特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
2002/03/14
特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
障害種別の枠を超えた盲・聾・養護学校に関する作業部会(第4回)議事要旨 |
特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
障害種別の枠を超えた盲・聾・養護学校に関する作業部会(第4回)議事要旨
1.日時 平成14年3月14日(木)14:00〜17:00
2.場所 霞山会館2階会議室
3.出席者
(協力者)緒方、河端、斎藤、竹中、西條、野崎、細村、三浦、宮崎、望月、森原、山本の各氏
(文部科学省)池原特別支援教育課長、鈴木視学官、安藤企画官、古川調査官ほか関係官
(意見発表者)A養護学校三苫校長
4.議事内容
(1)事務局より意見発表者の三苫校長の紹介があった。
(2)事務局より配付資料の説明があった。
(3)事務局より資料に基づき「重複障害への教育課程の在り方と障害種別の枠を超えた盲・聾・養護学校における指導の在り方について」説明の後、フリートーキングが行われた。主な意見等は以下の通り。
○ 盲・聾・養護学校の教育課程の発想の基盤としては、障害のある子どもは一人一人個人差があり、指導の効果をあげるためには一人一人の実態に合わせて、指導の内容や方法を考えなければ効果があがらないという考え方があり、重度、重複化の傾向が高まるとともに、学習指導要領の改訂のたびに規定が複雑化していった。自立活動を主とする教育課程に疑問を感じる人もいるが、自立活動の内容は子どもの初期の発達を促すような幅広い内容であり、単に体を動かす機能訓練ではない。
△ 来年度から自立活動担当教員の定数を崩して、その分でPT(理学療法士)やOT(作業療法士)等の外部人材を特別非常勤講師として配置し、指導体制の充実を図るモデル事業を行う予定である。学校では、PT、OTの訓練を行うのではなく、あくまで自立活動の指導にPT、OTのノウハウを活かして指導の充実を図る。ある所では、すでにPTが配置されていて、そこでは、PTの持っている整形外科的な専門的ノウハウを活かして、自立活動の訓練的な指導をバックアップしたり、車いすの調整や補装具の点検を行ったり、整形外科的な部分について保護者の相談をうけたりしている。
○ 学校教育法施行規則、学習指導要領の規定には、「知的障害者を教育する養護学校においては、小中学校の教科は指導できない」「盲学校、聾学校及び肢体不自由養護学校又は病弱者を教育する養護学校においては、単一の知的障害の教育課程を編成することができない」という規定があるが、現実にはそれを行っているところもあるのではないか。
△ 現行の学習指導要領の規定上はできないが、障害種別の枠を超えた学校とする場合には、今の学習指導要領の分け方では難しくなってくる。
○ 外部人材を活用することも良いが、根本的には学校の先生が自立活動の指導を出来ることが重要。
○ 学習指導要領の「知的障害者を教育する養護学校においては、小中学校の教科は指導できない」という規定はなぜ出来たのか。
○ 知的障害養護学校に就学する子どもについては、小中学校の教育課程を実施するには十分に知的発達が進んでいないとの観点から、知的障害の特性に合わせた独自の教科を設定している。現在、盲・聾・養護学校の教育課程は障害種ごとに整備されているので、その枠を広げて考えていく必要がある。
△ 学校教育法施行規則の中で知的障害の教科を位置づけている。
○ 知的障害の特性に合わせて望ましいものを用意して、提供していることは大事なことだが、小中学校の教科の指導が出来ないということは検討する必要がある。
○ 小中学校の教員と盲・聾・養護学校の教員の交流を行って、子どもを指導する観点は同じだという感性を教員にもってほしい。
△ 都道府県によっては、盲・聾・養護学校と小中学校で人事交流を行っているし、市町村立では当然盲・聾・養護学校と小中学校で人事異動がある。
○ 重度の障害のある子どもに対して、自立活動を主とした教育課程はしつけという面からも効果がある。
○ A県では知的障害養護学校という枠の中で知的障害と肢体不自由を併せ有する子どもを受け入れているが、知的発達に遅滞が無い肢体不自由の子どもについては、肢体不自由の子どもを受け入れられる施設が整っていても、知的障害養護学校では受け入れられないため、遠くの肢体不自由養護学校に通う場合がある。その対応としては、知的障害養護学校の受け入れの幅を広げていくことと、特別な場合には地域の小中学校にも就学させるという2通りある。
○ ある障害種の子どもが近くの他の障害種の学校に行くことができるよう、教育課程を検討する必要がある。
○ 学校教育法施行規則では、「養護学校で知的障害者を教育する場合は」となっているのに、いつのまにか「知的障害者を教育する養護学校」、「肢体不自由者を教育する養護学校」という障害種ごとになっている。学校教育法の規定の仕方は、まず養護学校があって、その中に知的障害者を教育する場合もあるし、肢体不自由者を教育する場合もあり、その場合、場合によって、こういう教科を行うという規定になっている。学校教育法施行規則の規定に忠実にしたがった場合どうなるかという整理をしたほうが良い。
○ 学習指導要領では「知的障害者を教育する養護学校」という構成になっているが、「養護学校で知的障害者を教育する場合」という構成に変えれば、障害種別の枠を超えた養護学校にあてはまる。
