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教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議

1999/06/21 議事録

教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議 (第13回)議事要旨


 教職員配置の在り方等に関する調査研究協力者会議(第13回)議事要旨


1  日    時 平成11年6月21日(月)13:00〜15:00

2  場    所 文部省3階  3A会議室

3  出席者
(協力者) 蓮見,中島,安彦,天笠,石原,伊藤,小澤,高浦,永井,橋本,堀内,山極の各氏
(文部省) 御手洗教育助成局長,加茂川財務課長,大槻教育助成局企画官,勝山財務課課長補佐,
              岩本初等中等教育局主任視学官,徳久初等中等教育局企画官,ほか関係官

4 議  事

(1)事務局から配布資料の説明が行われた。

(2)平成11年2月に実施された諸外国調査等を基にアメリカ,イギリス,ドイツ,フランスにおける学級編制及び教職員配置に関して,現地に赴いた協力者等からの調査の報告が行われ,その後,質疑応答が行われた。
        (○は協力者,△は事務局の発言)

(報告)
○  アメリカ合衆国における調査だが,連邦政府の教育庁を訪問し,それからメリーランド州の教育省及び関係のハイスクール,マグネットスクール,テネシー州の小学校を視察した。その後,ニューヨーク州の学校及び関係の機関等を訪問している。
  それぞれの州において学級編制の標準または基準は異なり,州政府からもそういう説明を受けた。各学校に行ってそれがどう結びついているのか見たかったが,1回の調査だけではとても掴めるような状況ではなかった。承知のように統計的な資料等は既に出されており,全体的な状況等については統計的な資料に委ねるということにならざるを得ない。視察した学校が果たして,どれほどアメリカを象徴しているのかということについては皆さんの判断に委ねたり,あるいは他のデータ等との突き合わせが必要かと思う。
  まず,小中高等学校ともやはり学習集団の規模の多様さ,あるいは柔軟さがみられ,比較的小さな規模の学級集団,学習集団が存在していた。それは,特に中等段階のマグネットスクールやハイスクールにおいて,教科の内容など教科に応じて学習集団を作り,その上でいわゆる小規模集団を編制しているところが一つの特徴であるように思われる。日本の学校と比較すると弾力性において違いがある。規模を比較して多い少ないということもさることながら,授業の目的に応じて柔軟に編制するという弾力性が学校内外に取り巻いているということが,印象的であった。
  もう一つは,スタッフの多様さと言っていいと思うが,日本の場合は学級担任と養護教諭にあとわずか数名ということになると思うが,訪問した小学校では,例えば,日本なら学級崩壊等の問題になったとき隣の学級担任が一緒にティームティーチングを組んでフォローするようなやり繰りをしているが,特に問題を起こしがちな子どもを学級から連れだし,特別にフォローし集団指導するスタッフがいる。また,図書室には図書館司書的な仕事を担当する者が2,3人いたりと,事務のスタッフにしても豊富な数というのが印象的であり,それだけ日本より分業が進んでいるという言い方ができるのではないか。
  ホームルームについては日本とアメリカのホームルームについての考え方の違いに行き着くように思う。日本の場合には生活集団と学習集団を一体化して,学級が存在するということに対し,アメリカの場合には出欠等の事務的な処理をするための集団として存在している。したがって,朝の出席の確認後は1日中それぞれの教科の教室に行き来している。そういう意味では日本で言うホームルームはアメリカでは,特に中等学校段階になると事実上ないように思われる。象徴的なのは,休み時間の風景が日本と全く違う。A教室からB教室へ子どもが移動する。その移動をとおして子どもたちの集団が編制され,比較的小規模の学習集団を作り上げる。ただ,そうは言っても,小学校の場合には少し学級としての集団という機能を持たせているようで例えば,朝のセレモニー的なことについてはそれぞれの学級で行われていた。
  それから,よく話題になるテネシー州におけるスタープロジェクトについては,日本の研究者もいろいろな紹介をしているし,また,それぞれの立場によっていろいろな評価がある。我々が訪問したとき,テネシー州の担当者にそのことについて聞いたが,学校の校長レベルでは,かなり効果的であるという評価をしていた。特に低学年の小規模学級においては効果的であるとのことである。しかし,州の教育担当者の立場になると,必ずしも明確なデータが出ているわけではないという少しニュアンスの違うコメントが返ってきた。そういう意味では,学校に近づけば近づくほど評価は高いが,逆に学校から離れたところでデータとしてそれを見ていくと必ずしも評価できるとは一概に言えないという立場をとる。したがって,ひとつのプロジェクトを巡っても立場によっていろいろな評価があるという印象を持った。だが,やはり子どもに近い先生がどうしても小さな規模を求めるというのは海の向こうも関係なく,そういう傾向はあるのかと感じた。

