平成12年7月24日
幼児教育の振興に関する調査研究協力者会合
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目次 はじめに 第1 幼児教育の役割と展開 1幼児教育の中での幼稚園教育の役割 2幼児教育の総合的・体系的な展開 第2 新しい時代の幼稚園教育を実現するための条件整備 1 幼稚園の教育活動・教育環境の充実 (1)新幼稚園教育要領に対応した教育内容・方法の実践・定着 ア 新幼稚園教育要領の理解推進 イ ティーム保育の導入・実践 (2)幼稚園教員の資質向上 (3)幼稚園の施設整備の推進 (4)保護者の経済的負担の軽減 2 幼稚園における家庭・地域と連携した子育て支援の充実 (1)家庭・地域と連携した子育て支援の考え方 (2)預かり保育の推進 (3)子育て支援活動の推進 (4)異年齢・異世代交流の推進 (5)子育て支援の取組を促進するための方策 3 幼稚園と小学校の連携の推進 (1)幼稚園と小学校の連携の取組 (2)連携の取組を促進するための方策 4 幼稚園と保育所の連携の推進 (1)幼稚園と保育所の連携の取組 (2)連携の取組を促進するための方策 第3 各地域における創意工夫を生かした幼児教育の展開 おわりに (参考) 1幼児教育の振興に関する調査研究について 2幼児教育の振興に関する調査研究協力者 3幼児教育の振興に関する調査研究協力者会合の開催状況 4中央教育審議会報告「少子化と教育について」(抄) はじめに 本協力者会合においては、幼児を取り巻く状況の変化や地域・保護者のニーズの多様化等に対応するため、幼稚園教育要領の改訂、少子化対策推進基本方針の策定等最近の幼児教育に関する動向を踏まえつつ、平成12年2月以来、幼児教育の振興に関して、今後の幼稚園教育の条件整備等のための方策を中心に調査研究を進めてきた。 今般、幼稚園の教育活動・教育環境の充実、幼稚園における子育て支援の充実、幼稚園と小学校の連携、幼稚園と保育所の連携などについて、主要な論点やその基本的な方向、留意点、早急な取組が期待される事項などに関する検討の成果を中間的に取りまとめたので報告を行うこととした。 第1 幼児教育の役割と展開 1 幼児教育の中での幼稚園教育の役割 幼児期は、生涯にわたる人間形成の基礎が培われる極めて重要な時期であり、この時期の教育においては、地域社会の中で、幼稚園と家庭が十分な連携をとりながら、幼児一人一人の望ましい発達を促していくことが大切である。多くの幼児にとって、幼稚園生活は、家庭から離れて同年代の幼児と一緒に過ごす初めての集団生活であり、教師や他の幼児と生活をともにしながら感動を共有し、イメージを伝え合うなど互いに影響を及ぼし合い、様々な体験が積み重ねられていく。そのような集団生活を通じて、豊かな人間性や自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、より良く問題を解決する資質や能力、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」の基礎を培うことが幼稚園教育の役割である。 また、幼稚園教育は、小学校以降の子どもの発達を見通した上で、幼児期に育てるべきことをしっかり育てながら、その後の学校教育全体の生活や学習の基盤を培う役割も担っている。 そのため、幼稚園教育では、基本的な生活習慣、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を育てるとともに、豊かな自然体験・社会体験、道徳性の芽生えを培う活動、幼児期にふさわしい知的発達を促す体験等の一層の充実を図ることが重要となっている。 一方、少子化、核家族化、女性の社会進出の拡大などの社会の変化が幼児を取り巻く環境にも著しい影響を与えており、これに伴い、地域や保護者のニーズの多様化も進んでいる。 このような状況の中で、幼稚園教育については、幼児一人一人の発達に応じて、主体的な活動としての遊びを通して総合的な指導を行うという基本的な考え方を引き続き充実発展させることが重要である。一方、地域の実情に応じ、幼児教育相談の実施等地域の幼児教育のセンターとしての機能を活用した子育て支援活動やいわゆる預かり保育の実施等運営の弾力化を図り、社会の変化やニーズに柔軟に対応することも必要となっている。 また、幼稚園と家庭の連携については、様々な努力が行われてきている一方、家庭の教育力の低下や地域社会における家庭の孤立が指摘されるようになって久しくなってきている。このことを踏まえ、本協力者会合としては、幼児教育を組織的・体系的に行う場としての幼稚園の基本を生かす中で、「保護者自身が保護者として成長する場を提供していく」ことを、地域における幼稚園の重要な役割として提唱したい。 2 幼児教育の総合的・体系的な展開 先般、中央教育審議会報告「少子化と教育について」(平成12年4月)において、「社会全体が子どもを受け入れるふところの深さがなくなったことを重視して、それに対応するために、そもそも社会全体で子どもを育てていくのだという視点をはっきり打ち出すことが必要である」という考え方が示された。 同報告では、この観点に立って、家庭や学校を含めた地域社会の中で行われる教育活動のそれぞれの特色に応じた支援の在り方を各地域において考えることが重要であるとされている。