特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
2002/03/04議事録
特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第4回)議事要旨 |
特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議
小・中学校等における特別支援教育に関する作業部会(第4回)議事要旨
1.日時 平成14年3月4日(月)10:00〜13:00
2.場所 文部科学省仮設会議室 A11
3.出席者
(協力者)安彦、井上、上野、大南、上林、草野、杉山、須田、高山、長澤、本堂、山岡、吉川の各氏
(文部科学省)池原特別支援教育課長、鈴木視学官、安藤企画官、石塚調査官、柘植調査官ほか関係官
4.議事内容
(1)事務局より配付資料の説明があった。
(2)事務局より資料に基づき「ADHDや高機能等に対する支援システムについて」、吉川委員より資料に基づき「高機能自閉症の指導方法等について」説明の後、委員から質問等があった。主な質問等は以下のとおり。
○ ある軽度発達障害の研究会で、教員に高機能自閉症と思われる子供が自分の学校にどれくらいいるのか聞いたところ、数値にばらつきがあり、高い数値を出したのは、全て研修を受けている教員だった。高機能自閉症は、見る目を養っていると見えてくる。一方自閉症に関して最近良くあることは過剰診断である。自閉症の特徴は人と人との関わりの中で起きてくるものだから、一般的な診断基準だけでは分かりにくい。
○ 校長のLD、ADHD、高機能自閉症等への理解の程度によって、それらの児童生徒の存在に気が付くかどうかに大きな差が出た。中学校については特殊学級を設置していない学校では、通常の学級にいる特別な教育的支援が必要な子供に対して対応がなかなか出来ていない。
(3)事務局より高機能自閉症に対する支援状況等について説明の後、フリートーキングが行われた。主な意見は以下のとおり。
○ 高機能自閉症の子供は幼稚園、小学校、中学校で様子が違うとのことだが、発達的な変化があるのか。
○ 幼稚園と小学校の違いは、小学校に入ると集団の中で生活していく決まりがあり、その決まりを細かく指導することによって、徐々に集団に入っていくことに理解を示してくる。高機能自閉症の子供は通級指導教室に通っている場合があるが、通級で個別指導を受けることによって落ち着くケースがある。
○ 自閉症の人は、多動等の行動面の問題は改善が見られるが、感情を伝えることや相手の気持ちをくみ取ることが非常に困難であるという基本的な問題は大人になっても多かれ少なかれ持っている。学校の中で起こる、いじめや登校拒否等の問題は、対人関係の問題に起因している。こういう基本的な問題を解決していくことが必要。
○ 幼児期では積極型と受動型で著しく行動が異なる。多動性があると、積極型になりやすく、早く診断されている場合は受動型になりやすい。受動型の場合、小学校低学年ではあまり問題が無いが、積極型は集団行動が出来ない。どちらも小学校高学年を超えると、心情面の成長が見られ、他者の役割を演じることが出来るようになるが、その前後に激しいいじめの経験があると、迫害的な対人関係が固着してしまい、その後にむしろ問題行動がエスカレートする場合がある。被害的な対人関係を経験した場合、青年期以降に犯罪行為に走るケースもまれにある。
○ 子供が高学年になって変わってきているのに、教員は子供を「小学生」という一括りでしか見てないため、変化に気づいていないという場合があるのか。
○ 小学校高学年になるまでが大事で、それまでにいじめ等を激しく受けると、高学年で本来ならば社会的役割を学ぶところが、出来ないままになってしまう。小学校低学年が一番大事な時期である。小学校1,2年生では、集団教育になじみにくい子供がいるので、ある程度、個別教育で対応してから集団に入れていくのが良い。
○ 高機能自閉症等の子どもについては小学校1,2年生の頃が大事な時期であり、1,2年生の時にどう過ごすかで、3年生からかなり状態が変わってくる。
○ 障害のある子供に限ったことでは無いが、小学校低学年では高学年と違った指導体制を考える必要がある。
○ 発達障害の子どもについては、根本的な症状は一生付き合っていくものであり、1次症状の特徴は簡単に改善するものではないが、周りが理解して対応する仕組みをつくって、2次症状をうまく解決していくことが大事。ADHDの場合、薬の効く子供の場合だと、薬が効いている間の教育が成就感や自信をつくり、2次症状への抵抗力になる。また、自閉症の子供に関しては、ある程度の行動修正のプログラムが効果的である。言葉では理解する力があっても、行動にうまくつながらない子供の指導を考える必要がある。