△  補足として事務局から持ち帰った文献,あるいは合衆国のホームページにある最新の情報等を説明させてもらいたい。一つにはクリントン大統領の18人学級についてだが,99年から始まる初年度分については一応予算は認められたという報道がなされているが,2年目以降はまだ成立はしていない状況である。一つには一律18人という使い方が地域の事情にマッチしていないということである。特に共和党が反対をしており,そういう使い方ではなくて学級の人数を減らすように使ってもいいし,あるいは,教育条件の整備のほうに使ってもいいというような使い方ができないかという逆の修正案が出されている。具体的には学校区の規模が非常に大きいところと小さいところがあり,平均して割ると1学区に1名も雇用できないような補助金しか出ない学区がある。その場合にどうするのかということで問題になっており,連邦の教育省ではいくつかの学区が連合して1人を雇用するという考えも出ているようだが,そんなことが果たして現実的にできるのかという未解決な問題があって,2年目以降どうなるかは予断を許さない状況にある。
  それから,テネシー州ではナイ氏の報告があるが,それを巡ってもデータはもちろん出ている。それが幼稚園の段階ではかなり顕著な改善もあったが,小学校1年から3年までについては,そのまま同じ差が維持されるだけで果たして低学年といっても全体的に同じ効果があるか分からないという有力な反論もあり,これは評価が定まっていない。
また,特に全米で言えることだが,児童生徒数が今最高になっている。ただでさえ教員の不足があるということに加えて,アメリカの景気がいいということで教職に就く志望者が減っている。そういうところで,少人数学級をやるために教員を増やさなければならないということで,免許を持っていない人が相当入ってきている。さらにそういう人たちは,都市の中心部の条件が余りよくないところに雇用され,本務の経験豊富な教員は郊外の教えやすいところに勤務しているというような状況がある。あるいは施設が間に合わないということでトレーラーハウス,日本で言うとプレハブ校舎を使ったり,さらには長期休暇を全員に一括して与えるのではなく,三つくらいに分けて,ずらしながら教員と施設を使っていくというような方法で対応していると聞いている。カリフォルニア州においても18人学級の実施にあたっては,それぞれの事情を加味して欲しいという希望も出されていると聞いている。