その一環として、幼稚園にも地域の実情に応じて様々な役割を果たすことが求められている。 また、同報告では、その実現のため、幼児教育の専門施設である幼稚園を中核に、家庭、地域社会における幼児の教育をも視野に入れて、小学校との連携や保育所との連携を図りつつ、幼児教育の全体についての施策を総合的に展開することが必要であるとし、各般の施策を体系的に盛り込んだ、数年程度の期間を想定する「幼児教育振興プログラム」といったものを新たに策定・推進することが提言されている。 本協力者会合においては、この中央教育審議会の報告も踏まえ、以下のような論点を中心にこれまで調査研究を行ってきたところであり、今後も、文部省における幼児教育の振興に関する政策プログラムの策定にも十分配慮したものとして、更に検討を進めていくこととしている。 第2 新しい時代の幼稚園教育を実現するための条件整備 幼稚園においては、豊かな人間性や「生きる力」の基礎を培う役割など幼稚園教育の基本的機能を充実・発展させるとともに、地域の幼児教育のセンターとしての機能の発揮など社会の変化や多様なニーズに対応していくことが必要となっている。このような新しい時代の幼稚園教育の実現に向けて、幼稚園教育の条件整備方策を総合的・体系的に展開していくためには、各般の政策課題について、関係施策の現況等も含め多角的な捉え方が必要と考える。 例えば、幼稚園教育の根幹である教育内容・方法の面に関しては、教育課程編成の基本についての共通理解の推進、それに基づく教育活動の十全な展開とこれを支える幼稚園全体の教職員の協力体制、各教員の資質の向上等の人的環境の充実、さらには、多様な教育活動のための施設空間の確保等の物的環境の確保、幼稚園教育に係る保護者の経済的負担の軽減、といった課題がある。また、家庭における子育てとの関係においては、地域のニーズに応じた子育て支援など幼稚園の弾力的な運営への政策的な支援が求められている。同時に、幼稚園から高等学校等を見通した学校教育改革の一環としての小学校との連携・接続の充実、3歳から5歳までの幼児の約3割が入所している保育所との連携の一層の充実等は、重要な課題となっている。 これらは、全国的な見地からは、いずれも極めて重要な政策課題であり、国においては、その全体を見通しつつ施策の方向性を提示し、推進することが求められる。 同時に、地域や幼稚園によっては、当面する課題の在り方や個別施策の優先度も一様でないのが現状である。また、近年の教育改革全体の推進や政府としての少子化対策全体の進展の中で、例えば、幼稚園教育要領の改訂、幼稚園施設整備費補助制度の改善、幼稚園就園奨励費補助制度の改善、預かり保育や子育て支援に関する財政支援の充実、幼稚園と保育所の連携の促進のための文部省・厚生省共同行動計画の策定等、関連する様々な政策展開が見られることも事実である。 このため、最近着手されている施策等については、その定着・発展を図るとともに、「ティーム保育」の導入・展開、教員の資質向上のための仕組みの改善、幼稚園と小学校の総合的な連携方策の開発・推進等、従来からより具体的な取組の必要性が指摘されており今後の展開が待たれている政策課題への取組に早急に着手する必要がある。これら全体を通じて、各地域や各幼稚園が今後に向けた創意工夫ある取組を進める上で見通しを立てやすいよう、政策的環境の整備に努めることが急務である。 これらを踏まえ、以下、幼稚園の教育活動・教育環境の充実、幼稚園における家庭・地域と連携した子育て支援の充実、幼稚園と小学校の連携、幼稚園と保育所の連携の視点から、新しい時代の幼稚園教育を実現するための条件整備について提唱する。 1 幼稚園の教育活動・教育環境の充実 (1)新幼稚園教育要領に対応した教育内容・方法の実践・定着 幼稚園教育の内容・方法については、初等中等教育における教育課程全体を通じた改訂の一環として改訂された新しい幼稚園教育要領が、平成12年4月から実施に移されたところである。このため、今後、その趣旨が実践を通して定着し、実効をあげていくための努力が極めて大切な段階を迎えており、特に、以下の諸点は、当面する重要な課題となっている。 ア 新幼稚園教育要領の理解推進 幼児期の生活は、本来遊びを中心としており、遊びは幼児の活動の根幹として大切にされなければならないものである。この場合、遊びの本質は、幼児の内面からの成長の欲求に沿った形で、周囲の事物や他の人たちと多様な仕方で応答し合い、そのかかわり合いそのものを楽しみ、喜びとしていくことにある。幼児期における遊びには、試行錯誤、成功や挫折、葛藤等を含め、この時期の人間の成長や発達にとって不可欠な体験が多く含まれている。幼稚園教育では、こうした幼児期の特性を踏まえ、遊びを通して総合的に指導を行うことを重視している。 しかし、幼稚園における遊びを通しての総合的な指導の下で、幼児一人一人が発達に必要な経験を積み重ねていくためには、幼児の発達を見通し、ふさわしい発達が可能となるよう、それぞれの時期に必要な教育内容・方法を明らかにして、計画性のある指導を行うことが大切である。このため、各幼稚園における教育課程の編成が重要な意味を持つことになり、教育課程の基準の改訂に伴い、その趣旨や内容について幼稚園関係者の理解の推進を図っていくことが極めて重要である。 