審議会情報へ

教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議

1999/07/09 議事録

教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議 (第14回)議事要旨


     教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議(第14回(1日協力者会議))議事要旨


1  日  時  平成11年7月9日(金)14:45〜16:00

2  場  所  千葉県市川市立福栄小学校体育館

3  出席者
  (協力者)蓮見,安彦,天笠,伊藤,小川,小澤,染谷,橋本,堀内,山極の各氏
  (文部省)田中大臣官房審議官(教育助成局担当),片山教育助成局企画官,勝山財務課課長補佐,
               岩本初等中等教育局主任視学官,ほか関係官
  (千葉県)千葉県教育委員会栗山教育次長ほか関係職員,市川市教育委員会
               桧山学校教育部長ほか関係職員,
               市川市立小・中学校教職員(福栄小,中山小,行徳小,妙典小,福栄中,妙典中)

4  議    事

  千葉県市川市立福栄中学校及び福栄小学校でティームティーチングの授業参観をした後,市川市立小・中学校教職員から「教職員配置の在り方,学級規模及び学習集団の在り方   等」について意見を聴取した。
  (○は協力者,△は事務局,◇は小・中学校教職員の発言)

(1)指導方法の多様化と新しい教育課程に対応する教職員配置の在り方について

○  第6次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画では,ティームティーチングあるいは選択履修幅の拡大対応ということで教員の加配が行われている。このティームティーチングについて,学校ではどのように評価しているか。
また,新しい教育課程での総合的な学習の時間をはじめとして,新学習指導要領の中で,どのような指導方法,教職員の協力関係,教職員配置が良いと考えるか。

◇  現在の中学校に来た2年目にティームティーチングの専門要員をしたが,最初は本当に学校でこのようなことができるのかというのが正直なところだった。
  そこで,教科部会で半年ぐらい考え,いろんな方法について話し合ってからスタートした。その時は,1年間で1人の教員が1年生から3年生までの全部のクラスで授業ができるということは,非常におもしろいことだという思いがあった。
  しかし,中学校の教員の場合,それぞれ独自の世界で今までやってきているので,すごく抵抗があるのではないかと思い,個人的にはすごく悩んだが,一度始めてみるとなかなか面白いということに気がついた。
  一つは,1人ではできないようなことが,2人でやると子どもへの影響がかなりプラス面に働くということである。特に今日の授業のような調べ学習では,1人ではとてもできず,2人,3人と加わってもらい初めて可能になる。今日の授業は調べる段階だったが,発表の段階になるとリハーサルなどが入ってくるため,そういう時に2人,3人と加わってもらうと本当に助かる。
  二つ目は,一つの授業を作るのに2人以上の教員が共同作業し,お互いの持っている能力や資料等をフランクに出し合い話し合った上で授業に臨むため,今までよりもレベルアップした授業ができるということである。それがだんだん広がり,教科部会のメンバー5人が全校の社会科を見るという姿勢ができてくる。それはすごく大きいことではないかという気がする。
  しかし,問題点もある。一つは人間関係であり,うまくいく時はすごくスムーズに行く。こじれるとかなり面倒で大変になる。二つ目は,調べ学習を本格的にやるとなると,機材や教材,場所などが今の予算ではできない。もっとやりたいが,とにかく予算がほしいというのが一番の願いである。