○  2月の6日から14日まで約一週間イギリス,ドイツを視察してきた。おもに,ドイツでは小中学校及び行政当局の州の教育省,連邦教育会議,本部の機関等で教育制度を見てきた。また,イギリスではマンチェスター市の教育委員会,小学校,それからロンドンの教育雇用省と市内の公立の小学校を見てきた。これも先程の指摘のとおり,見てきた学校は全体の中の一部であり,イギリスはこうだ,ドイツはこうだというようなことは一概には言えない。教師教育とか教師の身分あるいは,教師の雇用状況等,むしろ教育内容よりは教員がどんな形で雇用され,教員が1クラスどのくらいの規模で授業が行われているかというあたりを主に視察してきた。
ドイツにおいては,コブレンツというライン川沿いの都市を視察したが,市内には基礎学校という小学校に当たる学校が25校あって,基本的には日本のような通学区域は定められていない。しかしながら,通学区域が定められていなくても,小学校の場合は近隣の地域にある学校に通っている。およそ1クラスの人数は30人が上限である。視察した小学校では20人前後で授業を行っており,基本的には小学校の場合1クラス1人の教員という形で教員数が決まっており,教科担任制は取っていないため,学級数の数だけしか教員はいない。その他に事務員,掃除等を担当する職員がいる。具体的には小学校の場合にはやはり女性の教員が多くて,8割,9割を占めている。訪問先の校長や副校長は男性であったが,その他の20人ほどの教員はほとんど女性であり,日本と同じような状況がある。また,教員数や学校規模をどのように定めているかということについては生徒の数,あるいは一週あたりのトータルの授業時数を出し,その数を一人の教員が一週間仕事をする時間で割って,標準の教員の数を出す。コブレンツではほとんどの学校が1クラス20人前後で授業を行っており,そのときはフランス語の授業であったが,20人くらいのクラスをあえて語学のユニットということで10人,10人の2つに分け,1グループ10人で実施し,その間別の10人は体育などの授業を受け,その後教員が入れ替わり,残り10人が語学を受ける。少人数でないと語学の力はつかないとういう説明であった。
  教員の基本的な週当たりの持ち時数は小学校で25,6時間だが,フルタイムの教員であっても,勤務時間の中である程度の幅の選択ができ,その教員の子どもが小さいから15時間しか仕事をしたくないということであれば,基本給からその時間数,例えば25時間分の15時間という形の配分で給与が支給される。女性が8割,9割を占めているということで勤務条件がかなり弾力的に行われている。それから連邦政府等の教育大臣会議で聞いたところ,小学校の始業時間が7時ごろで昼には帰るという半日制で,ドイツでは8割,9割の学校が半日制であるということである。それに伴い,教員も半日勤務で給食等も実施していない。
ドイツのデュッセルドルフでのギムナジウムは教科担任制ということで日本の中学校,高校と大変近い学級編制で,30人程度の学級で授業が行われている。ギムナジウムも始業時間は早く午後は2時ぐらいには終わるようなプログラムで,午後3時を過ぎると教員は帰るということである。授業時数は日本よりかなり多いが,勤務時間数は日本に比べるとかなり少ないという印象を持った。給与の面でも給与表を見せてもらったが,日本のように毎年給与が昇級するのではなく,日本で言うと号俸が2年,3年に一度プロモートされて給与が上がるという形をとっているようである。また給与もさほど高くはないという状況があったように思われる。
  学校の運営については市当局が行うこととなっており,州や連邦に権限はあるが,学校の維持管理,運営についてはお金も口も出さないという。学校の運営については学校運営理事会のようなものがかなりのギムナジウムにあったように思う。ドイツについては教員は生徒指導を行わないため仕事の量も少ない。
続いてイギリスについてであるが,マンチェスター市の教育委員会,市の郊外にある公立の教会系の小学校を視察した。やはりイギリスでも地方の教育委員会によって学校の行財政が監督されているが,学校区すなわち通学区というものが決められていない。そうすると,一つの学校に集中するということはないかと聞いたところ,だいたい学校の規模は600人程度を想定して作られているとのことであるが,600人以上集まった場合,あるいは1クラス一応30人までというやはり政策をブレア政権になってはっきり打ち出しているということもあり,それを越えた場合にはアピール委員会に申し出てそれを検討してもらい,それが許可されれば,そこの学校に入れるということである。学校によって一応30人の上限があるが35人とかあるいは40人というところもある。あくまでも30人が一つの目安で学校が運営されているということである。
それからイギリスの小学校は日本と同じように,朝8時,9時ごろから3時ごろまで授業を実施しており,雰囲気も生活集団と学習集団がマンチェスターでは大変日本の学校に似ていた。大きく違うのは学校が公立学校と言えども,宗教が国教に定められているということもあり,教会の牧師がいたりする。日本で言うと道徳の授業のようなものなのかもしれない。教会関係者も学校の運営に大きく関与するというような部分では公立学校の性格が日本と違う。
  教員の勤務時間数は一応国として決めているということであったが,年間1265時間勤務しなければならないこととされている。教員は195日学校に登校しなさいとか,かなり具体的に定められている。給与に関しても国全体としての給与表があり,だいたい3,4年ごとに給与がプロモートされ上限がある。つまり,管理職にならなければ給与はそれ以上は上がらない。教員の給与に関しては日本とくらべるとあまり高くない。
ロンドンの郊外の小学校では,大都心の郊外ということもあり,人種も多様で,校門の前に監視カメラがあり,名前と顔を見せないと入れないという状況でアメリカのニューヨークのような雰囲気も感じた。その学校では1クラスの人数は37人と日本と同様で,ドイツ等に比べても多いというような印象があった。そのせいか,ブレア政権も国として上限を30人と定めるという政策を掲げているようであるが,努力目標という状況であると思う。そのかわりクラスの中でティームティーチングのような補助教員,あるいはボランティアの父母とか,教員を助けるサポートスタッフのような職員が見られた。一斉授業的に話をしている教員がいて,他方で字を読んだり書いたりが不得手な子どもに付き添ってサポートするような補助教員的な教員も見られたということである。
  学校数と教員の数についても小学校では,1つの学級に1人の教員というのが基本的な数で,プラス加配のような教員はほとんどいない。その代わりにサポートスタッフのような人,あるいは日本でも議論されている体育とか,音楽とか時間数の少ない科目については,市等の所属で複数の学校を兼務という形の教員が週2,3時間の体育や音楽の時間を複数の学校を受け持って,その教員の所属はその市町村の教育委員会の複数の学校に所属し,持ち回りで指導しているということである。