中でも、新幼稚園教育要領は、教師の役割を重視し、「教師は、幼児一人一人の活動の場面に応じて、様々な役割を果たし、その活動を豊かにしなければならない。」等としており、その在り方等について、研究協議会の開催等により幼稚園の園長や教員等の理解を更に深めていくことが重要である。 これと関連して、新幼稚園教育要領において重視されている、幼児期にふさわしい道徳性の芽生えを培う教育の充実を図るため、地域を指定した実践研究が行われている。これを一層推進するとともに、その成果の活用や指導の参考となる具体的な取組を示した資料を作成、提供することが求められる。 また、幼児の主体的な活動を重視した保育の展開ということについては、一部の幼稚園においては、その趣旨を誤解して、幼児の活動を放任する保育が行われることもあった。一方、幼稚園教育では遊びを幼児にとって重要な学習として重視していることについて、単に漫然と遊ばせているだけという理解不足が社会の一部にみられる。こうした誤解が幼稚園教育の条件整備の推進に必要な社会的理解を得ていく上で、マイナスの影響を及ぼすことも懸念される。幼稚園関係者においては、このことに留意して、幼稚園教育要領の趣旨の理解を深めるとともに、保護者はもとより社会に向けた情報の発信に努力し、幼稚園教育の内容方法や幼稚園の諸活動について、周知を図っていくことも重要となっている。 さらに、各幼稚園において、新幼稚園教育要領の趣旨に沿った教育を展開していく観点から、幼稚園の教職員のみならず、保護者や地域の人々との協力体制をつくることが大切である。そのためには、地域の人々を幼稚園に招待したり、幼児が地域の施設を利用したりする機会を通して、保護者や地域の人々が保育に参加する場を積極的につくりながら、広く幼稚園教育に対する理解を得るようにする必要がある。 なお、近年、少子化や地域社会の変容が進行する中で、遊び相手や集団活動を求めて低年齢から短時間の集団保育を望む保護者の要望の強まりが見られること等を考慮して、平成12年度から、制度的には従来から可能であった満3歳児に達した時点での幼稚園入園について、幼稚園就園奨励費の補助対象化や私学助成費の適用拡大の措置が行われたところである。今後、希望する満3歳児の入園については機会が十分確保されるようにする観点に立って、引き続きその充実に努めることが重要である。また、同じ満3歳児でも、この時期の発達段階から見て、家庭での経験の差や個人差によって違いが大きく、地域の実情の多様さともあいまって多様な保育展開が予想されるため、随時入園や月毎・学期毎の定期入園など様々な保育形態について、望ましい教育内容・方法、留意点等に関し、先導的、実践的な調査研究が実施されている。このことを踏まえ、新幼稚園教育要領の趣旨に沿って各幼稚園が状況に応じた保育を展開しやすいよう成果の提供・普及を図ることが重要である。 イ ティーム保育の導入・実践 今後の幼稚園教育において、新幼稚園教育要領に示された教育内容の改善に沿って、各幼稚園が実りある保育実践をしていくためには、個人の活動、グループでの活動、学級全体での活動等が多様な形態で展開されることが必要である。また、幼児の直接的・具体的生活体験を豊富なものとするため、自然体験や社会体験のために園外に出かけるなど、園内外を視野に入れた多様な保育実践も求められている。 このような中で、多くの幼児が散開したり、同時に並行し、流動性を持って行う遊びなどの諸活動を、一人の教師がすべて掌握するという考え方は実情になじみにくく、学級を基本としながらも、その枠を越えた柔軟な指導方法をとることが必要である。また、幼児はかかわる相手に応じて様々な側面を見せることから、複数の教師が協同して保育にあたり、幼児一人一人の良さや可能性がひらかれていくようにすることも大切である。すなわち、新幼稚園教育要領の趣旨を実効あるものとするためには、幼稚園全体の協力体制を高め、きめの細かい指導の工夫を図ることが必要となり、複数の教師が協同して保育にあたる「ティーム保育」の導入が不可欠なものとして求められる。 「ティーム保育」には、各幼稚園の実情に応じて、例えば、2学級以上を数名の教員が指導に当たる方法、園外保育などを学級を単位としてではなくグループごとに行う方法、複数の教員が学級の担任となる方法など、様々に考えられる。いずれの場合においても、それぞれの教師の持ち味を生かしながら「ティーム保育」を行うことにより、幼児一人一人の人とのかかわりや様々な経験を広げ、その力を発揮できるようにすることが大切である。 このような「ティーム保育」の導入や展開に当たっては、日常の保育での情報を交換し合い、多面的に見ていくことから幼児理解を深め、教師の役割を分担したり、幼児とのかかわり方を共有化したりするなど、教師間の日常的なコミュニケーションの充実を図ることが大切である。また、幼児の実態や発達に即した必要な援助や指導が効果的に進められるよう、流動的かつ柔軟性のある体制を園全体で考えていくことも大切である。 また、これに関連して、1学級の幼児数については、現在、年齢を問わず35人以下を原則とすることになっているが、一人一人の発達の段階や年齢に応じてきめの細かい保育を行う上で、この規模はあくまでも上限であることに留意することが重要である。