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総合学科の今後の在り方について
〜個性と創造の時代に応える総合学科の充実方策〜
総合学科の今後の在り方に関する調査研究協力者会議報告(要旨) 

   

I  総合学科の評価と課題

  総合学科の在校生、保護者、卒業生、教員、中学校の生徒、保護者、中学校の教員、及び大学、専門学校、企業等の関係者合計約1万人に対するアンケート調査(平成11年3月〜5月実施)の実施

  1.総合学科の評価 
  (1)創設時のねらいを達成している
    1 就職希望者にも進学希望者にも柔軟に対応することができる
    2 生徒は進路についてじっくりと考えることができる 
    3 個性を生かした主体的な学習が行われており、生徒は学ぶことの楽しさや成就感を体験し、いきいきとした学校生活を送っている
    4 生徒は「やりたい勉強」をするために総合学科を選んでおり、高等学校間の序列意識の打破に一定の役割を果たしている
    5 主体的な科目履修を通して生涯学習の基礎が培われている

  (2)今日的な課題に対応している 
    1 主体的な学習や課題解決学習を通して「生きる力」の育成に成果を挙げている
    2 自律的な学習態度や勤労観・職業観の育成を通して、学校から社会及び上級学校への円滑な移行に成果を挙げている
    3 中高一貫教育の高等学校段階を総合学科にすることにより、総合学科のねらいをより一層達成することが期待できる 

  2.総合学科の更なる充実に向けての課題    
    1 主体的かつ適切に履修科目が選択できるよう、「産業社会と人間」等の学習内容   
      ・方法の改善、ガイダンスやカウンセリングの充実が必要   
    2 豊かな人間関係の構築や学習・生活の自己管理ができるよう、ホームルーム活動の工夫やきめ細かい相談活動・体制の充実、学習や生活の自律性を高める指導が必要

II  総合学科の整備についての基本的考え方 

  1.総合学科の果たすべき役割   
      幅広い選択が可能な教育課程の編成、進路選択能力や職業観・勤労観の育成といった面で、今後とも高校改革の中核的な役割を担うことが必要。   
      さらに、今後は中高一貫教育との組合せにより中等教育全体の改革の推進の役割を担うことが必要。

  2.整備目標の早急な実現 
      「当面、総合学科を設置する公立高等学校が通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校整備される」という整備目標を達成しているのは5県、目標を満たす整備計画や整備方針を公表しているのは15都府県。   
      今後、各都道府県において、この目標が達成されるよう、概ね5年程度の期間を設定して、具体的な整備計画を定めることが望まれる。

  3.今後の整備の進め方 
    1 学校間連携を積極的に取り入れるなど、既存の学校の教育資源を有効に活用することが必要 
    2 高等学校の再編整備計画の中で総合学科の整備を位置付け、中高一貫教育校や単位制高校の整備と併せ、計画的に設置促進を図ることが必要 
    3 整備目標を達成している都道府県においても、中学生の総合学科への高い進学希望に応え、多様な興味・関心や進路希望等を有する生徒の幅広い学習ニーズに対応できるよう、今後、通学範囲の中に複数の総合学科を整備していくなど、更なる整備が必要 

III  総合学科の充実方策
  1.多様で魅力ある科目開設の推進

  (1)社会人講師の活用、地域の大学との連携等が必要 

  (2)学校間連携を積極的に推進することが必要(「学校間連携の曜日」の設定、一定期間集中的な学校間連携の講座の開設、テレビ会議システムを活用した遠隔授業の導入等) 

  2.生徒一人一人に対応した進路学習やキャリア・カウンセリングの充実

  (1)生徒の適切な科目選択のため、「産業社会と人間」の指導の充実、シラバスの作成や科目説明などのガイダンスの機能を充実することが必要

  (2)生徒一人一人の生き方や進路、履修科目の選択に関する悩みや迷いなどにきめ細かく対応するため、キャリア・カウンセリングの充実が必要

  3.きめ細かい生徒指導や学校への適応指導を充実することが必要 (2人担任制やチューター制の導入、ホームルーム活動の工夫、スクールカウンセラーの配置など)   

  4.総合学科の入学者選抜の在り方を工夫することが必要(推薦入学の拡充、面接の導入、自己申告書、パーソナル・プレゼンテーションの活用など)

  5.大学の入学者選抜においては、総合学科卒業生選抜や総合学科卒業生を対象とした推薦入学の積極的な導入や「産業社会と人間」や「課題研究」等の学習成果に対する積極的な評価を期待 

  6.総合学科と地域や産業界とのパートナーシップの確立が必要(産業界との連携組織や学校評議員制度の有効な活用など) 

  7.総合学科における教育活動や学習成果について広く情報発信し、理解促進を図ることが必要

  8.国や設置者による支援 
  (1)国においては、教職員配置の優遇策や産業教育施設・設備の整備に対する助成措置と併せて、   
    1 光ファイバー等情報通信を利用した学校間連携による新しい学習方法の研究開発   
    2 教員のキャリア・カウンセリング能力の向上のための研修プログラムの開発   
    3 「産業社会と人間」などで社会人講師が行った講演を全国の総合学科で活用できるよう衛星通信を利用して配信 などの取組が必要 

  (2)設置者においては、   
    1 多様で魅力ある科目の開設を進めるため、社会人講師の登録システムの導入や学校間連携の積極的な支援   
    2 「産業社会と人間」や「課題研究」等における指導力の養成やキャリア・カウンセリングに関する能力の向上などを図るため、研究協議会の開催、校内研修や教育センター等における研修講座の充実などの取組が必要