◇  現在の小学校でティームティーチングを導入した当初から3年間担当をした。
    本校では,ティームティーチングの方針として,「あくまでも子どものため」ということを基本に置いた。小学校は学級担任制であるため,そこに別の教師が入ってくるということに対して担任も多少抵抗があると思ったので,それをいかに少なくして,ティームティーチングというのは,子どものためにすごくいいんだということを分かってもらえるように心がけてきたつもりである。
それまでは課題はいつも一つ,学習順序もワンパターンということできていたので,ティームティーチングの学習形態として,一斉学習の補充というスタンダードな形,習熟度別のコース選択あるいは興味関心別というものを複数の教師で行うことによって子どもが選択できるようなことも考えた。それから,これは難しかったが,いろんな子がいるので,それにできるだけ対応できるような形を取ってきたつもりである。
  大きな成果としては,当初,子どもたちは,手を挙げるとすぐ教師が来てくれるという割合低いレベルの満足感だったが,それがだんだん自分の好きな課題を選べるとか,あるいはコースを選べるとか,自分のやりたい問題が選べるというような満足感,そういうようなものが得られるようになったことだと思う。一般的には,遅れた子のためのティームティーチングととらえがちだが,それだけではなく,現在の状況だと進んでいる子がどうしても飽きてしまう状況にあるため,そんな子に課題を出すことにより,どんどん伸びるというようなことが見られた。
  3年間のティームティーチングでは,子どもの感想からも算数が好きになった子が増えた。それから自分でも解いてみたいとか,表現してみたいという意欲も付いたと思う。算数に限らないが,本校の研究でもあった自らの意欲を追求していく,そういう力もついてきたかなと思っている。授業参観の折りには,毎回ティームティーチングを見せるようにしたので,保護者の理解も得られたと思っている。実際,感想の中にも「本当にいいシステムだ。」ということで賛同の声を聞いている。本当にありがたい組織だと思う。

◇  総合学習がこれから入ってくることを考えても,その基本が子どもの願いとか思いに応じた整理や評価をこちらがしてあげられる,そういう意味で考えるとティームティーチングの有効性というのがかなり高いと思う。また,今子どもがこうしたいことを今のタイミングで先生に支援してほしい,評価してほしいといった場合に,ティームティーチングの良さが一番発揮できると思う。
  それから,いろんな子どもの多様な願いということを考えたとき,1人の先生ではなかなかそれに対応しきれない,読みとれないというときに,2人の先生がそこで話し合い,子どもがきっとこういうことを言っているんだと分かり合えて対応できるとか,複数の目でやれる良さというのも感じている。
  自分は3年生から6年生まで週2時間ずつ担当しているが,もしこれが,ティームティーチングの形に発展していけるということを考えたときに,学年1人は無理としても,低・中・高学年別の2学年に一人そういう担当の先生がいて,そこでチームを組んでいけるような形ができればすごくいいと思う。ただし,条件としては,先生方の位置付けとかがはっきりした中でそういうことができれば,これから入ってくる総合学習にも対応できるのではないかと考えている。

○  総合学習が入ってくると,教科を越えたティームティーチング,教科を越えて先生方が協力するということが必要になってくると思う。小学校の場合は,やりやすいのかなという気がするが,中学校の場合は,教科担任制の中で共同で授業を実施することは,いろいろ難しい点があるかと思うかどうか。

◇  今,中学校の社会科で調べ学習をティームティーチングにより行っているが,ティームティーチングの要員が数学で社会科には加配がされていないため,図書室の司書とティームティーチングをしている。  
  司書との連携が必要なのは,市川市は図書館のネットワークがあるため多くの図書資料を提供してもらえるが,その処理をするためには,どうしても一人だと見きれないということと,図書室の中にコンピュータが入っているため,子どもたちにインターネットで資料を取り寄せたり,あるいはCDロムの資料を使って,それを取らせるようなこともしており,とても一人では手が回らないからである。
  司書がコンピュータに詳しいので大変助かっているが,これが教科を越えて他のコンピュータに詳しい先生が授業に一緒に入ってくれると,つまり突然コンピュータが途中で止まってしまったりとか,コンピュータの資料がうまく取れなかったときにどのように変えていったらいいかとか,そういうような操作を応用的にやってくれる先生がいると,大変調べ学習もスムーズにできると思っている。そのような先生と組んでティームティーチングの授業ができたら,もっと子どもたちにコンピュータを有効活用させられるのにとか,もっとコンピュータの数を増やして多くの子どもに同時に使わせてあげることができるのにと考えている。

○  今日,参観した中学校の社会科の授業で,社会科の先生二人がティームティーチングをうまく展開されたが,社会科の先生と司書が組んでやった方がいいのか。あるいは,メディアに非常に堪能な人と社会科の先生でチームを組んでやった方がいいのか。また,別の組み方や別の展開もあり得ると思うがどのような形がいいと考えているか。