現在、すでに各地方公共団体や各幼稚園の工夫や負担により、きめの細かい指導を行うため教員1人当たりの幼児数を減らすなどの取組が行われてきている。特に、集団的な教育の場に初めて入る3歳児については、家庭での経験の差や個人差が大きい時期であり発達の側面から一人一人への対応がとりわけ必要となることから、教員1人当たりの幼児数について更に配慮するなどの取組が行われてきたところであり、それらの取組を支援することが必要である。 これらを踏まえ、「ティーム保育」のより効果的な導入・実践のための条件整備を積極的に進める必要がある。 (2)幼稚園教員の資質向上 幼稚園教育が社会の期待に応えその成果をあげるためには、教育内容・方法の改善とともに、幼児にとって教育環境の中核ともいえる教員に優れた人材を得ることや、その資質向上を図っていくことが極めて重要である。 幼稚園教員の専門性として求められることは、幼児一人一人の内面を理解し、信頼関係を築きつつ、集団生活の中で発達に必要な経験を幼児自らが獲得していくことができるように環境を構成し援助する力である。これまでの幼稚園教育において、保育技術といえば、活動を展開するために必要な技術や集団をまとめる技術等であり、いわば実技志向が中心となるところがあった。これからの幼稚園教育においては、主体的な判断力や省察、状況に応じて保育を具体的に構想し実践する力といった幼児の内面の理解から保育を創造する実践志向が求められ、こうした観点から研修内容の充実を図ることが重要である。 さらに、幼児を取り巻く環境の変化を踏まえ、教師の様々な役割の中で、 その際には、指導者の育成となる研修と全体の資質向上となる研修の両面から条件整備方策を検討することが必要である。 園内研修については、研修内容が固定的になりがちであり、その充実を図るためには、 また、園外研修については、国公私立幼稚園の合同研修、幼稚園と保育所の合同研修、幼稚園と小学校の合同研修の実施、隣接市町村による合同研修の実施、医療・福祉関係機関との合同研修、指導主事、小学校教員、盲・ろう・養護学校教員等の助言者としての活用などが重要である。また、園外研修を受けやすくするため、研修派遣中の代替教員の確保、勤務体制の改善、研修会の休日開催などの条件整備に努めることが必要である。 さらに、教育職員養成審議会第3次答申(平成11年12月)において指摘されているとおり、幼稚園教員については、相当数の教員が行政職として採用されるなど、給与や研修等の面で教員として扱われていない状況がみられるため、その資質の維持・向上を図るためにも、各任命権者において教育職として採用することが望まれる。 (3)幼稚園の施設整備の推進 今後の幼稚園においては、新幼稚園教育要領の趣旨に沿って、個人の活動、グループでの活動、学級全体での活動等を多様な形態で展開させることが必要となるとともに、地域に開かれた幼稚園として、園舎や園庭の開放、子育て相談、子育てサークルとの交流など子育て支援活動や預かり保育の展開が求められている。 このような中で、幼稚園の園舎も時代に対応した保育内容・方法にふさわしい保育空間として、また、弾力的な幼稚園運営が円滑に行われる施設空間として構成されることが必要となっている。 このため、平成11年度には、幼稚園の園舎に対する施設整備費補助について、遊戯室の拡充や相談室、PTA室、図書室の整備が可能となるよう、国庫補助基準面積を引き上げるとともに、新たに保育室を設置して預かり保育を実施する場合には補助基準面積を加算されるなどの制度の改善が図られたところである。 今後、その趣旨が十分生かされ、実効をあげるよう、公立及び私立の幼稚園の施設整備費補助について所要の事業費を確保し、幼児教育の場としてふさわしい施設の整備・充実を図っていく必要がある。あわせて、障害のある幼児や園庭や園舎の開放により幼稚園を利用する高齢者、身体障害者等に配慮した、幼稚園施設のバリアフリー化の推進も必要である。 (4)保護者の経済的負担の軽減 幼児を通園させている保護者の年齢が相対的に若いことなどから、教育に伴う経済的負担が大きく、就園の機会を確保するため、入園料、保育料の負担の軽減策は重要であり、特に、二人以上の幼児を就園させる場合の保護者の負担の軽減について更に配慮が求められる。 このため、幼稚園に在園している幼児の入園料、保育料を保護者の所得状況に応じて減免し、その経済的負担の軽減を図るとともに、公私立幼稚園間の保護者負担の格差是正を図ることを目的として、幼稚園就園奨励費補助が実施されている。平成12年度には、二人以上の子が就園している場合の負担の軽減を図るため新たな改善措置が導入されたところである。 今後、幼稚園教育の機会の一層の確保・充実を図るためには、この幼稚園就園奨励事業について、入園料、保育料の動向等も勘案しつつ、特に、第1子に比べて第2子、第3子以降の幼児の就園に係る保護者負担の軽減を念頭に、充実に努めることが必要である。 2 幼稚園における家庭・地域と連携した子育て支援の充実 (1)家庭・地域と連携した子育て支援の考え方 幼稚園においては、適切な教育課程を編成し、幼児期にふさわしい教育を行うという基本的な観点が重要である。