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初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議

2002/04/10議事録
初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第2回)議事要旨

初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会議(第2回)議事要旨

1. 日時 平成14年4月10日(木) 15:30〜17:30
     
2. 場所 全共連ビル会議室 No.18(本館B1階)
     
3. 出席者  
 
(検討会議委員) 坂元委員,清水委員,赤堀委員,大野委員,小澤委員,川角委員,阪田委員
(専門委員) 浅見専門委員,今泉専門委員,小幡専門委員,小泉専門委員,成田(歌)専門委員,成田(雅)専門委員
(文部科学省) 加茂川審議官,小畔初等中等教育局参事官,樋口情報教育調査官,繻エ学習情報政策課長,中村教科調査官ほか関係官
(オブザーバー) 総務省情報通信政策局情報通信利用促進課,経済産業省商務情報政策局情報処理振興課,(社)教科書協会,(社)日本教育工学振興会,(財)日本視聴覚教育協会,(社)日本教材備品協会,(財)学習ソフトウェア情報研究センター
     
4. 議事内容  
(1) 「諸外国における教育の情報化の動向」についての意見聴取
  「諸外国における教育の情報化の動向」について、国立教育政策研究所教育情報研究センター清水センター長より、配付資料に基づき説明があった。
  コンピュータ1台当たりの生徒数を国別にみると、最も多いのがアメリカで、4.9人に1台。アメリカは、1997年にアメリカの大統領諮問委員会が、マルチメディア型のコンピュータで5人に1台という指針を出している。英国は、小学校8人、中・高等学校で5人に1台という形が目標になっている。
   
  非常に重要なことは、アメリカの場合、全体のコンピュータの半分以上がコンピュータ教室ではなく普通教室に入っていること。LAN接続されたものであると、日本の場合には、コンピュータ教室が86.2%で、ITを学習指導に使っていくという観点からすると、コンピュータ教室ではなくて、普通教室への導入が重要というところに関係すると思う。
   
  インターネット接続では、アメリカは2000年秋のデータで98%、カナダは1999年に報道ですべての学校がつながっている。イギリスは、昨年の8月のデータで97%で、ドイツは遅れていたが、通信料金も含めて、ドイツテレコム支援(3万5,000校あるうちの3万4,000校がドイツテレコムのサポート)で100%。また、アメリカでは77%の教室がインターネット接続されている。
   
  速度については、アメリカは高速化が進んでおり、77%が専用線。なぜこれほどまでに高速になったかというのは、1996年に議員立法で、ユニバーサルサービスの法律を変え、その項目に「すべての学校、すべての公立図書館」という文言が入ったのがきっかけで、学校並びに公立図書館のインターネット接続利用料金負担になっている(E-Rate)。E-Rateに関しては、毎年、学校区等により、テクノロジープランに基づいて申請される。これに対し、フリーランチの割合などをもとに割引率が決定される。しかし、ただ通信料金だけやっても学校は使えないということで、ケーブルやサーバー、教員研修などの校内工事等に多額の費用がかかった。
   
  接続先については、イギリスではローカルエデュケーションオーソリティー経由で有害情報などに対処するという方式と、サービスプロバイダー接続が今半々であるが、徐々にLEAにつなげていくという方法もあると言われた。アメリカでも、かなり学校区でセンターに相当するところにつないでいくという方法が出てきている。
  メールアドレスについては、イギリスでは平均的に60%の教員が個人でEメールアドレスを持っている。アメリカは77%の教員がEメールアドレスを持っているが、Eメールアドレスを持つという割合が増えることによって、教員のコンピュータを使っての指導能力が上がっていくという報告がされている。
   
  アメリカでもイギリスでもAUP(アクセプタブル・ユース・ポリシーズ)という一種のインターネット利用規則に、親も子どもとともに契約的にサインして、親が子どもに説明してサインさせるという方法をとっているところが非常に多い。AUPというあり方というのは、日本でも絶対に考えていく必要がある項目かと思う。
   