◇  今日は,2クラスで授業をする予定だったが,沢山の人が参観するということで1クラス外した。2クラスで行う場合,ティームティーチングも加わって3人で授業ができる。その他に今日の場合は,読書指導員にも応援してもらったし,空き時間の社会科の先生も来てくれた。だから1クラスを5人位でみたと思う。
  コンピュータに詳しい人や図書に詳しい人もいる。いろんな能力を持った人が加わると本当に授業の中身が濃いと思う。まして,総合的な学習の場合,情報でも福祉でも人権でも社会科が全部関係している。社会科の教師が総合的学習の中心にならざるを得ないような雰囲気があるので,今可能な限りいろんな分野を手がけて国語や理科等との連携を図ろうとしている。だから人数は多いほどいい,お金も多いほどいい。
  それから,学校のコンピュータは今1台しかインターネットが使えないが,NTTと提携して無料にしてほしい。アメリカでは,来年あたりまでに全米の90%の学校がインターネットを無料で使えるようになるという話を聞いているが,日本ではそういう動きがまだ見えないので残念だと思っている。今結構いろんな職員がインターネットを使っているが,1日1時間程度に抑えるようブレーキをかけているところであり,それを全部外してもらえれば本当に有りがたいと思う。もっともっと子どもたちが自由に検索できるようにしてもらえたらありがたいと思う。

◇  これから総合学習ということで調べ学習をする方向にあるが,調べる上では直接教科に関わることもあるが,子どもたちがどういう手段で調べたり課題を解決していくかという上においては,やはり図書室に詳しい者,なおかつ教科ということであるので,司書教諭が非常に大きな存在になっていくのではないかと思っている。
  いよいよ2002年から司書教諭が発令されるわけだが,兼任という形で動いていくようなので,小学校では担任を持っており,中学校では担任若しくは教科もあるため,ぜひ専任の形で司書教諭が配置されることを願っている。

  (2)学校現場の諸課題に対応する教職員配置の在り方について

○  いじめ,不登校,校内暴力,学級崩壊といろいろ言われているが,生徒指導に関わる教員の配置であるとか外国人子女等の日本語指導などのための教職員配置など,学校ではどのような状況で,どのような対応をしているのか。

◇  今年度から適応指導教室を担当しているが,どうやっていこうかと試行錯誤を繰り返しながらやっている。現在,適応指導教室担当の3人で授業がない時間に,今まで保健室登校をしていた子どもの授業を行っている。授業をやることがいいのかどうか分からないが,学校を休んだために勉強が遅れているので勉強したいという要望があったので,現在授業をやっている。数学と英語を週9時間ほどやっている。それから,まだ始めたばかりだが,体を動かした方が生徒の改善が見られるということだったので,1か月に1回位は体育を行おうかと思い,1回だけ生徒と一緒に卓球をやってみた。
  今どういうことをやっていいのかということも分からないが,授業以外にもまずコンタクトをとることが大事なので,3年生については進路を含めた話なども機会をみてしている。

◇  市川市は,カウンセラーが学校に配置されて5年目になり,今年度から全校配置になった。
    学校では相談室という名前ではあるが,生徒にとって学校は1日の大半を過ごす生活の場であるので,学校の中でホッとしたりとか,くつろげる場所が必要なのではないかということで,相談に来る生徒だけではなく,ちょっと身体を休めに来るとか,ちょっとカウンセラーと話しに来るとか,そういう子どもも受け入れるという方向で相談室を運営している。
  学校の相談室が,外部の相談機関とどう違うかというと,相談室は,楽しく健康に過ごしている子どもであっても受け入れることから,予防的な意味を持たせることができる。今普通に過ごしている生徒でも,いつ悩みを抱えたり傷付いたりすることがあるか分からない。そういう子どもたちと普段から顔見知りになって,受け入れていくということが,問題が起きた時に早急に対処できるのではないかと思っている。