これとともに、子どもと触れ合う経験が乏しかったり、周囲に子育てに関する相談相手のない保護者や、仕事の都合上、日頃子どもと接する機会が少ない保護者が、もっと子育てにかかわり子どもと豊かな関係を持てるよう働きかけるという意味で、「保護者自身が保護者として成長する場を提供していく」という観点が重要になっている。 例えば、保護者が、幼稚園での保育参観や保育参加により自分の子ども以外の子どもにもかかわることを通じて、自分の子どもが普段自分に見せない一面を知る、子どもとの関係をより立体的・多面的にとらえ直すなど、次第に視野が広くなり、子どもとの関係がゆとりのある豊かなものになっていくきっかけが生まれることが期待される。また、子育ては保護者にとって大変なものであるという面ばかりがイメージされがちな傾向もみられるが、子育てはとても楽しいものでもあり、様々な深い喜びを経験できるものでもあるという面を積極的に知ってもらうことが大切である。これらを通じて、幼稚園が「親と子の育ちの場」となることが期待される。 その際、変化が著しく、生き方の価値が多様化してきている社会では、子育てにおいて父親の役割がますます重要となってきており、特に、人間形成の基礎づくりとしての幼児期においては、父親とも一緒に様々な生活体験を重ねることを通して生きる世界の楽しさや厳しさを知ることが大切である。このような観点から、これまで子育てにかかわることが少なかった男性が幼稚園の活動や子育てに積極的に参加することが重要となっている。 また、子育て支援については、社会全体で子どもを育てるという考え方に立って、地域に開かれた幼稚園として、園庭開放・余裕教室の活用、子育てサークルとの交流、地域の大人たちの活動等地域の教育力の活用、インターネットの活用などにより、地域のネットワークを生み出す子育て支援活動を展開することが重要である。 預かり保育や子育て支援活動を実施する際には、安全面や補償給付面に配慮すること、保護者が子育て自体を幼稚園に肩代わりしてやってもらえるというような感覚を持つ等安易な風潮を助長しないこと、教員の確保や教材等保育者側の負担増大に配慮すること、幼稚園教育の本質を見失わないことなどに留意することが必要である。 これらを踏まえ、幼稚園においては、幼児教育の専門施設であること、幼児を持つ保護者との交流ができること等その特質を生かした形の子育て支援に積極的に対応することが必要であり、地域の多様なニーズに対応した弾力的な運営を行うことが重要となっている。 (2)預かり保育の推進 各幼稚園においては、子育て支援の観点から、通常の教育時間の前後や長期休業期間中などに、地域の実態や保護者の要請に応じて、希望する者を対象に行う、預かり保育が広く行われるようになってきている。 預かり保育については、各幼稚園では、幼稚園の規模や対象となる人数等の実情に応じて指導体制を整備し、幼児一人一人が安心して過ごすことができるための保育内容の工夫や家庭への配慮がなされてきている。具体的には、家庭的な雰囲気のある保育室の環境づくり、地域行事への参加や異年齢との交流など預かり保育ならではの経験を取り入れた保育内容の工夫、家庭との連絡帳の作成などの取組が行われている。しかし、一部には、通常の教育時間の活動との連携・協力体制がとりにくい、日々人数が異なるので見通しを持った指導ができにくい、毎日同じような保育内容になりやすいなどの指摘もあり、適切な預かり保育を実施するための工夫を図ることが重要である。 (3)子育て支援活動の推進 近年の少子化、核家族化などの社会状況の変化が進む中で、幼児が生活している家庭や地域社会、あるいは幼児自身の生活は、大きな影響を受けており、育児に不安感を抱く保護者や近隣に相談できる友人等がいない保護者の増加などといった様々な状況が指摘されている。また、父親が子育てに参加する機会が少ないという従来からの状況は、依然として続いている。 これらを踏まえ、幼稚園については、未就園児を含め近隣の親子が気軽に遊び、触れ合い、子育てに関する経験を交流したり、悩みの相談に応じたりするなど、地域の幼児教育のセンターとして、その施設や機能を地域に開放し、積極的に子育てを支援していく役割を果たすことが期待されている。 具体的には、各幼稚園においては、家庭の要請や地域の実情に応じて創意工夫を行い、例えば、教育の専門家による子育て相談、カウンセラーによる子育てカウンセリング、子育てシンポジウム、保護者の交流のための井戸端会議、未就園児の親子登園、園庭・園舎の開放、子育てだより等子育て情報の提供、子育てサークル等の支援などの取組が行われている。今後とも、これらの子育て支援活動を一層推進することが必要となっている。 その際には、教員に対し障害やカウンセリングに関する専門的な知識を育成すること、保護者が気軽に相談できる体制や心理学や教育学等の専門家による支援体制を確立すること、保護者、特に父親の保育参観・保育参加など男性の子育てへの参加を促進することが重要である。 こうした子育て支援活動を行う際には、幼稚園が主体的な立場に立ちつつ、適切な計画性を持って行うことが重要であり、また、幼稚園の通常の教育活動と子育て支援活動の間をつなぐコーディネーター的な役割を果たす人の存在が重要となっている。 (4)異年齢・異世代交流の推進 現在の核家族では、幼児がいる家庭には中学生・高校生など年齢の離れた兄弟姉妹がいないなど、異年齢交流の機会に乏しい傾向がある。