△  フランスの制度について簡単に説明すると,フランスの場合,非常に中央集権的な教育制度になっていて,公立学校の教員は基本的に国家公務員である。それから,日本の人口に比べてフランスの人口は約1/2になっているわけだが,面積は約1.5倍ということから日本に比べて非常に小学校の学校数が多いという結果になっている。そうなると,小学校の学級規模は,100人に満たない状況である。具体にはフランスの場合小学校は1年生から5年生までの5学年制で,5学年で1つの学級に編制して,つまり1つの学校に1つの学級といういわゆる単級学校と呼ばれる学校が非常に多い。これが小学校の学校数のおよそ1/4を占めている。こちらには,校長兼教諭が1人で授業をしている。こういうこともあり,校長は基本的に小規模校を中心にではあるが授業を持つという形態になっている。リセが日本の高校にあたるが,近年,生徒数が増えていて,40人以上の学級になっているのはおかしいということで,生徒のほうがデモをしたりしていて,現在リセの部分は35人から40人という学級編制をしている。
ティームティーチング等については,小学校部分でフランスのパリ,リヨン,マルセーユは独自に小学校の専科教員,すなわち音楽,体育,図工などの教員を派遣していて,そこでティームティーチングという形態をとっている。それからコレージュとリセを含む中等学校では,文書処理担当教員という日本で言う司書教諭と考えればよいと思われる職員がいて,一般の教員とティームティーチングを行っているという状況である。
授業日数や週当たりの授業時数はそんなに日本と変わるという状況ではない。しかしながら,教員の週当たりの持ち時間数は小学校が27時間,中学校段階のコレージュは18時間,リセは21時間ということであり,特に小学校とリセ部分が日本より持ち時間数が上まわっているという状況である。
  教職員については,監視員として,今のフランスは雇用状況のせいか,大学生を週に何時間か雇って学校に配置している。仕事内容はエスケープするような生徒の対応や,取り出し的に授業をしているというように聞いている。給与の面では日本と比べると,はるかに低い給与ということになっている。昇級もほぼ3年ごとということである。ただ,アメリカやイギリスのように上限ということはないようで,退職するまでは一応昇給するということである。


  (質疑応答)
○  4ヶ国の状況を報告してもらったが,このあと,しばらく感想,あるいは質問等をお願いしたい。

○  私も去年,10日ばかりイギリスに行き,話を聞いたが,イギリスは全国一斉テストをやっているようである。それと学校理事会については,大変力を持っているようだ。例えば,数学が弱いとなると,数学の教員をもう一人増やそうではないかということを学校理事会が決めて,今いる数学の教員よりも高い給料で雇うというようなことをしたり,コンピュータの教育体制を2人から3人体制にするとか決めるというようなことがあると聞いたがどうか。

○  イギリス訪問の時やはり,ロンドン郊外のかなり大規模の小学校であったが,結局,学校の教員の給与も含めた予算が年間決められていて,移民の生徒が多く,もっと語学の教育を充実させたいところがあると,若くて,若いということは給与が安いということであり,ベテランの教員を1人雇うよりは若い教員を多く雇って,その語学については少人数で行うということはままある。また,今指摘されたようにコンピュータに力を入れるということであれば,そのコンピュータに予算を回して,教員数は学校全体の教員の給与も含めた予算の中で理事会で決める。予算をどう使うかは校長,あるいは学校理事会で決められるということは聞いている。