○ 小学校中学年から高学年にかけて見られる2次的な問題として、自己イメージを踏まえ、自分を大切に思うという自尊感情の欠如がある。低学年の時の教員の対応やクラスでの受け入れ状況等によって自尊感情を持てないままだと、問題が大きくなる。1次的な症状を理解して、一般の子どもに比べて自尊感情もつことが困難な、こうした子どもに対するケアを考える必要がある。
○ 自尊感情については吃音の人も共通する部分があり、自尊感情が高い人たちと低い人たちがいる。思春期にいじめにあったり、どもってはいけないと指導されて、どもるまいとしてきた人は自尊感情が育っていない。どもっても良いと指導されて、かつサポートする人がいる環境で育った人は自尊感情が育っている。自尊感情が育ってくるのは思春期といわれているが、小学校の高学年から思春期に入る子供がいるので、小学校低学年から先を見通した指導が必要。
○ ADHDやLDの子供達は基本的に通常の子供と同じ感情の持ち方をしていると思うが、自閉症の人はそれとは異なり、例えば、昔の迫害体験がフラッシュバック(記憶の呼び戻し)するケースなどがあり、心情の在り方そのものがかなり違う人がいる。
○ 子供の良い所を伸ばしてあげることは大事なことだが、自分を支える自己制御の心を小さい頃から養うことも必要。
○ ADHDや高機能自閉症の子どもは、一般の子どもとは違った筋道を通して社会が見えており、どれだけ彼らの側から見える社会を理解し、学齢期に抱えている困難さ一つ一つを補っていけるかが重要。基本的な障害の部分を本人も周りも受け入れ、学校を一緒に生きていくための場とする必要がある。高機能自閉症の子どもには、自己への評価を高め、ありのままの自分を受け入れられるように教育的支援することが必要。
○ 自閉症の人達は感情が乏しいわけではなく、感情を表出することが出来ないのだが、周りの人達がそれを知らない為に、自閉症の人の心を受け止めてこなかった。
○ 自閉症の人に対して共感するだけでなく、お互いに共感しあえる環境をつくる必要がある。
○ 学校で問題行動を起こさないことと将来職業に就けることは違う。問題行動を起こす子どもについては周りが問題に気が付いて、問題に対してアプローチするが、逆に成績が良くて問題も起こさない子どもについては、周りがその子どもが抱えている問題に気づかないまま教育期間が過ぎ、結局大学まで出ても、社会的自立が出来ないことがある。高機能自閉症等の子どもに対しては中学校レベルから職業訓練が必要。
○ 普段はうまくいっていても、何かトラブルが起きた時の対応力が非常に弱い子どもに対して、その時に適切な支援を与えられるケアシステムが必要。こういう子どもたちに対しては受験時の配慮も必要だが、学校に入った後もカウンセリング等、必要に応じた支援が必要。
○ 最終的な目標は社会的自立することだという共通理解を、学校や保護者で認識していない人がいるが、その共通理解が図られていないと、ADHDや高機能自閉症の指導方法等を示したとしても、その場だけの対応になってしまう。
○ LD児の保護者の間でも、学校の先生と積極的に情報を交換したりする人と、学校の先生が子どもの状況を伝えても、うちの子どもは障害じゃないと拒否する人とがいる。LD、ADHDや高機能自閉症については一生涯の問題と捉えて、幼児期から学校卒業後まで連続した支援のもとに、社会的自立させる必要があるが、保護者の中には、高校卒業するまで通常の教育を受けさせることだけを考えている人もいて、気が付くと子どもは様々なことが身についていないケースがある。
○ 自閉症の子どもも目標をうまく設定して段階的な指導を行うと他の人との共同作業も出来るようになる。教師には、専門性を持ちながら感性を豊かに高めていくことが求められている。このため、各学校において教員の研修の機会の充実を図る必要がある。
○ 14年4月から教育課程が変わるが、その中核には、その子らしく、自分を伸ばしていく自己実現をサポートしていくことや人とかかわる力をどう伸ばしていくかということが重要な目的となっており、障害のある子どももない子ども含めて、今までの教科指導における知識優先の指導から変わってきている。
○ LDに対する校内委員会や専門家チームはLDだけでなく、ADHDや高機能自閉症等、通常の学級に在籍する特別な教育的支援が必要な子ども全体に対して拡充するのが良い。LDの場合は、教育側が責任を持ってその子どもの必要なニーズを判断し、それに基づいて具体的に指導を行うという、あくまで教育側が主導の対応であったが、ADHDや高機能自閉症等の場合は、明らかに医学の診断領域であるので、専門家チームにおいても、LDの場合よりADHDや高機能自閉症等の場合はさらに医師の参加の度合いを高める必要がある。
(初等中等教育局特別支援教育課)
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