中学生・高校生等の保育体験学習など地域の異年齢の子どもとの交流は、幼児にとって貴重な体験となるばかりでなく、中学生・高校生にとっても年下の子どもと接する楽しさを実感し、子育ての喜びや大切さ、親の役割等について自ら認識を深め、考える機会などにもなる。例えば、自分が卒園した幼稚園を来訪し、幼稚園時代の自分を投影することにより、注がれた愛情の大きさを再確認した例や不登校になりがちな生徒が年下の子どもたちとのかかわりを持ち信頼を得ることによって立ち直った例もみられる。 また、幼稚園において、地域の行事に参加したり老人福祉施設を訪問するなど、高齢者や未婚の男女も含め地域の大人との触れ合いや交流を深めることは、幼児の社会体験・直接体験を豊かにするとともに、地域住民が喜びや生きがいを感じる機会を提供することにもなる。 なお、こうした交流体験を行うに当たっては、相手側と事前や事後の話し合いを行い、幼児期の発達や幼稚園の生活について十分な理解を得ることが重要である。 (5)子育て支援の取組を促進するための方策 新幼稚園教育要領においては、「教育課程に係る教育時間の終了後に行う教育活動」や「地域の幼児教育のセンターとしての役割」などが明示されており、預かり保育や種々の子育て支援活動などが明確に位置付けられたところである。近年、地域によっては支援策も講じられつつあるが、今後、保護者と地域のニーズに十分応えられるようにする観点に立って、幼稚園運営の弾力化を図り、幼稚園における地域の実情に応じた預かり保育や子育て支援活動などの子育て支援の機能を一層充実するため、以下のような方策について検討を行う必要がある。 預かり保育については、地域の実態やニーズに応じて、希望のあるすべての幼稚園で実施できるよう取り組むことが重要である。このため、私立幼稚園に対する預かり保育実施のための特別補助の充実を図るとともに、公立幼稚園の預かり保育実施のための財政基盤の強化について検討することが必要である。また、預かり保育に関してはこれまで実践研究が行われてきており、この成果を踏まえ、各幼稚園が状況に応じた保育を展開できるよう、事例集を作成することが重要である。預かり保育の実施に際しては、教育課程に基づく活動との関連、幼児の心身の負担、家庭との緊密な連携などに配慮することが必要であり、各幼稚園において適切な実施が図られるよう、預かり保育の実践面に関する参考ないしガイドライン的な資料の作成・提供を検討することが必要である。 また、子育て支援活動については、地域を指定した実践研究を更に進めていくとともに、私立幼稚園に対する子育て支援活動の推進のための特別補助の充実や公立幼稚園の子育て支援活動の推進のための財政基盤の強化を図ることが必要である。 さらに、異年齢・異世代の交流については、幼稚園を地域に開放して、高校生に子育ての喜びを共感させるとともに、幼児の様々な体験活動の充実を図るような実践研究が実施されている。この実践研究を更に進めていくとともに、地域の実情に応じて、中学生、小学生などとの交流についても配意する必要がある。 3 幼稚園と小学校の連携の推進 (1)幼稚園と小学校の連携の取組 学校教育については、中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(平成11年12月)において、初等中等教育と高等教育のそれぞれの役割を明確に示すとともに、幼児教育から高等教育までの全体を通じた連携・接続の課題が指摘されている。 このような課題に取り組む際、それぞれの学校段階の特質を踏まえ、なめらかな接続を図ることであり、幼児教育段階においては、幼稚園と小学校が連携し、幼稚園における主体的な遊びを中心とした指導から、小学校への移行を円滑にし、一貫した流れを形成することが重要となっている。それは、もとより幼稚園の年長段階において、小学校教育の先取りをすることではなく、小学校入学前までの幼児期にふさわしい教育を行い、その充実、発展として小学校教育を位置づけていくことである。また、子どもが幼稚園から小学校に入学する時に体験する緊張感など、幼稚園と小学校間のある程度の段差は子どもの成長にとって必要なことでもあるが、同時に、子ども自身がその段差を乗り越え成長していくためには、幼稚園、小学校のそれぞれの教員が共通の子ども理解をもち、互いの教育に対して理解を深めることが重要である。 しかし、実際には、幼稚園と小学校の連携・交流の機会は十分とは言えず、両者の共通理解が進んでいない状況がみられる。平成12年3月に文部省からの委嘱研究の最終報告書として取りまとめられた「学級経営をめぐる問題の現状とその対応」においても、「学級がうまく機能しない状況」のケースの一つとして、幼稚園と小学校の教員間の連携協力が不足している事例が挙げられている。 これらを踏まえ、各幼稚園・小学校間の様々な取組を通じて連携の充実が図られることが重要であり、例えば、次のような教員間の交流、幼児と児童の間の交流、保護者間の交流を進めることが考えられる。 教員間の交流については、相互理解を深めるためには、一日限りの行事的な研修ではなく、双方の教員が参加した定例会議の設定や合同校内研修の開催等、日常的な情報交換・継続的な交流が重要である。特に、幼稚園教員と小学校低学年担任は、緊密な情報交換をしながら共通理解を得ておくことが大切である。