○  市川市の場合,中学校の全校にカウンセラーを配置することに努力され,また,専門的なスクールカウンセラーということについては,文部省の方でいろんな配置の努力をしているが,人数的な制約とかお金の面で専門家を確保するということがなかなか難しい状況にある。
  その中で市川市の場合は,カウンセラーの専門家ではない市独自のゆとりの相談員というのを,小学校全校に配置しているが,学校の内部に教員以外の目を入れる,あるいはそうした空間を作るということは,いろんな面でいい実践だと思う。こうしたゆとりの相談員を学校に導入したことによって,どのような効果があったのか。また,専門家でないことによる問題は生じていないのか。

◇  本校でもゆとりの相談員を配置してもらっているが,配置する時の市川市の一番の願いは,先生以外の大人が子どもたちに関わって,「大人っていいもんだ。学校へ行くと先生じゃない大人がいて大人っていいもんだ。」という大人に対する信頼感を培ってほしいということである。それから,ゆとりの相談員は絶対に子どもの評価をしないので,あそこの部屋に行けば,あるがままの自分を受け入れてくれるという空間を作ってほしい。だから指導もしなくていいし,強制もしなくていいし,ただ受け止めてやってほしいという趣旨で,ゆとりの相談員が配置された。
  だから,ゆとりの相談員は教員ではない人の方がよい。本当の意味の一般のお母さんであったり,かつて自分も子育てをした人であったりとかそのような人の方がよいということで,教育関係出身の相談員はいないと思う。
  学校の中でどうしても自分がうまく適応できない子というのは,問題児とかではなくてどこの学級にもいる。そういう子が相談室に行って,「おばちゃん」とか「何々さん」と名字で呼んでおしゃべりをする。それがだんだん慣れてくると,そこで折り紙をしたり,ゲームをしたりする。また,そこに来ている子どもたちの間で関係ができて,相談室に行くと仲間ができていくということで,子どもたちは勉強から解放されて,でも自分を受け入れてくれるので気持ち良くなってまた学級に戻っていくというような役割を果たしている。
  相談室で話された秘密は守るということが原則になっている。ゆとりの相談員は子どもたちからいろいろ話を聞くが,これはどうしても緊急を要すると判断しない限り,担任に言わないことが約束になっている。そして,緊急を要すると判断した場合は,校長だけに話すということになっており,校長はそこでゆとりの相談員とどうしたらよいか話し合い,一番よい方法を見つけていく。それから,親の問題を話す場合もあるが,それもできるだけ親には直接的な話をしないで解決をしたり,指導したりしないで受け止めて聞いてあげて,自分を知ってくれている人がもう一人大人の中にいる,自分を分かってくれてる人がいる,という意味で子どもの心の支えになるようにしている。
   それともう一つは,問題を持った子ではないが,「そこへ行っておばちゃんと楽しく遊んだよ。いろんな遊びを教えてもらったよ。」とか,男の相談員もいるので,「おじちゃんが昔の遊びを教えてくれたよ。」とか学校に来る生活の変化の一つにもなっていると思ってる。