  教員のICT活用について、イギリスでは、教科の指導に自信があるという教員が4分の3、2年以内に研修を受けたというのも62.6%と非常に高い。イギリスには、ニューオポチュニティファンドという宝くじ予算で教員研修をするという制度があり、その成果が非常に大きいと思う。アメリカは、テクノロジーリテラシーファンドを持っていて、地方当局の申請によりそれで研修を行うことができる。
   
  アメリカで聞いたところでは、1人のリーダーが校内研修をしたところは大体失敗しており、先生に対する何人という比がある程度以上あって、校内で集団指導したというときに、急にうまくいくということを多く言われた。
   
  また、イギリスでは、ナショナルテストにおいて、日本の小学校高学年に相当するKS2(キーステージ2)でレベル4以上の成績を取った生徒の割合を、先生が指導によくITを活用している学校と活用していない学校とで比べると、25ポイントの差がある。整備状況よりも、先生がどれくらいICTを使っていい教育をやっているかどうかということが成績に関係しているというデータを示している。また、KS2では、先生が指導にコンピュータとかインターネットをうまく使うことによって学力向上につながるということを示しているが、中学校レベルになると、子どもたちのICTスキルが高いか低いかということによって成績が変わるというデータが示されている。すなわち、基礎、基本にかかわる学習指導に関して先生がうまく使って定着が図れる。それと並行して情報教育の立場から子どもたちのICTを使うスキル、主体的に学習していくというところで成績が向上していくという形の解釈をされている。
   
  ニューヨーク教育委員会には、ヘルプデスクとして25〜6人が、あらかじめデータベース化された答えをベースに電話に対応している。技能がなくて電話で聞いてくる人に対してのヘルプデスクのあり方が非常に重要な点かと思う。
   
  また、アメリカには、学校区単位、大きな学校にITコーディネーターがいる。イギリスはすべての学校にICTコーディネーターを置くことになっており、中・高校レベルでは、このICTコーディネーターが非常にうまくいっていると聞く。
   
  最後に、イギリスのある小学校の授業風景を紹介するが、そこでは、電子ホワイトボードを黒板と全く同じように使いながら、必要に応じて過去に書いたものをもう一度映し出したりしており、コンピュータを使っているイメージは全然ない。
   
  情報モラルに関して、この9月からシチズンシップという教科を必修でつくり、この中で情報モラルも扱っている。

(2) 教科の指導におけるITの活用と効果・留意点などについての討議
  子どもたちが情報を取ってくるというところにあまり力点を置き過ぎると隘路に入る。普通の先生方でもできるように便利なプレゼンテーションの道具をどのように授業の中で使ったらいいのかというモデルケースがなかなか伝わっていない。
   
  調べ学習についてはインターネットと書籍、図書との関連が非常に大事になってくる。また、テレビ会議システムなどを使い他校と交流をすると、ほかの学校との相互評価が可能になり、自分の学校だけではない見方があることが分かる。
   
  ワークシートや副読本などとのパッケージ化は非常に効果的。ワークシートを自分なりに改良しながら授業に生かし、それを先生方同士がLANが組まれる中でデータベース化して共有できたら、非常にいいと感じた。しかし、共有は先生方には非常に難しい。教員の意識改革がこれから必要になってくるのではないかと感じる。
   
  公開したがらない理由を聞いてみたところ、自分の教室の生徒のために作ったので、生徒に特化したつくりとなっていることから、公開したときに、それを他の先生に出すのは適切ではないのではないかというような意見もあった。
   
  特別支援教育でのソフトは個々人用であるが、ノウハウや上手なソフトの作り方などは応用が効くことはあり得ると思う。自分の生徒のために作ったという以外にも何か理由があるのではないかと思うが、そこがクリアできると、先生方が作った知的財産がみんなに使えるようになる。先生方が、自分自身のクラスの中で作り上げてきた知的なノウハウ、財産というものを皆で共有するというのは非常に大事だと思う。そこに抵抗がもしあると、随分な損失になると思う。
   