また、幼稚園において体育・音楽・図工等の小学校教員の協力を得ることも有効と考えられる。こうした取組を行うに当たっては、一方のニーズのためでなく双方の学びの場になること、担当教員のみでなく学校全体の教員の意識を高めることが重要である。 幼児と児童の間の交流については、 保護者間の交流については、幼稚園と小学校の合同での保護者会や講演会・シンポジウムの開催、幼稚園と小学校の合同行事の際の交流やPTA活動の交流などが考えられる。幼児の保護者にとって、より長い子育ての経験を持つ小学生の保護者との情報交換は子育て支援としての意義も大きい。また、小学校入学にまつわる保護者の不安感や過剰な期待を解消することにもつながり、小学校教育への理解を得ることもできる。さらに、小学生の保護者にとっては、改めて我が子の成長を実感し、親子関係をふりかえる機会となるので、双方の立場から実り多いものとなるような交流の仕方を工夫することが望まれる。 (2)連携の取組を促進するための方策 これらを踏まえ、幼稚園と小学校間の連携の充実が図られるよう、次のような関係諸施策の展開に努めることが必要である。 各地方公共団体等においては、地域の実情に応じ、市町村内の幼稚園と小学校の連絡協議会の開催や市町村内や隣接市町村の幼稚園と小学校による合同研修、都道府県内の幼稚園と小学校による合同研修の実施などにより連携の取組を促進することが重要である。 その際には、研修が、 幼稚園と小学校間の教員の人事交流や相互理解を進める観点から、幼稚園と小学校の教員免許の併有の機会を拡大することが効果的である。このためには、幼稚園と小学校の教員免許の取得に係る履修科目の取扱いの一層の弾力化等を検討することが必要である。また、現職教員の免許取得機会を拡大するため、通信制、夜間の課程、科目等履修生制度の活用等を検討することが必要である。 さらに、幼稚園教員及び小学校教員の養成については、幼稚園と小学校の双方で実習することや教員を希望する学生が日常的に学校現場を体験できるようにすることなど、特に教育実習等の在り方についても検討することが必要である。 これらを踏まえ、地域を指定した実践研究の実施や研究開発学校制度の活用を含め、幼稚園と小学校における総合的な連携方策の開発・推進を図ることが求められる。 4 幼稚園と保育所の連携の推進 (1)幼稚園と保育所の連携の取組 幼稚園と保育所は、異なる目的・役割を持つ施設であり、それぞれの制度の中で整備充実に努めてきている。一方、両施設とも就学前の幼児を対象としていること等から、文部省と厚生省は、近年、共通の協議の場等を設けつつ、 (2)連携の取組を促進するための方策 各地方公共団体等においては、地域の実情に応じ、施設の共用化等、教員と保育士の合同研修、幼稚園と保育所の子育て支援に係る事業の連携実施などに努めているが、今後もこれらの取組を引き続き推進することが必要である。 例えば、教員と保育士の合同研修の実施や子育て支援事業の連携実施に関し、相互の保育参観の実施、合同行事・合同反省会等の実施、情報交換の促進、地域における幼稚園と保育所の連絡協議会の開催、子育て相談等における連携・協力などの取組を推進することが考えられる。 また、園庭・公園での合同保育、遠足・運動会等の合同行事など、幼稚園児と保育所入所児が様々な触れ合いをもつようにすることが重要である。これら異年齢児との交流やふだん交流のない乳幼児との交流を行うことは相互にとって良い刺激となることに留意する必要がある。 さらに、施設の共用化等に伴い、幼稚園教員と保育士の人事交流が進むことや双方の免許(資格)を有する人材への需要が高まることが考えられる。幼稚園教員と保育士の免許(資格)の併有の機会を更に充実するため、双方が取得できるよう養成課程の充実や科目等履修生制度の活用等現職者に配慮した仕組みを促進することが必要である。 これらを含めた幼稚園と保育所の連携の取組には、近年、多様な地域の実情や住民のニーズに沿って、実績が挙がったり、緒についてきた例もみられるため、そうした事例等今後の地域の取組に資する参考資料を文部省と厚生省の協力により作成・提供することが望まれる。 第3 各地域における創意工夫を生かした幼児教育の展開 各地域においては、創意工夫を生かし、実情に応じて様々な幼児教育の展開を図っていくことが重要である。これらをより効果的に推進する観点から、 おわりに 本協力者会合では、今後、幼稚園設置基準に関連する事項及び幼児期の家庭教育や地域社会における教育との連携を含め、関連する事項について更に調査研究を進め、本年度内を目途に最終報告をまとめることとしたい。 (参考1) 幼児教育の振興に関する調査研究について 平成12年2月8日 文部事務次官裁定 1趣旨 幼児を取り巻く状況の変化や地域・保護者のニーズの多様化等に対応するため、幼稚園教育要領の改訂、少子化対策推進基本方針の策定等最近の幼児教育に関する動向を踏まえつつ、今後の幼稚園教育の条件整備等のための方策について調査研究を行う。 2調査研究事項 (1)幼稚園の教育活動・教育環境の充実について (2)幼稚園における子育て支援の充実について (3)幼稚園と小学校の連携について (4)幼稚園と保育所の連携について (5)その他 3実施方法 学識経験者、幼児教育関係者、地方教育行政関係者等の協力を得て実施する。 