◇  市川市には,中学校で2校,小学校で6校にワールドクラス,外国籍の子どものためのクラスが置かれている。子どもたちは,普段はクラスに籍を置いているが,授業の時に一人ずつ来るということを本校ではやっている。
  平成8年度までは,本校にはワールドクラスはなかった。加配になる前の学校の様子というと,日本語を話せない,読み書きができない子ども達が,本校に転校してきて,発達年齢が同じだということで,いろんな学年に入っていった。通訳ボランティアの人が,週に1回日本語の指導に来ていたが,その子どもたちは,休み時間は廊下や保健室にたむろして,自分たちの会話が通じる子どもたちだけで固まっていた。その中には,50日以上の長期欠席の子どもたちもいた。それと生活文化が違うせいもあり,学校生活に馴染めなくてトラブルの多い子もいた。
3年前に加配措置がなされて,どういうふうに変わったかということを話していきたいと思う。クラスの生徒は,帰国子女ではなく全員が外国籍の子どもたちで,今までは南米が中心だったが,今年度からフィリピンとか中国とかアジアの子どもたちも入ってきて,外国籍は10人以上いるが,現在7人が通級している。子どもたちが日本語を話せるようになっても,保護者が日本語が分からないという子どもも他にいる。1対1を基本にしながら,週2時間の子,それから毎日来る子もいる。狙いとして,1)日本で困っていること,不自由なことへの手助け  2)日本語指導  3)学校行事への参加の手助け  4)日本と外国の子どもたちの文化交流の場を設ける,の4つのことを3年間取り組んできた。
  加配措置がとられている学校は少ないが,3年間やって良かったと思う点がいくつかある。それは,たむろしていた子どもたちが,学校の中での居場所が確保されたということ。いろんな問題を抱えているが,悩みの解消をしてきているのではないかということ。勉強で分からないものを持って来て,納得するまで教えてもらって,なるほどとかそうなんだという言葉が返ってくるようになったこと。ワールドクラスの担任と学級担任がチームを組んで,その子にどういう学習課題を与えたらいいかを相談しながら取り組んでいること。その子どもたちがいろんな自信を持ってきて,学習に意欲を持って取り組む子もたくさん出てきていること。文化交流の場でいろんな取り組みをしているせいもあるが,非常に自分たちの国に誇りを持って生活している。保護者との連絡もすごく大事にしており,言葉は十分に通じないが,学校との信頼関係はできてきているとこと。何よりも,3年前の子どもたちの様子とまるっきり違うということをいろんな先生方が言ってくれているが,子どもたちの表情がすごく明るくなった。それでのびのびと学校生活を送っていることもある。ちょっと残念なことは,予算の関係で,来年はワールドクラスがなくなるかもしれないということを毎年言われて,不安定な状態だが,ワールドクラスがなくなったら,この外国籍の子どもたちが抱えている問題は,学級の担任だけでは背負いきれないのではないかと思う。いつ帰国するのか,親の労働条件とかいろんな不安を訴えるが,そういう子どもたちのケアをしていくことが,大きいと思っている。
  27年間学級担任をやって,3年間ワールドクラスをやっているが,1学級の人数をもうちょっと少なくしたら,もっと子どもにかけるエネルギーも違うだろうし,子どもたちがホッとできる場,居場所をつくることの二つを両面から取り組んでいかないといけないのではないかと思っている。
  ワールドクラスを休み時間に日本人の子どもたちにも開放して,日本人と外国の子どもたちが交流ができるようにいろんなことに取り組んでいる。教室は,学担の先生よりはゆとりがあるので,学級に入らなかった子どもたちやいじめに合った子どもたちが来て,ホッとしていろんなことを訴えて帰っていく。これは,学校の中にゆとりの部屋があって,ワールドクラスがあって,保健室があって,いろんな教室に子どもたちがいて,ホッとする場をつくっている。こういうクラスが6校,7校だけではなく,いろんな外国籍の子が1人でも2人でもいたら,もっともっと作っていっていいのではないかと思っている。

  (3)学級規模及び学習集団の在り方について

○  現在40人学級という形になっているが,二つの問題があると思う。
    一つは,授業を行うのも生活指導を行うのも学級単位でという形で,今まで学級というものは非常に大きい意味があったが,学習の集団を分けて考えたらどうかという考え方も出てきている。そういう点をどうするのかということ。
    もう一つは,中教審答申の中で,もっと弾力的に学級編制をやれるようにしてはどうか,市町村で基準を作るようにしたらどうか,あるいは校長に権限を与えてはどうかということも言われているが,児童生徒の実態に合わせて学級編制を変えていくとか,あるいは教科,学習内容の違いに応じて学習集団を変えていくというような,いろんな考え方ができると思う。
    また,学級規模,学級編制の仕方,それから学級というものの意味,これらを全部含めて学級集団というものについてどう考えていくか。

◇  学級の規模については,よく分からないが,教師一人が何人を見るかではなく,子ども一人を何人で見てもらえるのか,第6次改善計画のようにティームティーチングで1人の子どもを2人,3人の先生が複数の目で見るという視点もあると思う。
    本校では,教育方針に開かれた学校の推進がある。その中にコミュニティースクールがあり,地域の教育力の活用を図っている。昨年度は30程度の授業で保護者や社会福祉施設の方の指導なども受けている。先生一人ではできないようなことを,大勢のおじいちゃん,おばあちゃんなどにみてもらったり,そういう活用の方法もあると思う。
    学級集団の中にも学習集団と生活集団があると思うので,その辺を検討していかなければならないと思う。地域の教育力の活用については,本校では大変効果を上げている。