○ 学習指導要領上で中学部の選択教科について、盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の中学部は「国語等の各教科」となっているが、知的障害者を教育する養護学校は「外国語」という位置づけになっており、学校種で分けている。
△ 学習指導要領は各学校種別で分かれているのをどうするかという問題がある。
○ ある学校の知的障害養護学校の軽度の知的障害者が在籍している職業学科では、教科で対応しているが、知的障害の教科書は少ないので、高校の教科書の一部を借りている。学習指導要領等の文言通り読めば、本来それも難しい。小中学校に準じた教育課程で対応する程度の軽度の子どもを、どこで教育するのかという課題がある。
○ A短期大学では聴覚障害の学生が50人いるが、聾学校で育ってきた学生と難聴学級等で育ってきた学生では、聾学校で育ってきた学生の方が精神的な安定性がある。難聴学級等で育ってきた学生は人間発達上、仲間が少ないという点で精神的に不安定な人が多い。聴覚障害の子どもには仲間をつくってあげることが大事である。視覚障害の子どもについては、全盲の子どもは、視覚障害ということが周囲の人も分かるので安定するが、弱視の子どもは一見分からないので、周囲に伝わりにくく、どうしても学習の遅滞や友達が出来ないということが起こりやすい。盲学校に在籍している重複障害の子どもは障害種別の枠を超えた養護学校で対応しても良いと思うが、単一障害の学校も必要である。盲・聾学校で指導を行わないと伸びない子どもの場合と、少しでも自己主張が可能で、特殊学級や通常学級で対応できる子どもの場合とがある。
○ 知的障害の教科を0歳レベルから再構成して整理する必要があるとの事だが、教科が大事なのは分かるが、幼稚園の教育要領においては、発達段階から考えて教科より領域という観点で整理されており、整合性はとれるのか。ある養護学校では、社会参加や自立が出来るようにと考えて、教育内容を教科より作業学習を中心とした領域を中心で行っているが、保護者からは教科を行ってほしいという希望がある。教科というものに対してのイメージがそれぞれの人で違うので、教科そのものの整理が必要。小中学校の教科の目標、ねらいと盲・聾・養護学校の教科の目標、ねらいは違う事を明確にする必要がある。
○ 知的障害の教科の整理だけでなく、自立活動等も含めて教員の指導の在り方を整理する必要もある。
○ 外部人材を活用する場合、非常勤で採用するより、専任で採用して、何校か学校を担当する方が良い。
(4)三苫校長より資料に基づき「自閉症教育の現状と課題、今後の展望について」説明の後、フリートーキングが行われた。主な意見等は以下のとおり。
○ 東京都にはグループホームが120カ所ほどあるが、その中で自閉症の人が多数、生活している。デンマークでは自閉症だけのグループホームがあるが、例えば自閉症の子どもだけを集めて教育をすると効果があるのか。
○ 自閉症の学校や学級をつくって、自閉症を理解した教員が指導するというのは教育効果があると思うが、自閉症児同士が集団として集まることの効果は分からない。同じ障害の子ども同士が集まることについて、聴覚障害の場合はコミュニケーションが精神的にリラックスして出来るという効果があるが、それ以外の場合は、同じ障害を集めると教育する側はしやすいが、集団としての意味には疑問がある。
○ 自閉症の特性を理解した指導者がいることが大前提である。自閉症について学校で一番の問題は子どもが混乱しながら生活することなので、一日のスケジュールが分かって活動が出来ることが大事。自閉症の子どもたち同士で対人関係が全く成立しないかというとそうではなく、だんだん落ち着いてくると、お互いを認め合うという視点がめばえてくる。安定してくると、自閉症の子どもも冗談が言えるようになってくるが、混乱しているとなかなかそこまでいかない。自閉症の子どもが一番混乱するのは、学校行事であり、学芸発表等では、最初はなかなか練習にも参加出来ないが、だんだん参加するようになる。ただ、無理矢理連れて行くのではなく、この子はこういうことが苦手だと理解して配慮することが必要。自閉症の学校や学級を実験的につくってみるのも良いかもしれない。
○ 20歳前後の頃に問題を生じる自閉症の人がいるとのことだが、学校の教育となんらかの関係があるのか。自閉症の子どもに対しては出来るだけ幼少期から教育を進める方が効果があるといわれているが、20歳前後に問題を生じる自閉症の人の場合、幼少期からの対応がなされていたのか。
○ 社会的なスキルトレーニングによって社会的参加が可能になっているが、逆にスキルトレーニングを経て、いろいろな所で不適応がおきている場合があるというデータがある。スキルトレーニングのやり方がいわゆる訓練主義で行われているとそういう場合があるのかもしれない。行動障害が起こるのは、年少の頃より年齢があがってからの方が多い。例えば、小さい頃偏食で、親に無理矢理食べさせられていた人が、大きくなって偏食は直ったが、今まで起こさなかった行動面での問題が出てきたケースがある。就学前の対応で言語等の認知の面では伸びているデータはあるが、対人関係については、無理矢理いろいろな人と会わせようとしても、最初に混乱して、行動面の障害が残ってしまう。まずは指導者と期待される関係をつくることから始めて、段階を経て人間関係を広げた方が良い。
○ 大学においても障害のある学生の支援をもっと充実すべき。
(初等中等教育局特別支援教育課)
ページの先頭へ
|