○  フランスの監視員については北欧にもあるらしいが,エスケープした子どもを追っかける役割という監視員と同時に子どもたちの相談に乗るという部屋があったり,あるいは授業のアシスタントをやるというシステムがあったり,学校は年齢の近い若者がいることはとてもいいことだという評価をしている。もともとの発想が失業対策ではあるが,同時に加えて徴兵忌避したような者がある種のコミュニティーサービスとしてバイトではなく,1年ないし2年を過ごすというような資格とミックスされているような形だったように思う。

△  ドイツでも徴兵拒否の場合の勤務はあるようである。それからフランスの監視員の数はかなりいると聞いている。もちろん,先程の単級学校のようなところにはいなくて,中等学校のところにいると聞いている。それは,リセの卒業率が6割ぐらいというから,中退をさせないというか,ドロップアウトする子どもを少なくするという目的と監視員をやって将来教員になるような者を増やしていこうという両方の目的があるようである。根底には失業対策ということがあると聞いている。

○  先程,リセの40人学級の問題,あるいはクリントン大統領の18人学級政策の問題の紹介があったが,日本は今マスコミ等で,学級崩壊や子どもの指導困難性といったことから学級規模をどうするべきかといった論議がなされているが,諸外国ではそういった教育効果,指導困難性,教員の資質能力等の観点から学級規模を縮小すべきであるという論議が一般的になされているのか伺いたい。アメリカやイギリスの報道等を見てる限りステューデントバイオレンス等の問題は日本よりはるかに深刻であるのだから学級規模を縮小するといった議論があってもいいのではないか。
  また,日本とアメリカの場合,例えば教員と看護婦で給与や社会的地位を比べると日本の教員はかなり高いが,諸外国においては教員の給与や職業としてのステータスはどのように考えられているのか。

○  ドイツ,イギリスにおいては,日本のような固定的な学級集団の考え方は取られていない。学習集団に関してはかなり柔軟であり,学級に対する執着は感じられない。教員はサポーティングスタッフであり,学習の場に教員が二人いてもなんら抵抗はなく,特に学級規模縮小の論議にはなっていない。
    また,教員の給与や職業的ステータスは必ずしも高くない。

○ アメリカにおいても,指導の困難性などから学級規模を縮小するというよりも,人的な支援に力点を置いており,警備員の配置を増やすことなどに解決を求めているようである。フランスでは監視員を置いているようであるが,アメリカでは取り出し授業を行うための教員を配置している。

○  画一的な学級編制ではなく,これからはやはり学校裁量による学級編制や教職員配置が有効と考える。学校裁量の在り方についてシュミレーションするときがきたのではないか。

○  アメリカの学校におけるスタッフの教育的役割,カウンセラーの配置状況,看護婦と日本の養護教諭の違い,ドイツ,イギリスのパートタイム教員の役割について教示願いたい。また,ドイツの女性教員の比率が8割という説明があったが学校種は何か。

○  アメリカにおいては,学校のスタッフすべての人がそれぞれの立場で教育に関わっている。看護婦については日本の養護教諭とどう違うのか承知していない。

△  アメリカでは州によるが,テネシー州の例では生徒3,000人につき1人の看護婦を配置しており,配置されていない学校では事務職員が応急処置等を行っている。そのほか,ソーシャルワーカーを生徒2,000人につき1人,サイコロジストを生徒2,500人につき1人の割合で配置している。

○  ドイツの女性教員の割合は,小学校におけるものである。また,パートタイム教員は,父母のボランティアの非常勤の教員である。

△  フランスの小学校においては教員の76.6%を女性が占めていて,パートタイムの勤務者はいない。また,長期欠席の生徒の指導にカウンセラーがあたっている。

○  アメリカにおいてはカウンセラーの配置は,学校によってかなり異なっている。地域からの教育税を財源とし,さらに学校に裁量権が与えられているために学校によって異なっているものである。

○  イギリスでは一人の教員の給料では生計を立てにくく,そのため女性教員の比率が高くなっているということや,教員がアルバイトをよくするということを聞いている。

○  アメリカでは夏休み中は給料が出ないし,当たり前にアルバイトは行われている。 

○  学校裁量を考えるときにパートタイムも含めて考えると視野が広がるのではないか。教員についてもワークシェアリングの問題として,いろいろな労働条件の組み合わせをシュミレーションできないものか。