◇  昨年度は2年生を担任し,生活科の授業でおじいちゃん,おばあちゃんから昔の伝承遊びを学ぼうということで,各クラスの家庭に協力してくれるおじいちゃん,おばあちゃんを募集したところ,15人の方が協力してくれた。子どもたちにどういう遊びを教えてくれるかは,事前に担任と何回も打ち合わせをして,折り紙,お手玉,けん玉,コマ回しといった遊びを教えてもらった。そして,子どもたちと一緒に学校の給食も食べてもらい,5時間目に子ども自身の手による感謝の会をして終わった。その後,子どもたちから「この間教えてもらったおじいちゃんと今日道で会ったよ。」,「おばあちゃんに会ったよ。」,「こんにちはしたんだ。」とか,子どもたちからそういう言葉が聞かれるようになって,子どもたちにとって学校だけが先生ではないなと感じた。地域にも何人も先生がいてもいいのではないか,いろいろな年代の先生がいていいのではないかということを非常に感じて,その時の子どもたちのいきいきとした目を思い出すことがある。
    現在5年生の担任をしているが,5年生も地域の方から学ぼうということで,先日茶道教室を開いた。地域でお茶の先生をしている人に日本の文化を教わろうということで,子どもたちが一人一人お茶碗を持って,お茶を飲んで,おいしいお菓子を食べたりした。子どもたちの感想の中に,「茶道とか日本文化とか聞くと非常に難しいものだと思っていたけれども,身近にこのような簡単な,そして忘れられたような文化があるということにびっくりした。」というものがあり,地域の教育力の活用の大切さというのを非常に感じた。

◇  本校は,本年4月1日に開校したが,各学年人数が様々で,少ない学年では41人が2クラスになって,20人と21人というような状況で,また6年生なんかは1学級24人,そして低学年は人数が多くて,90人とか80人とかいて3クラスある。
    校外指導では,法的に30人を越えると1人プラスされるとか,学習指導や学年の集団を見るときにも,学年に1人,中学校では副担とかの役割が重要になってくるが,そう意味では算数の学習なども1人いれば手厚く子どもたちに関わってあげられる。学年にも1人援助する職員がいれば,いろんな形で例えば40人の3学級であったとしても,今度は学年ティームティーチングでそこに加わることによって,集団をばらしていけるという,現在の定員を変えなくてもよりいろんな形で対応できるのではないかと職員間で話をしている。教員を1人配置すると子どもを見る目が増えてくる。そうすると,担任が見ている角度だけではなく,そこから別の角度で子どもの良さ等も捉えられるのではないかと感じている。

◇  本校の知的障害児学級は,児童数8名で,2年生から5年生まで各学年2名ずつの子どもがいる。知的障害といっても種類と発達段階は多様であり,私と加配の先生と市からの臨時職員の3名で見ているが,個人個人に応じた指導をしていくということになると,3名でも手が足りない状態になっている。特に障害児学級なので,全員が何らかの形できめ細かな配慮が必要だということで入級しており,1人1人に本当に目を向けていかなければ学級経営もできない。更に健康上配慮を要する者,介護を要する者とか,発達がまだ幼いので危険性が分からないため安全面で配慮をしていかなければならない子どももいる。また,発達がすごく幼くてほとんどマンツーマンの状態で対応していかなければならないような子どもも入級してくるケースがある。
    そういう学級で個に応じた教育を実践していくには,やはりティームティーチングというのは必要不可欠である。いろいろな障害の子どもがいて,また発達段階も多岐に渡っているため,本当に子どもの実態を把握して,その子どものためによりよい教育を実践していこうと思うと,1人の目ではなかなか子どもの実態が見えにくい。そういう意味では,複数の目で子どもを見ていくということは,1人1人の子どもたちの発達の可能性というのを更に高めていくということにつながるし,また複数教員で仕事を分担することで,精神的にも身体的にもゆとりを持って子どもたちに接することができる。
    そういうことで考えると,教員配置については,単純に学級の中の子どもの数で判断するだけではなく,実態に則した配置をぜひともお願いしたいと考えている。