  例えばレッスンプランは、アメリカでもイギリスでも、普通の先生が積極的につくってお互いに共有しようということがあるが、それが日本では簡単ではない。
   
  研究紀要などで出している指導案などを収録したりするが、指導案もやはり著作物なので、使えるかどうかいろいろ考えブレーキになる。先生は、あの人がこんなことをやっているから私はこうしようと思うと考えられるが、簡単に活用できる仕掛けとして、指導案やパッケージ化された教材、ワークシートをばらばらにして使っていいというように工夫をすれば、使ってもらえるようになるのかもしれない。
   
  共有化が難しい原因として、著作権の問題があると思う。例えば指導案の内容を見たとき、小学校の先生方は、例えばアニメの主人公を使って一生懸命にいろいろな形でわかるように説明しているものもあるが、これを公開すると問題が出てくるおそれがある。本を盗用している部分や、あるいは新聞記事を使っているようなものが非常にあるので、自分のクラスではいいが、外に出すには自信がない。
  学問的に合っているのかという部分での自信のなさがある。自分のうちではいいが、全体の中で見た時にいろいろと言われるのではないか、という不安がある。
   
  顔を知っている仲間同士であれば評価されてもいいが、教科の指導案などについて、自分が作ったものが評価されることに抵抗感があると感じる。
  例えばワークシートのパッケージ化が進めば時間も有効活用ができ、ITに関するスキルの向上にも、共有などにもつながるのではないかと感じた。
   
  自分一人の満足ではなくて、ある一定の場所で満足とされた形である程度練り上げられたものを提示していくのであれば、抵抗感が少ないのではないか。
   
  複数の人の中だと遠慮するが、自らの工夫を先生方の小集団で話をして、小集団を代表して、その工夫を話すことになれば、少しは抵抗感が減るかもしれない。洗練をするとか、お互いを磨きあうというような場の設定が必要なのかもしれない。
   
  プログラムを作って提供した場合には、第三者が使うときにはマニュアル的なものが付いていないと困るとなると、アフターケアなど、作れば作るほど仕事は増えていくことになり、それで面倒になるということがある。
  また、指導案に関して、本人が気がついていない行間がコツだったりすることがあり、それを書いてから出したいと思うと忙しくて次の仕事に回ってしまうことが少なからずある。ポリッシュアップするような場面がどこかにあり、第三者の目でもう一度きれいに作り直すようなことができれば使えるようなものになる。
   
  校内で単独、あるいは2人、3人で学校現場で広めるという作業は、物理的にも精神的にも、現場では厳しいものがあると思う。1つのキーワードと考えているのはTTによるチームワークが必要であると感じる。
  スキルが高い先生方の比率は徐々に上がってはいると思うが、それが個々のスタンスで動いている。それを2人が力を合わせれば多分3倍ぐらいの力にはなるかと思うが、同じ教科でやっていると、多分それは学校の中では広がらないと思う。先生方がITの活用に関し互いの授業方法、授業デザインについて少しベーシックな部分でまとめて、教科を超えて広げていくという努力が必要ではないか。互いの教科のスタンスの違いをカバーし、インターネットの使い方、あるいはソフトウェアの使い方といった1つの授業デザインを提供すれば、それを他の教科の先生方、例えばそれはスキルの若干劣るという者も含めて使っていけるのではないかと考える。その場合、同僚という形が日本の風土には合っているのではないかと思う。
   
  イギリス、アメリカのコーディネーターは、技術者というのではなくて教育者、教育者が技術を学んだ人と感じる。技術者が教育を学んだ場合はうまくいっていないと思う。すごく印象的だったのは、カナダの学校で、校長の命令で1週間に2回コンピュータ教室で教科の指導をするということを決め、そのうちの1回は、コンピュータを使ってうまく授業できる先生が、まだ慣れていない先生と一緒に授業する。1週間に2回行ううちの1回は自分だけで行っていた。
   