○  フランスは1学級の標準が25人となっているが,いつ頃からどうしてそうなったか聞いていないか。

△  1950年代には60人以上であったと聞いているが,25人の根拠については承知していない。 

○  フランスでは,教育上の困難を有する地域を「教育優先地域(ZEP)」として,25人を上限とした学級編制が行われている。しかし,一般的には26人から30人程度の学級が多いと聞いている。

○  日本においては,朝の学活,帰りの学活,ロングホームルームは生徒に対する指導の上でに非常に重要なものとなっている。アメリカにおけるホームルームや部活動の考え方について伺いたい。

○  アメリカではホームルーム自体が存在しないようであった。アメリカでは個人が単位であり,日本では学級が単位になっているように思われる。
  また,日本のように部活動がないということもある。

○  アメリカではAAシステムがあり,もともとホームルームはアメリカから入ってきた概念であるが,現在アメリカではあまり機能していないのではないか。  

○  国によって学校教育の目標が違う。日本の場合は,人格形成と社会の構成者の育成を学校教育の目標としている。 

○ 国による考え方の違いが,制度の違いになって現れている。そうすると,中教審答申における「欧米並みの水準」とは何を指していることなのか疑問になってくる。  

○ 多様なスタッフを学校に配置するという観点が日本では少し足りないのではないか。中教審答申では学級,あるいは学習集団の規模を指しているというよりも,様々な人材がそれぞれの立場で多様に教育に携わっていくことを指していると思われる。

○  やはり,教員一人当たりの児童・生徒数を欧米並みにということだと思う。

○  40人,30人,20人という学級の人数の内容が理解されていないのではないか。フランスでは5学年を1人の教員が担当している学級がたくさんある。日本の複式学級の解消の方向性とは全く違う。都市部と農村部,山村部の実態が大きく違う。このギャップをどう埋めていくかが問題である。
  特に政令市がきつい。学級編制については地域の濃淡があってもよいのではないか。

○  中教審答申の欧米並みの水準については,柔軟な学習集団の編制とそのための教員加配,得意分野を持つ教員あるいはコンピュータ担当,ALTなど専門家の加配,学校経営を支援するスタッフの配置などが行われれば,答申の目指す欧米並みの環境に近づくのではないか。

○  欧米の学校を訪問してみると豊かさを感じる。日本の学校はすべて抱え込み,窮屈になっている。専門家の配置や施設の広さ等が欧米の学校にゆとりと豊かさを感じさせているように思う。日本の学校にも,もっと専門的な職員の配置が必要ではないか。また,校長が学校をマネジメントする仕組みについても考えるべき。

○  学級の人数と成績の相関関係をみると,40人以上の学級の生徒の方が成績が良い。これは40人以上の学級に国立大学附属学校や私立学校が含まれるためであるが,欧米の学校でもそのような例があるのではないか。

○  そういった点については,承知していない。日本においても,現行の教職員配置の中で体裁にこだわらなければ,通学区域の弾力化などにより30人学級は実現できるのではないか。

△  クリントン大統領が施策に挙げている18人学級の実現や教員の追加雇用などには,重要な要素の一つとして学校が結果について保護者や納税者に対して説明責任を負うことという内容が盛り込まれている。
    また,メリーランド州で議会に提出されているが成立はしていないがメリーランド州の学業達成プログラムというのがある。正確に記憶していないが,1,2年のリーディングと第7学年の数学に教員を加配措置をするという内容である。これも教員を手厚く配置するための補助金の申請する前に州議会等に対し,その目的,計画書を提出して,その結果についての達成報告もあとで出すようにとのことである。