  (4)  教員以外の専門的職員の配置の在り方,学校経営スタッフ等確保の方策について

○  教科を教える先生方以外に,学校栄養職員,司書,学校事務職員とかいろいろな役割の職員がいると思うが,そういう職員をこれからどういう形で配置していくのが望ましいか。もう一つは,地域教育力の活用ということで,学校の外から社会人等を招き,あるいは地域とも連携して学校教育を充実していくためには,どのような人材の確保や教職員の配置が考えられるか。  

◇  事務職員の教育活動への参加については,あまりが認められていない状況である。部活動を担当しているが,中学校の総合体育大会の生徒引率で県に旅費を請求したが,引率業務は教員の業務で事務職員には認められないため,旅費の支給は認められなかった。
    臨教審答申の中でも,事務職員や栄養職員等の専門性や能力を教育活動に活かしてほしいというようなこともあり,そういった動きが出ているが,現実としては旅費の話をしたように,事務職員には教育活動が認められていない,狭められているような状況である。教育活動には関わらない方がいい,関わっても無駄だというような形にどうしてもなってしまう。職務を広げようにもそういった制限があるため,事務職員が教育活動にもある程度関われる体制や状況を作ってもらいたいと思っている。
    本校は,23学級の大規模の中学校で,県費負担事務職員が複数配置となっている。もし事務職員が1人しか配置されていなければ,事務の仕事も結構忙しいので,とても部活動には関わっていられないだろうと思う。事務職員の複数配置の基準はあるが,そういった点で事務職員もしっかりと配置していただきたいと感じている。

◇  現在,事務職員の配置は,1校に1名あるいは2名という現状であるので,いろいろな能力を持っている者もたくさんいるが,やる気があっても十分その力を発揮できないという現状がある。市川市においても20年以上の経験者が約40%近くいるので,そういうことがとても残念に思っている。事務職員の立場だけで申し上げているわけではないが,事務職員が複数になって,充実した事務室機能が果たせるような事務室の組織が確保あるいは整備できれば,現在教員がやっている仕事を学校事務職員がやることによって,少しでも教員にゆとりが生まれてくるのではないかと思っている。そうなれば,児童生徒と接する時間も多く確保することができてくるので,そのようなことがとても重要ではないかと考えている。
    教員以外に,事務職員,養護教諭,栄養職員,用務員などたくさんいるが,これら職種の人間は常に子どもたちと向き合って,毎日学校で仕事をしている。学校は,子どもが主体であるので,それぞれ教員以外の職種の人間が,専門性を発揮することによって,学校の教育目標の達成につながるのではないかと考えている。
    今,学校事務の共同実施とかいろいろ言われているが,共同実施の件についてはいろんな問題があるし,ここでどうのこうのということはすぐには言うことができないが,共同実施をすることによってメリットというのはたくさん出てくるのではないかと思う。ここにいる人は教員の方が多いので,学校事務職員の仕事といっても本当に知っている人というのはなかなか少ないし,私たち自身も仕事をアピールしていない,主体的になっていないという部分もあると考えている。ただ,学校内で共通してできるようなものがあれば,特に認定事務とかそういうものに関しては,共同処理することで同じようなレベルを全部の学校で保つことができるのではないかと思う。そしてそのことが事務の効率化にもつながってくると思う。
    今本当に予算が少ない中で,学校事務職員の配置をもっと増やしてほしいという要望をしても,非常に無理な話だと思うので,そう意味では,共同実施ということも考える中で,学校事務職員という仕事が,学校に働く私たちの仕事ということでとらえていくことができれば,もっと大きな意味で仕事ができていくのではないかと考えている。

