけで、会話の練習でも鏡に向かって「おはよう」と言っても相手は返してくれなかったが、インターネットの双方向のコミュニケーションツールとしての機能を使えば反応が返ってくる。自分の学校だけでなく、ほかの学校の人たちと、それがさらに発展すると、海外の学校の人たちと一緒に何かのテーマに沿ってプロジェクト学習というものが可能となってくる。この学習の場が、今までは教室という限られた場所だったが、インターネットを使えば、時間と距離を超越するので、何も教室にとどまっている必要はない。
  英語科としてよく利用される一番の教室はLL教室であり、そこにインターネットが接続されれば、英語のさまざまな授業がそこで展開することが可能となる。そこで、映画を利用して英会話を学ぶ、そういう授業を最近よく授業に取り入れている。最近は、インターネット上で入手できる映画のせりふ、台本を用い、ある重要な部分は消してしまって、穴埋め、ディクテーション等の練習用の教材に加工して使っている。
  そのほか、緊張をほぐす発声練習の意味を込めて、時々、カラオケ等も利用している。歌詞のないメロディだけのMIDIファイルを再生しながら歌を歌ったりしている。
  PCについては、パソコン教室を離れても利用したいという教員も多く、無線LANにノート型パソコンで接続できれば、普通教室の利用が可能になり、かなりいろいろな授業で使えるのではないか。
  コンピュータ教室を使った実際にやった英語の授業の1つだが、英語のニュースの中から、生徒がおもしろそうだと思う記事を一つ選び、それを自分の英語で要約文に直す。なお、ニュースサイトにアクセスすると、単に文字情報としてのデータだけではなく、専用の学習サイトを備えたものもある。
  これからのeラーニングの時代には、授業で使うための供給用のコンテンツが大事になっくる。教科書会社の関連資料サイト、それからコンピュータ教育開発センター等の教育用画像素材集、これは非常に役に立つ。しかし、まだまだ絶対数が不足している。
  1人ではコンピュータを使った授業のアイデアに限りがあるので、いろいろな研究会、ワークショップ等に参加して情報を得て、いろいろなアイデアをもらい、そこで交流を深めながら人的ネットワークをつくっていく。

(質疑)
  インターネットなどを使い、どのような外国語能力が伸びたと感じるか。また、そういう調査かデータがこの団体にはあるか。

  例えばテストの点数が何点上がったという調査はあまりない。私が参加した研究でも、発話能力、ライティング能力は上がって、例えば限られた時間内にこういうことを発表しなさい、こういうことを書きなさいということが、こういうことをやる以前とやった後では量がかなり違う。そこから考えると、正確な英語ではないかもしれないが、発信能力が高くなったと思う。

  映像で表現すると子どもは非常に理解しやすいし、また、その映像を途中でとめたりすることが何回もできる。そういうものが用意されると英語の先生は抵抗がなくなるのではないかと思う。

(2)その他
  養護学校においては支援技術が必要であるが、その技術をサポートする人たちが不足している。普通学校でつくられたコンテンツが全盲の子どもたちには使えないという残念な事態が起こっている。アメリカやイギリスのコンテンツは、すべての障害者がアクセスできなければならないと義務付けるような方向になっている。

  あるチャネルでこういう素材があるという情報が広報から流れていると思うが教科までいっていないと思う。教材といっしょになって紹介するようなものが、本だけではなく研究会組織をうまく使って流していったらと思う。

  教科におけるスキル、それに対する現状のメディア、ソフトウェアの持っている特性を当てはめ、その目標が支援できるかというスキームがもう少しリファインし、メディアが教科の目標を手助けできるというところを明確にこの会議で枠組みができれば、具体論としての指導案、メディアの使い方が見えてくると思った。

(3)今後の日程について
  次回5月10日、ネットワーク環境の整備について意見聴取を行う旨事務局から連絡。

5.閉会

(了)


(初等中等教育局参事官)

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