  自校の場合、教育工学委員会というボランティア的委員会があり、最初は数名だった委員が今年は全体の3分の1の19名になった。この中で、新しい先生は、情報の授業のTTをするが、1年、2年とたつと、その人が授業のメインをやるようになる。こうして半分ぐらいがコーディネータ的な働きができるようになったと思う。ただ、全部ボランティア的にやるのは苦しいので、人員配置の工夫が求められる。
   
  教科の指導におけるITの活用を推進するためには指導できる教員を増やしていかなくてはならないと思う。しかし、研究発表会とか、いろいろ研究の成果などを聞いたりという経験は増えているが、ITを活用した授業を参観していない先生が意外に多くいる。授業の中でITを活用して子どもが目を輝かせて授業を受けているという姿を見れば、教科の指導にもITを活用してみようという気持ちになると思う。
  校内研修の中でもいろいろ取り組んで頂きたいが、時間が割かれて、なかなかIT活用の研修を持てないということを聞く。そこで、校内研究の中の研究発表会にコンピュータでプレゼンさせるなど、校内研究の中で情報手段を活用していくという方法をとって研修していくことをすすめている。
   
  試行的な授業として、高校1年生を使って小学校4年生に対し教えるという授業をやったことがあった。小学生が電子紙芝居を作ることを高校生がサポートをしてあげた。高校生も自分でもわかっていないとできないから、勉強になったかと思う。一方、小学生も自分たちのやりたいことが解決できることにつながった。
  教科教育においては、教科の目標、今までこんなことをやりたかったけどできなかったが、ITを使うと解決する、ということが大事。
  一番最初にやらなくてはならないのが、教員1人に1台のコンピュータを全国くまなく提供することだと思う。できれば0.5人に1台。
   
  1台につき何人という数え方がほんとうに指標になるのか。やはり利用方法や利用されている質の点で比較していかないと見えてこない気がする。
   
  日本の場合、各教室に2台といっているが、各教室に各教科での指導に使える1台、それもノート型かラップトップ的なもの、の整備を早急に進めることがいい。
   
  小学校の例では、先生方の研修のときに子どもをアシスタントにして教えるという例はかなりある。それからPTAとかお年寄りを対象に学校のコンピュータ室で講座を開くとき、子どもをアシスタントにしたりすることもある。
  コンピュータ委員会があって、委員会の5、6年生の子どもが、放課後にコンピュータ室の当番となっているが、そのときコンピュータを使えない1年生とか、2年生の子どもが来て、その子たちに使い方を教えるというような形になっている。
  CD−ROMとか、アイデア集にはすばらしい実践が載っているが、多分、使ったことのある先生しか見ようとしないのではないかと思う。例えばビデオに撮って、それを配布して、校内研修で見るという方法もある。また、詳しく知りたい人はウェブのここに指導案が載っているとか、そのようにできたらいいと思う。少々敷居が低いような、まねできるような実践をいっぱい紹介してほしい。
   
  教師がITを使わないのには、ハードウェアのスピードが遅い、ソフトがない、スキルがないといった外的なバリアのほかに、自分の教科の哲学と合わないのではないかという引っ掛かりの内的なバリアがあると論ずる論文がある。その中では、解決法として、セルフエフィカシー(自己効力感)があれば使うと書いてある。何らかのサポートがあって、そして「ああ、よかった」、「やってみたら確かにこれまでの紙と鉛筆だけとは違うスタイルというものができた」というような体験を通せば、なるほど自分はできるし、自分も授業がよくなるということでやりがいがあるということになると思う。
  それからもう1つの視点は、コミュニケーションの道具というのは、大変重要であると思う。生徒と先生との間に何か通えるものがなければ、授業も成立していない。電子メールでレポートを出させた授業を見たが、その理由を聞くと、電子メールのほうが提出率もいいし、コミュニケーションができるんだといわれ、感心した。

(3) 今後の日程について
  次回4月25日、関係団体から意見聴取を行う旨事務局から連絡。

5.閉会

(了)


(初等中等教育局参事官)

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