4実施期間 平成12年2月8日から平成13年3月31日までとする。 5その他 この調査研究に関する庶務は初等中等教育局幼稚園課において処理する。 (参考2) 幼児教育の振興に関する調査研究協力者 (五十音順、敬称略) ◎印:座長 ○印:WG主査 *印:WG委員 * 秋田喜代美(あきたきよみ) 東京大学助教授 幸田昭一(こうだしょういち) 東京都総務局学事部長 後藤亜佐子(ごとうあさこ) 品川区立八潮わかば幼稚園PTA会長 * 小宮英美(こみやえみ) NHK福岡放送局報道番組ディレクター ◎ 近藤充夫(こんどうみつお) 東洋英和女学院大学教授 佐藤敦子(さとうあつこ) 愛媛大学教育学部附属幼稚園教諭 * 柴田あき夫(しばたあきお) 前全日本私立幼稚園連合会副会長((学)健伸学園健伸幼稚園理事長) * 杉田豊(すぎたゆたか) 静岡県教育委員会教育長 野崎弘(のざきひろし) 公立学校共済組合理事長 * 羽田紘一(はたこういち) 前全国国公立幼稚園長会会長(前台東区立育英小学校長・育英幼稚園長) * 松村和子(まつむらかずこ) (学)新生学園鶯谷さくら幼稚園副園長 * 宮本実利(みやもとみのり) 中野区立みずのとう幼稚園教諭 ○ 無藤隆(むとうたかし) お茶の水女子大学教授 森上史朗(もりうえしろう) 前青山学院大学教授 森元弘志(もりもとこうし) 広島市助役 谷地信子(やちのぶこ) 花巻市教育委員会教育長 (オブザーバー) 清水美智夫(しみずみちお) 厚生省児童家庭局保育課長 (参考3) 幼児教育の振興に関する調査研究協力者会合の開催状況 第1回会合平成12年2月28日(月) ○座長の選出 ○フリートーキング 第2回会合平成12年3月24日(金) ○意見発表(無藤委員、佐藤委員、柴田委員、宮本委員) 第3回会合平成12年4月6日(木) ○意見発表(羽田委員、秋田委員、田中向南幼稚園長) 第4回会合平成12年4月24日(月) ○意見発表(森上委員、松村委員、佐瀬富士見幼稚園長) ○ワーキング・グループの設置 第1回WG平成12年5月12日(金) ○検討課題の整理 第2回WG平成12年5月25日(木) ○「幼児教育の振興について(主要な論点)」の討議 第3回WG平成12年6月9日(金) ○「幼児教育の振興について(中間まとめ)」の討議 第4回WG平成12年6月26日(月) ○「幼児教育の振興について(中間まとめ)」の討議 第5回会合平成12年7月6日(木)10時〜12時 ○「幼児教育の振興方策について(中間報告案)」の討議 第6回会合平成12年7月24日(月)10時〜12時 ○「幼児教育の充実に向けて−新しい時代の幼稚園教育を実現す るための施策提言−(中間報告)」報告 (参考4) 少子化と教育について(抄) 平成12年4月17日 中央教育審議会報告 第4章教育面から少子化に対応するための具体的方策 第2節学校教育の役割と具体的方策 1幼稚園教育 幼児期における教育は,家庭との連携を図りながら,生涯にわたる人間形成の基礎を培うために大切なものである。また,小学校段階以降の生活や学習の基盤の育成につながることにも配慮し,幼児期にふさわしい生活を通して,基本的生活習慣の形成・定着,道徳性の芽生え,創造的な思考や主体的な生活態度の基礎などを育てることが重要である。 また,近年,地域において一緒に遊ぶことのできる子どもの数の減少,親の過保護や過干渉,育児不安の問題が指摘されているとともに,女性の社会進出が進むなど幼児を取り巻く状況が変化している中で,幼稚園において計画的に構成された環境の下での集団生活を経験することは,幼児の成長にとって大きな意義を持つものである。特に,幼児期からの「心の教育」の重要性が指摘されている中で,幼児の遊びや様々な体験活動の充実が重要となる。 さらに,少子化の要因の一つとして挙げられる,子どもを産み育てることへの不安や負担感の解消に資する観点からも,地域の実情に応じて,満3歳に達した時点での幼稚園入園に係る条件整備を行ったり,幼稚園における預かり保育や幼児教育相談の実施等地域の幼児教育のセンターとしての機能を活用した子育て支援活動を推進したりすることが重要である。併せて,幼稚園においても,地域の異年齢・異世代との交流に積極的に取り組む体制の充実が求められる。 これらの点を踏まえ,幼児教育の専門施設である幼稚園を中核に,家庭,地域社会における幼児の教育をも視野に入れて,幼児教育の全体についての施策を総合的に展開することが,少子化への対応の観点からも効果的であると考えられる。この場合,施策の展開に当たっては,幼稚園と小学校との連携・接続の充実を図るとともに,幼稚園と3歳から5歳までの幼児の約3割が入所している保育所とは,子育て支援の観点から類似した機能を求められることを踏まえ,両施設の連携を一層図ることが重要である。 このため,幼稚園の教育活動の充実とそれを支える教育環境の整備の推進や,幼稚園における家庭・地域と連携した子育て支援の充実,幼稚園と小学校との連携,幼稚園と保育所との連携など各般の施策を体系的に盛り込んだ,数年程度の期間を想定する「幼児教育振興プログラム」といったものを新たに策定・推進する必要がある。その際,各地域において創意工夫を生かし,実情に応じて様々な幼児教育の展開が図られるよう政策手段の多様化を図ることが重要である。 |
-- 登録:平成21年以前 --