◇  本来は,第2番目の生徒指導上の問題の中に入るのではないかと思ったが,複数制のことがいろいろ出ているので,養護教諭の立場から話をさせてもらいたい。
    先程,ティームティーチングは,子どもたちのためにあるという話があった。複数配置の経験はないが,どこの学校でもわずか10分間の休み時間に,病人やけが人や付添人,またいろんな形で保健室には子どもたちが殺到する。そういう中で,1人1人丁寧に診てあげたいが,なかなか時間がないという現状に追われている。それから,いじめとか登校拒否とかあるいは家庭の崩壊とかそういった状況の中で,援助が必要な子どもがたくさん増えているということは事実である。その中で複数配置になることのメリットはたくさんあるが,一つだけ声を大にして言いたいことは,子どもや教師,保護者のニーズに対して十分に応えられるのではないかということである。子どもたち1人1人の訴えを十分に聞いてあげて,本当に丁寧に接してあげたい。そうすると,保健室に行ったら十分に聞いてもらえる,診てもらえるということが子どもたちにも分かり,そこからコミュニケーションができて,先程の外国籍の子どもの担当をしている先生からも話があったが,いろんな形でのコミュニケーションができ心が開けていける。そういう中で子どもの健康相談等のことも,いろんな形で保健室でできるようになると思う。特に保健室登校などの子もいて,子どもたちはいろんな問題を抱えている。
    特にもう一つお願いしたいのは,これから問題が多様化し複雑化していく中で,複数の目で子どもたちを見ることができれば,様々な見方ができて子どもたちをより良く理解していけるのではないか。養護教諭は,今大規模校だけに複数配置されているが,小規模校であっても,抱えている問題は沢山あるので,大規模校という学級数にとらわれずに複数配置をお願いしたいと思う。

◇  私は,保健主事もしているので,その立場から話をさせてもらいたい。昨年度は大規模校ということで,2人の保健の先生がいた。しかし,今年度は学校が分離して児童数が減ったため,保健の先生が1人になり非常に違いを感じている。保健の先生が病院に行った後,出張に行った後や宿泊学習等の引率でいなくなった後,残った教員は専門的な知識がなく,本当に困ってこんなに違うんだということを実感した。ぜひ,大規模校だけではなく,小さな学校にも2人の保健の先生がいたら,いろんなことがもっともっと子どもたちにいくんじゃないかという気がする。2人必要だということを訴えたいと思う。

◇  校長としては,学校の実態に応じて加配をしてもらえると非常にありがたい。ティームティーチングの話があったが,学校の教員が必要と思った場合,意識が高かった場合,このティームティーチングの効果というのは,2倍にも3倍にもなるし,また,教科が違った組み合わせもいろいろできる。また,不適応とか外国籍とかカウンセラーとかそういったスタッフは,学校によって抱える問題が違うので,スタッフの加配は学校の実状に応じた,いわゆる特色ある学校づくりを学校長は目指しているので,それに応じたスタッフを配置してもらえたらありがたいと思う。

◇  今の時代は子どもたちが大変多様化していると言われており,一つの価値観だけで子どもたちを指導しようとしても,そこからはみ出る子どもたちがいるから問題が起きるのだということは多く語られている。そういう子どもたちを育てていくときに,学校にはどんな人間が必要であるかという視点で,今日は話を聞かせてもらった。
    学級の人数を何人にするかという考えだけでは,もう今は子どもは育てられないと思っている。今までは,教師が何人の子どもを指導すれば教育効果が上がるかという,教師側からの指導効果という点でのみ子どもを見てきたように思うが,もう一つの視点を持たなければならないと思っている。それは,子どもにとって何人の先生が学校にいるかという視点だと思う。逆の視点で,自分に関わってくれる先生,自分を理解してくれる先生,自分を伸ばしてくれる先生が,自分の持っている個性や,それから良い面や悪い面も両方を受けとめてくれる様々な人がいて,子どもは育つのだと思っているので,子どもにとって教員は何人いるかという視点で,学級の人数にしても学校に誰を配置することが子どもにとってより良い育ちになるかという視点を持ってもらえたら,大変ありがたいと思う。
    そして,学校の中で校長が裁量を持って,自分の学校の特色を出せるような,画一的ではない配置をしてもらえたら,今求められている学校の創造性というものを発揮することができると思う。ぜひその視点でよろしくお願いしたいと思う。

5  次回の日程等
    次回(第15回)は,平成11年7月23日(金)午後1時から,国立教育会館203特別会議室において開催される旨事務局から説明があった。

(教育助成局財務課)

ページの先頭へ