△  先程,「欧米並み」という中教審の答申が何を意味するかという指摘があったが,実は「欧米並み」という文言をどう説明するかということは,財政的に国がどこまで手当をするかということで,ある程度しっかりと何をもっとすべきだということをはっきりさせなければいけないと考えている。それを是非この委員会でお願いしたい。
  先程話のあった,40人,30人,20人の20という点が一つの指標になってくるのかと思われるが,それは決して数量だけの問題ではない。実は仔細に比べると,パートタイム勤務,あるいは持ち時間数の問題まで広げていくと,数値だけだと30の部分というのは,全国のほとんどの学校でクリアしていているのではないか。そうすると,学校や地域,あるいは教員を地域ごとに再配分したり,いまの僻地に厚く,都市に薄いという配置率の部分を手直ししていく。さらに同じ市町村の中でも,学区,通学区を自由化して,30人なら30人でそのキャパシティで全部市町村で再配置すれば,指定都市ぐらいの大きなところになれば,区を越えてもほとんど30のところに収まる可能性は十分にある。
  クラスが30人前後となる中学校,小学校の平均値の学校規模というのがあり,中学校では12クラスで31,2人,小学校では12クラスで28,9人。この程度の学校規模に収まっていると,この平均値の中にほとんど収れんしてしまう。つまりそこの12クラスの学校の平均値というのは10人くらいしか入っていないところと40人入っているところも,ほとんど平均値に収まっているということである。
  それからワークシェアリングの問題については,今の公務員制度でドイツのようなスタイルは取れないが,再雇用制度の実現が目前に来ており,毎年,小中高等学校の教員は今1万人ぐらい,あと10年もすれば,小中学校だけで2万数千人退職する。したがって,これはどうしてもワークシェアリングしなければならないであろう。新しい制度も16時間から32時間というような短時間雇用制度を取り入れている。これは,どこの公務員もそうだが,定数は増えないので,今の定数の中でワークシェアリングしなければならない。今国会で成立すると思われるので,来年にかけて各県は現場の理解を得て,そういうスタイルで平成13年度からやらざるを得ないということになっていることから,いずれにしても再雇用者とのワークシェアリングが必要になってくる。
  それから,その考え方のひとつに現行の高等学校における非常勤講師制度がある。これは一応定数を保障して,その定数の中で非常勤講師を雇うという仕組みを設けてある。いずれにしても都道府県立学校ではほとんどが実施されている。また,市町村立学校でも高等学校のように,自前で給料を負担することになっているのでこれは各県,市町村が条例を作ればできる話である。それについては財政的な問題はあるが,かなり自由になっている。そういった非常勤という形で定数を増やすということについての現場の理解の程度はどこまで進んでいるのか。ティームティーチングというような学級の固定観念を破って,指導のスタイルをもっと多様化し,学級の枠を越え,協同して,あるいは小グループ,あるいは選択別に実施するとか,さらにそれと併せて非常勤を定数の中で増やしていくという2つの課題をいきなり現場に持っていくのは大変難しいのではないかと思われる。行政としては実験的に中学校の免許外担任,それから,社会人活用という形で特別非常勤講師で入れるという補助金制度を導入した。  それからもう一つ,今年から新採対策も含めて,小学校の専科までプラスアルファで非常勤講師を入れている。したがって,欧米並みと言った場合にやはりこういった部分,少なくとも教員の部分だけは,総合的に定数政策の中に取り込まなければいけないのではないだろうか。そのようなことを例えば,中教審答申の中でも非常勤講師の国庫負担の問題について検討せよという課題としてあげられている。それから,学校間の兼務ということで中学校同士で6時間,6時間で12時間とか18時間勤務するとか,また,小学校の専科においても同様な形態で行う方法がある。そういうことをやっていきながら,実質上ワークシェアリングをする。そうすることにより,かなり教員の配置が効率的になるのではないか。そのようなことを同じ市町村,あるいは県全体で調整できればよいのではないかと考えている。
  現行の中でそのような工夫をしながら,その上で,なおかつ,数値的に何か水準的なものが考えられないかどうか。こういった議論をずっと中教審以来,検討しているところである。是非今日のご議論をもう少し総合的にまとめていただければ大変有り難い。
もう一つ,欧米並みと言った場合に国民ないし現場の直感的な話からすると,やっぱり30人学級という気持ちが大変強い。欧米では,特別何か財政的状況が悪いとか,特別な事情があるというような場合以外は,実際に授業を受けているのは30人以下というのが大半である。40人でやっている学校というのはあまり見受けられない。それは,ホームルームの仕組みがどうあるかということを越えて,実際の指導はほとんど30人でやっている。この問題にどう応えるかということについては,中教審のもう一つの弾力化のひとつの柱であり,これをうまく組み合わせるような理論を現場の方々にも理解してもらい,数値的な資料がもらえれば有り難い。

(3)次回の日程等について
    次回は7月9日(金)に小学校,中学校(東京近郊)の1校ずつ学校実地調査を行い,その後当該学校を中心とした現場の教職員の方々と意見交換を行うことが確認された。

(教育助成局財務課)

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